---千夏side---
「あのねちさきちゃん。私、告白しようと思う。」
気がつけばそう言っていた。
これを聞いてちさきちゃんは一瞬だけ驚いて、すぐに微笑み直した。
「うん...頑張ってね。」
多分、気づかれてる。
私が誰が好きなのか、誰に告白しようとしているのか。
もし気づいたなら、複雑な気持ちになるだろう。
だって、今隣にいる人は、自分が告白した相手に告白しようとしてるのだから。私だって、もしそうなら困る。
ただ、ちさきちゃんはただ一言の応援で気持ちを片付けてくれた。
ここまでされたのだ。もう後には引けない。
「ありがとう。...私、行くね。」
そう言ってその場を早足で離れる。
告白すると決めたからか、少しだけ鼓動が早くなるのを察した。
教室へ戻る途中、外に傘を持った人影を見た。
美海ちゃん...かな?
よく見えないので目を凝らすが、予想通り美海ちゃんだった。
「何してんの?こんな所で。」
ドアを開けて美海ちゃんに声をかける。
「いや、今日はやってないんだなって。外から見てたけど。」
「そっか。とりあえず....中、入ろっか。」
ずっと雨の降っている外にいるのはまずいと思う。
これまでも何度も来てるわけだし、許されるはずだ。
美海ちゃんは私に導かれるがまま学校へ入った。
「どうする?一応行ってみる?」
「いや、いい。それより、千夏ちゃんと話したいことがあるの。」
「私に?」
疑問を持っても仕方ないので、とりあえず美海ちゃんについて行くことにした。
そして着いたのは人気のない場所。
...さっきと似たようなケースなんだけど。
「ねぇ、千夏ちゃん。好きになるっていい事だと思う?」
開口一番美海ちゃんはそう言った。
「いい事って言っても...ちょっと基準が分からないな。急にどうして?」
すると美海ちゃんは恥ずかしそうに、悲しそうに答えた。
「私ね...今年になって遥と一緒にいる時間が増えて、好きだって多分思ってるの。...でも、好きだった人はみんないなくなっちゃった。だから遥にしても、あかちゃんにしても、いなくならないって言ってるのが信じられなくて、怖くて...どうすればいいかわかんないの。」
美海ちゃんの前のお母さん、みをりさんはまだ美海ちゃんが小さいうちに亡くなった。私も良くしてもらった方だからあの時は悲しかったな。...お葬式には行けなかったけど。
多分、美海ちゃんの心境は私に似てる部分がある。
私達は、お互い島波君に好意を寄せてる。
でも、だからこそどうするかという点は違うみたい。
「私もね、島波君のことが好き。そして美海ちゃんみたいに、島波君がもし眠っちゃったらどうしようって思ってる。....でもね...私は諦めたくないって決めたの。だから私は告白しようと思う。...それと美海ちゃん。1つ、約束して欲しいことがあるの。」
お互いに島波君のことが好きなら、理由はともあれライバルだ。
だから私達は、平等に戦いたい。恋仲間として。
「もしお互いに島波君が好きなら、平等に争いたいの。どちらかだけが、の状況じゃなく、あくまでフェアに。」
「...うん、分かった。」
向こうも何かを決意したのかうんと返事をする。
重苦しい雰囲気になりそうだったので話題転換。
「さっ、それよりも話したいことがあったんだけど。」
...
そんなこんなで話していると、作業している方の部屋から呼び出しがあったので私と美海ちゃんとはそっちに行った。
中には先生がいた。何やら連絡事項があるらしい。
「うーん、みんな作業中でごめんけど、今日は雨が強くなるから帰れって言われたんだよね。明日にはきっと止むから、とりあえず今日だけ。あとそう、帰り道は色々と気をつけるんだよー。」
少しの反論はあったが当然上からの令を消せるわけでもなく、私達は帰らなければいけないことになった。
みんなぞろぞろと玄関へ向かい、履き替えては雨の降る外へと出ていく。私の周りにはいつも通り海村の生徒がまとまっている。
私は今日告白するつもりでいる。
タイミングは最悪かもしれないが、先延ばしにしてしまっては、精神の方がどうにかなってしまいそうだ。
だから勇気を持って1歩踏みだす。
「あの、島波君。ちょっと話があるんだけど...残ってくれないかな...。」
「...分かった。すまん光ら。先行っててくれ。」
私が自信なげに話したのを察したのかすぐに乗ってくれた。美海ちゃんも近くにいたが私が言ったことを聞いて先島君らの方へついて行った。ごめんね美海ちゃん。
そう言ってまだ履き替えてない私達はすぐ近くの空き教室へ向かった。今日何度目だろう。
今この部屋には二人きりだ。さすがに心臓が高鳴る。
「んで、話ってなんだ。さすがに長居すると先生に怒られるぞ。」
「うん、分かってる。すぐ終わる。伝えたかった事があるだけだから。」
ええと、どう言おう。なんて伝えよう。
かしこまるべきか、そうでないか。心臓の鼓動の早さのあまりその判断が出来なくなっていた私は、気がつけばこう口にしていた。
「島波遥君、私はあなたのことが好きです。」
特にないです。
前半終了に向けがんばろーる!
では次回
また会おうね(定期)