凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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長くなったな...


第61話 変化

---遥side---

 

「くそっ、どこ行った!」

俺は軋む足など等に忘れ、ひたすら走り回り、美海を探していた。

 

数分前。

あの時見たのは無造作に脱ぎ捨てられていた美海の水色のパーカー。

少なくとも美海は、特別な事情でもない限りこんなことはしない。

 

まさか人が少ないと言う時に予感していたものが、こうも当たるとは...。

 

 

くそっ、マジで見つからねえ。

絶対にまずい状況になってるんだ、そうに違いない。

...なら。

もし、本当にまずい状況の時に、人は無意識で動くなら。

美海はどこへ向かう?

 

考えろ...場所、時間、状況。

そして、美海に思い入れがある場所、無意識に足がむく場所。

ずっと見てきたんだ。分からなくてどうする...!

 

考える。考えつめて...

 

...分かった!

 

と思ったのと同時に俺は再び走り出した。

今度は当てのないものではなく、ちゃんとした目標がある場所へ。

 

 

 

漁港跡。

雪がつもり、もう昔の面影は見えないこの場所は、俺と、美海にとって重要な場所なはずだ。

 

そう、あの日、美海と一緒に海に飛び込んだ場所だ。

 

もし、あの日のことが俺の自惚れじゃなければ、美海の思い入れのある場所というのは間違いない。あれだけのことがあったのだから。

 

なんて、何があったかなんて振り返る必要は無い。

俺は一旦荒れた息を戻し、落ち着いて美海を探す...

 

はずだった。

 

 

 

探し始めて1分足らずのうちに美海を見つけた。

しかしそこには危なげな男も見えた。誘拐でもしそうな、危なげな男が。

 

...どうにかして止めに行くか。

 

そう思った矢先のことだった。

 

 

 

ギィッ....ドオオオオオオンン!!

 

 

!?

 

俺は即座に音の鳴るほうへ振り向く。どうやら使い古され、錆び付いていたクレーンが落ちたようだ。

...いや、何が落ちたかはまだいいとしよう。

 

問題は、そこにさっきまで美海がいた事だった。

 

 

みっ...

 

 

 

 

「美海ぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

---美海side---

 

逃げる。ただ逃げる。

最初は開いていた差も、少しずつ迫ってきている。気を抜いたら...と思うと苦しいけど走り続ける。

 

そうしていつの間にか、私は漁港跡へと追い詰められていた。

距離を詰められ、ギリギリまで下がる。一二歩後ろはもう海だった。

 

「さっきはよくもしでかしてくれたなぁ?嬢ちゃんよぉ?」

噛み付かれた腕を赤くしながら一人の男が迫ってくる。その表情は怒りではなく、さっきと同じような表情だった。

 

「...一体、何のつもりなんですか。あなた達は。」

私は恐怖で少し震える声で尋ねる。もっとも、まともな返答なんて帰ったこないが。

 

「特に何もねえよ?ただ遊ぼうってだけの話でよぉ。」

 

この遊ぶという言葉が、私は1番怖かった。

ろくな事にはならない、それだけは分かっていたから。

 

 

助けが...ほしい。

 

私は自分の非力さを恨む。こんな時、誰かに頼るしかできない。

 

でも。

 

分かってる。私がいつも頼るのは、頼ってしまうのは...。

 

とても不器用で、優しい。私の好きな人。私のヒーローみたいな人。

 

 

その人は、私の視界の端にいた。見えた。

「はるk」

 

その名を呼ぼうとした時、私の頭上を影がおおった。

 

 

えっ

 

 

ギィ...と音を立て、少しずつその影は大きくなる。

私は頭上を見上げる。

 

そして、1歩、足を後ろに引く。

 

ただし。

そこには足場などなかった。

 

「あっ...」

 

小さな言葉を残して、私は深い海へと沈んでいく。

轟音は、遠くからすこしきこえてくるだけだった。

 

 

 

 

 

沈む。

 

深く深く、沈んでいく。

 

苦しい。痛い。

 

どうにかできないかと足掻いて、無力さを知ってやがて諦める。

 

あぁ...冷たいなぁ...。

 

私は一人、目をつぶった。5年前助けてくれた遥は、すぐ近くにはいない。ヒーローなんて、そうそう来るわけないと諦めていた。

 

あぁ、でも...。

 

好きって言った方が、よかったのかなぁ...。

 

私はいつの間にか、生きることすら諦めようとし、思考を放棄した。

 

目を閉じる。

 

 

 

 

 

...ピキピキ。

 

 

静かな海の中、耳を済ますと何処からか音が聞こえた。

 

(...なんの音だろう?)

