無限の剣を持つゴブリン   作:超高校級の切望

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感想に『普通に、去勢すればいいと思う』とあったので補足

原作見る限りゴブリンは性欲と加虐欲が異常に強く、ユダも同様。去勢した場合加虐欲のみが発散方法になり加減を誤り弟子を確実に殺してしまう可能性があるので却下。逆に言えば殺して良いのは犯しもしない


嵐の前の静けさ

 ゴブリンの報告を聞いた王が言う言葉は、何時も決まっている。

 「ゴブリンが出た?軍を動かせ?馬鹿を言うな、冒険者にやらせろ」。

 つい先日も悪魔の軍勢が攻めてきたばかりなのだ。何故か一瞬にして消えたが、だからこそ油断できず兵を配備している。

 ちょうど良いタイミングで一年間眠りっぱなしだった導師が目を覚ましたが早速道具の量産を依頼しようとした使者が勇者に殴り飛ばされたらしい。目覚めたばかりの病人だとは解っているが、それにしたって使者を殴り飛ばすのはどうなんだろう。

 下手に時間をかければまたゴブリン如きのために辺境に向かうかもしれない。今度は導師を連れて……

 避けたいが止められるわけもない。全く頭の痛くなる話だ。ゴブリンなんて冒険者でも対処できるだろう。

 それでも対応しろと剣の乙女にも言われたりする。だから辺境の貴族達に私兵を動かさせようとしても、動かない。悪魔共を相手にしなくて良いくせに、洞窟で糞尿垂れ流す最弱の怪物相手は華がない、金にならない、汚い、臭い、自慢の私兵が汚れると来たものだ。もちろん実際には色んな理由を付けるが実態はこんなところだろう。

 そんなに栄誉がほしいなら前線によこせと言ったところで今度は私兵は我が財産云々言ってくるに違いない。

 まあ、辺境領主達が動かなくても()()()()()()のだが………。出来るのだが、勇者達も対応しに行ってしまう。いっそ王権を使って対処させるか?

 

「………ん?」

 

 ゴブリンに家畜や娘が攫われた、程度では報告に来ないが大群に村を襲われた、となれば数として王の下に情報が届けられる。王は滅んだ村の名前など知らない。だが、例年の数は覚えている。

 幸いにも滅びた村は僅か。しかし、それにしても襲われた回数が多すぎやしないだろうか?

 混沌の勢力が本格的に攻めてきたか?いやいや、魔神王が討たれたばかりで?勇者がゴブリン退治に精を出しているのを知られ、陽動か?

 それにしても何か妙だ。暫く考え込む。

 そして、出した結論は「所詮ゴブリン、直ぐ片が付く」であった。

 

 

─────────────────

 

 

 盗賊共を痛めつけ苦しめ殺す。此奴等は手加減せずグチャグチャに出来るから気が楽で良い。壊さないようにするとストレスが完全に発散できないのだ。だが盗賊共は男も女も()()()()()である程度暴力を抑える必要もない。

 後は脳内麻薬の詰まった脳を食べる。これでまた暫くは保つだろう。やはり間隔が短くなり、必要な食事量が増えてきている。

 元々脳の構造が違うのだ。他者の苦しみにこそ喜びを感じるように出来ているのだ。精神で幾ら抗おうにも肉体に引っ張られる。

 だから、こうやって殺しても良さそうなのを見つけては殺す。盗賊は実に都合がいい。とくに、女がいればいい。女の苦しむ様はこの体にとって相当な喜びのようだ。

 今も苦悶の表情を浮かべたまま絶命した女盗賊の首を凍らせて持ち上げる。チラリと視線を向けるとその女盗賊に顔半分を焼かれていた女がヒィ、と震える。それはそうだ、目の前で人を切り刻みその頭蓋をかみ砕き脳を啜る化け物が居たのだから。

 

「こ、こない──こないで………」

 

 ガタガタ震える様を見て、嗤いがこみ上げてきそうになる。女が漏らした尿のにおいが酷く甘い匂いに感じて、顔を更に焼きたくなる。

 視線を逸らし首を見る。落ち着いた。ついでに腹の底から笑ってやれば女はガタガタ震える気分が晴れやかなものになる。

 まあ良い、さっさと出よう。出なくては、新しい玩具で遊びたくなる。()()()()()()()()()()()()()を転移の鏡に放り込みその場から消えた。

 

