ふたつのステラ   作:ねことも

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とうとうあの事件へ突入する回。
残酷表現、死ネタ、グロ表現があるので閲覧にご注意ください。

  


『もやもや』の正体

朝はサンサンと日差しが照り付けるほどに快晴だったが、今は雨が降り始めるのを待ち構えるように暗雲が漂っている。

降り注ぐ強風を身に受けながら、ディオはジョースター邸に戻ってきた。

 

(俺は、ジョジョに追いつめられている…

だが、逃げはしない! あんな奴のために逃げ出してたまるか!)

 

今朝方、石仮面をかぶって豹変した男から受けた傷に痛みを覚えつつも、ディオは屋敷の玄関口のノブを握り、

扉を開いて入った。

 

「(……! なんだ…?)」

 

いつもなら、とっくにシャンデリアが明るく照らされているはずなのに、明りは消されて屋敷全体を闇で包み込んでいる。

迎えの使用人達もおらず、シィー…ンとした不気味な静かさが漂っている。

ゴロゴロ…と雷が鳴る音が響き、ディオの心に形容しがたい不安を与えていく。

 

「どうした 執事!? 何故、邸内の明りを消しているッ!」

 

怒鳴り声で、誰かいないのかと叫んだその時…シボ! とマッチのする音が微かに聞こえた。

暗い空間に灯るマッチの火が、ある人物の顔を映し出した。

 

「ジョジョ!」

 

オウガストリートにいるはずのジョナサンが、目の前にいる。

ディオが危惧していた事が現実となったのだ。

 

「帰ってたのか……ロンドンから」

「解毒剤は手に入れたよ…さっき父さんに飲ませたばかりだ」

 

その言葉を聞くや、ディオの心臓の鳴る回数が増えていく。

 

「つまり証拠をつかんだという事だよ。ディオ…僕は気が重い。

仲は良かったとは言えないが、兄弟同然に育った君を警察に突き出さなくてはいけないなんて…」

 

残念だよ…と悲しそうに呟くジョナサン。

ディオは、近くにあった椅子に腰かけるとフー…と溜息を漏らした。

 

「ジョジョ…君はそう言う奴さ。…その気持ち、君らしい優しさだ。理解するよ」

 

ディオのしおらしい態度に、ジョナサンは意外そうに目を見張る。

 

「ジョジョ…勝手だけど頼むがある。

……最後の頼みなんだ。僕に時間をくれないか? 警察に自首する時間を!」

 

「えっ」

 

ジョナサンは困惑した。

ディオの性格上、てっきり追い詰められた野獣のように反撃に出ると思っていたからだ。

 

「ジョジョ! 僕は悔いているんだ、今までの人生を!

貧しい環境に育ってくだらん野心を持ってしまったんだ!

バカな事をしでかしたよ…育ててもらった恩人に毒を盛って財産を奪おうとするなんて!」

 

ディオはつぅーと涙を流しながら懺悔する。

 

「その証に自首するために、ジョースター邸に戻ってきたんだよ。

逃亡しようと思えば、外国でもどこでも行けたはずなのに!

罪のつぐないをしたいんだ!」

 

一生懸命に自分の願いを訴えるディオに、ジョナサンの心は揺らぐ。

 

(た、確かに…彼の言う通りだ。ディオは…自らの罪を悔いているのかもしれない…)

 

もしも、ディオの言う事が本当ならば…

 

彼の意思を尊重させ、父親に謝罪をさせた上で、警察へ連れて行っても遅くない。

 

「ディオ…」

 

 

 

◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇

 

 

 

「じょーちゃん、じょーちゃん」

「ダメよ、ステラ…今は外に出てはいけないの」

 

さっきまでずっとエリナから離れなかったソラが、急に閉じている扉をトントンと両手で叩きだした。

エリナは今は出てはいけないと宥めるが、ソラは首をぶんぶんと横に振る。

 

「やッ! じょーちゃんとこ、いきゅ(行く)!」

「ジョジョは今、危険な人と話し合いをしているの…ステラ、貴女が行ったら巻き込まれてしまうわ」

 

「じょーちゃん、らめ(ダメ)! もやもやおる!」

「もやもや…?」

 

《もやもや》―――エリナは、その抽象的な言葉に聞き覚えがあった。

そう、あれは7年前に…ディオと遭遇する前にも、ソラが発していた単語だ。

 

「もやもや、らめ(ダメ)! じょーちゃん、ぴんち!」

 

ソラは、必死に扉の外へ行きたがる。

エリナはまさか…と背筋に悪寒が走る。

 

(……ジョジョの身に何かが起きるの…!?)

