ボキャブラリーくれ下さい
---美海side---
まず千夏ちゃんがいなくなった。
そしてママがいなくなった。
それが理由で遥もいなくなった。
好きになった人ばっかりが、私の前からいなくなっていく。
パパはずっとそばにいてくれたけど、いつ居なくなるのか、そう考えると怖くて、素直になれなかった。
ずっと、寂しかった。
そんな中、アカちゃんが来てくれた。
嬉しかった。寂しさが、少しずつ埋まっていくのを感じた。
...それと同時に、これまで抱いていた恐怖も一気に膨れ上がった。
...アカちゃんも、いつかいなくなっちゃうんだ。
だからもう、人を好きになるのはやめようって決めた。好きだった人に、幸せになって欲しいから。
でも今、私は再び遥に出会って。
ママが残した最後の想いを聞いて。
千夏ちゃんの言った言葉を聞かされて。
「逃げたくない」って、私は心の底から思った。
だから私は最後まで遥の...
---遥side---
ふぅっ...。
あの日から始まったゴタゴタは一応全て鎮まった。
結局あかりさんは至さんを諦めきれずに、交際を続けることを選んだ。美海の気持ちも知っている今、それ以外に最善はないだろう。
ただ、もうひとつ解決できてない問題があるとすれば...(問題と呼べるほどでもないが)。
いつも通りの放課後作業。因みに別件のおじょしさま破壊事件の1件を気に江川や狭山その他数名の陸の生徒との距離が近くなり、制作を手伝ってもらっている状況になった。光らも、別段嫌がってる様子もなく、どこか気の許せる雰囲気になっていた。
「ねぇ島波君。」
作業片手に水瀬が話しかけてきた。
「今日、来れる?」
あえて内容を言わないのかどうかは知らないが、ここにいる人に、とりあえず変な目で見られるのだけは勘弁である。
「ああ、いいぞ。...なんなら対決でもするか?」
「おっ、いいねぇ...。」
因みにあれからもう数回と水瀬の家にお邪魔している。
実家が第1で、みをりさんにお世話になったあの家が第2なら、水瀬の家は第3、のような安心感が生まれていた。
「というか作業中だからこの話後でいいか?終わったら外で待ってるから。」
そう、ほかのことに集中してしまうとうっかり怪我するケースがあるから、これまた雑にはできないのである。
「ああ、うん。そうだね。」
というか外に美海見えたしな。こそこそしないでもいいのに。
学校での作業が終わると、俺は他には目もくれず外に出た。
校舎の目の付きにくいところ。そこが、だいたい美海のいるポジションである。
「何してんだ、こんなところで。」
美海は急に背後から声をかけられたことに一瞬だけビクッとし、こっちを振り向いた。
「待ってただけ。一緒に帰りたかったから。」
なるほど、もっともな理由だろうな。
「あー、その事なんだけどな美海...、これから水瀬の家に行くんだけど、一緒に来るか?」
「千夏ちゃん家?」
「そ。」
「...もう結構と話してないけど、千夏ちゃんは私の事変わらず接してくれるかな...。...そうじゃなくても、行きたい。」
「分かった。じゃあちょっと話つけてくるからちょっと待ってろ。」
「うん、分かった。」
そして俺はその場に美海を残して、水瀬と話をつけに向かった。
「あ、いたいた。探したよ島波君。待ってるって言ったのに。」
「悪い。ちょっと呼び止められてた。」
半分嘘、半分本当である。
「じゃあ料理対決やるって方針でいいかな?えっと、お会計は...。」
「ああ、俺が作る分はちゃんと自分で持つからそこはほっといていいぞ。それよりこっちも1つ確認が取りたいんだが...。」
「うん、いいよ?」
「美海、連れてってもいいか?」
水瀬は少しだけ言葉に詰まる。そして二つ返事でokを出した。
「うん、いいよ。」
その後の話し合いの結果、俺は美海を連れて遅れていくという事になった。買い物のタイミングもずらせるので丁度いいだろう。
至さんへの連絡は道中のサヤマートでやればいいし...、うん、問題ねえな。
水瀬から少しだけ遅れて美海と一緒にサヤマートに入る。買い物中ずっとあかりさんにニヤニヤされっぱなしだったが、あいにくロリコンの疑惑が確定される程の距離の近さではなかった。
「お邪魔しまーす。」
「おじゃま...します。」
水瀬が入ってから5分くらいの差で俺達は家に着いた。
入りなれた俺ともう随分と久しぶりの美海と。心の余裕もだいぶ違うようだ。
リビングに入るといつも通り保さんがいた。今日は新聞は読んでなかったが。
「いらっしゃい、遥君...と美海ちゃんか。大きくなったな。」
行動こそ起こさないがその言動に嘘偽りがないのが保さんだ。
「久しぶり、美海ちゃん。」
そして、荷物をまとめて降りてきた水瀬が美海に話しかける。
「...元気になったの?千夏ちゃん。」
「うん、...今はね。とりあえず、適当にくつろいでていいよ。あ、島波君はダメだよ後で作るんだから。」
「分かってますよ。」
水瀬の放った一言に少しだけ違和感を感じたが、気にするとさらに負の感じに引きずり込まれそうな気がした。
一瞬だけ感じた不安を抑え込むため、俺は自分の作る料理の確認を始めた。
毎週金曜日はお休み日だから明日は休みです。
リアルのスケジュールと勝負勝負。
では次回。
また会おうね(定期)