ふたつのステラ   作:ねことも

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ジョナサン vs ディオの回。

※ふーちゃんの加護で、ジョナサンは普通に戦っています。
※作中で、ふーちゃんがテイルズ系の魔法を披露しています。
  



崩れゆくモノは業火の彼方へ

アクセルは絶句した。

ソラは…ジョナサンといつの間にか形式契約を交わしていた。

エクレシアが契約を交わす際の儀式の手順を、アクセルは一応知っている。

だが、それに至る過程を省略して契約を成立させた事例は初めてだ。

 

(くっそ…何がどうなってんだッ…!?)

 

ありえない事態が連続して頭の整理が追い付かない。

 

「ディオ!」

 

ジョナサンは素早く駆け出すと、拳を構えてディオの顔に目掛けて打ち込んだ。

 

「ッ! ぐはっ!」

 

突然の現象に気を取られていたため、ディオはその攻撃を回避できずに諸にくらってしまった。

顔面を強打されるや、壁を激突してしまう。

派手に壊れた壁から粉塵が飛び出る。

 

「く…くくっ…」

 

五秒立たない内に、見えない砂埃の中からディオは笑いながら出てきた。

 

「この様な単調な打撃…俺にはきか…ぐっ…!

 

だが、ジョナサンの攻撃を馬鹿にしていたディオが口から盛大に吐血した。

再生能力ですぐに回復するはずの顔面も、治るスピードが遅くなっている。

 

(ど、どういう事だッ…! これは…)

 

「この力は…」

 

内心動揺するディオと同じくらい、ジョナサンも驚いている。

先刻まで全く歯が立たなかったディオに、ダメージを与える事ができたのだ。

 

「ならもう一発…」

「くっ! 図に乗るんじゃあないぞ、ジョジョォオオオ!!」

 

構えるジョナサンに、ディオは激昂して瞬時に背後へ回って背中を突き刺そうとした。

 

「…! ふんっ!」

「なっ…!?」

 

しかし、ジョナサンは彼の動きをあたかも読みとったように、彼の鋭い凶器と化した右手を両手で掴み、そのまま勢いよく背負い投げした。

床に叩きつけられるディオは、すぐさま起き上がろうとするが、大聖堂の大鐘を鳴らしたかのような頭痛と共に、全身が痺れて上手く動かせずに硬直してしまう。

 

「…ぐっ…き、さま…何を…した」

「見える…ディオの動きが…分かる」

 

信じられないと目を見開き、己の利き手を見つめるジョナサン。

これが…エクレシアとの契約により、授かった『力』なのだと改めて認識した。

 

「ハァッ!」「くぅっ…!」

 

一瞬の隙をついて、ディオが鋭い指先でジョナサンの首へ突き刺そうとしたが、ジョナサンは間一髪回避した。爪先が頬に掠り、傷口からドピュッと少量の血が吹き出す。

 

「どうしたぁ、ジョジョォオオオ? さっきのはまぐれだったのかァアアアア!」

 

ディオは間髪入れずに、ジョナサンの首や心臓部を狙って攻撃を繰り出していく。

それに負けじと、ジョナサンもかわしていくもののなかなか反撃ができない。

 

「無駄、無駄、無駄、無駄、無駄ぁああ!!」

 

ディオの猛攻をかわすだけで精一杯のジョナサン。

その時だった…

 

「ふぅ~♪ るぅ―――♪♪」

 

耳元に、なんとも不思議な…気の抜けるような歌が聞こえてきた。

 

「しゃー♪ とぉー♪♪」

 

ジョナサンがその方向を見上げると、空色の光翼で浮かんでいるソラが唄っていた。

歌詞の意味は分からない。

けれど、その歌はジョナサンの胸に淡い懐かしさを広げていき…同時に不安と恐怖の

気持ちが少しずつ洗浄されていく。

 

「はあっ!」

 

ジョナサンは、足を高く上げてディオの頭部から肩にかかる部分へ回し蹴りを食らわした。

 

「ぶごっ…!」

 

その蹴り技が見事的中し、ディオは床へ伏してしまう。

心なしか、先程よりも攻撃力とスピードが上がったような気がする。

 

(もしかして…ステラが…!)

