無限の剣を持つゴブリン   作:超高校級の切望

5 / 23
日間一位だイェェイ!今確認したら二位になってたけど


未来の剣聖と賢者の日記

○月×日

 

 お父様が変なのを連れてきました。え?お客様を変なの扱いは良くない?

 ですが、本当に変なのです。全身黒い鎧をした、一見すると騎士。しかし冒険者なのだとか……。冒険者といえば顔を売るのも仕事の内と言わんばかりに顔を売ろうとする者が殆ど。顔を隠す者などまずいない。少なくとも私の常識では。

 彼はお父様の弟子の一人の遺品を拾ってくれたのだとか。ゴブリンにやられたそうです。その報告に、お父様の弟子達は憤慨してました。ゴブリンではなく、殺された弟子に。笑っている人もいました。同門が殺されたというのに。

 お客様の名前はゴブリンスレイヤーというらしいです。名前からしてゴブリン専門の退治屋。お父様の剣術を学びゴブリン退治にいかすのだとか……後、お父様の《剣聖》という立場を使いいろんな剣を見てみたい、とも。

 何だ此奴、それが私の感想でした。別にそれ以外はありませんでしたがお父様の弟子達はお父様の剣術がゴブリン退治に使われるなんて!と怒り、挑み、返り討ちにされました。

 お父様の剣術に比べれば余りに拙く、それでも数年修行している者よりずっと美麗。ゴブリンスレイヤーさん曰く見て覚えた、使い手が良かったとの事でした。見ただけであそこまで使えるなんて、本格的に学んだらどうなるのでしょうか?

 

○月△日

 

 ゴブリンスレイヤーさんのお弟子さんと剣を打ち合うことになりました。私だけではありません。他の弟子達も。

 何でもゴブリンスレイヤーさんが本格的に学ばせたいのはむしろ此方なのだとか。ゴブリンスレイヤーさんは独学で既に師範代行クラスなのでお父様と修行しに、残されたお弟子さんに昨日の鬱憤を晴らそうと考える浅ましい者達も居ました。私の制止を無視して「時間がもったいないから一度にやろう!」と挑発………挑発?

 それで勝ってしまうのだから本人は本音を言っていただけかもしれませんね。小柄な体型を活かしてかわして、打ち合って、武器を叩き落としたら拾って投げて、壁や天井すら足場に代えて………。というか後ろからの完全な不意打ちを見もせずかわすってどういう気配察知能力してるんでしょう?

 その後ゴブリンスレイヤーさんの妹さん?にちょっかいかけようとした者も居たそうですが、察したのか主に人気のある場所、人気がなくなったと思ったらちょうど襲おうと思った瞬間人が現れる場所に移動したりしていました。もちろん、鬱憤をその人の連れで果たそうとする者など破門です。

 

○月■日

 

 今日はゴブリンスレイヤーさんのお弟子さんに妹さんと話した。

 ちなみに昨日、普通に1対1で戦って負けてしまいました。同年代の人は勿論年上にだって早々負けたことないのに。

 それにしても、冒険者になるって大変なんですね。駆け出しが相手するゴブリンですら目や耳を封じた状態で動きを察せるようにならなくてはいけないらしく、毒を使うからと色んな毒を毎日少量食べさせられたり傷口から塗られたりしているのだとか。おかげでお弟子さんやゴブリンスレイヤーさんは毒がいっさい効かないらしい。後、ここに向かう前日なんて鎧着たまま河に落とされたとか。

 妹さんの方はゴブリンが怖く、冒険者にはなれないが兄の役にはたちたいらしいので、『賢者の学園』を勧めてみました。あそこで学べば知識は付くでしょうし……。

 

 

 

 

○月×日

 

 今日で丁度一年。ゴブリンスレイヤーさん達が来てから、一年で色々あった。

 『賢者の学園』に通いたいと言った妹さん、お父様は筋の良いゴブリンスレイヤーさんやお弟子さんを逃したくないからか学費を払うと言ったが妹の世話は自分で果たしたいと言ったゴブリンスレイヤーさんは冒険者らしく依頼をこなしました。ゴブリンスレイヤーなのにゴブリン以外の……まあ、都の近くにゴブリンが出ることは少ないですからね。

 ただトロルやワイバーン、オーガを黒曜等級が倒すなんて、今でも信じられない。いえ、お父様との普段の剣戟を見れば強いのは解るのですが………お父様曰わく家宝の剣を見てから特に腕を上げたとか。

 今では銀等級。一年で黒曜級から銀等級………すごい人ですね。そのお金の殆どは妹さんの学費ですが……彼、魔剣とか名剣のたぐいを集めていたのでは?

