---遥side---
「光!!」
倒れてる光のそばへ駆け寄った俺は、すかさず上着を光の身体にかぶせる。全裸の状態だからこれは絶対必要だろう。
「先島、大丈夫か?」
後で着いた紡が声をかける。
が、意識はないみたいで、返事も当然ない。
どうしようかと一瞬悩んだが、俺はすかさず人工呼吸に入ろうとした。男どうしのキスになるがそんなことどうでもいい。そう思ってた。
もっとも、やろうとした直前に身体が動いたため、手前で止めたが。
「動いた...よな?」
一瞬の反応を見逃さなかった俺だが、念の為、紡に確認をとる。
「ああ、意識はあるみたいだ。だから、少しこのままにしてやった方がいいかと思う。」
ということだったので、光が目を覚ますまで合流した美海含めて俺らは待つことにした。
そして数分後。
その目が開いたと思えば、ガバッと起き上がった。
「まなか!!」
光は勢いよく起き上がりながらまなかの名を叫ぶ。
しかし、その瞳に映っていたのは巴日の白い光と、目の前に広がる凍りついた海だった。
光はただ、そんな光景を見つめたまま、何も言わなかった。
ただ、瞳に涙を浮かべてるだけである。
何を思っての涙だろうか。
大体の予想はつく。だからこそ、考えたくなくなった。
結局、俺も同じく辛いだけなのだから。
「光、起きたk『ドサッ』」
俺が声をかけようとした瞬間光が再び倒れる。呼吸はあるままなので、身体、精神両方のストレス、ショックで意識を失ったんだろう。
「...まいったな。とりあえず、俺が連れて帰ろうか?」
どのみち、このまま光を放っておく訳にもいかないが、紡は観測の続きが、美海も団体で来てるのでそちらに帰る必要があるだろう。
ならば、俺しかいない。
「ああ、そうしてくれ。」
「ごめん、遥。すぐに追いつくから。」
幸い承諾が取れたので、俺はすぐさま光を背負い、潮留家を目指して歩いていった。
数分後、家まであと2〜3分の所で美海が合流する。
「ごめん。足大丈夫?」
「問題ない。...さてと、もうちょいだったよな、美海の家まで。」
「うん。あ、この先右ね。」
「あいよ。」
余談だが、この5年の間で至さんはマイホームを購入した。
つまりのところ住所も変わってるが、何度かは訪れてるので問題はなく辿り着ける。
「それより、さっきの光の話だけど...。」
「5年前の話に関係してるかってこと?」
「ああ。」
光は5年間眠っていた。俺が気になってるのは、その間分の記憶だ。
とはいえ、起きてそうそうまなかの名を叫んだあたり、記憶は5年間止まったままで、あれは渦に飲まれる前の最後の記憶に関係してるのだろうか。
「うーん、はっきりは分からないかな。誰も光やまなかさんを見てなかったらしいし。ただ、誰も見てないってことは、2人は近くにいたかもしれないけど。」
「なるほどな...。ただ。」
俺はそう言って言葉を詰まらせる。その態度で俺が誰の話をしているのか美海は分かったようだ。
「千夏ちゃんは、本当に誰も知らないと思う...。光が起きてどこか知ってることがあるか、なんてところだと思う。」
「まぁ、急かさしても悪いし、光にはとりあえず十分休んでもらうか。っと、ついたな。」
俺の手は両方ふさがってたので美海に開けてもらう。俺個人であればインターホンあたりはやるべきだったのだろうが、幸い今は美海がいるので問題は無い。
「ただいまー。」
「おかえり美海。って遥君...と、光!?」
玄関で出迎えてくれたあかりさんは俺の背中を見て驚く。
そりゃそうだ。自分の弟が5年を超えてそこにいるのだから。
「ちょ、とりあえず美海、布団出して!客間!光寝かさないと!」
あたふたしながらあかりさん言う。落ち着いてないのは行動、精神、おそらくどっちもだ。
数分後。
落ち着いた様子なので改めて机の前に座りあかりさん、至さんと向き合う。晃は先に眠っているので乱入はなさそうだ。
あかりさんは光の無事を喜んで涙を流しているので、そこはそっとしておくことにした。という訳で話相手は...
「とりあえず、今回はありがとね遥君。光君をここまで運んでくれたこと。」
「いや、いいんですよそれは。それより、光は当面ここで住むってことになりますけど、問題ないですよね。」
「うん、そこはね。前のアパートも断然広いから、今回は問題ないと思うよ。...ところで、光君が海から上がってきた時に、海はどういう感じだったんだい?」
本題である。
信じ難い光景ではあるが、今この世の中どういうことが起こるか予測できない。であれば、こんなこともありえるだろう。
「それがですね...。」
それから俺は先程の様子を間違えることなく伝えた。
至さんは首をかしげていたが信じないには至らなかった。
「なるほど。その光が起点だったってことかな?」
「ええ、恐らく。ただ、あくまで細かいことは紡らに頼りましょう。
今回の件、絶対観測にも影響が出てるはずなので。」
「そうだね...。そうだ、今日うちに泊まってったらどうだい?.だいぶ疲れてるでしょ?」
んー、疲れたっちゃそうだけど、流石に条件が悪いな...。
「すいません、流石に泊まるには条件が悪そうです。なんで、もう少しだけここにいていいですか?」
「そうかい...。あと、うちにはいくらでもいていいからね。」
「ありがとうございます。」
そう言って俺は一旦その場を離れる。
ただ、帰る前にもう一度美海と話をしておきたかった。
さっきはそんなにゆっくりできた状況じゃなかったしな。
コンコンとドアを2回ノックする。
部屋から出てきた美海は、どうやら風呂上がりのようらしく、シャンプーの匂いがした。
「どうしたの、遥。」
「ん、ちょっと話したくてな。外、来てくれるか?」
美海はこくりと頷き、俺と共に縁側に向かった。
「で、話って?」
「ああ。...光が帰ってきたってことは、少なくとも冬眠が、少しずつ終わってきてんのかなって。...そんで、水瀬も帰ってくんのかなって思ってさ。」
「...。」
美海は下を向き黙ってる。
「...なんて、期待し過ぎだよな。まだ未来がどうなるかもわからないのに。」
「そんなこと、ないと思うよ。」
「そっか。...はぁ。また何か、この世界は変わるんだろうな。」
俺は空を見上げる。
頭上を流れた流れ星にお願いすることは、何も無かった。
展開が微みょい。
これは100行くぜよ
では次回。
また会おうね(定期)