ふたつのステラ   作:ねことも

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アクセルによる、ジョナサンへの説明回。
そして、主人公が降り立つ舞台は青年期へ移る。



時を超えた再会

 

「…じゃあ、ステラはいずれ神様になる子なんだね」

「…そーいう事になるな」

 

聞かれてしまったものは仕方ない。

アクセルは後頭部を掻きながら、全ての事情を打ち明けた。

隣で、腕を組んで不機嫌そうにこちらを睨みつけているサイクス。

 

  “ バラしてどうする ”

 

声なき鋭いツッコミを暗にくらいつつも、アクセルは《仕方ねえだろ…》と心の中で言い返す。

 

どっちみち、聞かれてしまった以上、選択肢は二つ。

記憶を消すか、逆に詳細を公にするか。

 

前者は、手っ取り早い方法にみえるが…ジョナサンを自分達のアジトへ連れていく必要がある。

記憶の一部をなくす事は、かなり難しい上に繊細な作業が必要となる。

下手をすれば、脳に障害をもたらす危険もあるため、あまり有効ではない。

 

そうなれば、後者を選ぶしかない。

…と言っても、既に粗方の事情を説明していた事もあって、ジョナサンは驚くよりも逆に納得した、という感じだ。

 

 

「…ステラはどこにいったんですか?」

 

「俺にも解らねえ…ただ、フーはまだ力を制御できねえ事もあってな…

此処とは違うどこかにいるのかもしれない」

 

 

そうですか…とジョナサンは寂しそうに顔を俯ける。

 

「ジョナサンと言ったな。念のために伝えておくが…この一件は他言無用だ。

親しい友達や家族にも教えない様に…」

 

「(父親はもう知ってるけどな…)まあ、そういう事だ。頼むぜ…ジョジョ」

 

サイクスとアクセルからの頼みに、ジョナサンはこくりと頷いて了承する。

だが、彼の心の内側は小さな友達が今どこにいるのか…という心配で一杯だった。

 

(ステラ…どこにいるんだい?)

 

 

◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇

 

 

「おや、此処にいたのか」

 

ソラは、ハーパルのいる果樹園…天界にいた。

彼に正式な【客人】としてこの世界に招かれ、環境に慣れるために此処で過ごしていた。

 

「ぱるしゃん、ぱるしゃん」

 

ハーパルは、ソラに名前を呼ばれて、果物がなっている一本の樹へやってきた。

ソラは、小さな子犬のような子猫のような丸い生物と戯れていた。

額に星の印がついており、その姿は夢の世界で生息する夢魔の一種に瓜二つだ。

その生物は、ぱたぱたと尻尾を振って「にゃふっ」とソラにスリスリとすり寄っている。

よほど、ソラの事が好きなのか離れる気配を見せない。

 

「…ほぉー、もう【幽波紋(スタンド)】を開花させたのか」

「しゅたんど?」

「解り易く言えば、生命エネルギーが形を作った像…君の分身体のようなものだ」

 

ハーパルの説明に、ソラは「ふぅ…?」と首を傾げる。

 

「さらに、解り易く言えば君の【友達】だと思えばいい」

「ともらち!」

「にゃふ~」

 

ソラが「わーい」と嬉しそうに笑うと、スタンドもまたつられて喜ぶ。

 

「…このタイプは近距離型か。さて、どんな能力か…」

 

興味深そうに、ソラのスタンドの額に掌を乗せてみた。

 

『にゃふっ…なにするにゃか?』

「ちょっと君について知りたいだけだ」

 

『にゃふ…ぼくの名前はなんていうにゃか?』

「大まかなカテゴリーで言えば『スタンド』と呼ばれているモノだが…君個人の名前はまだない」

 

『にゃーん…ふーちゃん~! ぼくに名前をつけてほしいにゃ~』

 

スタンドは、ソラの頬をぺろぺろ舐めて名前をつけて、と懇願する。

 

「ふぅ…にゃーちゃん?」

『にゃふ…安易すぎるにゃ~』

 

「ふむ~、にゃふにゃー」

『にゃぁ…ちょびっと変化しただけにゃ~』

 

「スタンド、この子に命名してもらうのは、ちと難しいぞ。何分年齢が1歳児だからな」

『にゃふ…じゃあ、おじさんつけてくれにゃ~』

 