 

だから、ソラはジョナサンのもとへ行きたがっているのか、とエリナの胸に不安が宿る。

その時…部屋の窓から、ドンドンッと強く叩くような音が聞こえた。

 

エリナの心臓がドキッと高鳴る。

外へ出たがるソラを抱きかかえ、ゆっくりと窓の方へ視線を向けると……

 

「…! アクセルさん…」

「あくたん!」

「すまねえ、開けてくれないか?」

 

硝子戸を隔てて、逆立った赤毛の青年…アクセルがそこにいた。

 

「フー、戻ってたのか…なら丁度よかった」

「あの…アクセルさん、どうしてこちらから?」

 

わざわざ、玄関口を使わずに窓から入ってくるなんて…一歩間違えれば泥棒に間違われてしまう。

エリナの言いたい事を察したのか、アクセルは複雑な顔で口を開いた。

 

「ああ、なんつーか…癖というか習慣と言うか…まあそれはさておいてだな。

フー、一旦此処から離れるぞ」

 

「ふぅっ!」

 

「コゼットとくー坊のところに帰るんだよ。『早く帰って来い』って二人も言ってたぞ」

 

ほら、こっちにこいとアクセルが手招きするが、ソラは首をぶんぶんと左右に振って「NO!」という意思表示をする。

いつもと違うソラの態度に、アクセルは「んん?」と眉を潜める。

 

「ほら~…帰ろーぜ」

「やっ! ふーたん、いかん!」

 

アクセルが差し出した手を、ソラはぺちっとはねのけた。

 

「どーしたんだ…フー。てか、これって反抗期ってやつ?」

「あの…アクセルさん。違うんです」

 

目を丸くして驚くアクセルに、エリナがこれまでの経緯を語った。

 

「…そうだったのか」

「ジョジョは、今…スピードワゴンさんという方と一緒に、一階でディオと話をつけているはずです」

 

エリナもまた、ちらちらと扉に目を向けて、気が気でないようだ。

 

「…あの野郎、ぜんっぜん成長してねえじゃねえか」

 

アクセルは七年前に、ディオに「半人前未満」と厳しい評価を突き付けた。

それで、あの少年が更生するとは思っていなかったが、少しはまともになっていればな…という淡い期待はあった。

 

だが、ディオは変わらなかった。

半人前未満どころか、外見以外はさらに人として最低に陥っている。

 

「…やべぇな」

 

話を聞く限り、ディオは相当狡猾なタイプだ。

単なる話し合いでケリがつくとは思えない。

嫌な予感がしたその時…

 

 

ドガガガガガッ!

 

パリーンッ!

 

 

盛大な拳銃と窓が割れる音が鳴り響いた。

 

 

 

◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇

 

 

 

「ジョースターさん…気を付けろ! 信じるなよ、そいつの言葉を!」

 

ディオの言葉を信じかけていたジョナサンにストップをかけたのは

…後方の暗闇に隠れ潜んでいたスピードワゴンだった。

シボッとマッチの灯りをつけて、顔を見せた見覚えのない第三者を、ディオはキッと睨みつける。

 

 

「『誰だ?』って聞きたそうな表情してんで自己紹介させてもらうがよ、

おれぁ、おせっかい焼きのスピードワゴン!

ロンドンの貧民街からジョースターさんが心配でくっついて来た!」

 

 

ロンドンの貧民街…という単語に、ディオは顔を引きつらせる。

あのオウガストリートに住む住民が、よりにもよってジョナサンの味方に付くなんて、予想外だったからだ。

 

 

「ジョースターさん、甘ちゃんのあんたが好きだからひとつ教えてやるぜ!

