13機関の会議の回。
真白の大部屋に、14人の黒いコートを身にまとう人々がいた。
此処は13機関の本拠地の城。
この部屋は、彼らの会議室である。
10以上の高い大理石の椅子が、高低に円卓状に並んでおり、各自が椅子に腰を下ろしている。
各々が顔をあらわにしており、その中に赤髪の青年…アクセルがいた。
「アクセル、報告をしろ」
「三か月前に発見した新世界の調査について…国は英国(イギリス)、かの地において
エクレシア【アリエス・セクレート】の動向を観察。
上流階級の少年とその血縁者、従者たち…また中流階級の少女と友好関係を築いており、
彼女の言語発達に、いい影響を与えている」
『アリエス・セクレート』とは、ソラの神格名の事。
各エクレシアには神格名が授けられており、もう一つの真名に相当する。
普通は契約者しか知りえないエクレシアの神格名を、13機関が知っている事は、如何に彼らとこの組織の繋がりが強いのかを証明している。
「10代の少年が、アリエスに暴力を振るおうとしたが、事前に阻止。
以降、彼女に害をなす人物はいない」
「少年…? そいつの身元は確認したのか?」
黒いドレッドヘアーの中年の男性、ザルディンが鋭い目つきで問う。
「…ああ、一応な」
「もし周辺にいるようなら、見張る必要がありますよ。
そういう弱者虐めをする人物に限って性質が悪い大人になるケースが多いんですから」
青銀色の片目を隠すヘアースタイルの青年…ゼクシオンが目を細めて注意を促す。
「アクセル…例の件、断っただろうな?」
顔に十字の傷がある、青い長髪の男性…サイクスが確認をとる。
「勿論だ。ちと骨が折れただが…」
片目を瞑り、後頭部を掻いて話し合いに行った時の事を思い出す。
ジョースター卿が、ソラを養子に迎え入れたいと言われた時、衝撃を受けた。
しかも、彼はソラの癒しの力の事も目撃して、その上で引き取りたいと願い出たのだ。
アクセルは頭が痛くなった。
彼の歩んできた人生の中で直面した難題で第3位にあたるレベルのものだった。
一番厄介だったのが、ジョースター卿が本当の善意で、ソラを引き取りたいと懇願した事だ。
これが、金銭や物珍しい力目当ての強欲で分かりやすい野郎であれば、
炎で髪を黒こげにして一喝してやれば簡単だ。
けれども、ジョースター卿は貴族では稀にみる…いや人間としてもできた人物だ。
どこの誰とも解らない怪しい者である、アクセルさえも、色眼鏡で見ず正式な【客人】として迎えてくれたのだ。逆に、お人好しすぎるのでは…と、こちらが心配になってしまった位に。
だからこそ、先方にも納得のいく説明をしなければならなかった。
…ソラがどんな存在なのか、という事も含めて。
「アクセル…」
頭上から響いてくる、低い独特の声音。
一番高い椅子に座る、銀髪の褐色の男性…この組織【13機関】の指導者であるゼムナス。
久しぶりに威圧を伴わせる彼の眼光に、額や背中から汗が滲み出てくる。
「此度の件におけるお前の判断―――仮に、後で不測の事態を招いたとしても
…責任をとる覚悟はあるか?」
ゼムナスは叱責はせず、逆にアクセルに質問を投げつけてきた。
その問いかけの意味を解らない程、アクセルは愚かではない。
瞼を閉じて数分間の沈黙。
上司から突き刺さる回答を促す視線と重苦しい空気。
親友や同じ仲間からの注目も重なる中、アクセルは再び目を開けた。
「…解ってるよ。アリエス…ソラの全面的なサポートは俺がやってやる」
【もう、面倒事に巻き込まれる覚悟はできてるんだ】
「よし、それでこそわが組織の一員だ」
ゼムナスは口元に弧を描いた…部下の出した回答が、彼を満足させるものだったからだ。
「アクセル、サポート役が必要な時は非番のメンバーを一人連れて行け。
費用は全面的に組織が負担する」
続けるように、サイクスが活動面に関する支援を提示した。
アクセルは「サンキューな。…助かる」と、少し緊張が解けたのか、ふにゃっと顔を和らげる。
「精々、気張って行けよ」
「必要なアイテムはメモに書いておけ。
緊急時に補給しろ、と言われてもできんのだからな!」
「大暴れする時は呼びなさいよぉ~」
「情報収集だったらいいけど…できれば戦闘抜きでねー」
「アクセル、俺いつでもスタンバイしておく」
「あんまり無茶しないでね」
仲間達からも、応援の言葉をかけられる。
アクセルは思った。
つい何年前の組織であったら、ありえない光景だ。
そう…仲間同士がいがみ合い、反逆を企てたり、指導者と一部の腹心が野望のために、
集めた者達を駒にしようとしていた…あの頃とは全く違う。
この組織を改革し、指導者達を改心させ、狭間の存在であるノーバディに光をもたらした
…エクレシアがいたから。
『魔法の呪文を教えますね…』
エクレシア…【彼女】のおかげで、アクセル達は変わる事が出来た。
だからこそ、今度は自分達がエクレシアを…彼らに恩を返すのだ。
――――彼等を影から支援する組織として。
「…ああ、『絶対に大丈夫』だ」
【To Be Continued… ⇒】
※この連載の13機関の面々は、いい関係を構築しつつあります。