ふたつのステラ   作:ねことも

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ふーちゃんsideはほのぼの回。
一方、アクセルとロクサスはある人物と遭遇する。
  


平穏な一時の裏側で…

 

仲間からの連絡で、アクセルが動揺していた頃…

ソラはジョナサンの右肩に乗っかり、移動していた。

 

「とまぁーとぉー♪」

「ふふふ、ステラは唄うのが大好きね」

 

まったりした顔で、どこかの外国語で歌うソラにエリナは微笑む。

 

(…夢みたいだ、いや…現実になったんだ)

 

ソラとエリナ…七年という長い月日を経て、ジョナサンは親友と思い人と再会する事ができた。

ディオとの確執による凄惨な事件、最愛の父の死…

辛い出来事が続いた事もあり、穏やかで平穏なこの一時が何よりも愛おしく感じてしまう。

 

(それなのに、なぜだろう…? 心が落ち着かないなんて…)

 

もう、悲劇を起こす元凶はいなくなった。

それなのに、幸せな気持ちに包まれる一方で、小さな波が不規則に押し寄せるようにざわりと

ジョナサンの胸を刺激してくる。

 

(…まるで、嵐の前の様な静けさ。これから何かが起きるような胸騒ぎ…)

 

脳裏に、おぞましい姿と化した元は人間だったゾンビ達…

その後ろに強大な魔物と化したディオの姿がよぎる。

背筋に冷たいものが走る。

 

「じょーちゃん」

 

その時、ソラが声をかけてきた

ハッとした顔で、ジョナサンは右肩にいる小さいこねこにんに目を向ける。

 

「どしたん?」

 

ソラが眉を下げて尋ねてきた。

自分の不安な感情が顔に出ていたのか…それを感じ取ったのかもしれない。

 

「ううん、なんでもないよ」

 

この子やエリナに心配をかけたくない。

 

(…いけない、早く忘れないと…)

 

折角の楽しいティータイムの時間が台無しになってしまう。

ジョナサンは笑って取り繕い、恐怖を打ち消すよう努めた。

 

「ジョジョ」

「なんだい? エリナ」

 

「アクセルさん、まだ来ないわね。

さっき、不思議な音が聞こえていたけれど…何かあったのかしら?」

 

エリナが頬に手を添えて小首を傾げながら言う。

彼女の言う通り…おかしな音が響いてきた時に、アクセルは面倒くさそうな顔を浮かべていた。

動揺したり、焦っていたりしている訳ではなかったので心配はないが…。

 

「大丈夫だよ、アクセルさんは」

 

ディオとの戦いの時に、アクセルの強さを目にしていた事もあり、ジョナサンは落ち着いていた。

仮にチンピラ風情に絡まれていたとしても、アクセルの敵ではない。

ジョナサンの脳内では、アクセルが指をパチンとしてチンピラの頭を一瞬でごわごわアフロヘア―にして追い返すコミカルな場面が展開されていた。

 

「アクセルさんは強い人だからね。炎を操る魔法を使えるんだ」

「そういえば…」

 

エリナは思い出した。

あの化け物となった元警官を一瞬にして炎で包んで倒してしまった事を…。

 

「アクセルさんは…魔法使いなのかしら?」

 

エリナの頭の中では、グツグツと泡が吹いた大きな鍋に色んな材料を入れて、怪しげな薬を作る

アクセルのイメージが浮かんでいる。

ここにアクセルがいたら「ちげーよ、そんなん作るのは別の奴の担当だから」と手を左右に振って即座に否定しているだろうが、生憎と当の本人がいないため撤回しようがない。

 

「まだ分からないけれど…その可能性はありそうかな」

 

生まれ持った力なのか後天的に習得したものなのかは不明だが、あの炎の魔法は強力だった。

 

(僕もステラから加護をもらったけど…

どんな能力なのか、まだ解明できていない)

 

なにせ、授かった当初は命がけの戦闘の最中だった。

体の中から力がみなぎり、異常なまでのディオの動きを感知し、攻撃を読み取りながら

対抗できた。

 

(あの時は必死だったからな…)

 

よくあれだけ対応できたと思う。

逆に非常事態だったから、能力を開花させられたと考えるべきか。

 

(…もう少し落ち着いてから、この力を検証してみよう。

新しい発見があるかもしれない)

 

「ジョジョ、着いたわよ」

 

エリナの言葉で、ジョナサンは思考の中から意識が現へ戻った。

視界に映るのは、子どもの頃はよく遊びに来ていた川辺だった。

 

「懐かしいな。よくここで遊んだよね…」

 