おれぁ、生まれた時から暗黒街で生き、色んな悪党を見てきた。

だから、悪い人間といい人間の区別は『におい』で分かる!」

 

 

自信満々気に語るスピードワゴン。

そして、睨んでくるディオに対し、彼は真剣な顔で見据える。

 

 

「こいつはくせえッ――!

ゲロ以下の匂いがプンプンするぜッ―――!

こんな悪に出会った事がねえほどなァ―――!」

 

 

スピードワゴンはそばのテーブルに置いてあった蝋燭台を蹴り、椅子に座るディオへ当てようとした。

ディオは首をわずかにずらして、顔への直撃を防いだが…次の瞬間、精神的な意味での衝撃が彼を襲った。

 

「こいつの顔に見覚えがあるだろッ!!」

「…ッ!」

 

閉められたカーテンからスピードワゴンによって引きずり出されたのは、毒薬を売った東洋人の商人…ワンチェンだ。

 

「ディオ、この東洋人が毒薬を君に売った証言はとってある」

 

さらに別のカーテンが開けられた。

そこには、解毒剤で身体が癒えたジョースター卿を中心に、多数の警察官が並んでいた。

 

「ディオ、話は全て聞いたよ。残念で……ならない…。

君のお父さんは命の恩人。……そして君には、息子と同じくらいの愛情と期待をこめたつもりだったが」

 

ジョースター卿は悲しげに顔を俯ける。

息子と同様に育ててきたディオが、自らを殺そうとした事が辛く、残念でならない。

警察にもう一人の息子が捕まる瞬間を見たくない…そう思い、寝室へ戻ろうとした。

 

 

「あの男……捕まりやせんよ」

 

 

しかし、ワンチェンの一言が階段を上がろうとしたジョースター卿の歩を止めた。

 

「占いでそう出てるんじゃ……耳の3つのホクロだけじゃあなく、あいつの顔の相もそうなっているんじゃ。

奴は強運のもとに生まれついとる!」

 

「…強運…」

 

この人は何が言いたいんだ、とジョースター卿が戸惑った顔になる。

すると、ディオがジョナサンに両手を差し出したところに目が向いてしまい、聞き返す気が薄れた。

 

 

「ジョジョ、逮捕されるよ。

だが、せめて君の手で手錠をかけてほしい……七年の付き合いで…わがままを言わせてもらえれば、

肩を怪我しているんだ。きつくしめないでくれ」

 

 

どうやら今度は本気で観念したようだ。

ジョナサンは、「分かった」とそれを了承して手錠を持ち、彼の元へ歩みよる。

 

「ジョジョ…人間ってのは能力に限界があるな」

「…?」

 

「俺が短い人生で学んだ事は、人間は策を弄すれば弄するほど予期せぬ事態で策が崩れさるって事だ!

……人間を超える超えるものにならねばな…」

 

「何のことだ? 何を言っているッ!」

 

やけに神妙な面持ちのディオが喋りだした独り言…その内容が尋常でない事にジョナサンは気付いた。

ジョナサンに隙が生まれた瞬間、ディオは待っていたといわんばかりに懐から石仮面を取り出し、同時に肩を固定していた包帯を破いた。

包帯の上から隠していたのは、手で握りしめていたナイフ。

 

「俺は人間をやめるぞッ! ジョジョ―――ッ! 俺は人間を超越するッ!」

「い…石仮面、なぜ君が持っている?」

「危ないッ―――! ジョースターさんッ!」

 

武器を隠し持って襲い掛かってくるディオに、ジョナサンは硬直して動けない。

ドスッと肉を突きさす音がした。

 

「あああ」「こ、これはッ…」

「と、父さん…」

 

しかし、ジョナサンは刺されていなかった。

息子を守ろうとしたジョースター卿が咄嗟に割り込んで身代わりになったのだ。

 

「奴を射殺しろ―――ッ!」

 

警官達が銃を発砲しようと構える寸前、ジョースター卿の血を帯びた石仮面をディオは被った。

高笑いをするディオの全身に、多数の弾丸が撃ち込まれていく。

ディオは、重力に従うように背中から倒れていき、結果窓をぶち破る形で外へ投げ出された。

刺された父親を抱きかかえるジョナサンは動揺していた。

 

