凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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千夏√です。
(千夏を選んだ場合のアフター)


千夏√
第109話α 二人で紡ぐ明日へ


---千夏side---

 

あの人は来ないと分かっている。

約束の時間まで後3分、私は負けを確信した。

 

...当然かな。

傷つけたどうこうもある。けどそれ以上に、きっと美海ちゃんが埋めた5年間の傷は私よりもきっと多いものだ。

 

美海ちゃんは優しいから、最後までフェアで戦おうとしてくれたんだ。

やれやれ、ここまでしてもらって負けたんじゃ、いよいよ私の立場がないなぁ。完敗だよホント。

 

 

約束の時間まで後1分を切った。

いまだに足音はしない。今頃遥くんは私の知らないどこかに行ってるんだろうな。

 

分かってる、相手じゃなかったんだ。美海ちゃんにとって私は。

でも、それでも...

 

 

「私はやっぱり、選んで欲しかったなぁ...。だって、こんなにも、好きで好きで、苦しい...のに...」

堪えていた涙だったがもう限界だった。

まだ時間になってないのは分かる。けれど、私はもう自分が勝つ未来が見えなかった。

 

...いけないいけない。今は泣く時じゃない。

涙をぬぐい、顔を上げる。

ちょうど同じ時間に時計の針が鳴り6時をしめす。

 

...帰ろう。

 

そう思って顔を上げる。

 

 

私の足は帰宅の道に着くことはなかった。

 

 

「うそ...なんで...?どうして!?」

さっき止めようとした涙が止めどなく溢れる。けれどそれは先ほどのような悲しみに濡れた涙じゃなかった。

 

 

私の目の前には、たしかに遥くんがいた。

息を切らしながら、こっちを見ている。

 

「...ごめん、遅れた...!」

 

「嘘じゃ...ないよね...?今この光景は、嘘なんかじゃないよね...!?」

泣きじゃくりながら自分に言い聞かせて確かめる。けれど、嬉しいことに目の前の景色は確かに本物だった。

 

そんな光景を悟ってか遥くんがちゃんと声に出して証明してくれた。

「嘘なんかじゃない。俺は千夏を選んだんだ。...だから、ここにいるんだろ?」

 

 

 

 

 

そこがリミットの限界。

私はあふれ出る涙なんか気にせずに、遥くんの胸へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

---遥side---

 

「おっとと...」

千夏に飛びつかれ、俺は一瞬だけグラつく。

けれど確かに千夏の体を捕まえた。

そのまま頭を抱え、俺の方の方へよせる。

 

 

「あんまり泣くなよな?俺だってどうすればいいか分からなくなっちまうからな。」

「うん...うん...!」

口ではそう言ってるがどうも泣き止む様子は無さそうだ。

 

...そりゃそうか、と納得してしまう。

俺のこの答えを千夏は5年前からずっと待っていたんだ。

...嬉しくないはずなんかないよな。

 

「...待たせてごめんな?今日のこと、答えのこと。」

「遅すぎるよ...バカ」

 

とりあえず今は言葉はいらない。

こうやって抱き合って、温度を確かめ合ってるこの瞬間こそが答えだ。

だから今は当分...このままでいいかな?

 

 

 

 

 

...

 

 

 

 

お互い動かないまま数分後、やっと我に返った千夏が顔を赤らめて俺から少し離れた。

 

「ごめん、嫌じゃなかった?」

「全然?俺だって好きだって示したんだ。嫌なわけじゃないだろ。」

「そ、そうは言ってもさぁ...///」

 

千夏は乙女だ。やっぱり自分のさっきの行動を少し恥ずかしく思ってるのだろう。

けれど、俺はもはやそんなことはどうでもよかった。

 

 

まだちゃんと口にはしてないけど、俺も千夏が好きだ。大好きだ。

その気持ちがあるから、俺はここまで来れたんだ。

 

「なぁ、千夏。...長かったよな、ここまで。」

「何?急に...。うん、長かったね。初めてであってもう5年になるのかぁ...。私の中じゃ五年も経ってないから、なんか不思議なんだよね。...言いたいことは山ほどあるよ?でも、やっぱり好きの気持ちが一番上。だからもう後悔を吐き出すこともしないし、自分を責めたりしない。なんたって、最高の結果が今目の前にあるんだから...ね?」

「そうだな。それは違いない。」

 

俺も千夏も笑顔を浮かべる。

多分いまこの瞬間が今までの人生が一番報われた瞬間だろう。

 

 

ところで、なぜ自分を選んだのかとか千夏が聞いてくると想定してたけど、どうやらそれはなさそうな雰囲気だ。

 

...きっとそれが今まで、というイメージなら。

これはきっと千夏にとってのけじめだろう。

 

進みだすために自分の弱い部分を払拭する。

とても苦しいことだが、その先の未来は悪くない事を俺は知っている。

 

 

 

しかし。

想定していなかったことその2。

 

千夏がさっきからやたらと顔を赤らめて体をモジモジさせているのだ。

 

 

...まさかとは思うけど。

本当にまさかだと思うけど...。

 

 

...それって許されるのか?

 

「あ、あのね、遥くん...、遥くんって、もう少ししたら大学のほうに戻るんだよね?」

「まあな。もうそんな時期だ。」

「だからね、きっと会える回数、時間も減っちゃうかもしれないよね?...だからね、今日くらいしか無いかと思って...。だめ?」

 

 

やっぱりかぁ...。

薄々予想はしていたが、本当にこれ、大丈夫なのだろうか?

...まあ、恋人になったわけなんだから、スキンシップはまだいいとして...、ちゃんとものがあるのだろうか?

 

「だめって言われてもなぁ...。いいのか?それに道具の方も...」

「私からお願いしてるんだから、だめってことはないよ。それにお母さん、この前ノリノリでそれっぽいもの買ってたからそっちも...。」

「...いよいよ断る理由がなくなったな。...とりあえずその話は後。俺の部屋にでも勝手に来てくれ。」

「うん!」

 

いや...本当にいいのか?

 

...ええい!この甲斐性なし!腹くくるしかねえ!

 

いや。そんなことよりもだ。

ちゃんと言わなきゃいけない言葉、あるだろ?

 

「なあ千夏。」

「んー?」

「ちゃんと言えてなかったから言うぞ。...俺はお前が、水瀬千夏が好きだ。これからも、傍にいてくれるか?」

「うん!!」

 

これ以上にないくらいの元気いっぱいの返事。

 

俺は今、人生を選んだ。

 

もちろん、俺は一生をかけて千夏を守り通したい。

だから、ちゃんと俺をそばで支えて欲しい。

...分かってくれるよな。千夏なら。

 

「じゃあ帰るぞ。さすがに暗くなりすぎたからな。」

「うん!...ねぇ、手、繋ご?」

そっと千夏が右手を差し出す。長いこと待っていたのだろう。少し赤くなってるのが伺える。

 

「あぁ。」

俺はそんな千夏の右手を暖めるべく、左手を差し出し、大切にぎゅっと握った。

 

「行くか。」

「行こっか。」

 

 

 

 

 

 

 

そして二人は歩き出す。

歩いてきた道は暗かったかもしれない。けれど、これからの未来はきっと明るくなるはずだ。

隣で千夏が信じてくれるなら、俺たちはきっとどこまでも歩ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ行こうか、ふたりで紡ぐ最高の明日へ。




こっちをもともと考えていました。
もちろん美海編も投稿しますがとりあえずは千夏アフター。
あとちょいお願いします。

また会おうね(定期)
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