ふたつのステラ   作:ねことも

18 / 34

ディオと一応和解した(とふーちゃんは思っているだけ)の回。
  


『これで仲直り!』と言いたかったんだよ

 

ジョースター家の屋敷、使用人達が集まる休憩室に、ソラはいた。

 

「あらあら、ステラちゃん」

「今日もきたのね」

「よかったら、クッキーはいかが?」

 

「あんがとー」

 

年配から若年層のメイド達は、ソラの事がお気に入りだ。

突如現れた小さなこねこにんの愛くるしさに胸を貫かれた。

多忙を極める彼女等にとって、ソラは癒しの妖精さんそのもの。

 

ソラは小さいが、彼女等の仕事の邪魔をする事無く、じっとその様子を観察する。

それで満足したら、また別の所へ移動していく。

ある意味、場をわきまえているというか、要領のいいところも人気の一つだ。

他の使用人達も、そんな彼女を好意的にみており、ほんの少し時間が空いたら遊んで

あげている人もいるようだ。

 

ソラがトコトコと玄関口を通ろうとした時、あっ…と声を漏らした。

 

「おいたのにーたん」

「…お前は…」

 

ディオと遭遇してしまった。

この時、ディオは目の前にいるこねこにんに対して、どう反応すればいいのか悩んだ。

なにせ、あの事件以降、警戒心の強い保護者代理のいけすかない赤毛男がどこかで

マークしているのだ。

 

下手に、ちょっかいを出せば騒ぎになる…

それどころか、今まで築き上げてきたジョースター卿や他の使用人達の評判も落としかねない。

すると、ソラもまたふむ~と眉を潜めて何やら悩んでいるようだ。

 

「にーたん、おいたするん?」

 

ディオに向かってそう尋ねてきた。

彼女もまた、あの時の事を根に持っているのか、こちらの動きを警戒しているようだ。

 

 

(…警戒してるな。だが…ここで真っ正直に態度に出す程、俺は阿呆じゃない)

 

 

「しないよ」

 

爽やかな笑みを浮かべて、出来る限り友好的な態度で接した。

ソラはきょとんとした顔で、ディオを見ると、手に持っていた包み袋を開いて「あい」と中身を見せた。先程、メイド達からもらった出来て間がないクッキーだ。

 

「これは…?」

「にーたん、とりゅ!」

 

舌足らずな口調で、ディオにクッキーをとるよう言った。

訝しげに眼を細めるディオに、真下にいるこねこにんはずいっと開いた包み袋を差し出す。

 

もしかして…クッキーを食べろ、と言いたいのか?

 

じぃーと目で促すソラに、何故か気圧されてしまい、ディオはクッキーをいくつか手ですくった。

この行動が正解かどうか、と恐る恐るソラに視線を向けると…

 

「あい~」

 

ソラは満足げに蕾が花を開いたような満面の笑みを浮かべていた。

初めてみるこねこにんの笑顔に、ディオはその刹那、時間がとまった感覚になった。

 

 

 

【『これで仲直り!』と言いたかったんだよ】

 

 

 

ディオがようやく気付いた時には、こねこにんの姿はそこにはなかった。

掌に乗せられているクッキー数枚から、じんわりと温もりが伝わる。

 

「……あいつは…」

 

ディオは、戸惑っていた。

本来の彼の性格なら、こんな物と地面へ容赦なく打ち捨てるだろう。

でも、あの怯えていた、警戒心むき出しだったこねこにんが…ステラが自分に対して

満面の笑顔を向けた瞬間、彼の心にほんのり暖かさが生まれた。

 

あたかも、このクッキーのように…。

 

 

「……こんな、こんなのは俺じゃない。俺ではないんだ…」

 

 

胸を温かく包み込むこの感情は――――愛おしさ。

この当時の彼が、それを理解するにはまだ時間がかかった。

 

 

 

【To Be Continued… ⇒】

  

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。