 

ジョナサンの予想は的中していた。

 

(あれは…歌詞はてんで適当だが、神術の一つだ)

 

アクセルは、敵の動きを注視しつつも味方であるソラの行動も観察していた。

ソラは唄っている…いや、正確に言えば術を発動させている。

 

あれは、エクレシア等が使用する高位の神術の一つである【ホーリーソング】

術者によって、歌詞の内容には差異があるが、【ホーリーソング】には、術者の味方となる対象者の攻撃力と防御力を上昇させる効力がある。

さらに、熟練者のレベルとなると歌に術者固有の力が加わり、敵から受けた攻撃による異常を浄化したり、広範囲の回復術となったり…進化するという。

 

(けど、コゼットから聞いた話じゃ…ふーはまだ簡単な治癒術しかできねえはずだ。

一体いつ…? どこであの術を覚えた?)

 

行方不明となっていた半年(この世界の時間軸だと七年)の間に…ソラに『何かがあった』。

漠然とだが、その仮説がアクセルの頭に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

(…くッ…ウソだ…『力』を手に入れたはずのこのディオと…対等に戦えるだと…!)

 

石仮面で圧倒的な力を得たはずなのに、ディオはジョナサンと徐々に差を縮められていく。

ジョナサンへの攻撃の手を止めぬものの、ディオは内心、焦りを感じつつあった。

 

 

(ジョジョォオオオ…やはり、さっきのあの忌々しい光は、ステラとの間に何かしたのだなぁ。

おそらく『アレ』は儀式の一種!

このディオが石仮面を使ったように! ジョジョもまた、ステラから力を…加護をもらった!)

 

 

ディオはその優秀な頭脳から、その答えを導き出した。

 

「もー♪ みぃー♪♪ のぉー♪ きぃー♪♪」

 

ディオはハッとした。

ジョナサンの方へ集中していたため、肝心のもう一人のキーパーソンであるこねこにんを

見逃していた。

 

気の抜けるようなヘンな歌を唄っている?

いや、違う!

おそらく、あれは魔法の一種だ。

 

(つまり…ステラ自身の唄がジョジョの力の根源。アレさえ絶てば…!)

 

ギロリと視線をソラへと移したディオ。

 

「ふぅ…!」

 

自らへ向けられた殺気に、ソラはビックリする。

目の前にとても怖い存在が現れたら、子どもなら怯え泣き出すはずなのに…

 

「ぴこはん!」

 

ソラは唄うのを止めると、両手を上げて別の技をディオに対してお見舞いした。

すると、ディオの頭にぴこっ!と可愛らしい音を立てて、ピコピコハンマーが直撃した。

 

「フン、こんな子ども騙しの技など効かんぞ!」

 

どうやら…効果はいまひとつのようだ。

しかし、ソラはそんな事お構いなしにディオに目掛けて攻撃を繰り返す。

 

「ぴこはん! ぴこはん! ぴこはん!」

 

ディオの肩や足のつま先…その他、身体全体にぴこぴこっ!と小さなピコピコハンマーが

降り注いでいく。

 

(ふーのヤツ…あんな術も使えるのか)

 

ソラの身の安全を守るために、狭間の闇を使用して二階へ移動したアクセル。

先程の【ホーリーソング】だけでなく、攻撃魔法まで取得しているようだ。

 

(…ていうか、きちんと敵だけに攻撃してる所が何気にすげーな)

 

戦っているジョナサンはその攻撃の対象にせず、ディオ限定でピコピコハンマーの雨を

降らしている。いつのまに、あんな器用な戦い方を覚えたのやら…。

 

「子どもの相手はいい加減飽きた…お遊びは終わりだ」

「…!? ステラ!!」

 

ディオが標的を完全に変更した事を察したジョナサンは、大声でソラへ呼びかける。

 

「上へ逃げるんだ! もっと飛んで!」

「あい!」

 

ジョナサンの呼びかけに答えるように、ソラは空色の光翼を羽ばたかせて上へ上へと

昇っていく。

 

「くくっ…さっきの火傷はステラの命を吸い取って治す事にしよう。

それからジョジョと赤毛野郎を殺す!

