新しいオリキャラの登場。
そして、ジョナサンは見た!の回。
ソラは、薄らと霧が蔓延するところにいた。
「……ありぇ?」
ついさっきまで、友達二人と手を握っていたのに…。
此処はどこだろう?
きょろきょろと小さな顔を左右に向けて、辺りを見回す。
とことこと歩いていくが、どこもかしこもまっ白に染まっていて分からない。
「じょーちゃん、えりちゃーん~」
二人の名前を呼んだ。
でも、いつものように「ステラ」と笑って出迎えてくれる姿は見当たらない。
「あくたーん!」
今度は、迎えに来てくれるアクセルを呼んだ。
しかし、彼もまた姿を現す気配すらない。
ふぅ…と寂しそうに眉を下げ、ソラはぽふっと座りこんでしまう。
「…どこぉ…」
ポツリと呟く。
やっぱり誰もきてくれない。
ウルウルと大きな茶色の瞳が潤んできた。
「ふぇえええええ~」
寂しさのあまり、とうとう大声で泣き出してしまった。
彼女の泣き声に反応するように、蔓延していた霧は少しずつ晴れていく。
《…随分と小さな客人がきたものだ》
何やら遠くから薄らと人影が見える。
ソラは、グスグス…と泣きつつ、その方向へ歩いていく。
「だりぇ……おじたん」
その影の人物は男性だ。
顎鬚の渋い魅力をだす、30代後半位の人物だった。
「君こそ誰だ? 現世の人間にしては臭いがない
…常世の存在にしては像(ビジョン)を保っている」
「ふーたん」
「気の抜けるような名前だ。いや愛称というべきか、真名は…」
男性は、ソラのねこにんのフードを外すと額に指先をつけた。
「成程…ソラ・アウリオン。
君は一風変わった生まれ方をした水子で、エクレシア(神の卵)か」
名が解らない男性は遠い目をして空を見上げた。
何時の間にか、霧はなくなっており、辺りは透き通った青空が広がっていた。
周りには鼻をくすぐる甘い匂いが漂っている。
辺り一面に赤、橙、桃色の果実がたわわに実る樹が並んでいる…それらが発する匂いだ。
「わぁ~」
「ああ、これらか。暇つぶしに育てているものさ。食べたいのかい?」
男性は、あまり興味なさげに果実を見て、その内の一個をもぎ取った。
大きな桃のような実だ。
ナイフで器用に一口サイズに切ると、一欠けらをソラに手渡す。
ソラは両手でその欠片をとると、ぱきゅっと口に入れる。
「おいしぃ~!」
口内に広がる果実のとろける甘さに、ソラは目を輝かせる。
いつも食べている果物やジュースも美味しいけれど、これはもっと味がいい。
絶賛するソラに、男性はそんなに喜ぶとはな…と意外な顔で見つめる。
「おじたん、こりぇたべりゅ?」
「気が向いた時だけだな…」
「おにゃかぐぅー、しゅるよ(お腹減るよ~)」
「俺は飲食しなくても差支えない体質なんだよ」
もっと食べるかい?
そう言って、男性は果実を切り分けて、お皿に盛りつけると、ソラにあげた。
ソラはわーいわーいと大喜びで、果実をご馳走になった。
「おじたん、じゅとここおるん(ずっとここにいるの)?」
「そうだな…正確に言えば、50数年前から此処にいる」
「おうち?」
「家…か。まあそうなるな」
ソラの疑問に対し、男性は律儀に答えていく。
「おじたん、ふーたんのともらち、どこ?」
ソラは男性にジョナサンとエリナの事を尋ねた。
このおじさんなら知ってるかも…という子どもながらの安直かつ純粋な思考からその問いが
自然と口からでたのだ。
「ジョナサン・ジョースターとエリナ・ペンドルトンの事かい?」
「うん!」
「ああ、直接的に面識はないけど知ってるよ…」
「ねぇねぇ、どこおるん?」
「彼等がいるのは“現世”――――この世界にはいないんだ」
真顔で言われた事に、ソラはきょとんと首を左右に傾げる。
「ちと難しいか…まずは、此処がどんな所かを教える必要があるな」
仕方ない…と男性はソラの額に再び指先をふれる。
「口ではまどろっこしい。
だから…こちらで手っ取り早く、解り易く説明しよう」
男性の指先から弧を描いた振動が視覚に見えるように現れる。
すると、ソラの脳内にある映像が流れてきた。
「ふぅ!」
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
ステラがいなくなって二ヶ月が過ぎた。
エリナの船出の時も、彼女は姿を見せなかった。
『ジョジョ、貴方とステラと過ごした日を忘れないわ。
…ステラに会えたら、伝えてほしいの。
―――“また会いましょう”って』
必ずメッセージを伝えると約束して、エリナはインドへ旅立った。
ジョナサンはいつもと変わらない日々を過ごしていた。
最近、ディオと顔を合わせても、彼はあまり嫌味を言わなくなった。
時折、他愛もない話題を喋れるようにもなれた。
父であるジョースター卿もまた、ステラが遊びにこなくなった事を淋しく感じている。
使用人達は、いつ彼女がきてもいいように、お菓子を常時用意している位だ。
(ステラ…あの時、おかしかった。あの光は何だったんだ?