 聞いてみたら見るのが趣味だそうです。

 

 

────────────────

 

 

○月☆日

 

 転校生がやってきた。

 

○月▲日

 

 特にない。

 

○月●日

 

 特にない。

 

 

 

 

 

☆月◑日

 

 転校生凄い。

 

 

───────────────

 

 

 ゴブリンスレイヤーを兄と呼び、本好き故に司書と呼ばれる──というか実際ギルドで本の管理も手伝っていた──幼子は『賢者の学院』に入学して、まず巻物(スクロール)について研究した。

 自ら魔法を覚えようとしない彼女を見下す生徒は多い。その悪意を実行に移した者は何故か次の日から体調不良を訴えたが。

 巻物(スクロール)とは今は失われた古の秘術で魔法を刻まれた巻物であり、遺跡などで見つかる。刻まれた呪文に関しては千差万別で、《転移(ゲート)》などの価値をつけることすら難しい物から、《インフラマラエ(点     火)》のような魔力の有る者なら無駄遣いしてしまう程度の物まで様々だ。

 とはいえ魔法を学ぶ『賢者の学院』において、魔法を使う術ではなく、誰でも魔法を使えるようにする道具の研究はやはり目立つ。

 転校生で、そこそこ顔も整っていて、彼の剣聖の知人。目立つ。期待される。面倒なので錬金学にも手を出した。世話になっている彼が以前研究していた火薬、それの研究。彼は黒色火薬と呼んでいた。

 そんな研究ばかりしていたが、呪文が二回()使えると自慢してくる生徒の視線がいい加減に鬱陶しかったので、手作り爆薬で作った爆弾で脅しておいた。

 次の日からなんか変なのが付いてきた。無表情で此方をじっと見てくる変なの。確か次代の賢者候補……いや、既に卒業と同時に賢者の名を襲名するらしいから次代賢者か?

 自称妹が言うように、そこに在るのだから在ることを感じるなどという離れ業は使えないが、気配を隠す気もない彼女に気付くなど容易い。

 本当、何なのだろうか?今は魔剣の研究で忙しいのだ。

 巻物(スクロール)はもう作れた。覚知神から知識を与えられたから。というか何で覚知神?助かったけれど、これは邪神の類ではないだろうか?

 しかしその後気付く。確かに多少役立つだろうが彼にとっては一回限りより魔剣の方が都合が良かったと。

 しかし今度手を貸したのは知識神。奇跡を授けてくれたがそれだけ。だから今は忙しいのだ。解析できる時間制限内に出来る限り解ったことを書き写す。集中力が散るから失せて欲しい。

 

「…………ねぇ」

 

 とはいえ話しかけられたなら応えないわけにはいかない。面倒くさそうに、全身で抗議しながら振り返る。

 

「何でしょう?」

「どうして貴方は古代の秘術を蘇らせたの?」

「覚知神です」

「じゃあどうしてそうなの?」

 

 そう、とは……なぜまともな思考をしているの?と言うことだろう。覚知神は恐ろしい神だ。例えば少し苛ついていた青年が世界が滅びないかな、などと冗談半分で呟き、覚知神の目にとまったとしよう。彼は世界を滅ぼすための外法を手にして行動に移す。ゆえに巻物(スクロール)を作りたくて作り方を知った彼女は延々と巻物(スクロール)を作るだけの存在になりそうなものだが、なっていない。

 しかし、そもそも根底が違うのだ。彼女にとってそれは自分に家族がいたことを唯一直接知る存在の中で自分という存在を確立させるための手段、役立つための手段の一つ。巻物(スクロール)が造れた?()()は魔法をぽんぽん撃つぞ。本当、どうなってるんだろうあれ……。

 

「そんな事より魔剣を造りたい……既に見つかって手元にある魔剣の量産だけなら、出来るんですがね」

「それはそれで凄いこと」

「でも手に入る効果はどれも微妙。切れ味を増したり敵が近付くと鳴ったり……」

「使える魔剣は全部本人が手元に残すか、売る」

「それは解ってるんですけどねぇ」

 

 次代賢者に言われずとも解る。それぐらい常識だ。だからこそ困っているのだ。

 正直魔剣よりもこの前造った新しい爆薬──彼はそれを見てニトログリセリン?と言っていた気がする──の方が少量でも眼鏡の魔法が二回使える生徒の目の前の地面を吹っ飛ばす威力があるので余程有用。しかし彼の能力を考えるならやはり剣だ。

 ………いや、ぶっちゃけてしまえば新しい魔剣は造れるのだ。刻み込む魔法さえあれば……しかし彼女が行える魔法はなく、奇跡も一つ………

 

「………あ」

「………?」

 

 そういえば隣にいる()()は次代賢者だった。

 そしてこれが、後に賢者となる少女と導師と呼ばれる二人の出会いだった。

 

 

 

 

「そろそろ彼女も卒業だな。君は、この後どうする?」

 

 巨大な狼のような魔物を斬り殺し報酬を受け取って戻ってきたゴブリンスレイヤーに剣聖が尋ねる。

 彼がこう言った仕事を受けるのはあくまで学費のため。彼の剣聖の弟子という後ろ盾で人格面接はほぼスルーで銀等級になったが、彼は別にランクなど興味ないだろう。

「金を集める必要がなくなる」とゴブリンスレイヤー。「ならゴブリンだ」と続ける。そんな一応弟子である顔も知らぬ男の言葉に呆れたように首を振る。

 