水面を反射する陽の光が少し眩しい。

瞬きして、透明な川の水を見ると…ジョナサンは微かに目を見張る。

何故なら、そこには…少年時代の自分自身の姿が映っていたのだ。

 

(もしあの頃、ステラと出会わなければ、どうなっていたんだろう…)

 

もしもの仮説が頭をよぎる。

その中には想像したくない出来事さえも、浮かんでしまった。

 

「見て、ステラ。お魚が泳いでるわよ」

「わぁ~」

 

エリナに抱きかかえられ、ジョナサンの肩から降りたソラはキラキラと光が反射する川の中にいる魚を楽しそうな顔で見ている。

そんなこねこにんの様子を見ながら、ジョナサンは口元を緩める。

 

(ステラがいたおかげで…今の僕がいるんだ)

 

いつまで傍にいられるか分からない。

人よりも成長が大分遅いソラが大人になる頃には、ジョナサンとエリナは天に召されている

はずだ。

 

それでも、生きている間はこうやって三人で思い出を作っていきたい。

再び、ジョナサンが川の水に視線を戻すと…そこに映っていたのは現在の自分の姿だった。

そして、エリナとソラも…三人一緒に。

 

(ステラ、大人になっても…僕とエリナの事を忘れないでね)

 

自分達との思い出がずっと、ソラの記憶に残るように…。

ジョナサンは、その願いを叶えるために三人で過ごすこの時間を大切にしていこうと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

『それで…他の方法は試してみたのか?』

「ああ、やってみてるよ。…電話が通じた事は幸いだ」

 

アクセルは携帯を耳に押し当てて、連絡相手…サイクスに状況を報告する。

闇の回廊が使用不可となった異常事態。

それは即ち、外の世界への行き来を何者かが遮断したという事だ。

 

アクセルは緊急事態に直面するや、すぐさま行動をとった。

所持している通信機…携帯の使用が可能か否か。

幸いにも、携帯の電波は組織の本拠地に届いた。

そして、副官であるサイクスに事の次第を報告している最中である。

 

「よかったぁ~…ダスクとアサシン、出てきた」

 

連絡をしているアクセルの近くで、ロクサスが配下ノーバディを呼び出せるか試していた。

結果は…問題なさそうだ。

 

『なるほど…現時点では、こちらとの通信手段と配下ノーバディの召喚は支障ないと』

「ああ、今は闇の回廊が使えねえだけで済んでるが…どうなるか分からねえな」

 

相棒が、自分専用の携帯を取り出してメールを打っているのを横目で見ながら、アクセルは

難しい顔で答える。

 

「…シオンに連絡しとかないと。よし、送信完了!」

 

もしかしたら、時間が経つにつれて今使える術さえも不可能になるかもしれない。

どうにかして、早急に原因を突き止める必要がある。

 

『また状況が判明したら、連絡をくれ』

「分かった…」

 

一旦、連絡を終えたアクセルはハァ…と溜息を吐いた。

 

(ったく…なんでこう次々と厄介事が舞い込んでくるんだよ)

 

…この世界は何かがおかしい。

思えば、いくつかの不自然な点があった。

時間の不規則かつ急速な進行、ソラが戦う術を身に着けていた事…そして、今回の件。

 

それらを線で繋げる事で、アクセルはピーンときた。

おそらく、一連の出来事の裏で暗躍していたのが、この世界の秩序を守る者であると。

 

(…そうなると、ますます分からねえ。

そもそも、この世界の管理者達はなんで俺達を閉じ込めたんだ?)

 

13機関は、かつて世界を混乱に陥れた過去がある。

世界の秩序を守る側となった現在でも、組織を危険視する声は少なくない。

もし、犯人が世界の管理者であるなら、アクセル達を逆に強制的に離脱させる手段を取るはずだ。

 

浮かんだ疑問を独自に推測していき、アクセルはある結論に辿り着く。

…もしや、自分達は知らない間に、非常にまずい状況に首を突っ込んでいるのではないか?

