「海村を出るって...まさかそういうこと...?」
呆気に取られた俺はそう返すことしか出来なかった。
「多分お前の思うそういう事だ。」
「なんでそんな...。」
そうだ。理由が分からない。
「この村にはなぁ...、結構な数の掟があるんだ。...例えば、『1度村を抜け出し陸で結ばれたものは追放される』とかな。」
「もしうちらが今から抜け出しても...。」
「まあ、間違いなく追放だな。」
父は表情ひとつ変えずに淡々と答えた。
「父さんたち、海が嫌いなの?」
「海は好きだ。確かにな。だが、この村のルールは受け入れられなかった。だから、この村を出る。陸ヘ上がる。例え、その行為が世界が滅ぶのを進めることになってもな。」
それ以上は、もう何も言わなかった。言えなかった。
ただ一言、「俺はここに残る。まだ知らないことだらけだから。」
そう言い残して、親と別れた。
さて、残ると決めたのはいいが、身寄りがなかった。
何せお金もない。家に残っても自炊ができるわけでもなかった。
人知れず汐鹿生の街を歩く。
考え事をしながら歩くと人はどうも下を向いてしまう。
だから、誰にぶつかったかもわからなかった。
「っつ、すいません。」
「あぁ、島波のとこのか。ちょうどよかった。色々話しておきたくてな。」
ぶつかったのは宮司さんで光の父親、先島灯さんだった。
「光の...、あぁ、話って両親のことですか。」
「勘が鋭いんだな。まあ、一旦、一緒に家に来てくれないか?」
促されるまま、俺は光の家に向かった。
「はい、お茶入れといたよ。」
俺と灯さんと面と向かっていた時に、光の姉であるあかりさんが麦茶を入れてきてきれた。
因みに光はちょうど昼寝している。変に勘づかれそうになくて本当によかったと思ってる。
「ありがとうございます。...それで、何について話せばいいですか?」
「そうだな...。まず、提案なんだが...とりあえず、うちで居候しないか?色々厳しいんだろ?」
「...はい?」
俺はそうして居候することになった。
とりあえずあの後はグダグダだったのは覚えている。
灯さんに聞かれたことはとりあえず一通り全部話した。
今後の両親のこと、俺に何を言ったかなど。
そこはまだいい。
問題だったのはやはり光が起きてからだった。
「はぁっ!?お、お前何でいるんだよ!」
「あらおはよう光〜。それなんだけど遥くん、今日からいつまでかは知らないけど家に住むことになったからよろしくね〜」
「というわけでよろしく。」
「てか、誰がそんな話し持ち出したんだ!」
「俺だが。」
「親父かよ!...じゃあしょうがねえな。」
「あれ嫌だった?」
「別に、遥なら問題ねーけど...。」
このやりとりを目にした瞬間俺は気づいた。
多分すごく賑やかになる、と。(特に光のせいで)
因みに俺は泣かなかった。小学3年生で、急に両親が出ていって、普通の子供ならショックが強すぎただろう。けど俺はもうそんなに気にする事はしなかった。まだ、親が生きてるうちはいつか会える、それだけが分かっていたので十分だったのかもしれない。
余談だが、次の日にもう一度穴蔵に行ったが、昨日とは違い、穴蔵は塞がれていたのだった。
「これは大人がやったわけじゃなさそうだな。となるとウロコ様...か?」
「くっそ、やっぱり昨日のうちに行っとけば...!」
「はい、それ以上は言わないよ光。」
因みにこの日は女子は別の用があり、男子だけで来ていた。
多分いなくて正解だったかもしれない。
理由は勿論、光が怒り溢れていたから。
結局、その穴の正体は後にまた知ることになるが、今は知るよしもなかった。
さておき、それからの日々は意外と早かった。いつものように学校に行っては、休みには光達と遊んで。これまでの生活と、ほぼ何ら変わることも無く毎日は過ぎていったのだった。ただ一つ、親がいないことを除いて。
でも、そんな毎日だっていつかは変わってしまう。
今回もまた、なんの前触れもなくそれは起こってしまった。
それは、ちょうど居候から1年くらいたった頃だった。
「灯さん、ちょっと陸ヘ上がってきます。」
時計の針は16:00を指していた。
「ああ、別に構わん。が、こんな時間だからそう遠くに行くなよ?」
「大丈夫です。さやマートで少し買い物してくるだけなので。」
「そうか。早めに帰ってこいよ。」
それから灯さんはまた新聞に顔を向けた。
「あっそうだ。行くならついでにお使い頼める?ちょうど醤油が切れそうで。」
あかりさんから追加注文が入る。
「いいですよ。では、行ってきます。」
因みに今この部屋に光はいなかった。まあいろいろとあって『お勉強中』なのだが触れないでおこう。
家を出て、直線距離で陸へ向かう。
時間はそんなにかからなかった。
さやマートで元々の予定だった少量の菓子と醤油を買う。
「ねぇ。」
後ろから自分を呼ぶ声がした。
振り返ると、自分と同じくらいの背丈の少年がいた。
「ん、どした?てか誰。」
「えと、狭山旬。あの、そっちは?」
「ああ、俺は島波悠。まあ、適当に覚えてくれ。」
うん、と狭山は頷いてどこか走っていった。と同時に入れ替わりで店主らしき人が入ってきた。
「いらっしゃい。さっき旬と話してたみたいだが、知り合いか?」
「いえ、初対面です。」
「そうか。あいつは少し人見知りな部分があるからなぁ...。良かったら、また会った時仲良くしてやってくれ,」
「はあ、分かりました。」
そう言って店から出る。まだ少し明るいと思ったので時計を確認し、少し遠回りをして帰ることにした。
何分くらい歩いただろうか。気がつけば港のほうへ歩いていた。
そこで足が止まった。遠目に人影が見えたのである。
そして息が止まった。目の前の光景を疑う。
1度深呼吸をする。そしてもう一度目の前の光景を確かめる。
今度ははっきりと見えた。そして俺は声にならない悲鳴をあげた。
見てしまったのである。
自分の母が、包丁のようなもので、心臓を刺されているその瞬間を。
※狭山の過去なんて想像したこと無かったので書いてみました。
この場合、いつチャラくなったんでしょうね。
それと、やっぱりこういう展開にしちゃうんですよね...反省。
(みをりさん出ませんでした。)
では次回。
また会おうね(定期)