ステラがいなくなったのと関係あるのかな…?)
今日も、ジョナサンはダニーを連れて、ステラを捜索している。
「どう? ダニー」
「きゅーん…」
一通りの場所を探してみるものの、やはりステラの姿は見当たらない。
もしかして…事件に巻き込まれてしまったとか?
嫌な想像が頭をよぎるが、それを払拭するように、ジョナサンは左右に軽く首を振る。
「ダメだ…悲観的な事を考えちゃいけない!
きっとステラは無事だ、うん…無事なんだ!」
己に言い聞かせながら、ジョナサンは止めていた歩を進めていく。
一時間歩き回って、さすがに疲れたので木陰で一休みしようとしたその時…
(あれっ…アクセルさん?)
見覚えのある青年―――アクセルが、森の中へ入っていくのが見えた。
もしや…彼ならステラの行方を知っているのでは?
淡い期待を抱き、ジョナサンはダニーに木陰で休んでいるように指示すると、
単独で彼の後を追い、森の奥へ進んでいった。
アクセルは、待ち合わせ場所へ着くと足を止めた。
周りは鬱蒼と茂る木々に囲まれ、その間からカアッ、カァッ! と悲鳴に近い声をあげ、カラスが空へ飛んでいく。この場所に慣れている人はさほど気にしないだろうが、旅行者や住み始めた人等はこの静かで薄気味悪い雰囲気をあまり好まない。
エメラルドの色の目を細め、注意深く辺りに気配があるか否か神経を研ぎ澄ます。
『時間通りにきたな』
人気のない森に突如、響き渡る声。
アクセルの前方…空間から闇の回廊が出現して、そこから深くフードを被った黒いコートの人物が姿を見せた。
「よぉ、サイクス。久しぶり」
同じ服装のその人物に、軽く手をヒラヒラ振るアクセル。
その人物…サイクスは被っていたフードを外す。
青い長髪に、こめかみにクロス型の傷がある男性だ。
「単刀直入にきく。“アリエス”は見つかったか?」
「いや、この世界を隅から隅まであたってみたが…」
アクセルは首を左右に振って、肩を竦める。
「…そうなると、他の世界へ移動してしまったか?」
「その可能性もあるけどよ…俺は、まだこの世界にいるような気がしてならねーんだ」
「その根拠は?」
「直感みたいなもん。ふーはこの世界の事を気に入ってるしよ
…そう簡単に別の世界へ心移りするとは思えないんだ」
アクセルの言い分に、サイクスはハァ、と溜息を漏らす。
「非論理的だな…お前の“直感”とやらは、どれほどアテになる?」
「少なくとも、デミックスの勘よりかは当たってるぞ」
少し得意げに語るアクセルに、サイクスは呆れた顔になる。
「まあいい。一刻も早くアリエス…フーの所在を見つめるぞ。
如何に幼児と言えどもエクレシア…『神の卵』なんだ。
良からぬ勢力に攫われては大問題に発展する」
「そうだな。じゃあ、もうちょいこの世界を探したら、闇の回廊で…」
二人が会話をしているその最中、パキッと小枝が折れる音が耳元に聞こえた。
「そこにいるのは誰だ…姿を見せろ!」
些細な気配さえも逃す事無く、サイクスは後方の茂みに鋭い視線を向け、怒鳴る。
アクセルも肩越しに後ろを見て、手元から愛用の武器、チャクラムを出現させる。
相手が少しでも変な事をすれば、攻撃できるよう態勢を整える。
ガサッ…
だが、茂みからでてきた人物を目にして、アクセルは驚いた。
何故なら……
「す、すみません…話を聞くつもりじゃあなくて…その…」
「ジョジョ…!」
なんてこった、と額を手で抑えてしまう。
隠れて立ち聞きしていた人物が、よりにもよってソラの親友だとは…。
【未知なる領域】
「ふぅ…ぐりゃぐりゃ~」
ソラは目をまわして、ぽふっと寝転がってしまう。
脳内に流れてきた情報は、幼いこねこにんにとって驚愕な事、嬉しい事、悲しい事、怖い事…
たくさんの人達の出来事が集約されていた。
解り易く例えるなら、たくさんのアニメ映画を一気にみたような感じだ。
少し、加減すべきだったな…と男性は軽く謝罪してソラの頭を擦る。
すると、酔いが覚めたようにソラは起き上がった。
「どうだった? あの映像の中に出てきた人々の出来事は?」
「…しゅごい(すごい)」
「全ての情報は…覚えてないか。
例え、覚えてても、君の記憶の許容量がオーバーしてしまう」
「ねぇ、おじたん。おじたん、だれなん?」
ソラは不思議そうに、男性に問いかけた。
一体何者…という幼い子にしては鋭敏な質問に、男性はフッと口元に弧を描く。
「俺は、この世界の【導き神】
――――あらゆる神々を束ねる統率者(リーダー)だ」
【To Be Continued… ⇒】
※【物語の単語・専門用語辞書】に、今回出てきた新しい単語の説明を追加しました。
ご参照ください。