凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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因みに今作も多視点になることは間違いなさそうです。


第3話 暗転する世界

「...おい、何やってんだよ...!」

俺は声を絞り出した。が、ショックのあまりか声が掠れて出ない。

それと同時にもう一つ信じ難い光景を見てしまった。

 

それは、母を刺していたのは、自分の父だということだった。

 

 

駆ける。駆ける。駆ける。

一刻も早く逃げ出したくて駆ける。

気がつけばその場から遠くへ走っていた。

もう何も信じたくなかった。

 

確かに、自分の両親の間には確かな愛があった。

ならば、

あの光景はなぜ生まれたのか。

何があってあの愛が、好きという気持ちが歪んでしまったのか。

しかし今は、それを考える余裕も無かった。

 

 

「ははっ、何だよあれ...。」

どれくらい走っただろうか。

気がつけば見たことの無い道に出ていた。

辺りを見回す。人の気配はない。

「うぅ...うああああああああああ....。」

さっきの場面が頭に深く焼き付き、離れない。

ついには感情を抑えきれずに目からは大粒の涙が零れていた。

 

親が出て行った時は、泣かなかった。

まだそこにまた会えるかもという希望があったからだ。

でも今は、もう会えるはずもない。

その事実という絶望だけで、俺の心を壊すには十分だった。

 

 

やがて涙が乾いてくると、眠気が襲ってきた。

 

瞼が重たい...。何も考えたくない...。

 

俺の心は疲弊しきっていた。そのため、もはや動く気力すら失われていた。

 

もういいや。今は寝てしまおう...。

 

その疲弊しきった心に余裕はなく、安直に重たい瞼を閉じろという思考だけが俺を支配した。

そしてそのまま、俺は深い微睡みへと落ちていった。

 

 

 

「あら、こんな所に...。」

遥が眠ってしまった後、一人の女性が目の前に現れ、立ち止まった。

そして、眠ったままの遥の肌に特有の光を発見した。

そのことに、その女性は驚いた。

「エナ...!...こんな所で眠ってるのはまずいよね。」

 

宜しくない状況だと判断したその女性は、とりあえず遥を背負うことにした。

「んしょっ...と。美海よりはまだまだ重いけど、これくらいなら...。」

それから遥を背負ったその女性は、海村の方面へ向かって歩いた。

 

「遥くんー!!どこにいるのー!!」

数分歩いた頃だろうか。遠くから声が聞こえる。

その女性は少し早足に変え、その声の主の方へ向かっていった。

 

「遥くんー!...あっ、みをりさん!と...遥くん!?何でここに...。」

「あ、あかり。...ちょっと待って。...ふぅっ。」

声の主、先島あかりと合流したその女性、潮留みをりはようやくベンチにつき、一息つくことが出来た。

そしてそのまま背中に背負っていた遥をベンチに下ろした。

 

 

 

---みをりside---

 

私とあかり、互いに息を落ち着かせ、状況確認が始まった。

「みをりさん、どういう状況だったんですか?」

「うん、私も理由は知らないけどね。人気の無い道で一人寝ていたんだよ。でもエナが乾くのはまずいと思ってとりあえず海村の近くまで運んだん...だけど...。」

言いかけている途中で私は、遥くんの目元が赤くなってるのを見つけた。

「目元、赤いね。何か泣くことがあったのかな...?」

「海にいた時はそんなこと無かったはず...。あの時はいつも通り元気にしてたし、私がお使い頼んだのもなんなりと受けてくれたし...。きっと、陸に上がってから何かあったんだと...。」

 

あれ?おつかいって言うことは今一緒に住んでる...?

何故かへんてこりんな疑問が浮かんだ。

「ちょっと待って、あかり。あなたの家族って両親と弟さんだけよね?」

「はい...ってああ、そういうことですか。ちょっと事情があって、今居候中なんです。遥くん。」

 

なるほどね。

私は少し、遥くんが泣いていた理由を掴めた。

「あの、みをりさん...?ひょっとして、何かわかったんですか?」

あかりは私の考えが顔に出ていることを読み取り、即座に尋ねてきた。

「えっ!?あぁ、うん。ちょっとね...。」

 

きっと遥くんが泣いていた理由は...。

「親に、親と、何かあったのかもしれないね。」

 

それと同時に、遠くからパトカーの音が聞こえ出した。少しずつ嫌な予感が強くなっていく。

 

「あかりは一旦家に帰りなよ。遥くんはとりあえず今日はうちで面倒みるから。」

「え、でもいいんですか...?」

「パトカーの音、するでしょ。なにか厄介事絡みだと地上の方が対応しやすいと思うの。だから、お願いできる?」

おそらく私も話聞かれるだろうから、1人の方がいいかもしれない。

 

「...分かりました。とりあえず、お父さんには伝えておいてもいいんですかね?」

「そうした方がいいと思う。けど、弟さんには伝えない方がいい。」

「分かってます。」

あかりはここまでで1番真剣な顔をしていた。ここまでとなると、余程弟さんは行動が早いのだろう。

 

「では、また連絡をください。」

そう言ってあかりは遥くんの荷物を持って海へと飛び込んで行った。

 

「さてと...。」

時間は18:30。そろそろ私も動かなければいけない時間だ。

一旦、家に帰ろうか。至さんも美海も待ってるわけだし。

 

そう思ってもう一度遥くんを背負って歩き出す。今度は住み慣れた自分の家に向かって。

 

 

特に思うところもなかったので意外とあっという間に家に着いた。

塞がってる両手でどうにかして玄関のドアを開ける。

まあ、間違いなく誰って言われるんだろうなー。

 

「ただいまー、至さん、美海ー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おかえり(なさい)!...誰?」」

予想してた返答がきっちり綺麗に帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 




みをりさん登場させました(宣言通り)
後数話は頑張ってもらいます。
それと、過去編だけで結構行きそう...?
頑張ります。では、次回で。

また会おうね(定期)
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