鬼火の尾、野狐の牙   作:雄良 景

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 あけましておめでとうございます。新年一発目の投稿がこちらです。
 今年はせっせこ妄想を出力していく年にしたいので、頑張っていきます。
 ただ基本的にマイペース更新なのは変わらないので、ご理解ください。

 そういえば最近ツイッターの方もフォローをしてくださる方が増え、ありがたいことです。
 鍵は欠けていないアカウントですので、たまにこぼす裏話や執筆状況を暇つぶしにでもしてください。





かくして日常は流れゆく

 

 

「へえ、そないなことしてはったん。なんやぁ壁に穴やのボールペン(オブジェ)やの増えとったさかい、模様替えでもした思てましたけど…」

 

 

 それにしても、まあよくそんな地雷を踏み抜けられたなと智嘉は疲れた顔をしている桃太郎に感心した。

 ―――――ここは天国、漢方薬局『極楽満月』。そこに訪れていた智嘉は桃太郎からつい最近知ったらしい鬼灯と白澤との確執の始点と、千年越しの進展について聞いていた。

 彼の話によると、なんでも桃太郎が投げかけた軽率な質問により鬼神と神獣の千年越しの因縁に触れてしまったのが始まりらしい。

 あの世では鬼灯と白澤が犬猿の仲ということは周知の事実である。そこに抵触した話題を出すやつなんぞ、鬼灯より位の高いお方か食えないようなやつばかりで、一般モブは触らぬ神に祟りなしとばかりに必死に避けるものだ。

 それを、いくら気になったからといって地獄のナンバー2にペロリと聞いてしまうなんてどんな精神構造をしているのか。さすが英雄頭おかしい。

 特に一番頭がおかしいと思うのはそんな状況下で「じゃあ確認してみませんか」と提案するところだ。どうしてそこからさらに踏み込んだことをしようと思うのか。というか閻魔と鬼灯相手に普通に話しかけてることがすでに結構すごいことだとこの英雄さまはご存じなのか。

 

 

「そういえば、智嘉さんは白澤さまのお弟子さんしてたんですよね」

「ようご存じで」

「あ、はい白澤さまから……あの、じゃあおふたりの仲違いの理由も知ってたんですか?」

「いえいえ、たった今初めて知りましたわ。前々から、なんとなぁく反りが合わなさそな雰囲気出してはったんが、催しが終わった後から急にお互い『あいつが気に食わん』て言い合い始めたさかい、まあ何か、あったんやろうなぁ思うとったけど……なんと、まあ、しょうもな………」

 

 

 やれやれと息を吐く智嘉に全くその通りだと頷き返そうとして、桃太郎はあれ? と首を傾げた。『前々から反りが合わなそう』で『急に気に食わないと言い出した』…?

 …決定的な仲違いが起きたのは千年前だと聞いた。なのに、その言い方だと智嘉さんはそれ以上前からふたりと交流があったみたいでは……

 

 

「しゃあない人たちどすなぁ、男の人って」

「………そう、っすね……」

 

 

 もしかして智嘉さんってかなりの古株なのでは―――――その言葉を飲み込んで、桃太郎はあいまいに頷いた。女性に年齢のことを聞くのは野暮が過ぎる。

 

 

「フーちゃんお薬できたよぉ~って、あれ、ふたりとも何の話してるの?」

「何でもありまへん。それより早ぅ薬ください」

 

 

 話がひと段落したと同時に、袋を抱えた白澤が奥の部屋から出てきた。そして目の前の光景にキョトンとした顔になって智嘉と桃太郎に問いかけるが、智嘉はバッサリと切り捨てる。

 白澤はブスくれた顔になったが、仕方のないことだ。なにせ智嘉がこうして桃太郎と話しながら極楽満月に滞在していたのは、依頼していた薬を取りに来たというのに二日酔いでダウンしていた白澤のせいで薬の受け渡しに時間がかかってしまったからなのだから。

 

 智嘉は獄卒である。スーパー獄卒である。やらなきゃいけないことはたくさんあり、暇なんて基本的にちっともない。なのにどっかの極楽蜻蛉のせいでスケジュールを滅茶苦茶にされれば、そりゃあ対応もそっけなくなる。

