凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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堕 文


第63話 白から黒、その先

---遥side---

 

このままだと、死ぬ。

それはあまりに簡単で、残酷な答えだった。

 

先生は続ける。

「まあ、前々からやばいと思ってたんだが、向こうの親御さんが手術させるかって所で渋ってな...、とりあえず手は尽くしてたんだが、流石にそれも限界らしい。これからの延命には手術は必須だ。」

「なんで...親が娘の命を助けるのに手術を渋るんですか。」

 

親と、小さい子の命の話。

俺は幼き日の自分に陽香を照らし合わせた。

もし、親からの愛情が陽香に届いてないとすれば...、きっと俺は、今すぐにその親を殴り倒しに行くかもしれない。

 

...ああいう終わりを迎えたけど、俺の親も、俺への愛があったのかもしれないのだから。

 

そんな表情の俺から何かを汲み取ったのか、先生はそれは違うと否定した。

「ああ、お前が考えてる理由とはちげえよ。もっと根本的な話。手術の難易度が高く、失敗する可能性も十分あるという事だ。まだどう転ぶかわからない状態で、リスクの大きい手術をさせるかって話だ。それに...。」

そう言いかけて先生は俯く。

 

「それに、どうしたんですか?」

「...いや、なんでもねえよ。とにかくだ。とりあえずここからは医者と患者との話だ。お前がどうこうできる話じゃない。...話はこれだけだ。」

 

最後の方は早口に、先生は言い残して直ぐに仕事の方へと戻って行こうとする。その白衣背中は、あまり関わるなと言うような忠告をしてるような、そんな気がしていた。

 

俺に出来ることは...ないのか?

 

悔しさから歯ぎしりをする。

 

あれから、少し大人になっただけで、何も変わってない。

無力のままだ。

結局俺は...。

 

 

 

それでも。

 

俺は拳を握る。強く。さらに強く。

 

それでも、そこから足掻いてきたのが、島波遥だろ...!

 

「先生!」

俺は叫ぶ。大声で叫んでも、ここなら迷惑になることも無いだろう。

「...なんだ?これ以上話すことは無いぞ?」

「あの、電話番号だけ、貰っていいですか?」

 

俺に出来ることが今はなくても、信じることは出来る。

噂なんか当てにならない。信用のあるものは当事者の言葉だ。

ならこれが、俺の精一杯の足掻きだ。

 

「...しゃーねえ。ほらよ。」

先生はしゃしゃっと番号をメモし、俺に手渡し、そのまま中へ入っていった。

 

今はここまで。後は...信じよう。

俺はまだ見ぬ希望に全てを賭け、ただ願い続けることにした。

 

もっとも。

 

そんな淡い希望は、数日後、一通の電話で打ち消されたが。

 

 

 

 

 

 

〜数日後〜

あれからずっと、陽香の身を案じていた気がする。

少しの間しか一緒にいなかったのに、何故こんなに気になるんだろうか?何故こんなに心配してるのだろうか。

 

ここまでの数日間、先生に電話をかけようとしたが、信じると言った自分に反するんじゃないか、とずっと手を止めていた。

 

あれから3日、いや、4日過ぎた。

流石に結果くらいは、聞いてもいいんじゃないだろうか。

そう思って俺は電話を手にする。

 

二三回コールの後、先生に繋がった。

「...もしもし。」

 

その第一声は、どこか暗い。

少し嫌な予感がするが、あえて気にしないと決めて続ける。

 

「もしもし、先生。俺です。」

「知ってるよ。...んで、何の用だ。」

話がないなら切れと言わんばかりの語気。いつもよりどこか刺々しく、余裕が無い。

 

「結果、教えてくれませんか?」

あえて深い言い方はしなかった。自分の気まで重たくなるのはごめんだ。

 

「......。」

電話の向こうからの返事はない。

「先生?」

 

「...チッ、今から病院、来れるか?」

先生は軽い舌打ちと共に、言葉を吐き捨てる。

 

時刻は4時。この時間なら迷惑になることは無いだろう。

夏帆さんも保さんも今日は仕事なので、書き置きだけしておけば問題は無いはずだ。

「行けます。じゃあ、切ります。」

「...ああ。」

 

そして電話が切れると共に俺は4日ぶりの病院へと足早に向かった。

 

 

 

 

 

病院へ着くと、受付の方に先生に呼ばれてる場所を伝えてもらった。

どうやら、また屋上のようだ。

 

俺はそれを聞きとどけると、迷わずエレベーターに飛び乗った。

 

「...来たか。」

屋上。一人の男性と、風で揺れる白衣が目に入る。

 

「...単刀直入に教えてください。どうなったのか。」

俺は会話の流れをぶった斬ってでも結果を聞く。

先生は苛立ちをどこかに吐き出そうとして、出来ていなかった。

 

やがて、何かを決心したか前を向き直した。

 

「お前、ここまで来たらもう引き返せねえぞ。」

「引き返すつもりなんて、ハナからないです。」

「そうかよ...。...お前だけは、巻き込みたくなかったんだがな。」

先生はもたれかかってる姿勢を少し変え、本題を始める。

 

 

「手術は失敗でも、成功でもない。そもそも始まってすらねえんだ。」

 

???

どういうことだ?

...いや、少し違うな。

何故だ?

 

「そんな、手術がまだ始まってないって...、一体どこがストップをかけてるんですか?」

「そこだよ。そこが一番の問題。」

 

先生はガンッと手すりを叩きつけ、持っていたケータイを投げてきた。

「っとと。」

慌てて取ったが間に合った。

先生はそれを指さしながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてみろよ。それ。それが、今回の原因だ。」

 

 




うーん、この...。
何かが足りねえ。
頑張るしか...。
では次回。

また会おうね(定期)
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