2日に1本はまずいですよ。
---千夏side---
私の身体についてはもう何度か話したけど、もう少しだけ詳しく。
普通他言はしないんだけど、島波君になら伝えてもいいと思った。
だから今日は、打ち明けてみることにする。
「始めて異変が起きたのは、小学一年の頃だったかな。」
そう、これから学校生活が始まる、そんな矢先の話だった。
だからまあ、友人が少ないのもあるのだろうけど。
「そうか...。てかそうだ、そもそもどんな病気なんだ?」
「あ、ごめんそっちからか。」
あ、順番間違えちゃったか。
「うーんと、言っていいのかわからないけど、症状はみをりさんが突発的になったあれにほど近いかな。私の場合、程度に波があるし、なるタイミングにも波がある。そして何よりこの病気、原因も完治の方法も分かってないんだ。」
「...ってことは、心臓か?」
島波君が怪訝な顔をする。まあ、現場を見ている以上どういうものかは多少は把握してるみたいだ。
「...うん。発作、なのかな。程度によるけど1度なったら数日ほど動けなくなる時もあるし。...今日の分は多分それとは関係ないと思う。けど、あれを発症してから免疫も少し弱くなって、今日みたいに体調を崩すことがしばしばあるんだ。」
「なるほど。んで、初めてそれになったのが小一の頃と。」
「そう。だから出遅れて周りの人間関係が出来上がっちゃって、居場所もそんなになかった。...前向きに生きようと思ったけどちょっとキツかったかな?やっぱり。」
親の仕事の関係なんかで紡とは知り合った。もしそれさえもなかったら、どうなってたのかは予想できない。
「そうか。...強いな水瀬は、やっぱり。」
その言葉には嘘偽りのない、ただただ尊敬の意が篭っていたような気がする。
でも、それを言われるのは、ちょっと嬉しくない。
「ううん、そんなことない。...そんなこと、ないから。」
強い眼差しを向けて島波君に言う。島波君はそれを見て感知したのか、それ以上は続けなかった。
「うん、言いたかったのはこれくらい。...もう寝ちゃっていいかな。
まだ熱も抜けてないみたいだし。」
「ん、ああ。長引かせて悪かったな。...晩飯、俺が作るか?」
まだ昼にもなってないのだが、そこまで考えてくれているようだ。
「うーん...、ちょっと待ってね。」
今日は親は遅いってほどでもないけど余裕があってくれた方が助かる。でも二日連続でお世話になっていいものなのかは不明だ。
...まあ、お父さんお母さんなら許してくれるか。
「頼めますか?」
「分かった。...というかよく平常心でいられるな水瀬。一応俺これでも少し落ち着いてない方なんだが。」
「え...?ああ、うん...///」
言われてみればそうだ。同じ部屋に男女二人で、完全に冷静でいられるかと言われたら、それは無理がある方だ。
「...一旦、出てくるぞ。」
「いってらっしゃい...。」
雰囲気が気まずくなったのを悟ったのか島波君は部屋から出ていった。まあ、今日は学校休むのも伝えているそうだからまた帰っては来るんだろうけど。
誰もいなくなった部屋で天井を仰いだ。
今更ながらの羞恥で赤面しながら。
どこか清々しさを、少しは感じていた。
---遥side---
水瀬に強いなと言ったら、言葉こそなかったが怒られたような気がした。
同情とかそういうつもりなんてなかった。ただ、前を向くことを躊躇っていた自分にとっては水瀬は、憧れであり、目指したい人間だった。
俺も前を向きたい。
一通りの支度は終わって、今日はもう帰ることも出来るのだが、俺は終日水瀬に付き合うことにした。
今ここで歩み寄らなければきっと、理想には届かないのだから。
「悪いねー、ここまでしてもらって。」
時間が経って今は少し早めの晩飯時。軽めに作ったお粥等を丁度持ってきたところだ。水瀬は申し訳なさそうに笑う。
「まあ、そこはお互い様という所で。」
「お互い様って言ったって、私まだ何もしてないよ?」
「そうだな...。ま、色々あってとんとん、と言うことで。」
「何それ。」
そのとき玄関のドアが開いた。先に帰ってきたのはどうやら保さんらしい。
「ちょっと顔出してくる。」
「うん、行ってらっしゃい。」
そうして俺は一旦部屋を出た。
部屋を出た先には荷物の片付けをしている保さんがいた。
「...お仕事お疲れ様です。」
目が合ったので話しかけた。この人の沈黙ほど怖いものは無い。
「何、いつもの事だ。...それより、今日は助かった。ありがとな。」
「え、あ、はい。」
意外と真っ直ぐな感謝の言葉に少し驚く。
「ところで、ちょっといいか?」
話だろうか。別に構わないのだが。
「え、いいですけど...。」
そうして俺は保さんに連れられてテラスの方へ向かった。
「何度も言うようだが今日はありがとな。」
2人して座った後すぐ保さんが言った。
「ええ、それはいいんです。それより...。」
「ああ、本題か。...特に考えてたわけじゃなかったんだがな。1度こうやってちゃんと話したかったんだよ、お前さんと。」
表情こそそんなになかったが、気持ちがひしひしと伝わってきた。
「なるほど...。いいですよ。」
「そうだな...。お前さんは、地上が、陸が、この街が好きか?」
「好きです。ずっと、ずっと前から。」
即答だった。ほんの前まで少し躊躇っていたはずなのに。
「そうか。俺も好きだ。勿論、夏帆もな。」
...
一体どれぐらい話しただろうか。外の気温もすっかり下がっていた。
「さて、そろそろ中へ入ろうか。」
「あ、それはいいんですけど、俺はそろそろ帰りますよ。」
「そうか。気をつけてな。」
そうして俺はもう一度、一瞬だけ水瀬のいる部屋に帰った。
「おかえりー。もう帰るんだ?」
もう結構体調も回復してるようだ。言葉には余裕が感じれる。
「まあな。というかもうって、何時間居たと思ってるんだよ。」
一日のほとんど費やした訳だから数時間じゃすまされない。
「あはは、冗談冗談。...じゃあ、また今度。」
「ああ。学校でな。とりあえず無理してまで来るなよ?」
「はいはい。」
そのまま俺は部屋を出て、玄関も抜けていった。
水瀬宅から出た俺は海へ潜った。
少し冷えた海は頭を冴えさせるのに十分だった。
さてと...。
冴えた頭で考える。
俺のやりたかった1歩前へ進むと言うのは、こういうことなんだろうか?
ただ誰かとの距離を縮めるだけが答えなのか。
やっぱり答えは、まだまだ出そうにはなかった。
特にないです。
忙しいけどここを切り抜けたら...!
というわけで頑張ります
では次回。
また会おうね(定期)