 

姿が見えざる者の突然の介入もあり、アクセルの中では猶更、その推論が確信に近いものに

なりつつある。

 

「えぇ~…」

 

その時、メール画面を見ていたロクサスが残念そうな声を漏らした。

 

「どうした?」

「シオンから返信がきたんだけど…」

 

 

《 今日の夕食はカレーライス。

デザートはコゼットさんのところで買ったシュークリームだけど…

食べられなさそうだね…。

 

日持ちしないから、また今度買うね。

…二人とも気を付けて! 》

 

 

その内容を読んだアクセルは、マジかよ…と大いに眉を顰めずにはいられなかった。

なんでこんな時に限って、好きなメニューと美味そうな定番スイーツが夕飯と食後のデザートになってしまうのか。タイミングの悪さに、ガクッと肩を落としてしまう。

 

「なぁ、今日…野宿かな?」

「あー…路銀はあるから、宿には泊まれるだろ」

「そうだな…」

 

うーん…と腕を組んで、難しそうに唸るロクサス。

相棒が悩む横で、アクセルはふとソラ達の事を思いだした。

 

(そろそろ行かねえとまずいな…)

 

そういえば、エリナがお菓子を持参していた。

まだ残っているなら…分けてもらおう。

 

「ロクサス、ちょっと付きあ…ッ!?」

 

折角だから、ロクサスも連れて行こうとしたその時だった。

アクセルは周囲の空気が一変した事を察知した。

 

「アクセル、上…!」

 

ロクサスも同じく異変に気付いたようで、空を指さした。

視線をそちらへ向けると、天高く飛行している小鳥数匹が羽を広げたまま、固まっていた。

…まるで、時が止まったかのように。

 

「…気を抜くな。敵は近くにいるぞ」

 

アクセルは真剣な顔で辺りに視線を巡らす。

彼の言葉で、気を引き締めたロクサスも愛用の武器であるキーブレードを取り出して構える。

 

(やれやれ…物騒な物を持っているな)

 

「「!?」」

 

突如、聞こえてきた見知らぬ声に二人はさらに警戒心を強める。

 

「こちらだ」

 

アクセルとロクサスは、その声がした方向へパッと視線を集中させる。

一人の男性がいつの間にか、そこに立っていた。

黒い聖職者の衣装を着た、顎鬚の30代位の男性。

しかし、纏う気配は人間ではない…只ならぬ異質な存在である事は間違いない。

 

「はじめまして、狭間に属する者達」

「…なーるほど。あんたが仕掛け人ってわけか」

 

アクセルは両手からチャクラムを召喚した。

 

「俺達を閉じ込めたのは…おじさん?」

「閉じ込めた、か。…まあ君達の視点からみればそう感じるのは当たり前か」

「俺達の視点…?」

 

男性の言葉に、ロクサスは首を傾げる。

 

「あんた、何者だ?」

「この世界の秩序を守る者だ。…名はハーパルと言っておこう」

 

鋭い目で問いかけてきたアクセルに対し、男性…ハーパルはごく自然な感じで自己紹介を含めた

回答を返した。

 

「狭間に属する者達…いや13機関と呼べばいいか」

「…なんだよ」

 

「今度はこちらの質問の番だ。

…君達は、この世界に何の目的で降り立った?」

 

ハーパルは、淡々とした口調で質問を投げかけてきた。

だが、先の飄々とした雰囲気から一転、逃げるのを良しとしないと言わんばかりの凄みがある

顔に、アクセルは一瞬気後れしてしまう。

相手の気圧に負けじと、アクセルも睨みを利かせていると…

 

「俺達は、小さい女の子を探しに来ただけだよ」

 

そんな剣呑な空気を変えたのが、ロクサスだった。

 

「人探しをするため?」

「うん、その子を探している人がいて…早く帰してあげたいんだ」

 

正直に目的を語るロクサスを、ハーパルは訝し気に見つめる。

 

「もし、その子を見つけたらすぐにこの世界から出ていく。

この世界を乱す行為は絶対にしないから…お願いします」

 

ロクサスは深々と頭を下げた。

 

「…相棒の言葉に嘘偽りはない。

目的を果たしたらそれ以上の事はするつもりもない」

 

アクセルは、親友のその行動になんとも言えない顔を浮かべながらもチャクラムを消した。

攻撃しないという意思表示をして、ハーパルの出方を伺う事にした。

 

 

 

「分かった、信じよう」

 

「えっ?」「ん?」

 

二人の言葉を聞くや、ハーパルは意外な反応を返してきた。

ふぅ~と気が抜けた顔でそう告げたハーパルに、ロクサスとアクセルはポカンとする。

 

「安心してくれ、取って食う真似はするつもりはない」

「…マジか?」

「ストレートに言うと、あの組織の指導者であったら別の対応をしていた」

 

続けて言われた言葉に、アクセルは目を見開く。

 

「ゼムナスの事を知ってるのか、あんた…」

 

「有名人だからな…〝色んな意味で”

会いたくもない人物だから、逆に君達でよかったと思ってる」

 

ハーパルのあけすけな発言に、ロクサスは目が点になり、アクセルは顔を引きつらせる。

向かい合う人物は、二人が所属する組織の指導者個人に対して悪感情を抱いているが、メンバー全体を拒絶している訳ではないようだ。

 

「それに…君達はステラの関係者だ。

あの子が認めた人物であれば、邪険にはできない」

 

「あんた、ふーの事を…!」

 

アクセルの表情は再び険しくなる。

ソラの事をちらつかせた。

それにより、ハーパル自身がソラに戦う術を教えた張本人だと明かしたのだ。

 

「言い訳にしかならないが…俺は時期が来れば、ステラを元の世界へ帰すつもりだった」

 

「なら、なんでふーを今まで手元に置いていた?