スタンドがウルウルとお願いの眼差しを向ける。

ふむ…とハーパルは顎髭を擦りながら思案する。

その間、スタンドのお腹をソラがゴロゴロと撫でて、スタンドは気持ちよさそうに転がる。

BGMがあるなら、ラン、ラン、ランラララン~♪ と和む音楽がぴったりだ。

 

「りゃん、りゃん、りゃーりゃりゃりゃ~♪」

 

タイミングよく、ソラが気の抜ける即興の唄を口ずさんでいる。

彼女の唄に、スタンドも釣られるように『にゃ、にゃ、にゃーにゃにゃにゃー♪』と歌いだした。

 

(ステラとスタンドの共鳴率…かなり高いとみた)

 

もし、彼等が現世で内に秘めた未知なる力を発揮したなら…どんな化学反応を起こすのだろうか?

ハーパルは知的好奇心を湧きたてられ、微弱ながら恐怖も感じた。

 

「……よし、スタンド。名前を決めた」

「にゃまえなーに?」

『にゃふっ! どんなのか早く教えてにゃ~!』

 

ワクワクと期待に満ちた表情で見つめてくる彼らに、ハーパルはその名を口にした。

 

 

「『ドリーム・シンフォニア(夢想の交響曲)』

――――君によく似ているドリームイーター(夢喰い)の名称から一部とった。

本体であるステラと、君は…世界を変革する『鍵』となれる。

君達の奏でる曲が、多くの人々の運命さえも変えられる、そういう意味を込めてつけてみた」

 

『にゃふー! カッコいいにゃーん! とってもイカすネーミングだにゃ~vv』

 

 

どうやら、気に入ってくれたようだ。

すると、ソラがスタンド…ドリーム・シンフォニアに向かってこう言った。

 

「おめれとー、わんだにゃーん」

『にゃふっ!?』

「……そちらの方が言い易かったか?」

 

本体は、カッコいいネーミングよりも呼びやすい『ワンダニャン』の方がお気に入りらしい。

ガビーン! とショックを受けるドリーム・シンフォニア…もといワンダニャン。

命名して早々、やっぱりシンプルな名前の方がいいのか…とハーパルは名前変更しようか

少し悩んだ。

 

 

 

 

 

「ねーねー、ぱるしゃん」

「なんだい? ステラ」

「ふーたん…じょーちゃん、えりちゃん…あいたい」

 

背の高いハーパルを見上げて、ソラは友二人に会いたいと懇願した。

果樹園にずっといて、このところ親しい人たちに全然会っていない。

ジョナサンとエリナ、ダニーやジョナサンのお父さん…優しいおじさんに会いたい。

此処も好きだけど、大好きな友達がいる所に行きたい気持ちが勝った。

 

 

「そうだな…そろそろ頃合いかもしれないな」

 

「わんだにゃんもいい?」

『にゃーん…ぼくもふーちゃんの友達にあいたいにゃー』

 

「すまないが、ステラ…“今の君”ではドリーム・シンフォニアを現世へ連れ出す事はできない」

 

「ぶぅ~」『つまんないにゃー』

 

 

今のソラは、スタンドを自由に使いこなす事はまだ難しい。

神界では、普通に具現化できても、実世界では先天的な能力者でなければ、長い訓練を積み重ねなければならない。

 

 

「…ステラ、俺の世界を、そこで暮らす人々を好きになってくれた事は感謝している。

だが…一つだけ忠告しておこう」

 

「なーに?」

 

「君の“帰るべき場所”を忘れてはダメだ。……覚えているかな?

君を待っている家族や近しい人達の事を…」

 

 

ハーパルが指摘した事で、ソラの脳裏に次から次へとたくさんの人物像が浮かび上がる。

親友の月華…コゼット…リエ…同じ種族である年上の仲間達。

そして、母であるアンナを…彼女のぬくもりを思い出す。

 

「あい!」

 

「ならいい。ステラ…帰るべき場所の記憶はしっかりと頭のノートに書き込んでおくんだ。

――――“一度でも忘れてしまえば、二度と戻れなくなる”ぞ」

 

ソラはまだ幼い。

異世界の環境に慣れていく内に、その世界が“自らの故郷”と認識してしまう可能性があるためだ。

ある程度の年齢のエクレシアなら、使命が終われば自らのいるべき場所へ戻れるだろう。

 