 

 

 後に盗賊退治に来た辺境最強の冒険者が見た光景は、凄惨の一言に尽きる。切り刻まれた死体などまだ楽に死ねた方だろう。中には背中の中央を真っ直ぐ縦に切られ背骨を無理矢理引きずり出されたものや、頭の皮を剥がして頭蓋骨に切り込みを入れられた死体、腹を裂かれその中に頭が入れられた死体など様々だ。

 執拗なまでに遊んでいる。壁に縫いつけられている死体は、その光景を見せられ怯える様を鑑賞されたのだろう。

 どの死体にも脳がなかった。邪神教が何かの儀式でも行おうとしたか?しかしその割には恐らく商品として捕らえられていた者達は無事だ。一人、別の部屋でうずくまる顔の半分を焼かれた女は居たが。

 彼女のそばには酷い拷問を受けた痕がある首なしの女の死体。彼女から話を聞こうにも恐怖で震えるばかりで、辛うじて聞けたのはゴブリンという単語だけ。

 

 

 

「つー訳で、ゴブリンといえばお前だろ?何か知らんか?」

「俺の所も似たような状態でな。そこでは盗賊の死体だけで生き残りは居なかったが、状況からして同じ犯人だと思うのだが」

 

 辺境最強の槍使いと辺境最高と称されるチームのリーダー重戦士が辺境最優と称されることもあるゴブリンスレイヤーに尋ねる。辺境最が三人そろった珍しい光景。ゴブリンスレイヤーは「ゴブリンか……」と呟くと兜越しに顎に手を当てる。

 

「女達は犯されていたか?」

「堂々と聞くなお前………いや、血だらけだったが精液っぽいのはなかったな」

「此方も同様だ。そもそも切り傷だらけで押さえつけたような痕はなかった……」

「………ふむ」

「つか、ゴブリン風情が盗賊を皆殺しに出来んのか?」

「お前達はどうなんだ?」

「あ?まあ、出来んだろうな」

「ならゴブリンでも出来る」

「何だと?」

「あぁ?」

 

 ゴブリンスレイヤーの言葉に目を細める槍使いと重戦士。しかし、重戦士が直ぐにあることを思い出す。

 

「………小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)か」

「……ああ」

 

 重戦士の言葉に納得する槍使い。確かに前回ゴブリンスレイヤーからの依頼で小鬼王(ゴブリンロード)率いるゴブリンの軍勢の中に自分達と互角に戦える小鬼が二匹居た。

 

「お前本当に口数がすくねぇな」

「そうか?」

「全くだ。煽られているのかと思ったぞ」

「そうか」

 

 言葉が足りないと指摘したばかりでこれである。本当に解っているんだろうか?解っていたとしたら絶対煽ってやがる。

 

「恐らくそれはゴブリン・ユダの仕業だろう」

「ユダ?なんだそりゃ、どういう意味だ?」

「解らん。個体名か何かだろう……勇者が追っているゴブリンで、ロード以上の知恵とチャンピオン以上の戦闘能力をほこり、ゴブリンを嫌っている」

「ゴブリンが?」

「勇者曰く、元人間らしい……何かの願いの対価にゴブリンにされたそうだ」

「………人間が、ゴブリンねぇ……で、てめぇはそれを聞いてどうするんだ?」

「関係ない。ゴブリンなら殺す。人に戻ったなら、知らん」

「「………………」」

 

 重戦士と槍使いは顔を見合わせ肩を竦める。何というか、取り付く島もない。

 

「ゴブリンになった其奴は他者をいたぶりたく、雌を犯したいらしい。それを我慢すると、本能に飲まれるのだろう。そうならないために定期的に人を殺す。盗賊は、奴にとって都合が良いのだろう」

「殺して良い人間を選んでる、ってわけか……」

「んで、他のゴブリン共みたいに女を犯すのは同じになるみたいでいやだから暴力衝動のみで発散するようにして、あの凄惨な現場か………」

 

 ちなみにあの光景を見た魔女や女騎士、半森人の軽戦士・少年斥候・圃人の少女巫術師はその場で吐いて、今も魘されていることだろう。

 

