---遥side---
「冬眠...ですか。」
さすがに予想してなかった俺は少し固まる。実際調べても調べても出てくるのは結果ばかり、未来なんて少なくとも中2の俺には分からなかった。
「そうじゃの...、1度眠ってしまったら、人によるが何年かは過ぎると思うぞ。」
淡々と、ウロコ様は続ける。
「...それは強制なんですか?」
「わしとして....海神様の意思としては強制的であってほしいのじゃがの。しかし、そう言うたところでお前は聞かんじゃろ?それに、先島のとこの娘も。」
どうやら対象は、『エナを持つもの』のようだ。
とはいえ、水瀬に至っては例外なので、基本汐鹿生と関係のあるところだが。
「そうですね...。多分俺は、死んでも陸に残るんじゃないでしょうか。」
「ほう、えらく他人事のようじゃのう。」
「自分でもどうすればいいか、分かりませんからね...。でもひとつだけ言えることは、海に大切な人もいる、陸に大切な人もいる。そう考えた時、海で眠って未来を過ごすより、陸で過ごして確かな今を生きたい。きっとそう思ってるんです。」
ウロコ様はいい顔こそしなかったがうんうんと頷いた。
「お前の言いたいことはよう分かった。...じゃが遥、それだとお前は追放されてもいた仕方がないぞ?」
そうだ。陸を選ぶ時点でそれは仕方の無いことだ。
けど、今の俺はもう決心している。
「構いません。」
「そうか...。まあ、大人には伝えて置かないでおこう。光達には...自分の口で話すんじゃぞ?」
「それなんですが、ウロコ様。もう2つほど、お願いをしていいですか?」
「ほう?言ってみるといい。」
「少なくとも、光達が眠るまで学校に行かせてやってください。義務教育は学生の本分です。いつ起きるかわからないとしても、そこだけは。」
「これが1つ目かの?...そうじゃな、それは考えておく。」
さて、ここからが本題だ。
俺は今一度決心して話し出す。
「もう1つ。お船引きを、やらせてください。自分たちの手で、今まで以上に最高の。」
ピクリとウロコ様の肩が動いた。
「最近のお船引きは形だけだった。陸のある漁師にそう聞きました。
やっと1つになれそうなんです。海と陸が。だから、せめて繋がりかけた陸との絆を立たないために、昔あった大きなお船引きを、海と、陸とでやりたいんです。」
ウロコ様は珍しく軽く頭を抱えた。
「本来なら「ならん!」...と一喝すべきことなんじゃろうがな...。お主に言われるとどうもそれがしにくいようじゃ。...じゃが、やろうにも厳しいかもしれんぞ?最悪陸だけの一方的な形になることも「構いません。」はぁ...お主は。」
決意は変わらない。
「...一応、灯に伝えてはみる。後は自分達でどうにかしろ。」
「分かりました。」
「それとな、金曜に冬眠前の宴会を開く。来れる雰囲気かどうかは知らんが、1度くらいは海に帰ってこい。...決別の時間も必要じゃろ。」
そう言ってウロコ様はどこかに姿を消したが、俺は一通り言いたいことを言い終わったので追いかけなかった。
さて、今頃光らの方はどうしてるかな。
俺が言ったように要が動いてくれたらありがたいが、そういう状況でもないだろう。
心配しても意味が無い。
とりあえず今日は市内をぶらぶら歩くことにした。
金曜は明日。宴会に参加するつもりは無いが、明日光たちに話そうと思う。
もっとも、お船引きをしたい理由はさっき伝えなかった部分にあるのだが。まあ、ウロコ様なら俺がそれに勘づいてる事を勘づいてそうだ。
何も考えずに歩いては休憩し、そんな繰り返しをして気づけば5時になっていた。
現在地、丁度さやマート付近。
「およ?」
どこか見覚えのある...見覚えしかない姿が2人。水瀬と美海だ。
どうやら買い物から出てきたようだ。
そうだな...2人にも話さないといけない日が来るんだ。
それが今でも、いや、今の方がいいか...。
「よっ。」
真正面から2人に声をかける。
「あ、島波君何してたの!!」
「遥、学校から抜け出したって...。」
あー...。忘れてた。
今日学校抜けてたんだったなそういえば。
「まあ、色々とあったんだよ...。ただ、そのおかげで色々話さなきゃいけないことが出てきたんだが...聞いてくれるか?」
適当にあしらうが後半は本当。これは2人も気づいたようだ。
「うん、分かった。」
「聞いてあげる。」
そう言って俺は近場を指し示してそこに移動した。
「二人とも、この前ぬくみ雪が降ったのは知ってるよな。あれ、結構まずいんだ。」
単刀直入に俺は話を切り出した。
「まずいって...どういう風に?」
「確かに夏に雪が降るなんておかしいけど...。」
二人が疑問に思ってるのでとりあえず大雑把に言い伝えの話を伝える。
───海神様が力を失った時
───ぬくみ雪が陸と海に降り積もり
───やがて人間が暮らせないくらいの寒さになる
「つまり...今その状況が近づいているってこと?」
話を聞いた水瀬がすぐさま反応する。
「そう。んで、ここからが重要な話なんだが...。」
二人に誤解を招く言い順になりそうだがここはそのまま行く。
「そうして海の文明を絶やさないために、汐鹿生は冬眠に入ることを決めたんだ。」
うーん...きついっす。
ここからの目処は一応たってるんですが
文献となると...。
まあ、頑張ります。
また会おうね(定期)