…最初から、あの子を利用する気だったんじゃねえのか?」

 

アクセルが放つ殺気を、ハーパルは平然とした様子で受け流しながらこう続けた。

 

「そう捉えられても仕方ない。

こちらとて…厄介な問題を抱えていて猫の手を借りたいところだったからな」

 

「問題…?」

 

ハーパルの意味深げな単語に、ロクサスは疑問符を頭に浮かべる。

警戒と困惑の念が浮かぶ二人に対し、ハーパルは口角をあげる。

 

 

「詳しい事情を話そう。

…『巻き込まれる覚悟』があるなら、の話だが」

 

 

 

 

【平穏な一時の裏側で…】

 

 

 

 

「うん、美味しい!」

「うまみー」

 

ジョナサンとソラは、エリナの作ったサンドイッチとクッキーに舌鼓を打っていた。

 

「ふふふ、そんなに焦らなくてもまだたくさんありますよ」

 

七年ぶりに食べるエリナの料理は、とても美味しい。

初めはゆっくり味わっていたジョナサンだが、あまりの美味しさに、食べる速度が進んでしまう。

対して、ソラはもきゅもきゅ…とマイペースに食べながら、エリナに時折口元を拭いてもらって

いる。

 

「久しぶりね…こうやって三人で集まって、食事をするのは」

「あの頃の君のお菓子も良かったけれど、今はさらに美味しくなってるよ」

「まぁ、本当に?」

 

ジョナサンの感想に、エリナは嬉しそうに微笑む。

 

「…これからも楽しみだよ」

「えっ?」

 

「まだ、家の復旧とか財産の相続とか…片づけなければならない問題があるんだ。

でも、それを終わらせたら…君の手料理を毎日食べたいな」

 

ジョナサンが穏やかな顔で、己の願いを口にした。

それは…遠回しなプロポーズでもあった。

 

「ジョジョったら…」

 

頬を紅潮させて照れるエリナに、ジョナサンは朗らかに笑いかける。

二人がいい雰囲気に包まれているのを、ソラはなんとなく察していた。

 

(じょーちゃん、えりちゃん…おはなほわほわだぁー)

 

二人の周りは暖かくて、綺麗な花弁がふわふわ舞っているように見えるのだ。

ソラは嬉しかった。

黒いモヤモヤ(ディオ)はいなくなったし、ジョナサンとエリナも前よりずっと仲良くなった。

 

お日様があって、青い空がどこまでも広がって、時々もこもこと白い雲が漂っている。

こういう日にお外で洗濯物を乾かすのが好きだ、と友達の母親であるコゼットがよく

言っている。

 

ソラも、晴れの日が大好きだ。

外で遊べるし、陽が当たる場所でお昼寝すると気持ちいいから。

エリナのお手製のクッキーを食べながら、ソラは思った。

 

(ふぅ~? だれかおる…)

 

さっきから、人の気配がちらちらしている。

どこかに隠れているのだろうか…?

すると、ソラの前を一匹の紋白蝶が横切った。

 

「ちょーちょー」

 

ソラは目を輝かせて立ち上がると、トコトコと歩いて蝶を追いかけていく。

蝶はひらひらと舞うように飛んでいくと、ある場所に止まった。

ソラも歩を止めて、『そこ』に止まっている蝶を眺める。

 

「こんにちは、こねこのお嬢ちゃん」

 

蝶が止まっている場所は…帽子の上だった。

挨拶してきたその帽子の人物は、丸い模様のついたネクタイをした、髭を生やした

おじさんだった。

 

「だりぇ…?」

 

こてんと首を傾げるこねこにんの頭を、そのおじさんはぽふぽふと優しく撫でる。

そして、そのおじさん…ウィル・A・ツェペリ氏に、ジョナサンとエリナは数分後に

邂逅する事となる。

 

 

 

 

【To Be Continued… ⇒】

  




※アクセルとロクサスは、世界の管理者(ハーパル)と遭遇した!

※ふーちゃんは、ツェペリ氏と遭遇した!



【お知らせ】

※今後は不定期更新となります。
 話が出来上がったら更新していく予定です。
  
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