または、主人公(ふーちゃん)とエリナとシオンのほのぼの回。
ソラは今日も、ジョナサンとエリナと遊んでいた。
エリナが花でつくった冠を、ソラの頭に乗せたり、ジョナサンも同じ冠をつくろうとしてなかなか上手くいかずに、それをダニーに食べられてしまったり…
傍から見ていれば、ほのぼのした構図だ。
木の陰から、彼らの様子を観察しているアクセル。
あの意地悪な金髪の男子が、最近彼らにちょっかいをださないのが幸いだ。
まあ、仮によからぬ事をしたら、威嚇すればいい話だが…。
「ふーちゃん、楽しそうだね」
「まあな…」
彼の隣にいる、黒髪のショートヘアーの女の子がクスッと笑って言う。
彼女はシオン。
同じ組織のメンバーであり、アクセルの親友の一人でもある。
「いいな~…」
「ん? 何がだ?」
「あたし、同じ年頃の女の子友達が少ないから。
カイリは遠くにいるし、ナミネも最近は【レイディアントガーデン】にいるから会えないし…」
「なんだよ~…男友達じゃ、不服か?」
「そうじゃないけど…でも、同性同士でしか話せない事もあるから」
アクセルとそう会話を交わしつつ、シオンはジッとソラ達の方向を見つめる。
10歳年下の親友は、交流関係を広げたい気持ちが強いようだ。
羨望を含む眼差しに気づいたのか(いや、単になんとなく後ろを振り返っただけだろう)、ソラが「あ~」とこちらへ手を振る。
「あくたーん、しーちゃーん」
「あっ、あの人は…!」
「やべっ!」と、アクセルは木影に隠れようとするが、既にソラを抱えたジョナサンとエリナが
歩いてやってきた。
「こんにちは! アクセルさん」
「先日は助けてくださり、ありがとうございました」
笑顔で挨拶をするジョナサンと、同じく助けてくれたお礼をいうエリナ。
木の後ろで姿を見せないアクセルを、ソラが「ふぅ?」と不思議そうに覗き込む。
シオンはコートの裾をクイッと引っ張って、「隠れても意味ないと思うよー」と小声で囁く。
四人の視線が集中する中、アクセルは暫く無言のまま。
五分経過して…
「よ、よぉ…」
仕方ないと判断したのか、アクセルはぎこちない笑みを浮かべて挙手して言葉を
返す事となった。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
「はじめまして…えっと…シオンです」
「エリナよ。よろしく」
緊張気味のシオンに、エリナはにこやかに挨拶する。
ソラを間に挟んで、二人の少女は少しずつ会話をしていく。
「へぇ~…シオンって色んな所へ旅をしているのね」
「うん。お仕事が大半だけど、見た事のない土地や国、色んな人にいっぱい会える事が
出来て新鮮に感じるんだ」
「すごい…なんだか小説の物語を読んでいるみたい…!
もっと聞かせてもらえる?」
「うん、いいよ!」
「ふーたんも~」
女は順応力が高い。
近くで、既に打ち解け合い、和気あいあいと語り合う女の子二人とこねこにんを眺めながら、
アクセルはつくづくそう思った。
「アクセルさんは、どこからきたの?」
「ああ…うん、此処とは違う国かな」
何時の間にか、隣に座って質問を投げてくる男の子に、アクセルはどう答えればいいのか、苦戦している真っ最中だ。年頃はもう一人の親友とさほど変わらないのだが、好奇心と純粋な眼差しを向けられて、どこか話しづらそうだ。
「(どっからどこまで話せばいいんだ…難しいっつーの)」
世界の理は、無暗に人に語ってはならない。
世界同士が必要以上に干渉し合えば、秩序を乱す事にもつながる危険性があるからだ。
そのため、異世界を移動できる手段を持つ者は、その世界や住民に合わせた言動を
とらなければならない。
さらに、注意する事は行く先々で出会う《人物》だ。
機関の制服であるコレは、目立つ衣装であるため、何かと人目を引いてしまうが、
大半の人々はスルーしてくれる。
しかし、中には知的探求心が強かったり、勘の鋭い人物もいて、そういうのに限って
深々と足を突っ込む傾向がある。
アクセルを含める機関メンバーもそうだが、エクレシアもまたその点で厄介事に巻き込まれる
ケースが多い。実際に、過去の旅路でエクレシアの何人かが、上記に該当する人物に目を
つけられた事があった。多くは、権力の誇示やエクレシアの力目当てで近づく輩だった…
全てが該当する訳ではないが。
「あの…アクセルさん?」
「ん…? ああ、すまねぇ、ちょっと考え事してた」
ジョナサンに声をかけられ、別事を振り返っていた脳内を一旦、リセットした。
「…でどこまで話したっけ?」
「あの…父から聞きました。ステラの養子の件を断ったんですね」
ジョナサンが少し寂しげにその話題を切り出した。
彼の表情を横目で見つつ、アクセルは目を細める。
ああ、この少年は本気で待ち望んでいたのだ
…小さなこねこにんが自分の妹になる事を。
「悪いな…。でも解ってくれ。フーにはな、母親がいるんだ」
「父から聞きました。でも、身体が弱くて病院に入院してるんですよね?」
「ああ…フーみたいに人を色眼鏡で見ないいい人だよ」
何度か、ソラの母親…アンナと対面した事がある。
長くウェーブがかかった茶色の髪とマリンブルーの瞳。
大人しそうな別嬪さんに見えて、人を明るくさせる天真爛漫な女性だ。