「お前ゴブリンの専門家だろ?ここ最近やけにゴブリン共も多いし、なんか関係あると思うか?」

「解らん。だが、奴がゴブリンらしく人の命を気にせず行動をとるとするなら、これだけゴブリンが増えたのだ、行動を起こすのは間違いない」

「ぶち殺して回りにいく、か?」

「いや。個人では時間がかかりすぎる。奴がゴブリンの本能に飲まれるまでの期間は知らんが、二カ所で発散するようだ、少なくとも周期は短いのだろう」

 

 つまりもっと時間のかからない手を取るはずだと言うゴブリンスレイヤー。ではその手とは何かと重戦士が尋ねる。

 

「ゴブリンを率いて都や貴族の屋敷を襲わせる。ゴブリンは殺さなくてはならない存在だと、認識させるためにな」

「……だとして、お前はどうする?」

「ゴブリン全てが従うわけでもないだろう。都が襲われている間に村を襲う奴等も居るはず。都の危機はゴブリンを見逃す理由にはなりはしない」

「そうかい。ま、俺も都の危機より、守りたい存在が居るしな」

 

 と、受付をチラリと見る槍使い。ニヤリと意味ありげに笑う。

 

「そうか」

 

 ゴブリンスレイヤーは特に気にした風もなく呟いた。

 

 

 

 

 

 ゴブリンに固執して依頼を受ける冒険者達の噂があちら此方から聞こえてくる。間違いなく()の弟子なのだろう。

 何か情報を持っているかもしれないと勇者達は噂の人物達の元を回ることにした。

 そんな噂の人物が居るギルドの訓練所で、蜥蜴人(リザードマン)の少女。人外じみた見た目だがどこか愛嬌を感じさせるのは幼いからか。

 

「どうした?立て」

 

 その周囲にうずくまる目隠しをされた女や少年少女達。六番と名乗る蜥蜴少女はシュルルと唸る。

 

「お前達が言ったことだろう。小鬼共を殺したいと。闇の中で目も見えぬ只人(ヒューム)が、闇を見通す目を持つ小鬼相手に視界に頼ったまま戦う気か?」

「そ、そんなこと言っても、出来るわけ……」

「私の同輩は皆出来た。あの人に学んだ……空気の流れを、音の反響を意識しろ。意識して動いていればいずれ出来る」

 

 無茶を言うなと誰もが思った。諦めようかと心が折れる者も居た。

 「小鬼共を殺すのではなかったのか?」そう問われ、折れそうな心を立て直す者が今残った数人なのだ。六番は彼等に言う。強くなれと。私には出来ない、だからお前等がやれと。

 何を、と問うと最強の小鬼、と返す。別に最強を殺したからと言って小鬼が減るわけでもない。魔神王が滅されても混沌の勢力が活動しているように。しかしその小鬼だけは確実に殺さなくてはならない。師との約束なのだ、そう彼女は言う。

 と、不意に彼女が振り返る。

 

「や、今日は……」

「………白金等級………勇者……一番の、弟子」

「お、知ってるんだ。話が早いね」

「……そちらは、まさか妹殿か?」

「うん。お兄ちゃんについて知ってること、全部教えて?」

 

 ニコリと微笑む導師。ゆらりと、影が蠢いた気がした。




ちなみに、補足すると導師ちゃんはあくまで間桐桜の『魔術回路』『魔術属性:虚数・水』を持っているだけで『この世全ての悪』や『聖杯』とは関わりがないから黒桜ほどチートではない。
泥は使えないし魔力量には限りがあるし刺されて首斬られれば普通に死ぬ。
さらに補足すると『神の運命操作拒否』で上世界から運命を操る神のサイコロを盤上に無理矢理落とす。上位世界の物質を堕とす。これをエネルギー源として原作黒桜のように強力な攻撃を放てる魔力を得れる。
後、黒桜は『この世全ての悪』が体を乗っ取ったのではなく桜の、それまで溜め込んでいた負の感情が「この世全ての悪」によって表面化したもの。壊れて自棄になった桜自身。つまり性格は本人のままなので、導師ちゃんと桜が別人であるいじょう黒桜と同じような行動をとるわけではないことを予めご了承ください


感想お待ちしております。


そろそろ終わりが見えてきたな

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