…逃げた二人も見つけ次第、片づければ 全ての証拠を消え、このディオの完全勝利となる!!」

 

ディオは壁にバゴッと足を突き刺す様に立てた。

そして、壁をドス、ドスッと音を立てて穴を開けながら徒歩で上へと向かう。

 

「させるか!」

 

アクセルが、チャクラムをディオへと投げつける。

 

「ぐっ…邪魔をするな!」

 

チャクラムは、ディオの背中に突き刺さるも、ディオはそれを抜き取ってブンッと投げ返した。

勢いよく返ってきたチャクラムが、アクセルの真横を通過し、壁に突き刺さる。

 

「やべぇな、早くふーの所へ行かねぇと…」

「アクセルさん!」

 

急いで闇の回廊を出そうとしたアクセルを、二階へ駆けつけたジョナサンが呼び止めた。

 

「お願いがあります」

「ジョジョ?」

 

「ステラは、僕が必ず守ります。

…だから、貴方にやってもらいたい事があるんです」

 

「…何をすりゃいいんだ?」

 

ジョナサンは決意を決めた表情でアクセルに懇願する。

アクセルは目を細め、彼の願いを聞き返すと…

 

「――――‟    ”」

「!? 正気かよ…」

 

ジョナサンが言ったその申し出に、アクセルは耳を疑った。

 

 

 

 

 

一方、ソラはジョースター邸の屋根へ通じる窓を通って、外へ出ていた。

雲で覆われた闇空を、ソラは光翼を広げたまま見上げる。

 

「すーてーらぁあああ!」

 

「…ふぅ!?」

 

屋根を突き破り、ディオは現れた。

ソラはさらに空中へ上昇し、ディオから遠ざかろうとする。

 

「さぁ、ステラ…鬼ごっこは終わりだ。大人しくお前の生命力をこのディオに捧げろ」

「やっ!」

 

ソラはむーと眉を潜めて拒否すると、ピコピコハンマーを召喚して、ディオへ投げつける。

 

「ぐぅ…逆らう者は、女子どもであれ容赦せんぞ!」

 

落ちてくるピコピコハンマーを素手で払っていきながら、ディオはバネのように膝を伸ばして、

ソラを捕まえるため、飛び上がろうとした。

 

その時…彼の行動を制止する声が響く。

 

「ディオ!」

 

ソラと同じく、窓を潜り抜けてジョナサンが現れた。

 

「じょーちゃん」

 

親友であるジョナサンの登場に、ソラは嬉しそうな顔になる。

ジョナサンは、背後からディオを羽交い絞めして動きを止めようとする。

 

「ディオ! 僕が相手だ!」

「チッ…邪魔をするなぁ!」

 

ディオは、ジョナサンの足を踏みつけ、拘束を解いた彼の腹部にすかさず肘鉄を入れた。

バキバキッと骨の折れる音とともに、ジョナサンはうっ…と口から吐血してしまう。

 

「クハハハハッ! 肋の5~6本は折れたか―――ッ!」

 

高笑うディオに、ジョナサンは額から汗を流し、鋭い痛みに胸を抑えながら片膝をついてしまう。

 

「エイイッ、貧弱、貧弱!」

 

「じょーちゃん!」

 

ソラが、負傷したジョナサンのもとへ行こうとするが、その前にディオが立ちはだかる。

 