見た目では、とても身体が弱いとは思えない程に…。
実の父親と年の離れた兄とも面識はあるが、ソラはどちらかといえば母親似だ。
おそらく将来は綺麗な女性に育つはずだ、贔屓目を抜いても間違いない。
「そんなおふくろさんの代わりに、面倒見ている人がいるんだ。
ジョースター卿には悪いが…断るしかなかった」
「そうだったんだ…」
かいつまんで事情を語ると、ジョナサンは神妙な面持ちで聞き入る。
「ジョナサン、お前はもう知ってるだろーが…フーは他の人間とは違う。
『特殊な力』がある子なんだ」
「…ダニーを治した癒しの力ですね」
「そう…まだ小さいのに、とんでもない力をあんなちっこい身体に秘めているんだ」
想像つかねえだろ、と言うアクセル。
彼の言葉には、ジョナサンが予想していなかった物語が詰まっていた。
順を追って、赤毛の青年は語っていく。
小さな友達の秘密-―――こねこにんは特殊な力を持つ種族の子どもだという事。
彼女以外にも、同じ力を秘めた種族が少ないけれどもいる事。
その力をまだ制御できなくて、偶然にもジョナサンと巡り合った事。
それらは、まだ10代前半の少年の心を大きく揺さぶった。
「なぁ、ジョナサン。お前はフー…いやステラの事をどう思う?」
「えっ……」
「事情を知ると知らないじゃ、大きく見方が変わってくるはずだ。
お前は、普通の人間とは違うステラの事を、今でも友達だと断言できるか?」
突如、投げかけてきた問い。
ジョナサンは肩を震わせた。
アクセルが厳しい顔つきで問いかけてきたからではなく…ステラが“背負っているもの”にだ。
ジョナサンもいずれ家の跡目を継ぎ、血筋を絶やさぬよう、子孫を残していく義務を担う。
けれども、ステラがそれ以上に重たい運命を背負っているように思えてならなかった。
―――“人間と違う種族”
ステラと自分が【何か】が違うのだろう。
これはあくまで推測だが、ステラはジョナサンやエリナと同じように成長できないのかもしれない。もしそうならば、ステラは仲良くなれた人達と共有できる時間が限られている。
…たった一人だけ、取り残されてしまう孤独が待っているのだ。
それに、秘められた能力に悩まされる可能性もある。
父が言っていたように、力を制御(コントロール)できなければ、ステラは自分自身を傷つけてしまう事になる。
さらに、他にも問題が発生してくる。
(ディオみたいに…人を傷つける奴らがでてくる)
自分とは異なるものを受け入れず、排除していく人も少なくない。
ジョナサンは、エリナやステラが味方になったおかげで、心が救われた。
でも、ステラは…傍にいてくれる味方がいるのか?
ジョナサンやエリナ、アクセルや母親がいなくなった後でも…受け入れてくれる人はいるのか?
(ステラ……君は…)
独りぼっちほど辛いものはない。
ディオが否応にも味あわせた経験で、ジョナサンはそれが如何に苦痛であるか、
身にしみている。
小さな友達はこの先、その孤独をずっと経験していくのか…。
少年が想像した、彼女の未来に…ジョナサンは悲しみとやりきれない思いが込み上げてくる。
(悩んでんな…)
藪から棒な質問だとは思った。
けれども、アクセルは今しか訊く機会がないと判断して、敢えて少年にそれをぶつけてみた。
差別や偏見-―――それはエクレシアのみならず、この世界のどこかに必ず存在するもの。
生まれや地位、民族、国、戦争が引き起こした過去の傷跡……様々な事が原因で、それらは引き起こる。己の優位に立つために、生死に関わる環境で生き抜くために、自らの居場所を獲得するために…負の感情を宿してしまうのだ。
ジョナサンに、ソラの事情を一部(細かい所は語らず)語った。
普通の人間とは違う彼女を、ジョナサンはどう受け止めるのか…。
もし、拒絶するなら、ソラと彼等を引き離すきっかけになるだろう。
彼は所詮、その程度の人物だった。それだけの事で済ませられる。
だが、アクセルは微かに信じていた。
(もし、ジョナサンが父親同様に博愛の精神があるなら…)
この少年は、ソラの真の意味での友人になれるだろう。
すると、暫く沈黙していたジョナサンが口を開いた。
果たして…少年はどちらの回答をするのか?
【見定める『踊る火の風』】
「ステラは…僕の友達、いや親友です!」
「ジョジョ、お前…」
「ステラは僕やエリナとは違うのかもしれない。
でも…ステラは『ステラ』だ!
僕の大事な親友で、大切な家族の一人に変わりありません!」
ジョナサンは言い切った。
ソラの事を…大切な家族の一人であると。
ソラのありのままを受け入れる選択をしたのだ。
ジョナサンがそう言った直後、アクセルが彼の頭をガシッと掴んだ。
一瞬、何か気に障る事を言ったのか、と目を反射的に瞑るジョナサン。
すると、頭をワシャワシャと撫でられる。
あれ…と恐る恐る目を開けてみると――――
「なかなか言うじゃねえか。気に行ったぜ…ジョジョ」
アクセルは二カッと笑みを浮かべて、自らの愛称を口にしてくれたのだ。
「…ま、これからもフーの事、時間がある時でいいから遊んでやってくれよ」
「……はい!」
――――“年上の男性から、友人との付き合いを認められた”
ジョナサンは、そんな気がして胸にある種の高揚感を覚えた。
【To Be Continued… ⇒】