 

目を開ける。次の瞬間、あるはずのないことが、私に起こった。

 

(...息が、できる...。)

 

理由なんてどうでもよく、私はすいすいと海の中を泳いだ。

 

こうやって見る海は初めてで、...怖すぎるほどに、綺麗だった。

 

 

 

「美海!!」

遠くから叫び声が聞こえる。いつかのヒーローは、遅れてやってきた。

 

「美海!...ってお前、泳げるのか...?」

近くによった遥が、改めて確認する。そのあと、私の肌から見慣れた光を見て、1人で納得していた。

 

「うん...。理由はわからないけど、全然苦しくないし、陸と同じように動ける。ねぇ遥、これってやっぱり...。」

「ああ。エナ...だろうな。間違いなく。」

 

私はそれを聞くと安心した。...これでやっと、同じ土俵に立てた気がしたからだろうか。

 

「んまあ、とりあえず上がって話をするか。あれらも片付けた事だし。」

 

 

 

あれ....?

大事なこと...忘れてた?

 

 

 

 

---遥side---

 

ありえなく、ありえる話。

海に沈んだ美海は、いつしかエナを持っていた。

しかしまあとりあえずだな。

 

...陸のごたつきをとりあえず終わらせるか。

 

俺は美海の手を引いて陸へと上がる。

陸ではチンピラ3人が未だに伸びていた。

 

 

〜過去〜

 

「ああん?なんだぁてめえは?」

美海が海に落ちたというのを確認した後、俺は飛び込もうとしたが、その前に手前3人のチンピラをどうにかしなければいけないと気づいた。

「そんなんどうでもいいだろ。...それよりてめえら、美海に手ぇ出したってことは、死ぬ覚悟あるってことだよなぁ?」

俺は精一杯拳を握る。ギリギリと音を立てる拳には多分、いつもの3倍は力が入っていたと思う。

 

「んだぁ?ガキがしゃしゃってんじゃねえぞ!!」

1人が殴りかかってくる。

俺はすかさず手でそれを受け止める。

 

「おっと。手を出したな、反撃させてもらうぞ。」

俺は空いてる手で精一杯のパンチを腹へ叩き込む。その男はそのまま倒れ込んだ。

 

実は誰にも言ってないけど...空手を習ってたから、これくらいなら倒せる。本当は振るうべきじゃないけど。

 

「この野郎!!」

残り2人も、似たようなもんだ。なにか武術ができるわけでもなさそうだったので、同じように片付ける。

 

所要時間は3分程度。

無駄足を踏んだ俺はすぐさま海へと飛び込んだ。

 

 

 

〜現在〜

 

「...生きてる?」

美海が倒れてる連中を見て心配そうに尋ねる。

「流石に人を殺す勇気はねえよ...。まあ、警察は呼んだから、数分で来ると思うぞ。...やれやれ、せっかくの休日だってのに、こんなことになるなんてな。」

「...ごめん。」

「美海は悪かないよ...。っと、一人起きた見たいだな、お話でもしてくるか。」

 

チンピラの1人が起きたのでとりあえず動機やらなんやらを確認する。

 

「おい、お前。首謀者が誰かとか言っといた方が、楽になるぞ。」

俺はしゃがみこんで威圧的に言う。

「うっ...。確か、上背のない、中学生のガキだった気がする...です。」

「...中学生か。よし、分かった。寝てていいぞ。迎え呼んでおいたから。」

 

その数分後、サイレンとともにパトカーがやってき、瞬く間に3人は連行されてった。さて、とりあえず一件落着かな。

 

美海の方歩こうとする。

しかし、その1歩はしっかりと踏み出せなかった。

 

...あれ?

 

ぐにゃっとするような感覚。俺はその場に倒れ込んだ。突発的な胸の痛みに苦しむ。

 

「遥!?」

 

倒れた音を聞いてか美海が駆けつけてくる。

 

「あー...ごめん、救急車...よろしく。」

そうとだけ言い残して目を伏せる。

 

俺は、海に飛び込んでは行けないことをすっかり忘れていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、搬送された先で大悟先生に激怒されたのは言うまでもない。




ここはまだ考えてたので...。
しかしまあ、きつい。
ここからオリ展開なんてねぇ!!

では次回。

また会おうね(定期)
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