「と…とうさん。なんて事だ…ディオが僕の研究してきた石仮面を持っている事に気を取られて、その所為で…」

 

絶望と罪悪感に包まれていると、ジョースター卿は痛みを堪える様に、手を上げてジョナサンの頬を優しく撫でた。

 

「じょーちゃん!」

「「ジョジョ!」」

 

ふと、聞こえてきた三人の声に顔だけ後ろを振り向けば、ソラとエリナ、それと…ソラを抱きかかえているアクセルが

駆け足でこちらへやってきた。

 

「ステラ、エリナ…アクセルさん…」

「…ッ!! ジョースター卿!」

「フー、見るな!」

 

重傷を負い、まさに命の灯が消えかかっているジョースター卿を目にしたエリナは口元を両手で覆い、絶句した。

アクセルは、咄嗟にソラの目を手で覆った…凄惨な光景は、まだ幼い子どもにはショックが大きすぎると判断したからだ。

 

「……エリナさん。すまない…ね。

淑女に…こんなところを見せてしまうなんて…紳士として失格…だな」

 

「喋らないでください! 今、応急処置をします!

誰か包帯を!…医師を呼んでください!」

 

エリナが周りの人達に呼びかける。

すると…ジョースター卿はエリナの手に触れて、優しく微笑みかける。

 

「…嬉しかったよ…ジョジョが…こんなに素敵な女性を妻に選ぶなんて…

もう一人…娘ができる事が…幸せだった」

 

「父さん、その通りです。しっかり! 医師を呼んで来れば、助かりますッ」

「ステラ…ステラ…」

 

ジョースター卿は、目を覆われているソラへ呼びかけた。

アクセルに視線で訴えかけると、彼はジョースター卿の意思を察したのか、ゆっくりと手を離した。

ソラはいきなり視界を解放されて、目をぱちくりさせている。

 

「おいで…ステラ」

 

穏やかな声で呼びかけるジョースター卿に、ソラはとぽとぽと近づいていく。

 

「おじたん、どしたん?」

「ああ…ステラ。君と再会できた事も…嬉しかった…」

「おじたん、まっきゃ(まっか)、いたいん?」

 

ジョースター卿の衣服から滲みでていた血液が、ソラの白いこねこにんの服にべっとりとつき、赤く濡れていく。

彼が怪我をして痛いのだと思ったのか、ソラは両手から癒しの術をかけようとしたが…

 

「ステラ…いいよ」

 

ジョースター卿がそれを止めた。

なんで?とソラはこてんと首を傾げる。

 

「私のこの怪我は…かなり深い。

それを治す為に…小さな君が癒しの魔法をかけたら…君にすぐに…負担がかかってしまう。

そんなこと…ダメだ…君は…例え、血のつながりがなくったって…私の娘なんだから…」

 

「ジョースター卿…(フーのために…自ら治療を拒むのか…ッ)」

「父さん…ッ」

 

「エリナさん…これを貴女に…」

「これは…」

「径が小さいので…小指にしていたが…なくなったジョジョの母…私の妻の指輪…だ…どうか受け取ってくれ…」

 

ジョースター卿はジョナサンの手を借りて小指から指輪を外し、エリナへ渡した。

ごほごほっと咳をするジョースター卿に、ジョナサンは手を握る力を強める。

 

「くそっ、俺がついていながらナイフを防げないなんて!」

 

スピードワゴンは何もできなかった己自身に悔しさを滲ませている。

 

「わ、わしの責任だ!…わしが奴の父親を流島の刑にしてれば…こんな事にはならなかったんだ!」

「ディオ・ブランドーの父親?」

 

中年男性の警部が震えながら言った事に、スピードワゴンが反応する。

 

「あんた…あの男の父親と面識があるのか?」

「ああ…とんでもない悪党だった」

 

アクセルがさりげなく尋ねると、警部は20年前のある出来事を語りだした。

 

ディオ・ブランドーの父親、ダリオはこすずるい悪党だった。

馬車の事故に乗じて、金品を強奪していた時に、ジョースター卿が命を助けてくれた恩人だと勘違いしたようだ。

その際に、ダリオはジョースター卿の妻のペアの婚約指輪を盗んでいて、質屋に売り払おうとしたのを警察に見つかり、ご用となった。

当時、まだ若かった警部は、ジョースター卿にその盗難品を戻したうえで、犯人のダリオと引き合わせた。

 

 

「だが、ジョースター卿はあの男を許した。

それどころか、『この指輪は私が与えたものだ』と慈悲を与えてしまったッ!

