ディオと一応和解した(とふーちゃんは思っているだけ)の回。
ジョースター家の屋敷、使用人達が集まる休憩室に、ソラはいた。
「あらあら、ステラちゃん」
「今日もきたのね」
「よかったら、クッキーはいかが?」
「あんがとー」
年配から若年層のメイド達は、ソラの事がお気に入りだ。
突如現れた小さなこねこにんの愛くるしさに胸を貫かれた。
多忙を極める彼女等にとって、ソラは癒しの妖精さんそのもの。
ソラは小さいが、彼女等の仕事の邪魔をする事無く、じっとその様子を観察する。
それで満足したら、また別の所へ移動していく。
ある意味、場をわきまえているというか、要領のいいところも人気の一つだ。
他の使用人達も、そんな彼女を好意的にみており、ほんの少し時間が空いたら遊んで
あげている人もいるようだ。
ソラがトコトコと玄関口を通ろうとした時、あっ…と声を漏らした。
「おいたのにーたん」
「…お前は…」
ディオと遭遇してしまった。
この時、ディオは目の前にいるこねこにんに対して、どう反応すればいいのか悩んだ。
なにせ、あの事件以降、警戒心の強い保護者代理のいけすかない赤毛男がどこかで
マークしているのだ。
下手に、ちょっかいを出せば騒ぎになる…
それどころか、今まで築き上げてきたジョースター卿や他の使用人達の評判も落としかねない。
すると、ソラもまたふむ~と眉を潜めて何やら悩んでいるようだ。
「にーたん、おいたするん?」
ディオに向かってそう尋ねてきた。
彼女もまた、あの時の事を根に持っているのか、こちらの動きを警戒しているようだ。
(…警戒してるな。だが…ここで真っ正直に態度に出す程、俺は阿呆じゃない)
「しないよ」
爽やかな笑みを浮かべて、出来る限り友好的な態度で接した。
ソラはきょとんとした顔で、ディオを見ると、手に持っていた包み袋を開いて「あい」と中身を見せた。先程、メイド達からもらった出来て間がないクッキーだ。
「これは…?」
「にーたん、とりゅ!」
舌足らずな口調で、ディオにクッキーをとるよう言った。
訝しげに眼を細めるディオに、真下にいるこねこにんはずいっと開いた包み袋を差し出す。
もしかして…クッキーを食べろ、と言いたいのか?
じぃーと目で促すソラに、何故か気圧されてしまい、ディオはクッキーをいくつか手ですくった。
この行動が正解かどうか、と恐る恐るソラに視線を向けると…
「あい~」
ソラは満足げに蕾が花を開いたような満面の笑みを浮かべていた。
初めてみるこねこにんの笑顔に、ディオはその刹那、時間がとまった感覚になった。
【『これで仲直り!』と言いたかったんだよ】
ディオがようやく気付いた時には、こねこにんの姿はそこにはなかった。
掌に乗せられているクッキー数枚から、じんわりと温もりが伝わる。
「……あいつは…」
ディオは、戸惑っていた。
本来の彼の性格なら、こんな物と地面へ容赦なく打ち捨てるだろう。
でも、あの怯えていた、警戒心むき出しだったこねこにんが…ステラが自分に対して
満面の笑顔を向けた瞬間、彼の心にほんのり暖かさが生まれた。
あたかも、このクッキーのように…。
「……こんな、こんなのは俺じゃない。俺ではないんだ…」
胸を温かく包み込むこの感情は――――愛おしさ。
この当時の彼が、それを理解するにはまだ時間がかかった。
【To Be Continued… ⇒】