 

 差し出された手に仕方ないなあという顔で薬を置いた白澤に「どの面下げてこの野郎」とも思ったが、智嘉は面倒なので黙った。まあ鬼灯が取りに来ていたらこれ以上待たされた上にまたケンカを始める可能性もあったから、智嘉がちょっと待たされたくらいで済むのならまだ平和な方だろう。

 

 

「はい、確かに。ほな(あて)は失礼しますわ」

「はいはい」

 

 

 ひとつふたつと薬を確認して頷いた智嘉は、これでもう用はないとばかりにさっさと立ち去ろうとする。そんな姿に白澤はひょいっと手を上げて、智嘉のおでこに円をふたつ描く。

 むず痒そうな顔をした智嘉はしかし特に文句を言うことも無く、そのまま店を出て行った。桃太郎は慌てて「ありがとうございました!」と声をかけてその背を見送ってから、なんとなく白澤を見る。

 

 

「? どうしたの?」

「あ、いえ、その…あれ、前もやってた『おまじない』ですよね? 毎回やってるんですか?」

「ああ―――――」

 

 

 円を、ふたつ。大きめの楕円をひとつに、その中、真ん中に、まん丸円をひとつ。どことなく既視感を覚えるその『おまじない』。吉兆の印たる白澤直々に施されるとあればご利益はとんでもなさそうだが、だからこそそう何度もするものなのかと疑問に思う。

 

 

「んー……ま! いいんだよぉ、こういうのはしたい時にするものでしょ」

「そういうもんですか…」

「ね、それより僕を待ってる間ふたりで何してたの?」

 

 

 曖昧な、はぐらかすような話題転換。聞くべきではなかったか、と気づいた桃太郎はそれ以上追及することは無く、白澤の質問に答えた。といっても、ここ最近あったことをいくつか話していただけなので特に話題になることなどない。普通のお茶会だ。

 

 

「君が誘ったの? お茶会に」

「そりゃ、ただ立たせて待たせるわけにはいきませんし…アッちょっ、ナンパじゃないですからね!?」

 

 

 ワタワタと弁明し始めた桃太郎に白澤は笑みを深めながら、考える。

 ―――――あの(・・)智嘉が、いくら仕事で関りがあって相手に悪意も下心もないとしても、人間相手(・・・・)に仲良くお茶会だなんて、そんな時間の共有を許すだなんて、まさに青天の霹靂だなと。

 

 ……いや、なんとなく予兆はあった。智嘉は桃太郎に対してだけは、他の人間相手より当たりが柔らかいのだ。

 それは付き合いの長い鬼灯や白澤くらいにしか分からない差ではあるが、それでも確かに、智嘉は桃太郎を邪険に扱っていなかった。

 

 ―――――桃太郎は、清い。

 それは清廉潔白だとか、そう言うわけではなく……彼は人間の酸いも甘いも含めた清さがあった。

 

 人としての優しさ。幼さゆえの愚かさ。その心は時に歪み腐りながらも、大切に思う相手の心を無碍にはできないほどに誠実で、向けられた愛情を真っ直ぐに受け止められるほどにはまっとうだった。

 だから、彼は清い。

 

 その、人としての美しさを持つ子だから、智嘉は何か、他の人間とは違う……あるいは、とてもシンプルに、桃太郎という人間に対応できるのではないだろうか。

 

 

「ええ~? ほんとかな~?」

「だから違いますって! ああもう、ほら、仕事に戻りましょうよ!」

 

 

 キャンキャンと吠える桃太郎にいつも通りの笑顔を浮かべながら、白澤は桃太郎と智嘉をふたりっきりにして奥に引っ込んだ自分のファインプレーを称賛した。

 ―――――もうすぐ、『期限』が終わる。この出会いは、ともすれば革命になるのではという思いを抱きながら。

 

 

 

 

 

 

「あら、智嘉ちゃん?」

「―――――ああ、あねさま。お久しぶりどすなぁ」

 

 

