---遥side---
あれから光らが学校に復帰した。冬眠までの間は学校へ行くことをウロコ様はどうやら許してくれたらしい。
とはいえ、挙行する姿勢は変えないそうだが。
陸の生徒も冬眠の話を聞いて驚いてはいたが、だからこそお船引きを成功させたいという気持ちが強くなったのを俺は感じた。
そんなムードの中、ただ1つ気がかりな点があるとすれば、昔みたいに美海がガムで文字を作っていたことだった。
それも今度は、「どっかいけ」と最後まで文字を作って。
...その壁には、どこか哀愁が漂っていた。
「うーん、まあ、理由は分かってるんだけどね。」
あかりさんは片付けながらそう呟く。
「冬眠の話、美海としたんですか?」
その現場を目撃した俺はあかりさんとさやマートで話をしていた。
「うん、したよ?そしてこれ。...言いたいこと、痛いくらいわかるんだけどな。」
今度はあかりさんも美海の気持ちがわかっているらしい。
とはいえ、あかりさんも笑って見過ごせる状況じゃないことを俺は知っている。
一応、至さんと陸で暮らすとは言ったが、それ以前にあかりさんは光の姉だ。
弟が1人海で眠った状態で、あかりさんは正気でいられるだろうか?
それに、冬眠することのショックは少なからず美海にもあるはずだ。
俺は眠らないことを決めているが、何が起こるかは予想はできない。
勿論、最悪の状態を回避するために、今俺は動いているのだけど。
「結局、迷っているんでしょうね。...でも、やっぱり美海は、優しい子だと思います。」
俺は片付けを手伝いながらそう言った。
動機は分かっている。
きっとこれは消えて欲しくないと願う美海の思いだろう。
俺も遠ざけてきたものだ。気持ちが分からんでもない。
やっぱり美海は、不器用だけど優しい、そう感じた。
さて、それから数日。
俺は光と再び、漁協に来ていた。
こちら側の大人...勿論陸だが、呼んでもよかった気はするんだが、結局中にいるのは俺と光だけだ。
向こうには、今度は保さんがいるのだが。
「「「...。」」」
中には、数人の若い男性が、何やら複雑そうな顔でいた。
その中の一人が口を開く。
「その...先日は会議ぶち壊してしまって、本当にすまんかった!」
「すまん!」
とそれに続くように残りの人も頭を下げる。
...やれやれ、そんな気にしてないんだけどなぁ。
結局、怪我させたのは海側の人間だが、陸側としても少しは責任を感じているのだろう。
「...はぁ。顔上げてくださいよ。本題そこじゃないでしょう。それに、そんなに気にしてないから今は今の話をしましょう。それでいいよな光。」
俺は光に確認を促す。光は自分が傷つくより他人のことを気にするタイプだからな...。こういうことは聞いておかないと。
「俺としては、おじょし壊されたくらいだしな...。怒ってないわけじゃないけど、今の話はそこじゃないだろ。」
意外にも光は冷静だった。おそらく、少なからずとも事の重大さに気づいているのだろう。
そんなことに怒る余裕はないと。
「そ、そうか。それじゃあ改めて...。」
顔を上げると青年のひとりが話し出した。
「実は、俺らはお船引きをしたいと考えてるんだ。この前のぬくみ雪がおかしい事は俺らでも気づいた。きっとこのままじゃまずいことになるって感じた。でも俺らじゃ、何も出来ない。ただ海に頼るしか。だから、俺らはあんた達を手伝いたい、共にお船引きをしたいと思ってるんだ。...急に提案を蹴った俺らが口を叩ける立場じゃないのは百も承知だ。だが、許されるなら、手伝わせてくれ!頼む!」
それにつられて他の人も頭を下げる。
...はぁ。
頭を深々と下げて謝罪とか、そういうのはあまり好きじゃないんだけど...それがやり方ならしょうがないか。
「...どうするよ光。俺は全然構わないけど。」
「ああ。お船引きをやりたいのは俺らとしても勿論のことだしな。」
ここで意見を述べたのは俺ら2人だが、きっと学校の連中で、お船引きをやりたいと思ってる奴で意思が変わったヤツはいないだろう。
だからここは迷いなくokサインを出す。
「こちらからも、お願いします。こちらとしても、何とかしたいという気持ちは変わりません。なら、そこの理由はいらないでしょう。これから協力して、お船引きを作っていきましょう。」
こうして俺達は、お船引き完遂への一歩、未来への可能性の一歩を踏み出した。
あとちょいで50やん...。
とはいえ1期の終わりは見えてきた。
がんばろーる
また会おうね(定期)