「さぁ…ステラ。とっとと生命力をよこせ!」

 

(…痛い…視界がぼやけてくる…)

 

ジョナサンは激痛で意識を失いそうになる。

 

「ぶぅー! おいたのにーたん、しっし(おいたの兄ちゃん、邪魔だからあっち行って)!!」

 

だが、その時…ソラの必死の声が耳に入った事で、ジョナサンの脳裏に記憶が蘇っていく。

 

…幼いステラとの出会い。

 

…父との思い出。

 

…ディオが邸にやってきた時の事。

 

…エリナとの初恋の事。

 

…エリナとステラ、ダニーの前で、誓いを立てた時の事。

 

…エリナとステラがいなくなり、仮初とはいえディオと育んできた友情。

 

走馬灯のように駆け巡った、ジョナサン自身が辿ってきた過去の…思い出が彼の意識を

覚醒させた。

 

(そう…僕の青春は、ディオとの青春…僕は…その青春に決着をつけるんだ!)

 

痛みを堪えつつも、ジョナサンは徐に立ち上がり、ソラを捕まえようとするディオの背後へ

近づいていく。

 

 

「ディオおおおお!」

 

 

ソラに気を取られていたために、反応に遅れたディオ。

ドオガッという音が立ち、自ずと視線を左脇腹に向けるとナイフが突きたてられていた。

 

「URYYYYYY!」

 

「このナイフは…君がとうさんに突き立てた凶器だ」

 

ナイフを刺した脇腹部分からシュッ~と煙が立っている。

ディオは叫び声を上げながらも、ナイフを抜き取ろうとする。

だが、その直後に屋根のあちこちから煙が噴き出した。

 

「ふぅ!?」

「なんだ…と……!」

 

屋根が紅色に染まっていき、黒交じりの煙が出現した事に驚くソラ。

この異変に、ディオも目を見開く。

 

…屋敷が燃えている。

瞬く間に業火に呑みこまれているのは何故か…?

ディオが疑問に回答を導き出すその直前、ジョナサンが全体重をかけてタックルをかけてきた。

 

「き、きさま…! まさか火をつけたのは…!」

 

ベゴンッ!と屋根を突き破り、ディオは真っ逆さまに降下していく。

壊れた屋根の骨組みにしがみつきながら、落ちていく義理の兄弟を悲しげに見つめる

ジョナサン。

 

 

 

 

 

(おのれぇえええ! 邸に火を放ったのは十中八九、あの赤毛野郎だ!

ジョジョめ…こちらの回復力を目にして考えたのだな…

再生が追い付かない程の強い火力でこのディオを葬り去ろうと…ッ)

 

ジョナサンの策略に、ディオは腸が煮えくり返る。

しかし、すぐに口角を吊り上げた。

 

(だが、ツメが甘い…!

一階のフロアへ激突する前に、壁を利用して軌道を変えれば…)

 

ディオは先程同様に、壁へ足を突き立てようとした。

だが、彼は気付いていなかった。

己の身体に変調が生じている事を…。

 

「なっ…か、身体に力が…入らんだと…!?」

 

足を動かそうとしてその異変に初めて気付いた。

足をはじめ、指、手、腕…まるで、全身が糸の切れたマリオネットのように力が入らない。

 

「…もしや…ステラの…!」

 

ディオの頭に、先程ソラが仕掛けてきた子ども騙しの魔法が浮かび上がる。

彼の推測通り…その状態異常はソラの術が原因だった。

 

ソラが、集中的にディオに対して放った術は【ピコハン】

小さなピコピコハンマーを敵に投げつける、攻撃魔法の一種だ。

弱い敵なら気絶させる事も可能だが、強い敵にはあまり効果がないのが欠点でもある。

 

しかし、それはあくまで単発の場合。

【ピコハン】は使い方次第で、大きな効果を発揮する。

例えば、敵の頭上に…同じ個所に何度も攻撃を仕掛けていく。

単発では効果がいまひとつな術でも、連続して使用すれば、その威力が強まっていく。

 

