少年ディオが悪巧みを企む回。
ディオは苛立っていた。
理由は簡単。
つい最近まで情けなく項垂れていたジョナサンが、まるで今までの事が帳消しになったかの如く、明るくなったから。
(チッ…気に食わない)
内心、舌打ちをかました。
そもそも、ディオはジョナサンの事が大嫌いだ。
初めて会った時から、一目見た瞬間から…。
ディオは幼少期、酒浸りの父親に殴られ、扱き使われ、底辺の生活を強いられてきた。
病死した父親に対して憎しみ以外の何の感情もない…むしろ、解放されて清々する位だ。
これまで反吐がでる程の人生を送ってきたディオにとって、ジョースター卿からの
養子縁組はまさに運命を変える絶好のチャンスだった。
“世界一の金持ちになってやる”
その決意を胸に、ディオはジョースター家の門をくぐった。
自分とは異なり、裕福で温かい家族に囲まれて育ったジョナサン。
ぬくぬくとぬるま湯に浸っていただけの甘ちゃんに、ディオの胸に軽蔑と嫌悪の念が
胸を支配した。
この御曹司から、あらゆるものを奪い取ってやると誓った。
家族も、友人も…当主の座さえも。
彼の密かな企みは着実に進行していた。
家も学校も、すべて自分の味方だ。
孤立したジョナサンは、うまくいけば数年でこのまま挫折して自暴自棄な性格へ
陥れる事ができる。
しかし、このところジョナサンの様子が変わった。
うまくはいえないが、何かを決心したような瞳で、これまで以上に物事に対して
前向きに取り組むようになった。
テーブルマナーも、勉強も、運動も…それでも、ディオには劣っているけれども、
着実に成果を伸ばしている。
(あいつ、【味方】でもできたのか?)
ありえない。
学校の生徒の大半は、ディオに魅了されている。
そうなると…外部の人間か。
推理をしながら、階段を下りていると、メイド達が小声で秘密話を囁き合うのが
耳に入る。
『ねぇ、今日はあの妖精の子、くるかしら』
『前にきたのは一週間前だったわね、そろそろじゃない』
『あの子みてると癒されるのよね~。
旦那様も、養子に迎えたいって仰ってるくらいだもの』
妖精…ジョースター卿のお気に入り…。
聞き逃してはならない単語だと瞬時に察した。
『ジョナサン様も、妹のように可愛がっているものね。
あのこねこの妖精さん』
その言葉が、ディオが抱いていた疑問のパズルにピースを埋めた。
「なるほど…その妖精があいつの味方、か」
ニヤリと企みの笑みを浮かべ、ディオは次の標的に狙いを定めた。
【悪の貴公子】
その頃、ジョナサンはいつもの川辺で、ソラと一緒にいた。
「ねぇ、君の名前をきいていいかな?」
「ふーたん」
ソラはそう答えた。
「ふぅ」というのは、彼女の本当の名前ではなくてあだ名じゃあないかな…と
ジョナサンは思った。
別に名前があるのは間違いないが、幼いこの子に聞くのは難しい。
ジョナサンは、こういう判断に悩む状況になった際に、よく父親の言葉を思い出す。
――――逆転の発想をする事を。
「だから僕はこう考えたんだ。
『名前はもうひとつあってもいいんじゃあないか』、てね」
「ふぅ~?」
「これは、君と僕が友達だという証にしたいんだ。いいかな?」
了承を求めるジョナサンに、ソラは少しの間首をこてんを傾げるものの、
すぐに「いーよ」とコクッと頷いた。
「君の名前はね…【ステラ】。イタリア語で『星』を意味する言葉さ」
父さんが持っている本をいっぱい調べていいのがないか、時間をかけて探してみたんだよ…と少し自慢げに語るジョナサン。
「よろしくね、ステラ」
「……しゅてりゃ?」
「ふふ、そうだよ」
新しくつけられた名前を、ソラは同じように口にする。
そんなソラの姿を、ジョナサンは微笑ましく見つめた。
【To Be Continued… ⇒】
そして、少年ジョナサンがオリ主(ふーちゃん)にもうひとつの名前をプレゼントする回。