凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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第66話 運命はまた人を結ぶ

---遥side---

 

鈴夏さんから協力すると約束を受け取った後、俺は直ぐに街の中へと戻った。

正直、ここまで無茶な話だと本来はやりたくない。なにせ状況が漠然としすぎて、犯人のしっぽすら掴めてない。

でも、やり通さなければいけない理由がある。今の俺はそれだけで頑張れる気がしてた。

 

 

 

さて、どうしたものかな...。

とりあえず一通りの多いところに戻ってみたものの、どこから手をつければいいかわからず、俺は外れにあるベンチに座り俺は頭を抱えていた。

考えてるのは2つ。怪しげな場所の散策と、真冬さんのほうに伺うこと、この二択だ。

ただ、両方メリット、デメリットがあるからこそ悩んでいるのだ。

 

怪しげな場所の散策。確かに犯人の行動区域とかは詰めれば絞れそうだが、第一さっきも言ったが漠然としすぎて、現段階ではほぼ無駄足に近い。

 

では、訪問の方だろうか。これがあれば、少しは情報がしっかりとしてきて、漠然としてたものが絞られてくるが、名家であるがゆえ、取り合ってもらえない可能性が高い。結局取り合ってもらえなければ元も子もないのである。

 

 

...厳しい。

 

しかし、今回の事件で一つだけ幸いだったことがある。それは、時間を設けられていないことだ。

もっとも、こっちの都合は関係ないが、不自然に時間を設ければ警察に嗅ぎつけられそうと思ったのだろう。しかし、理由はともあれその事実は有難かった。

 

とはいえ、流石にのんびりとはしてられない。いつ、また陽香の容態が急変するか分からない限り、安全な状態で手術を受けさせた方がいいのだろう。

 

だから、できれば今日のうちに行動を起こしておきたいのだが。

 

そう思って座っていたベンチから立ち上がる。

とりあえず、昼食の時が近づいてきてるので、一旦近くの店にでもと思って歩きだそうとした時だった。

 

 

ドンッ!

 

「っとと、すいませんね。」

俺は人混みの中で誰かに当たってしまったと気づき、咄嗟に謝罪をした。が、当たった本人が見当たらない。

 

「?」

不思議に思ってよく周りを見ると、俺の足元に力なく座り込んでる人がいた。

 

「大丈夫ですか?」

すかさず俺は声をかける。しかし、帰ってきた声は聞き取りづらいほど弱々しかった。

 

「大丈夫...です。...すいません...。」

いや、絶対に大丈夫じゃないやつだなこれ。

 

「お詫びと言っては何ですが、昼食、まだだったら奢りますよ?」

 

別に機嫌を取りに行ってる訳じゃないが、元気の無い人を放っておけない性格上、自然と言葉を発していた。

 

「...ついて行っても?」

「ええ。持ちかけたのは自分なんで。...どこがいいです?」

「じゃあ...あそこで。」

 

そう言って指さされたのは街のオムライスの人気店だった。

小さい時に1度行ったことがあり、大学生になってからもよく行ってるので、ここの味は美味いとわかってる。

 

というわけで俺は二つ返事でokをだし、そこへ向かった。

 

 

 

俺は中で適当に昼食を注文した後、改めて名前を聞くことにした。

「すいませんが、名前聞いてもよろしいでしょうか?」

 

ついでにこの人の容姿について話しておこう。

身長は俺より10cmほど低いが、その綺麗でロングな黒髪と、美しい顔から、30代弱くらいの女性といったところだ。

もっとも、その顔が作り出している表情は、曇り、陰りしかなかったが。

 

 

「日野...真冬です。その...」

 

「えっ?」

 

その女性から出てきた名前に俺は思わず声を上げてしまった。

これは運命かなんかなのだろうか?あまりの事態に俺は数秒硬直した。

 

「その...すいません...。」

 

「いやいやいや!謝らないでください!俺謝ってもらうことなんてされてないですよ。...それよりちょうど良かったです。真冬さんに会えて。」

 

「そ、そうですか...。」

と言ったところで注文したものが来たので先に食べることにした。

 

内容的に食べながら話せるほど軽いものではないしね?

 

かといって急いで、味わって食べないのは俺の料理の美に反するので、これはこれ、あれはあれと一旦区切ることにした。

 

 

「...ところで、私に用って、何ですか?まさかあなたが...。いえ、なんでもないです...。」

互いに手が止まったところで、改めて今回の件について確認された。

 

ところで今、1部分気になるフレーズがあった。

「まさかあなたが...。」というところだ。

これを聞く限り、病院側からか、もしくは犯人からか連絡が言ったのではと考えれる。

ここで、さっき塞ぎ込んでいたことと繋がる。

 

ということは、真冬さんは、無理やり家を抜け出してきた可能性もあるのでは?

もし、さっきの場面、逆の立場だったとすると、俺は拒否してその場を去る行動を取ったと思う。

そんな中店に入るという行動とったということはまさかそういうことなんだろうか?

 

だとしたら、見つかるのも時間の問題だな。伝えたいことは話しておかないと...。

 

「あの...?」

「あ、はい!...待ってくださいね。」

とりあえず言いたいことは...ええと...。

 

やめた!行き当たりばったりでいいや!

 

「単刀直入に伝えます。陽香ちゃんの1件、手伝わせてもらっていいですか?」

「...!!」

場が凍る。真冬さんはと言うと下を向いて何かを考えているようだった。

 

やがて、弱々しく口を開く。

「あなたは...陽香のこと、知ってるんですね...。」

その表情は安堵してたのだろうか。少しだけ柔らかった。

 

「ええ、なにせずっと隣にいましたからね、入院中。それで仲良くしてもらって...、だから今、助けたいんです。」

 

 

と、そんな状況で先程懸念した通り、数名の執事のような人が入ってくる。間違いなく真冬さんのとこのだろう。

 

だって「ここにおられましたか」なんて言っちゃってるし...。

 

「真冬さん...。」

「...ええ、分かってます。ありがとう、少し落ち着きました。...よろしければ次は家の方へおいでください。」

立ち上がって遠ざかっていくその真冬さんの姿は綺麗な大人の女性、そのものだった。

俺はその背を見送りながら最後に伝えるべきことを伝える。

 

「分かりました。あ、最後に名前だけ。島波遥と言います。」

 

返事はなかったが、聞いたことがあったのか一瞬だけ驚いた仕草をみせ、手を小さく振って店を出ていった。

 

 

さてと...。

いつの間にか執事のような方にお会計まで済まされたようだ。レジで先程の方が、と言われた時はさすがに驚いた。

 

俺は外の空気を大きく吸う。

 

手がかりはいまだ掴めないが、確かに大事な一手を打てた。

 

さて、こうなったらもう引き返せないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は覚悟を決めると、向かうべき場所へと1歩を踏み出した。




うーん...むずい。
と言ってはや何ヶ月。
ここまで来たなら頑張ろう。

では次回。

また会おうね(定期)
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