遥side---
あーあやっちゃったか...。もうこれは俺はどうすることも出来ねえな。
「なっ!?」
「わぁ......。」
「キスした」
「キス.....したね。」
皆各々の反応をする。その後あかりさんは不意打ちのキスをくらってかフラフラ運転する至さんを見送った後、海に潜って行った。
もちろん見てる光達もうぶなため赤面している。
「アカリさんの彼氏かな?」
「何だよあの男?俺は聞いた覚えねえぞ!」
いや、普通言わない。というか言えないケースだぞ今回は。
「何って、アカリさんも好きな人が出来てたんだね。」
「しかも、地上の男だぁ~?今まで、そんなそぶり見せたことねえぞ!」
光は怒りを表に出し、まなかは少し赤面しながらも嬉しそうな顔をしている。ただ、ちさきと要は神妙な顔をしていた。恐らく2人は俺と同様村の掟を知っているみたいだ。
「そういえば、アカリさん、そろそろだもんね。多分、村から出て行くつもり何じゃないのかな?」
「はぁ~!?そんなの絶対無理だ。地上の男となんて、絶対うまく行かないに決まってる!それに、うまく行かなくて絶対に戻ってくるだろ!」
光は怒り続ける。ここまで来ると何に怒ってるのかが少しあやふやになる。八つ当たりならすぐにでも止めて欲しいものだ。
「それは無理なんじゃないかな。」
「そうだよひーくん!アカリさんはいい奥さんになるし、絶対にフられたりなんかしないよ!」
「いや、そうじゃなくて、地上の人と結ばれた海の人は、追放されちゃうんだ。」
しれっと要が言い切った。さて、ここまで来たら俺も説明に加わるか。掟について一番知ってるのは多分俺だから。
「追放って?」
「はあ?なんだよその物騒ワード!」
「そのままの意味だ。光。」
俺がすごく手短に答えたことに加わえ、ちさきと要が補足を入れる。
「えっと、例えば、駄菓子屋のお兄さんとか、果物屋さんの高原さんちのお姉さん。あの人達は地上にでたまま帰ってないでしょ?」
「多分、それは追放されたからだと思うよ?」
そして俺がトドメの一言を言い放つ。
「いや、確実に追放されてるな。実際、俺の両親がそうだからな。」
「「「「は?(えっ?)」」」」
とりあえずここまで隠してきたが、こうなった以上もう隠す必要も無い。俺はとりあえず話すことを決めた。
「俺の両親はな、海の掟に嫌気がさして陸へ上がってったんだ。...もう結構前の話だがな。そして二人とも1度も海へ帰ってくることも無く、いなくなった。」
「待って、遥の言う、いなくなったってことはまさか...。」
ちさきが何かに勘づいたみたいだ。
「まあ、ちさきに想像してる通りのことだと思う。だから俺は今一人暮らししてるけどな。」
「...じゃあお前が一時だけうちに居候してたのって、それが理由かよ?」
光がいつか俺が居候してた時のことを思い出す。
「そ。そしてそれが終わったのは、色々と環境が片付いたからってところかな。」
俺は質問に淡々と答えていった。
「何で...?何で遥はずっと平気でいられるの?自分が一番苦しいはずなのに、何で私達の前で生き生きとできるの?」
そう言ったちさきは泣いていた。が、嬉しくはなかった。
これは同情だろうか?もし同情なら、俺は少し許せないかもしれない。
実際、生活するのには困らなかったし、さほど苦しいことはなかった。それこそ、今はもう慣れているつもりだ。
もっとも、人との距離が分からなくなったが。
「...別に、生活するのには困らなかったからな。不便もないし、戸惑ったのは最初くらいだ。」
俺は苛立ちを隠すように返す。
「違う。ちさきの言いたいことはそうじゃないよ。遥。」
要が軽く説教を入れる。
うるさい、そんなこと自分が1番わかってる。
苦しくない?辛くない?そんな訳ないだろ。でも1人で居ないときっとまたあれが繰り返される。
怖いんだよ、嫌なんだよ。何かを好きになって大切なものを失うことは。あの日からずっと。
そんなことを思ってると、まなかが口を開いた。
「やっぱり、村の人達は意地悪だよ!好きな人が陸にいるからって、帰って来れないように掟を作って。人の気持ちを縛って...。海は牢屋じゃないんだよ?もっと自分の気持ちを大切にさせてあげてよ...。」
意外だった。まなかがここまで自分の気持ちをはっきりと言ったのはこれが初めてかもしれない。
だが、この一言が光の気に障ったのだろう。光はまた怒り始めた。
「なあ、それってお前も地上の男とくっつきたいって思ってるのか?」
「な、ななな何言ってるの!?エッチなことを言うひーくんは嫌いだよ!」
「俺だって、エッチなことをいうマナカは嫌いだ!」
「言ってないもん!」
「だいたい、最近のお前と遥はおかしいんだよ!地上の奴なんかとつるんで、気持ち悪いんだよ!それと遥、お前も付き合い方考えろよ!」
それを聞いたマナカは、目に涙を溜めて、海の中に消えていった。そして、追いかけようとするチサキが口を開く。
「光、ちょっと言い過ぎだよ。光の気持ちもわかるけど、キツすぎるよ。まなかの言ってること、少しは分かってあげなよ。」
「なんだよ、お前は毎回、上からものを言いやがって!お前も、大人ぶってるんじゃねえよ!だいたいお前なんかに俺の何がわかるんだよ!!」
光がそういい返すと、チサキは泣きながら、海に消えていった。
ああ、こいつはもうダメだな。
今の光は自分の気持ちを全部他人にぶつけている。嫉妬、理不尽、それで生まれた怒りを全部。
正直、今のこいつとはいたくないな...。
そう思って俺は海に背を向けた。
「おい光。俺の事はなんとでも文句言っとけ。ただちさきには謝っとけ。あれはただのお前の八つ当たりだ。」
そう言って俺は汐鹿生とは別方向へ歩き出す。
「おい待てお前。どこに行くんだよ。」
後ろからまだ怒りの冷めない光の声が聞こえる。が、俺は振り返らない。
「用事を思い出した。先帰っとけ、時間かかるから。」
「ああそうかよ。エナが乾いても知らねえからな。」
そうして俺は光達と別れた。
さて、用事と言ったがこれといってなかった。
しょうがないので、とりあえず適当に買い物でもと思いサヤマートへ向かうことにした。この時間なら開いてるはずだ。
そう思って歩いていたが、俺は足を止めた。と同時に、綺麗な夕景が目に入った。それは、それまで考えていたモヤモヤが消えてしまうくらいに鮮やかだった。
...綺麗だな。
そうしていると、後ろから声をかけられた。それはもう聞き間違わない声だ。
「まだ、ここにいたんだね。」
そこには制服姿で買い物袋を持った水瀬がいた。
うわああああごめんなさいいいいいい!!
(14話前にやってしまった)
では次回(余裕なし)
また会おうね(会ってください)