凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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視点主2人スタイルです今回


第4話 暖かいもの

---遥side---

 

午前9:00。

「見知らぬ天井」とはよく言われる表現だが、実際、今俺が目の当たりにしてるのはまさしくそれだった。

「...。」

そのまま沈黙のまま天井を見続ける。

 

「あ、起きた。」

「うわっ!?」

ひょこっと顔が出てきた。あまりのことに俺は驚くしかなかった。

「こーらー美海、つつかないの!...と、おはよう遥くん、大丈夫...?」

「大丈夫...じゃないですね...。」

そう言って口を紡ぐ。話すのをやめた瞬間に昨日のことがフラッシュバックされる。起きてからずっとこのループだ。吐き気が止まらない。

「さてと、話せたら、でいいけど色々聞いていいかな?」

みをりさんは俺の近くへ近づいてきて座った。

「...いいですけど...その前に...。昨日は...ありがとうございました...。」

自分でも思うくらい弱々しい声で感謝を綴る。

「うん、私は大丈夫だから。それに、君も私と同じ海の人間だったから...。」

「あ、そうなんですね...。それより...名前...。」

「あぁ、ごめん!私は潮留みをり。んでそこにいるのが美海ね。」

部屋の橋でちょこんとしている女の子を指さして言う。

「潮留美海...です。」

「えと、島波遥と言います。」

 

「「「...」」」

場に再び沈黙が走る。

俺はとりあえず知りたくもない現状を知る必要があった。

「...それで、聞きたいことは何ですか。」

「うん。結構あるよ。」

 

 

 

 

 

始まって30分くらい経った頃だろうか、質問が止んだ。

どうやら一通り終わったようだ。

なんて返したかは覚えていないが、言葉に身が入って無かったのは覚えている。

 

「さて、これくらいかな...。あ、そうだ。」

「?どうしかした?」

「まだ遥くん朝ごはん食べてないよね。良かったらうちで食べていかない?」

正直そこまでお世話になるつもりはなかった。しかし、昨晩から抜いてるせいか空腹は結構来ていた。なので...

「よろしく...お願いします...。」

そう言って俺は机の方へ向かった。

 

 

「ねぇ。」

つんつん、と、座っていた俺を美海がつついて来る。

「ん、どうした?えと、美海、だっけか。」

「うん、美海。あのね遥。」

もう呼び捨てなのには驚いた。

「遥、今悲しいの?」

 

「...。」

何も返せなかった。悲しいのならすぐに悲しいと返せたかもしれない。けどなんで、すぐに何も言えなかったのだろうか。

「うん、悲しい、のかな...。」

曖昧な返答でどうにかごまかす。

 

「そうなんだ。美海は今悲しくないよ。だって、遥が来てくれたんだから。」

はっと息を飲んだ。何故だろうか、少し嬉しかった。

 

後ろではみをりさんが軽く美海を叱っていたがさっきの一言は別に嫌になるものでもなかった。

むしろ、少し心に余裕が出来たのかもしれない。それほどに、心が暖かかった。

 

「っと、おまたせ遥くん。質素だけどごめんね?」

出来上がった朝食が運ばれてくる。

目の前に並んでいるのはご飯と、磯汁と、焼き鮭だった。どこが質素なのだろうか。

「いえ、とんでもないです。では、いただきます。」

そう言って鮭に箸を入れご飯と一緒に食べる。

 

それをひと口食べた俺は、感想よりも先に頬を涙が伝っていた。

「え!?大丈夫!?」

「大丈夫です。本当にとても美味しくて...。でも食べた時に...、母さんが最後に作ってくれた料理を思い出して...。...それと同じくらいとても暖かくて。もう、こういうのはないかと思ってましたから...。」

あかりさんの料理ももちろん美味かった訳だが、「母の料理」というようなものはもう随分と久しぶりだった。

「そう...。それならよかった。」

みをりさんが安堵の息をこぼす。

 

「遥は、悲しい?」

そんな中、泣いている俺を心配してか、今一度美海が聞いてくる。

でも、これは悲しいから泣いているのではないのかもしれない。だとすれば...

「ううん、今は...少し嬉しい、のかな。」

 

 

 

---みをりside---

 

午前9:00くらいだろうか。至さんが仕事行ったあとくらいにちょうど眠ってた遥くんが目を覚ました。

「うわっ!」

驚く声が聞こえる。どうやら美海が遥くんを覗き込んでたようだ。

「こーらー美海、つつかないの!...と、おはよう遥くん、大丈夫...?」

とりあえず目が覚めているということで遥くんのいる部屋の方へ向かった。

「大丈夫...じゃないですね...。」

それはそうだろう。

 

昨日、警察の話を聞いたところによると、港の方で遥くんのお母さんが遺体となって発見されたらしい。因みに父親の方は行方不明になってるが、家に遺書が残されており、おそらく亡くなっているだろうとの見立てらしい。

 

ただ、遥くん自身がそれとどれだけ関わったのかまでは知らなかった。だからとりあえず経緯、それこそ昨日あかりが言ったように居候している理由まで聞く必要があった。

 

