凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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サブタイトルぇ...


第71話 Don't measure

---遥side---

 

それから数日間、陽香の容態が急変しないことを願いつつ犯人を追い、やっとの思いで足元を掴んだ頃、登録していない番号から電話がかかってきた。

 

「ちょっと来てくれるかな?」

 

この一言に導かれて俺が向かったのは、鈴夏さんの作業場だった。

 

「悪いね、こんな中で呼んじゃって。...いや、こんな状況だから、呼んだんだっけ。」

「どうしたんですか?」

 

いつもの鈴夏さんほどトゲトゲしてなく、元気の無い態度に俺は違和感を感じた。

 

「ほら、私ってさ、ずっと馬鹿一辺倒でさ、こういう事しか脳のない人間じゃない?...それでさ、思うのよ。今になって、自分がどれほど無力かって。あの子のこと、助けてあげたいのに、私に何が出来るのか、...分かんないんだよ。」

 

それは明らかな焦りだった。

自分に出来ることはないか、焦って探して探して、そして自分の欠点にぶつかったりしたのだろう。

「無力だなんて...」

 

「お世辞はいいから。」

鈴夏さんは俺を鋭く睨みつける。その鋭さから本気で思い悩んでいるというのが分かる。

 

でも...。

「お世辞なんかじゃないです。」

 

だからこそ、俺は曲がる訳には行かない。

お世辞を言った覚えなんてない。鈴夏さんに出来ることは確かにある。それは変わりない。

 

「じゃあ、私に何が出来るって?私に学なんて無いよ?」

「まず、何で学にこだわってるんですか?」

 

「それは...何でだろ?」

鈴夏さんはうーんと悩む。

 

自分の見解を述べると、鈴夏さんが学を引き合いに出すのは、きっと自分に無いものだから、と羨んでいるからだろうと思う。

 

自分にはこれが無いから無力だ、そういう考え方なんだ。

 

でも、そうじゃない。

人間を決めるのは学があるか無いかじゃない。そこで人間を判断されては、世界は回ってない。

 

つまるところ、他人より優れ、役に立つ部分があるかどうか、そういう事だと思う。

 

そういう点に関していえば、鈴夏さんは手先が器用な事をさせれば超一流だ。少なくとも身近でこれに及ぶ人はそう居ないだろう。

 

 

 

 

〜過去〜

 

5年前、おじょしさまを完成させた頃の話だ。

完成したおじょしさまを眺めて、大人達が口を揃えて言った。

「いやー、今年のやつはなかなかすごいんじゃあねえのか?」

「ああ、今までのを見てもレベルってのがちげえな!あぁ、でも...。」

「うん、あれだな...。」

 

「「10数年前のあれにはさすがに叶わねえなぁ。」」

 

 

 

 

 

〜現在〜

 

俺達が作りあげたおじょしさまは確かにいい出来だった。

しかし、これはあくまでみんなで作り上げたもの。

その10数年前のおじょしさまを作り上げたのは、当時の鈴夏さん一人だったらしい。

作った本人ならわかる。本気で作ろうと思えば思うほど上手くいかないし、どこか壁に当たる。

 

それを軽くやってのける鈴夏さんはそれほどまでに、すごい力を持っている。

 

 

 

それなのに、鈴夏さんはきっと、自分しか持っていない能力に自信を持てていないんだ。

俺は、それに気づいて欲しい。

 

「人間の無力さを決めるのは学があるか無いかじゃないんですよ。学があっても使えない人間は使えない。力っていうのは、他人より優れてる部分があるかないか、そういうことじゃないんですか?そういうことだったらほら、鈴夏さんはとっくにもう得てるじゃないですか。」

 

「あたしの...手?」

「そう、あなたの手です。」

 

鈴夏さんはそう言われて、少し嬉しげに微笑んだ。

「...そうだよな、私にはこの手があるんだ。請け負った作業は100%でこなす、それが私ってもんだ。今はまだできることが無くても、いつかきっと...!」

「そうですね。これから状況次第でバンバン頼らせて貰います。」

 

鈴夏さんは、だんだん自信を取り戻してきたのか、少しずつ元気そうに動き始める。

 

やれやれ、この人も結構単純だなぁ...。

そんなことを思ってみる。

 

しかし、鈴夏さんは手先とは裏腹に、内面が不器用だ。

こうやって、伝えないと分からない。不器用とはそういうものだ。

 

だからもうひとつ。

妹から預かったメッセージも、言わなきゃ届かない。

 

「そういえばですね。」

「なんだよ?」

「妹さんから伝言を預かってるんですが。」

 

「お前っ...!...たぁ〜、仕事早いな〜。...んで、真冬は私の事、なんて言ってたよ?」

 

何を思ってるのかは知らないが、鈴夏さんはとっくに頬を赤らめていた。

 

実際、告げたらもっと赤面したが。

 

「...参ったねぇ。こんな姉貴、いつでも捨てちまっていいのにさ。ずっと追いかけ続けて....、でも、ちょっと嬉しいかな。私の背中にちょこちょことついてきたあの頃と同じように、私を見ててくれたなら、ね。」

 

「1度、会ったらどうですか?」

 

「今更かい?...まあ、向こうが嫌じゃないって言うならそうしたいけどさ...。まっ、今は今。あの子が今、1番向き合ってあげなきゃいけない相手は私じゃない。また今度、全て片付いたら、あの子に会ってみようと思う。」

 

 

なんて話していて、俺は考えていた。

鈴夏さんにはこれがある。誰にも負けない鈴夏さんだけの武器が。

 

じゃあ、俺はどうだ?

ちょっと優れた学を持っているだけで、誰かの役に立てているだろうか?

自分で見た自分ほど、小さいものはないと、今ならわかる。

俺の取り柄ってなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、俺が言い聞かせたのは、俺自身だったのかもしれないな。

 

 




Don't measure
測るなという意味ですね。
...分かるか。

また会おうね(定期)
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