ジョナサンの安堵と主人公(ふーちゃん)の混乱の回。
ダニーの焼殺未遂事件の一報を、ジョナサンが聞いたのは翌日の朝食の時だった。
思わず、椅子を倒してしまう位、ジョナサンは顔色を無くしていた。
幸い、どこかの見知らぬ男性が指摘したおかげで難を逃れたようだ。
それでも、安心できずにジョナサンは急いで庭に行ってダニーを探した。
「ダニー! ダニー!!」
「ワンッ!」
ご主人の呼びかけに、元気よく吠えて駆けつけてくる大型犬。
ダニーの姿を目にして、ようやくジョナサンは胸に安堵感が広がり、彼を抱きしめた。
「ああ…ダニー、ダニー…よかったよ。
君がいなくなったら、僕は…僕は…」
ジョナサンは歓喜の涙を流して、ダニーが生きている事を心から神に感謝した。
そんな彼と愛犬の様子を離れた所から眺めているソラとアクセル。
「じょーちゃん、ないとる」
「あれはな…嬉しいから泣いてるんだ」
「ふぅ?」
ソラはコテンと首を傾げる。
嬉しいと泣く…ソラにはよくわからなかった。
「うれしーとなくん?」
「ああ…人間っていうのは心が複雑なんだ。
嬉しい事…悲しい事、色んな感情が混ざり合ってできている。
あの子の場合は…大好きなダニーが死なずに済んだ。
大切な家族が無事でよかった…その気持ちが内側から溢れ出して、涙になったんだよ」
アクセルの説明の意味を理解するには、小さいソラにはまだまだ難しい。
でも、彼が言おうとしている事は、なんとなく分かる。
ソラには見えていた。
左目には、ジョナサンがダニーが仲良く抱きしめあって戯れている目の前の光景。
右目には…変わり果てたダニーの姿、彼の最後すら看取る事が出来ずに、涙を流して
悲しみに打ちひしがれるジョナサン。
一つの選択肢で変わっていた
――――『分岐』の道筋を。
「あくたん…」
ソラは目からホロホロと涙がでていた。
ぎょっとして、アクセルは「ど、どうしたんだよ…?」と動揺する。
「ふぇええええー…」
「おいおい、ああ~…ダニーが無事でよかったな、うん…」
足元にしがみついて泣きじゃくるソラに、アクセルは苦笑して頭を撫でる。
彼女もまた、ダニーが生きている事が嬉しいのだと、彼は思った。
しかし、事実は異なる。
彼女は怯えているのだ。
左右対称の瞳にハッピーエンドと悲劇の全く異なるものが映し出される事を…。
《枷》が外れて、徐々に彼女の能力が内側から露わになっている事に、
まだアクセルは気付いていない。
【芽吹く潜在能力】
その日の夜、ジョナサンは父親の書斎へ赴いていた。
父から直接、呼び出されるのは久しぶりだ。
「ジョジョ…言っておきたい事がある」
父は何を告げるのか…?
ドキドキして胸が落ち着かないジョジョ。
しかし、告げられた事は彼の予想の範疇を超えていて、別の意味で胸の高鳴りがやまなかった。
「ステラが…ダニーを助けた…?」
「ああ、ステラはね。特別な力を持っているんだ。
きっと神様が彼女に恩恵を与えてくれたのだろうね」
ジョースター卿は感慨深げに、自らの推測を息子に語る。
「だがね、ジョジョ…私は、ステラの《癒しの力》はまだ公にしない方がいいと思うんだ」
「何故…?」
「あの力は、たくさんの人々を救う事が出来る。
けれども、《力》というものは使い方を間違えたら多くの人々を傷つけてしまう事だってあるんだ。ステラはまだ幼い。だから、これからどんどん学んでいき、将来的に彼女が使いこなせるようにしていくべきなんだ」
父の語る事に、ジョナサンは深く頷く。
すると、ジョースター卿はニコッと笑ってさらにこう言葉を続けた。
「ジョジョ、ステラの保護者代理の人と今度会ったら、屋敷に通しなさい」
「えっ…それじゃあ…」
「ジョジョとディオには、妹ができるかもしれないな。
私も娘がいたら、と前々から考えていたんだ」
「…はい!」
その提案を、ジョジョは満面の笑みで了承した。
気付かない内に、縁は成長する木々のように根を張って、広がっていく。
【To Be Continued… ⇒】