凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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やっと前半ラスト...。


第52話 運命の日

---美海side---

 

お船引き。

ついにこの日が来たんだ。

 

私の目の前には綺麗に化粧をし、姿を整えたあかちゃんがいる。

後ろの方で「僕は見ないぞ!」なんてパパが言ってるけど、こんなの見ない方が馬鹿だ。

あまりにも、綺麗すぎる。

 

そんな光景に私は、ふと遥を見た気がした。

もちろんそんなのあるはずもなく、私は哀しみを感じる。

 

こんなとき、遥はなんて言うんだろうな。

 

そんな考えを胸の奥に仕舞いこんで、ただあかちゃんを見つめる。

 

そうして、分かってるのにどうしても思ってしまう。

本当に、大丈夫なんだろうか。

頼ってばっかだった遥はここにはいなく、

当日だと言うのに私に出来ることは無く。

そんな状況で、もしもの時に私は何が出来るだろうか。

...できないのだ。なにも。

 

だから私はずっと見つめる。あかちゃんを、みんなを見守るだけだ。

 

 

 

 

---千夏side---

 

夜。

私はお船引きに使用されている船のひとつに乗り込み、手に松明を持ち、サポートしている。

あかりさんの乗る船は斜め前。船の前方にたってるあかりさんの姿は美しく、そして、ほんの少しだけ違和感を感じた。

 

すると遠くから、青色の揺れる炎のようなものが海の中に見れた。

 

「...きれい。」

私は汐鹿生の人間ではないのでその名前こそ知らなかったが、そこに美しさは感じていた。

 

...そういえば、汐鹿生の冬眠も今日なんだっけ。

その火を見てふとそんなことを思い出す。この火と冬眠に、何か関係があるのだろうか。

 

こうやって汐鹿生を見るのは初めてだ。

そして分かった。やっぱり私は海が、汐鹿生が好きだ。

揺れる水面に私は独り言をつぶやく。

 

 

私も、もしここの皆といれたならな...。

 

 

 

刹那、船体が大きく揺れ動いた。

一瞬バランスを崩し、海から飛び散ってきた飛沫を防ぐために右腕で目の前を覆う。

 

そして、その腕を除けた先に見えた景色に私は目を疑った。

「何...これ...?」

 

私の目の前には、多くの水の竜巻が発生し、私の乗っている船をはじめ、お船引きに参加している全ての船が取り囲まれる形になっていた。

 

「おいおいどうなってんだこりゃ!?」

 

「まさか海神様が怒ってんのか!?」

 

周りの大人が次々驚きの声を上げる。

その声、その視線には余裕が無い。当然だろう。

 

これを...島波君は読んでいたのだろうか?

もしそうなら...。

 

 

ううん、違う。そんなことを考えても意味が無い。

島波君はここにいない。ここにいるのは私だ。

 

島波君ならどうするか、さっきまでそう考えてた。けど今は違う。

私は答えを出す。島波君の代わりとかじゃなく、私という存在として。

 

「船を引いてください!!!このまま進めるのは危険です!被害が出る前に早く!!」

 

私の声を聞いて狼狽えてた大人は次々と船を下げていった。竜巻は前方に多いため、少なくとも前に行くよりは後ろに下がる方が安全だ。

 

 

そんな時、ひとつの大きい竜巻のようなものがあかりさんの乗っている船に直撃する。

 

まずい!それは...それだけは...!

 

私の想い虚しく、先頭にたっていたあかりさんは海へ放り出されてしまう。

不運なことに、放り出されたあかりさんは意識を失ってしまっていた。

 

「あかり!!」

そう言って同じ船に乗っていた先島君が海の飛び込む。

 

こんな渦の中、まともに泳げるのだろうか?

泳げない人はそう考える。

けど私は違う。エナを持っていて、海も泳げる。

 

...さんざんバレないようにしろと両親に言われてきたけど、流石に今はそんなこと気にできない。

 

気がつけば私は迷わず海に飛び込んだ。

理由はひとつ。あかりさんを助け出さないと。

 

冷たい。

慣れたはずの海、けれど、どこか私を嘲笑うかのよな冷たさを感じていた。

 

「おい!なんで水瀬がいるんだよ!!」

遠くから声が聞こえる。先島君の声だ。

その必死の中叫ばれた声に、私は最低限だけ答えた。

 

「その話は後!今はあかりさんを助けに行って!早く!」

「あ、ああ!分かった!」

そして先島君は一目散にあかりさんを探しに深く深く潜る。

 

 

一方の私は、他にエナを持ってない人が落ちていないか探しながら、荒れ狂う海を泳いでいた。

 

...見る限りはいない、か。

とりあえず一息をつく。

 

 

刹那、私の体を異変が支配した。

...!?

 

 

身体がだんだんと重くなる。まるで、眠りにつく海に誘われるかのように。

少しずつ息も苦しくなる。エナが薄れてきてるのだろうか。

 

 

まずい、一旦上がらないと...。

 

そう思って足をかき、手を動かすが、どんどん吸い込まれていく。

 

だめ...そろそろ息が...

 

そして私の体はそこで限界を迎えた。が、意識の方はまだ辛うじて残っている。

 

だが、意識だけ残り、身体が動かないというのは1番辛い状況だった。

 

身体がだんだんと沈んでいく中、何も出来ずにただ陸を見ているだけなのだから。

 

私のいた場所。陸。

何故か今はそこがとても遠い場所のように感じた。

 

 

少しずつ、意識も無くなっていく。

 

 

私には...帰らなきゃ行けない場所が...。

会わなきゃいけない人が...。

 

 

お父さん...お母さん...美海ちゃん...。

 

遥君...。

 

 

私は...

 

 

 

 

 

そこで、私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---美海side---

 

流れる。

また流れる。

海の流れ、人の流れ、時の流れ。

 

あの日、海は凪いでしまったが、時間はただひたすら流れていく。

 

あの日から、5年。

私はずっと、ある人を待っている。

 

 

鷲大師駅、電車の到着アナウンスが流れる。

私は奥を覗く。改札の向こうには、私の待ってる人がいた。

その人はこちらに気づき、手を振る。

そして改札を通り、その人は口開く。

 

「ただいま、美海。」

私に向けられた言葉。その言葉に私は笑顔で返す。

 

 

 

 

 

 

「うん、おかえり。遥。」

 

 

 




グダリました!
すいません!
はい、前半終了になります!
ここから数話、空白の5年間の後に後半といきます!
今後ともよろしくお願いします。

また会おうね(定期)
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