 からん、ころぉん、と女下駄を鳴らして閻魔庁に戻った智嘉が入り口で早々に出会ったのは、衆合地獄で働く獄卒のお香だった。

 しゃなり、とした美女がにこりと微笑み、智嘉もそれに笑んで返す。

 お香は鬼灯の古くからの知り合いであり、智嘉も何度も世話になった恩人のひとりだ。特に立場上スキャンダルを気にしなくてはいけない鬼灯にとって気をつけながらも気兼ねなく接せるお香は貴重な存在であり、また女性であったために智嘉が鬼灯の元に来た当初はかなり手助けを頼まれていたものだった。

 ペコリ、と頭を下げて挨拶をした智嘉にお香は嬉しそうに「久しぶりねぇ」と言った。

 

 

「鬼灯さまに御用で?」

「ええ、ちょっと武器庫の確認をしてたんだけど…」

 

 

 にこにことした顔が、智嘉の質問にくてりと困る。よく見ればお香の手には巻物が握られていた。……表題を見るに、それは武器庫の記録だ。

 眉を下げたお香と、その手の中でどうしたものかと揺られる武器庫の記録。それを見て智嘉はなんとなく嫌な予感がした。

 

 

「まさか思いますけど、なんや不備でも?」

「実はねぇ、用具数が記録と合わないのよォ」

「………あらまぁ」

 

 

 智嘉は思わずギョッとした顔をした。とんでもないことだったからだ。

 

 それはダメだ。備品管理はやばい。なにせ、武器庫にある用具はすべて備品なのだ。

 武器庫と銘打っているが、基本的に収納されているのは要するに拷問具で、もちろん二束三文で買えるような代物じゃない。酷使する分入れ替えも早いものだが、それでもどれもこれも高価なものだから、規定に則りほとんどが消耗品費ではなく備品費から支払われて購入した備品だ。―――――そして、備品は定期監査の際に所在他を確認される対象になる。

 

 もちろん普段であれば、誰かが使っているのだろうとそこまで気にされることではないのだが、管理職のお香がチェックをしたということはその武器庫は来週に監査が入る3つの内のどれかだろう。

 監査の入る武器庫は所属備品を一時回収し一定期間持ち出しが禁止される。中身の確認のためだ。だからそれが合ってないということは記録が間違っているのか、あるいは勝手に持ち出している者が居るのか。どちらにせよ、監査を目前にした今は厄介この上ない。

 

 

「一応、持ち出した子がいないかの確認もしたんだけど…」

「該当者はおらへんと」

「ええ。それと、持ち出されていた備品を回収した時点では、当時の記録簿上すべて回収できたことになってるのよねェ」

 

 

 つまり、高確率で新しい記録簿が間違っていると。

 こういう厄介なところでミスをされるのが実は一番きついものだ。地味に時間をとられるしものすごくややこしくてめんどくさい。

 

 

「担当どこでしたか…確認せなあきまへんね。とりあえず、鬼灯さまのとこに行きまひょか」

 

 

 ああまったく、仕事が減らない。

 

 

 

 

 

 

「こんにちはぁ、鬼灯さまいてはりますかぁ」

「あ、智嘉ちゃん」

 

 

 お香と智嘉、ふたり並んで向かった閻魔の元。方言の独特な緩さで声を上げた智嘉に反応したのは閻魔だった。

 こっちこっち、と手を振る閻魔にふたりで近づけば、その場には鬼灯と白黒の小鬼の極卒がふたり。

 

 

「こんにちは。何か?」

「ああ、(あて)はこれ、お薬もろてきましたわぁてだけどす。それよりあねさまが…」

「お忙しいところ、ごめんなさいねェ鬼灯さま。今、来週の監査に向けて武器庫の最終チェックをしてたんですけど、ちょっとこの武器庫の記録がおかしくてェ……実際の用具数に合わないみたいで。色々確認してみた結論としては、多分この新しい記録が間違ってるんだと思うんですけどォ」

「そやさかい、これ、担当部署がドコやったかお聞きしよ思て」

「なるほど」

 

 

 お香と智嘉の訴えに鬼灯は眉をしかめた。武器庫といえばつい最近、監査に向けて記録との照らし合わせの指示し、完了報告を受け取ったばかりだ。それがさっそく合わないとは。確かに担当に話を聞く必要がある。