 

『もしも、強いコワいヒトが君や大切な友達を傷つけようとしたら、この魔法を

何度もぶつけるんだ』

 

 

ソラは、ハーパルが教えてくれた通りにディオへ【ピコハン】を投げつけた。

…怖い敵から身を守り、大事な友達であるジョナサンとアクセルから遠ざけるために。

 

【ピコハン】を全身にほぼ受けたディオの身体は、石仮面による変異と肉体強化により、

当初はダメージはないに等しかった。

しかし、徐々に回数を重ねていく事により、じわじわとその効果は浸食していった。

その結果、ディオは全身の力が奪われてしまい、硬直状態へ陥ってしまったのだ。

 

「ぐぉおおおお!」

 

ディオは咆哮をあげながら、重力に従って落下していった。

 

 

――――ドガッ…バゴズブ…!

 

 

さらに落下地点には、ジョースター家の守護神である慈愛の女神像が設置されていた。

女神像が持つ槍部分に腹部が深々と突き刺さってしまう。

燃え盛る炎は容赦なく、ディオの身体を焼き尽くしていく。

 

「ギャアアアア! 炎がァ…炎がァ…!?」

 

「どうやら、ジョジョはうまくやったようだな」

 

腹部を突かれ、炎でもがき苦しむディオを玄関付近から、アクセルは冷めた表情で見つめた。

 

「お前を倒すために、ジョジョから『生まれ育ったこの家を焼いてくれ』って頼まれた時は

それこそ耳を疑ったぜ。だが…そうしなけりゃ、お前を倒せねえって考えた上でのあいつなりの

苦渋の選択ってのもすぐに分かったけどな」

 

アクセルは翡翠色の目を鋭利に細めながら、喚くディオを睨み付ける。

 

「実の子どものように愛情をもって育ててくれた義理の父親を殺してまで、

そんなに地位と金が欲しかったのか?

欲に溺れて、人を捨ててまでお前は『その力』が欲しかったのか?」

 

「う…るさいぃいい…き、さま…にぃ…何が分かるゥウウウ!?!!!」

 

「知るかよ。人の気持ちは…心ってのは、本人にしか分かんねえものだからな」

 

だが、これだけは言えるぜ…とアクセルは言葉を続ける。

 

 

「ディオ・ブランドー…例え生き延びたとしても、お前は絶対にジョナサン・ジョースターには勝てない。『本当に大事なモノ』を理解できないお前には、一生敵わねえよ」

 

「…ぐっ、そぉおおおおお!」

 

 

ディオは悔しさと屈辱のあまり、大声で叫ぶ。

 

「ジョジョォオオオ! ステラぁあああ!

俺は…お…れ…は…不…老…不…死ィ…こんな…はずでは…」

 

炎に包まれながらも、ジョナサンとソラへの執着とこの世への未練を口にするディオ。

再生力が追い付かない程、皮膚は瞬く間に溶けていき、灰へと化していく。

ディオの末路をアクセルは自らの目で見届けると、闇の回廊でその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

「じょーちゃん、らいじょぶ(大丈夫)?」

 

なんとか踏ん張って屋根の上へ戻ってきたジョナサンに、ソラは心配そうに近づいた。

 

「…ん、もう…大丈夫だよ…イッ…!」

 

ジョナサンは安心したからか、負傷した肋骨の痛みが再発した。

彼の様子を目にするや、ソラは光翼をしまって、すぐにジョナサンの胸のところを両手で

ぽふぽふと軽く叩いた。

 

「いたいたい、もっととんでけ~」

 

ソラの掌から白い光の粒子がジョナサンの全身を駆け巡り、パァンと何枚もの具現化した羽と

共に弾ける。痛みがすぅーと消えていく感覚に、ジョナサンは自ずと利き手で胸を撫でる。

 