けれども、ソラにはまだその分別がうまくつかない。

長期に渡り、この世界に居続ける事で、家族を…仲間を…

本当の自分自身を忘れてしまう危険がある。

 

だから、ハーパルは二度注意を促した。

幼いこねこにんの未知数の力に目をつけても、彼女の記憶を…居場所まで改竄する意思は毛頭ない。打算的な狙いはあれど、ある程度の良心はあるのだ…この導き神は。

 

「またきていーい?」

「ああ。気が向いたらきたまえ…君の大好物の果実をご馳走しよう」

「あんがとー」

 

礼を言い、ソラは小さい手を振ると白い靄で覆われている方向へ歩いていく。

その方向にあるのは、現世への入り口。

ハーパルが教えた訳でなく、彼女は直感でその方角へ足を進めていった。

 

取り残されたドリーム・シンフォニアが『だいじょうぶかにゃー…』と不安そうに、こちらとソラが行った方を交互に見やる。

 

「見届けよう…まずは、彼女自身のお手並み拝見だ」

 

顎鬚を擦り、ハーパルは口元を微かにあげて呟く。

小さなこねこにんが、数奇な運命に巻き込まれてる星を背負う一族に、どんな相乗効果をもたらすのか…期待して。

 

 

 

 

 

一人の人物が川辺を歩いていた。

上品で慎ましやかな服装の長い金髪の美しい女性だ。

 

「懐かしいわ…」

 

女性…エリナ・ペンドルトンは、一ヵ月前に故郷である英国に戻ってきた。

七年間、インドで生活していた時に父の指導の下、猛勉強をして看護師の資格を取得。

 

現在は、父が運営する病院で働いている。

今日は休みをとって、久しぶりに散歩を満喫している最中だ。

 

「この木、まだ残ってたのね…」

 

七年前…まだ少女であった頃に、初恋の男の子が彫ってくれたサインがあった。

ハートマークの中に男の子…ジョナサン・ジョースターとエリナ自身の名前が刻まれていた。

 

 

『まあ、ジョジョったら!』

『あはは…』

『えりちゃん、まっきゃ(真っ赤)~』

 

 

そう、子どもだったあの頃、エリナとジョナサンは将来を誓い合った。

そんな二人の誓いの証人であり、小さな親友のステラも一緒だった。

故郷に帰ってきて以降、エリナはジョナサンと再会していない。

風の噂では、彼は大学に進学していると聞いた。

 

 

 “ 会いたい ”

 

 

ジョナサンを愛する気持ちは今でも変わらない。

しかし、子どもの頃とは異なって気軽に互いに接触できる立場でない事を実感せざる

負えなかった。

 

忙しい事もあるが、何より“身分”という壁が両者の間に立ちはだかった。

透き通った川の水を眺めながら、エリナは傘を握る手を強める。

 

「…あの頃に戻りたい」

 

エリナは、瞼を閉じて願った。

 

お願いです、神様…一度だけでもいい。

…どうか、愛しい人と親友に会わせてください。

 

「ジョジョ……“ステラ”……」

 

彼等の名前を口ずさんだ瞬間…

 

 

  パァアア…!

 

 

左の手の甲に光り輝き、紋様…メビウスの輪を象ったもの…が浮かび上がる。

 

「な…なに……何なの!?」

 

持っていた傘を落として、エリナは左の手の甲を抑えて動揺する。

その時、訳の分からない不思議な現象に混乱している彼女の耳に“声”が聞こえた。

 

「えりちゃーん!」

 

そう…懐かしく、可愛らしい『あの子』の声が…。

エリナは思わず、その方向へ目を向けた。

 

声がしたのは真上…晴れ渡った青空。

彼女の瞳に驚くべきものが映る。

 

何故なら…青空と同じく、透き通った妖精に似た光翼を広げて、こちらへ飛んでくる

幼子がいたから。

 

 

 

【時を超えた再会】

 

 

 

「…ッ! ステラ!」

 

エリナは両手を広げて、舞い降りてきたソラを抱きしめた。

 

「ああ、ステラ…! あいたかった…」

「たらいま~(ただいま~)」

 

七年の月日を経て、一人の少女は美しい淑女となり、そして…小さな親友と再会を果たした。

 

 

 

【To Be Continued…⇒】

  




※ふーちゃんのスタンドの出番は、別の部になる予定。
  
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