凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

106 / 112
もうちょい..。


第106話 凪のその先へ

---ウロコ様side---

 

あれはもういつの話になるじゃろうかのぅ。

海の中を自由奔放に駆け回る、女性と、手を繋いだ子供二人とがいて、それをわしが、いや、厳密に言うとわしではないが退屈じゃのうと言いつつ心のどこかでその光景を許しながら笑う。

 

生きていた中で何よりも暖かい時間じゃった。

...そう、あの日々は、間違いなんかじゃないはずじゃ。

 

それに、あの小僧が言った事は間違いない。

 

悔しいが、今回は完敗かのう。

 

「...ははっ、神が聞いて呆れる。好きな人の気持ちを奪っておいて、その気持ちが誰に向けられていたかまでは気づかなかったか!」

 

今更後悔をしても仕方の無いこと。

あぁ、それでも...。

 

 

 

私はずっと、貴方様を愛しております。おじょし様。

 

 

 

 

---遥side---

 

街にあかりが灯り、海が暖かさを取り戻していく。

 

ああ、これでやっと...

 

 

ゴゴゴ...

 

「!?」

一瞬何があったか分からなかった。

よく周りを見ると今自分が立っている場所あたりが大きく揺れているのが分かる。それに、これまでのおじょし様も一気に集まって来ている。

 

そうか。真実の愛に気づけてるのなら、もうこの場所は必要ないんだな。

形はなくても、好きの心はずっと海に残り続けてる。今度はもうすれ違うことは無いだろう。

 

 

とりあえず、ここを出なきゃだな!

 

 

俺は一目散に穴蔵を抜け出す。それから数分後、地殻変動は収まった。

 

 

「遥!」

「おい島波!」

「遥くん!」

「遥!!」

 

穴蔵から出ると、慌てた形相の美海、紡、千夏、光が待っていた。

 

「お、おう。心配かけたな。悪い。それより、紡。地上はどうなった?」

「...俺のエナはスルーか。まあいいけど...。あれから上がってはないけど、さっきの光によって、またなにか起こるだろうとは思う。けど、多分大丈夫だ。」

「...そうだな。俺も大丈夫だと確信できる。...ん?それよりさ。」

 

会話の途中に1人の人影が見える。

あれは...確か...

 

 

「親父!?目が覚めたのかよ!」

そう、灯さんだ。どうやら冬眠から覚めたらしい。

そりゃそうか、急激に暖かくなりだしてるんだから。

 

「ああ。...大きくなったな、美海。」

「お久しぶりです、おじさん。」

 

...ん、あれ?いつ会ってたんだ?

思わず俺と千夏は顔を見合わせる。

 

しかし、考えれば当然の話か。

直接血が繋がってなくても、美海にとって灯さんはおじいさんになるわけだから。

 

さて、感動の再会が始まってるのはいいけど。

俺はまだ、話していない一番大事な人がいる。

 

そうは言ってもすぐに見つかると思うけど。

 

「とりあえずさ、先上がったらどうだ?みんなそろそろ目を覚ますだろうからさ。」

「ん?ああ、そうするわ。じゃあ、早く来いよ!」

 

先に上がる光につられ、他数名も上がっていく。

が、灯さんはまだこの場に残っていた。

 

「?どうかしたんですか?」

「...いや。君には色々礼を言わなければいけないと思ってな。...それと、謝罪も。」

「よしてくださいそんなこと。こうやって海を取り戻せたのもみんなのおかげ、俺なんかほんの微量しか力になってないですよ。...それに、謝罪だって、あれ悪いの俺なんですから、お気になさらず。」

「...そうか。それでも、いつでも海に帰れるように、騒動の時の奴には私が説得しておこう。」

 

うーん、やっぱり頑固だなぁ...。

 

まあ、好意はありがたく受け取っておくに越したことはないか。

 

「まあ、大丈夫だと思いますけど...。まあ、お願いします。」

 

そして灯さんも上がっていく。

 

 

さて、ここから本題かな。

「出てきたらどうですか?ウロコ様。」

 

「流石にもうわしの気配が分かるかの?それで、何じゃ?」

「いや、結局今回のこと、何も話せなかったんで。...これが、正しい答えですよね?」

「正しいかどうかはわしも知らん。が、海は本来の力を取り戻した。海神様が力を取り戻したのじゃろう。...じきにこの凪もあがる。」

「そしたら、俺達が昔過ごしていた、あの汐鹿生に戻る...と。」

「さて、あれ以上かもしれんの。」

 

どこまで海が戻るかは知らないが、それもまた楽しみだ。

 

「して、遥よ。答えは出たか?この前に聞いた事。」

「...ええ、出ましたよ。ちゃんと出しました。...海に残るか残らないか、ですけど、もうそんなこと気にする必要は無いんじゃないですかね?」

 

「ほう?」

 

「元々海が封鎖的な態度をとっていたのは、未来が暗い中、これ以上人の流出をしたくなかったから。けれど、今待ち受けている未来はそんなものじゃない。それに、海を出て陸で働いている人も、本当はきっと帰ってきたいはずですよ?...追放はもういらないはずです。」

 

「それは確かにそうかもしれんの。」

 

「だから、俺も生きたいように生きて、帰りたい時に帰る。そうします。...結局のところ、俺にはここを捨てるなんて事はできないんですから。」

「そうか。それなら大丈夫そうじゃの。...あと、相手の方じゃな?」

 

「...それももちろん、決めていますよ。あとは伝えるだけですから。」

「ならいい。...ほんとにお主は成長したの。」

「いえいえ、そんなことはないですよ。...さて、行きましょうか。」

 

ウロコ様の返事を待たないまま俺は陸へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから見える景色はきっと、今まで1番綺麗なはずだ。




模試意外と悪くなかったんですよこれが。
まあ、これももうちょいで終わりっすね。
頑張ろ。

また会おうね(定期)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。