「ありがとう…ステラ」

「どーも」

 

ソラに御礼を言ったのも束の間、屋根の所々で炎が噴き上がってきた。

 

「じょーちゃん?」

「いけない…此処から早く離れなければ!」

 

『その通りだ』

 

ソラを抱きかかえて、怪我をするのを覚悟して地上へ降りようとしたジョナサンの耳に

聞き覚えのある声が伝わる。

 

「待たせたな」

「アクセルさん!?」

「あ、あくたん」

「時間がねえから、俺の手を握れ。飛び降りるよりもリスクは少ないからよ」

 

アクセルの言うままに、ジョナサンは空いている手で彼の手を握った。

すると、数秒も立たない内に屋根から地上へ降り立っていた。

 

「い、一瞬で…一体、どんな技を使ったんですか?」

「一種の裏技みたいなもんだ。細かい事は企業秘密…記憶したか?」

 

トントンと頭を人差し指で叩きながら、アクセルはあまり深くは訊くなよ、と一笑して言う。

 

「そ、そうですか…分かりました」

 

あまり追求しない方がいいと察したのか、ジョナサンは素直に首を縦に振った。

 

「じょーちゃん」

 

すると、名を呼ばれてジョナサンは抱きかかえているソラに「なんだい?」と聞き返すと…

 

「おうち…ぼーぼー」

 

燃え盛るジョースター邸を見ながら、ソラは寂しげにそう言った。

ジョナサンも改めて、既に炎で覆われた生家を見つめる。

彼の目尻に涙が浮かび上がっているのを、アクセルは気付くも言葉には出さずにおいた。

ジョナサンは目を伏せて被りを振ると、小さく呟いた。

 

 

「…さようなら」

 

 

その別れの言葉は、誰に向けて言ったのか…?

殺された父親か、生まれ育った邸にか、それとも…袂を分けてしまった義理の兄弟、

ディオに対してなのか。

 

その答えは、ジョナサン本人にしか分からない事だ。

 

「…じょーちゃん」

「大丈夫だよ、ステラ。もう…だいじょうぶ」

 

ソラの頭を撫でながら、ジョナサンは穏やかに告げる。

…あたかも、自分に言い聞かせるかのように。

 

悪夢のような、恐ろしくも悲しい事件はこうして幕を下ろした。

ジョナサン・ジョースターをはじめ、その現場に居合わせた人達にとって、一生忘れられない

記憶を刻み付けて…。

 

 

 

【崩れゆくモノは業火の彼方へ】

 

 

 

「ジョジョ…ッ! ステラ!」

「ジョースターさーん! キティィいい!!」

 

重なる二人の男女の声に、ジョナサン達は後方を振り向くと…複数のダスク達に警護される形で、

エリナとスピードワゴンが駆けつけた。

 

「エリナ!」「すぴしゃんだ!」

 

彼等の元へ歩み寄るジョナサンとソラ。

泣きじゃくりながら、ジョナサンとソラの無事を喜ぶエリナ。

三人が無事に再会できた様子を眺めているアクセルに、スピードワゴンが恐る恐る尋ねた。

 

「…ディオは…あの化け物はどうなっちまったんだ?」

「あの大火と共に灰になったよ」

 

アクセルの返した答えに、スピードワゴンは「そうか…そうか…」と安堵と歓喜から涙を流す。

対照的に、アクセルは硬い表情を崩さないまま、壊れゆくジョースター邸へ視線を移す。

 

「…終わり、だよな」

 

おぞましい事件が終わったのだと感じつつも、彼の中でスッキリしない感覚があった。

敢えて、それに蓋をする形で…アクセルはもう二度と同じ悲劇が起きない事を強く願った。

 

 

 

 

【To Be Continued… ⇒】

  




※ジョナサンは戦うスキル(未完成)を開花させた!

※ふーちゃんは新技を披露した!
  
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