あの方はブランドーがおかした罪もすべて受け入れた上で、見逃したんだ…。

そして…その息子さえも養子にしてしまった…。

あの時、わしが奴を流島の刑にしていれば…こんな悲劇は起きずに済んだのに…ッ」

 

 

怒りと悲しみを交えた顔で涙を流しながら、警部は当時の事を強く後悔していた。

警部の話を聴いたアクセルは、やりきれない思いに駆られる。

同時に、ジョースター卿の優しさがこんな形で踏みにじられた事に憤りを感じた。

 

「ジョジョ…ディオを恨まないでやってくれ……私が悪かったのだ…

実の息子ゆえにお前を厳しく教育したけれど…

ディオの気持ちからすると…返って不平等に感じたのかもしれない。

それが彼をこのような事にしむけたのだろう」

 

雨に濡れて倒れているディオに視線を向け、ジョースター卿はさらに続ける。

 

 

「ディオはブランドー氏の傍に葬ってくれ…。

ジョジョ…息子の腕の中で死んでいくというのは…悪くないものだ…」

 

「ダメだ! 父さん、弱気になってはダメだ!」

 

「エリナさん……どうか…ジョジョを…支えてあげてください…」

 

「ジョースター卿…ああ…お義理父様…ッ」

 

 

必死に叫ぶジョナサンと、真珠大の涙を零すエリナ。

そして、ジョースター卿はソラに穏やかに微笑みかける

 

 

「ステラ……もし生まれ変わる事ができたら…今度は…私の…家族になってくれる…かい?」

「うん」

「……ありがと…う……」

 

 

ソラの頭をそっ…となでた直後、ジョースター卿の腕がゆっくりと下がっていった。

ジョナサンは眼をきつく瞑り、エリナもまた両手で顔を覆い、号泣する。

 

「おじたん…」

 

周囲が悲しみに包まれる中、ソラもまた寂しそうにジョースター卿の冷たくなっていく手の甲に

自らの手を重ねた。

 

 

 

【『もやもや』の正体】

 

 

 

雷がピカッと光ったその刹那、アクセルは嫌な気配を感じた。

 

(…なんだ……このじんわり浸食するような…魔の気配は…)

 

 

「死体が…死体が…ディオ・ブランドーの死体がない!」

 

スピードワゴンが、倒れていたはずのディオの死体がない事を発見した。

アクセルもすぐに視線をそちらへ移す。

彼の言う通り、犯人のあの男の死体はなく、石仮面だけが落ちている。

 

「…ふぅ…! もやもや…おる!」

 

急にソラが怯えだした。

彼女が発した「もやもや」という単語に、アクセルの嫌な予感は的中する。

 

「ディオが…生きている…!?」

 

その時だった、割られた窓付近から気配を感じ取ったのは…。

 

「警察の旦那、窓から離れろ―――!」

 

スピードワゴンも同じく危険を察知したのか、近くに立っていた警部に警告した。

その直後、警部の顔がドンッと粘土細工がねじりきられたのように、ぐちゃぐちゃになった。

 

「ワァアアアアッ!!」

「け…警部ぅうウウ!!?」

 

いきなり、惨殺された上司を目にした警察官達の悲鳴が飛び交う。

ジョナサンもその異変に気付き、そちらへ目がいきそうになったエリナを抱き寄せて、

ショッキングな光景を見せない様にした。

 

 

  「UREYYY―――!」

 

 

奇声をだして、窓から一人の男が侵入してきた…殺されたはずのディオだった。

だが、さっきと雰囲気ががらりと変化していた。

 

「まさか…あいつ、本当に人間を捨てちまったのか…!」

「!……おいたのにーたん…!?」

 

アクセルが眉を顰めて苦々しく言い、身構える。

現れた『もやもや』の正体に、ソラは目を大きくさせた。

 

 

 

【To Be Continued… ⇒】

  

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