 三人がさてはてと首を傾げていれば、恐る恐るとこちらを伺っていた白黒小鬼の内、黒い方、唐瓜が問題の記録巻物をチラリと見て「アッ」と真っ青になった。

 

 

「唐瓜さん?」

「そっ、それコイツがやったやつです!」

 

 

 真っ青になった唐瓜がぼへら、と横で突っ立っていたもうひとり、茄子をグイっと引っ張って言う。そのちからにたららを踏みながら、引っ張られた茄子は「あれ? もしかしてまた俺何かした?」と少し冷や汗をかいた。

 何かしたどころの騒ぎではない。その緊張感のない物言いに唐瓜はますます青ざめた。唐瓜はまじめな男であったので、大体の上司の顔はすでに覚えていた。故に、目の前で話し合っているのがこの地獄において上の上、とんでもない上司たちであることを知っているのだ。

 衆合地獄の主任補佐(ナンバー2)に地獄の最下層の古株(ベテラン)、何より地獄の第一補佐官(うらばんちょう)

 なんてことをしでかしてくれたんだこのおバカ。

 

 

「すみません、すみません!」

「あらァ、あなたたち、新卒の子よねェ」

「……これ、そっちの子がやったん? あんたやなく」

「はっ、はい! あのっ、すぐやり直させますから!」

 

 

 未だ現状を把握しきれていない顔でポヤポヤとしている幼馴染の頭を押さえつけ、唐瓜は頭を下げた。メンツだけなら物理的に首を飛ばされそうな相手である。もちろん本当にそんなことをされるとは思っていないが、それだけ怖いということだ。お命だけは。お命だけは。

 

 

「まだこの記録が間違うてる決まったわけやない。せやけど、そこまで言うんやったら、なんや思い当たることあるん?」

「えっ、いえその、コイツいっつもぽやぽやしてて、結構ミスが多いんで、それで……」

「ふぅん……マ、数合わへん原因はほぼこの新しい記録簿が間違うてるからやろうし、せやったらその子の失敗ちゅうことになるなぁ」

 

 

 ひょい、と持ち上がった智嘉の眉に、唐瓜はブルリと震える。とんだ失態。いったいどんな罰を与えられてしまうのだろうか。

 青さを通り越して土気色になった唐瓜の様子に、お香は苦笑いをした。そこまで怯えなくても、という気持ちであるし、なにより唐瓜は関係ないはずなのに当人より慌てふためいているその気質に呆れと好感を抱いたからだ。

 じっと唐瓜と茄子を見つめる智嘉。お香はそんな圧から庇ってやるように、ふたりに向かって柔らかく手を振った。

 

 

「いいのよォ、新人の内は失敗なんてよくあることだわ~。今回は大事になる前に分かったんだから、次は気をつけてちょうだいねェ」

「はい! ありがとうございます!!」

「ほぅら、そっちの…真白の子。あんた、何をボケっとしてんの」

 

 

 誠心誠意下げられた唐瓜の頭にうんうんと頷いたお香に対して、智嘉はスパッと切り込む。その矛先は唐瓜ではなく茄子だ。

 いつも通りの狐目はどこか剣呑な雰囲気を持ち、困惑した様子で頭を押さえられている茄子を射抜く。

 

 

「あんたのお友達があんたの失敗をカバーするために頭ぁ下げてはるんに、あんたは何をしてんねん」

 

 

 失敗したのは茄子だ。唐瓜は何の関与もしておらず、しかし友として頭を下げている。正直、まったく関係ないと言える唐瓜が頭を下げたところで何の意味もない。

 意味もないが、智嘉は別に友のために平身低頭して詫びる男を蔑ろにしたいわけではない。価値のない謝罪に興味もないが、智嘉だって空気くらいは読めるのだ。

 茄子は向けられて視線の鋭さに身震いをし、それから言われた言葉にハッとした。

 

 そうだ、何事かとなされるがままに頭を下げていたけれども、唐瓜はまったく関係ないのだ。

 

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

 

 茄子は慌てて自分で頭を下げた。茄子は何もバカじゃない。ただ少し、周りと思考のテンポが違うだけで、悪いことは悪いこととして知っている。つい最近にも大きなミスをして周囲に怒られたばかりであるからして、失態に伴う責任と言うのも学んだばかりだ。