「君ならそれこそ金等級にもなれるだろうに……」

 

 剣聖とて、ゴブリンを軽視しているわけではない。それはつまり、攫われる村娘や殺される新人達を軽んじると言うことなのだから。

 単純にそれ以上の脅威があるというだけのこと。そこに彼が居てくれたら、そう思ったのだ。それに、その……彼は世界の危機の間に村が滅びる、それは見過ごせないなどというたちには思えない。

 

「………例えば」

 

 と、語り出す。

 

「ある日突然人を斬りたくなるとする。それはもう、心の底から……喉を潤すために水を求めるように血を求め、心地良い眠りが欲しくて静寂を求めるように悲鳴を求めるようになったとする」

「……………」

 

 想像して、余りいい気分はしない。鎧に包まれた指が剣聖の胸を指す。

 

「お前はそれに必死に耐える。家族や友人、娘と共に人の世を歩んだ記憶があるからな。だが、ある日見つけるんだ」と、声に僅かな苛立ちと尋常ならざる憎悪を込めるゴブリンスレイヤー。

 

「同じような衝動を持って、それに身を任せる者を………自分が必死に押さえているそれを抑えようともせず、血を啜り悲鳴を堪能する。それはきっととても羨ましい事だろう、妬ましい事だろう……」

 

 ここ一年で流暢になった共通語。彼の知識の他に、それこそ声帯が共通語に合わせたのではないかと思わせるほど滑らかに話すようになった彼の言葉は、耳によく通る。 

 

「自分がこれだけ耐えているというのに、奴等は好き勝手。その苦労も知らずに、いざ自分が斬られる側になれば自分は何も悪いことをしていないと喚き出す。腹立たしい……腹立たしい腹立たしい腹立たしい腹立たしい腹立たしい腹立たしい………だから殺す」

「……それは、君にもあるのか?ゴブリンに似た、衝動が」

「あるさ。殺すのは楽しい、悲鳴は心地良い。思いのまま女を犯せばきっと最高だろう………そんな感情をクソッタレな神に植え付けられた。だから何かを殺すことで晴らしている……冒険者ってのは丁度良い仕事だよ」

 

 嘘ではない、だろう。クソッタレな神……魔神王はその名に神の文字を持つ。が、違うだろう。次に思いつくのは覚知神。彼は武器に、それも主に剣に高い興味を示す。彼の神から祝福を受ければ与えられた知識を実行しようとする。例えそれが女に振られた腹いせに世界の滅亡を願っただけでも、やり方を教われば必ず実行に移す。

 例えば彼は、世界の全てが欲しいと望んだとする。すると彼は世界を手にする方法とともにそれを実行に移したい衝動に襲われるわけだ。それは略奪を好むゴブリンのように……。

 故にこそその衝動に身を任せることが出来るゴブリンが妬ましい。と、想像はするが真実は解らない。彼自身、教える気もないだろう。

 

「仮に全てのゴブリンを滅ぼせたら、君はどうする?」

「死ぬ」

「…………」

 

 余りに、余りに堂々とした言葉に思考が停止する。

 

「……死ななくても、良いのでは?」

「この衝動が抑えられなくなった時。それは俺がゴブリン共と同等の存在になるということ。俺の強さは知っているはずだ……それが世に牙を剥く前に死ぬ」

「…………」

 

 確かに彼の強さなら良く知っている。この一年で剣術では自分に追いつき、膂力を以って自分を圧倒するほどだ。

 彼が敵になったならばと思うと、確かに恐ろしい。

 

「それは、抑えられないのか?今だって………」

「どうだろうな……抑えられるかもしれないし、無理かもしれない。時折この衝動が囁く。殺して奪え、奪って笑え、笑って犯せってな……特にあの脳天気な馬鹿弟子……その衝動に襲われてる時にゃ殺気でてるはずなんだから近付くなって言ってるんだが…」

 

 本当に勘弁して欲しい。あんな懐いた子犬のような顔でこられたら、四肢を砕き組み敷いて、親愛の表情が恐怖に変わる様を見てみたくなる。そういう時は取り敢えず何かの群の討伐だ。叶うなら大型が望ましい。だいぶすっきりする。

 

「まあ、どのみち君一人でゴブリンを殺し尽くせるとは思えないが」

「確かに、奴らは数が多い。なのにこの世界の人間はどうも他人が犯されると聞いても、笑う。あんな雑魚に負けて犯されるなんて間抜けな奴だ、とな」

「ではどうするのかね?」

「………そうさな。教えてやるか………ゴブリンは恐ろしいぞ。確かに雑魚だが、成長すれば銀等級!そら、そこらに居るぞ!殺せ殺せ育つ前に!なんて歌が出来る程度に恐ろしいとな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。