「さてと、話せたら、でいいけど色々聞いていいかな?」

許可もなしにグイグイ人に突っ込むのは良くない。陸でも海でもそれを習ってきたから、一応ちゃんと承認はとる。

 

「...いいですけど...その前に...。昨日は...ありがとうございました...。」

とても弱い声で感謝された。けど、あれほどのことなら感謝されるほどでもないと自分では思った。

 

「うん、私は大丈夫だから。それに、君も私と同じ海の人間だったから...。」

しれっと自分が海の人間だったことを言ったが、余程余裕がなかったのかあまり触れられなかった。

「あ、そうなんですね...。それより...名前...。」

 

...忘れてた。

「あぁ、ごめん!私は潮留みをり。んでそこにいるのが美海ね。」

部屋の橋でちょこんとしてる美海の分も一応言っておく。

「潮留美海...です。」

「えと、島波遥と言います。」

ふむふむ島波くんか...。ってそれは後でいいや。

 

 

「「「...」」」

場に再び沈黙が走る。ええと、こういう時どうすればいいんだっけ?

 

とりあえず現状打破のため色々とあたふたする。

「...それで、聞きたいことは何ですか。」

そんな中いつの間にかそれ始めていた議題を遥くんが戻してくれた。

「うん。結構あるよ。」

 

 

それから、色々聞いた。

昨日何を見たのか。なんで陸に来たのか。

なんで居候することになったのか。親がなぜ陸に上がったのか。

結構鋭く聞いたが、遥くんはとりあえず一通り答えてくれた。

 

 

気づけばもう30分くらい経過していた。

「さて、これくらいかな...。あ、そうだ。」

「?どうしかした?」

「まだ遥くん朝ごはん食べてないよね。良かったらうちで食べていかない?」

そう、おそらく昨日からご飯を食べていないはずなのである。

流石に調子は悪くても食べなきゃだめ、ということでご飯を誘う。

 

「よろしく...お願いします...。」

意外にも答えはyesだった。反対されてたら強引に押しきるつもりだったがそうならそれでいい。

というわけで私はキッチンへと向かった。

 

 

キッチンで料理をしていると遠くで美海と遥くんの話し声が聞こえてきた。

 

「遥、今悲しいの?」

美海が聞いている。

あそこまでストレートに行くとどう怒ればいいのか分からない。そのため私は機会を伺いつつ話の内容を料理片手に聞くことにした。

 

 

「うん、悲しい、のかな...。」

少しの沈黙の後に遥くんの声がした。

 

「そうなんだ。美海は今悲しくないよ。だって、遥が来てくれたんだから。」

 

手を止めた。

そうだ。美海もずっと寂しそうにしていた。ずっと遊んでいた子が、体調を崩して休みがちになってしまったから。だから、遥くんが来てくれたことは美海にとって普通に嬉しかったのだろう。

 

いよいよ怒るに怒れなくなったので、美海を近くに呼んで、あまり悲しいことは言わないように、とだけ言っておいた。

 

さて、料理が一通り終わったので配膳を始める。

「っと、おまたせ遥くん。質素だけどごめんね?」

ご飯と磯汁と焼き鮭と。うーん、あと1品欲しかったかな。

 

「いえ、とんでもないです。では、いただきます。」

遥くんは気にしなかった。そしてそのまま鮭に箸を入れご飯と一緒に食べていった。

そして数秒後。

遥くんは泣いていたのだった。

 

えぇ!?不味かったかな...どうしよう...。

「え!?大丈夫!?」

思わず本心が漏れてしまう。けど違っていた。

「大丈夫です。本当にとても美味しくて...。でも食べた時に...、母さんが最後に作ってくれた料理を思い出して...。...それと同じくらいとても暖かくて。もう、こういうのはないかと思ってましたから...。」

 

また、遥くんは思い出していたのである。しかし今度は悲しい場面ではなく、暖かったであろう頃の記憶を。

「そう...。それならよかった。」

 

いろんな意味で安堵の息をこぼす。と同時ぐらいだろうか、

「遥は、今悲しい?」

また美海が遥くんに同じ質問をした。

「ううん、今は...少し嬉しい、のかな。」

しかし今度の答えはさっきよりは強く、暖かい何かを感じた。

 

 

それからというもの、遥くんはあっという間にご飯を食べてしまった。その顔にはさっきよりは余裕を感じれた。

「ごちそうさまでした。」

「いえいえ、お粗末さまでした。」

 

さて。

ここまではいい。でも決めなければならなかった。これからどうするのか。お葬式のこと、家のこと。

でも私はそんなことを一切無視して自分の欲を言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ遥くん。良かったらこれからもうちに遊びに来てくれるかしら。」

遥くんは少し驚いて

「はい。」

そう言いきってくれた。




みをりさんの生前の話とか誰も知らない...。
というわけで書きましたええ。
次回も過去編。ではこの辺で。

また会おうね(定期)
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