 だというのに。

 

 

「……甘やかすつもりはまったく(・・・・)ありませんが、お香さんのおっしゃる通り失敗とはだれにでもあることです。あまり上司である私がこういうことを言うのはよくないのですが、今日は残業してこの記録をやり直しなさい」

「はい……」

「……ま、ええわ。それにあんただけの責任でもあらへんし」

 

 

 ここまで、と一線を引くように発言した鬼灯に、ふう、と智嘉は溜息を吐いて身を引いた。

 失敗したのは茄子である。しかし、この真っ白茄子が新人なことは分かり切った事だった。そしてお香が気づくまで事態が明るみにならなかったということはつまり、教育係や仕事を割り振った上司がろくな確認もしていないということだ。

 どんな事情があろうと、上司として、教育係として、彼らにはまだひよっこの茄子をフォローするという義務がある。地獄は多忙なこと以外は意外とホワイトな職場なのである。

 新人の茄子に仕事を振り分けたとして、それは現時点では作業分担ではなく経験値稼ぎなのだ。茄子の教育係や上司がサボっているとまでは言わないが、これは彼らの職務怠慢とも言えてしまう。どうやら茄子はかなりぽわぽわした性格であるために彼の指導はなかなか骨を折るものかもしれないが、それでもやらなきゃいけないのだ。自分だけではできないのなら周囲と連携してでも。

 

 どんな理由があろうと結果がこうして出てしまっている以上、そしてその結果をほぼ最高職に近いメンツに知られてしまった以上、彼の上司たちは何かしらの注意は免れない。

 

 

「じゃ、アタシは失礼しますね~」

「ええ、ご足労おかけしました」

 

 

 ひらひらと手を振って去っていくお香。唐瓜と茄子はその後姿にぺこぺこと頭を下げた。完全に委縮してしまっている。ちらり、と鬼灯の視線を受けた智嘉は頷いた。

 

 

「ほな、(あて)も失礼します」

 

 

 カラン、と音を立てて智嘉も歩き出す。あのふたりが感じている威圧感の大元は智嘉だ。ならこの場から智嘉が居なくなることが、一番手っ取り早い状態緩和の策だろう。

 

 見たところ唐瓜は責任感が強く仕事もできる、いわゆるアタリの新卒だ。対して茄子はマイペースで注意力散漫。しかし、あの独特の緩い雰囲気が決定的な悪意を近寄らせない。百凡から一歩ずつズレた彼らの素質は存外基調で替えが効かないものだ。どちらも育てれば地獄を担う支柱の可能性を秘めた原石。なら、ここでうっかり潰してしまうわけにはいかない。

 唐瓜はストレスを溜めやすく、茄子は孤立しやすい可能性が見えている。あれらの長所を生かしながらうまく成長させるのはこの地獄の利益につながるだろう。

 

 ちょっと打ちのめされてしまった心のケアと仕事のフォローは、おそらく似たようなことを考えている鬼灯と生粋のお人好しの閻魔がなんとかする。なら、智嘉の仕事は茄子の上司たちのところへ行くことだ。

 まずは彼らの失態を伝え、残業をさせることの連絡。それから、茄子の教育を見直すことについての話。…変に追い詰めて彼らが茄子の個性を潰してしまわないように、上手いこと智嘉が話をまとめなきゃいけないのだが、まあよくあること。これも仕事。未来のため。

 

 

 ああまったく、今日も仕事がなくならない。

 

 

 






 なんか書いてて桃太郎オチになりそうでびっくりしている。そんなつもりはないのに。
 ちなみに智嘉ちゃんは別に唐瓜と茄子が嫌いなわけじゃないですよ。ただほら、厳しくする人は必要だし。でも鬼灯さまは将来のために唐瓜と茄子に好印象を持たれていた方がいいから鞭役は智嘉ちゃんがやりました。

 あと、薄々感づいてる人もいると思いますが、この子特定の相手と一定の基準以上の相手以外の子とは全く興味がありません。ビジネススマイルにビジネス気づかいくらいはするけど、なんて言うの? 立場上葬式には出るしお香典も持っていくけど別に泣かないし葬式終わったらさっさと帰って焼肉でも食べに行く感じ?


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