---大悟side---
「っふー、終わった!」
俺は一瞬自分の仕事を終えた達成感に浸り、また気を引き締めた。
こちらからは、向こうの様子は分からない。
とはいえ、今は祈るだけ。俺に出来ることは今はない。
ただ、あるとすれば...。
prrrr...!
電話が鳴る。あいつからの報告だろうか。
なら、それに越したことはないが...。
「よお、久しぶりだな大ちゃん!」
「は...!?お、お前かよ!!」
驚いた。うん、仕方がない。
ただ、俺がすーちゃんに電話番号を渡した覚えはない。じゃあどこから入手したか、というと...。
...まさかあの野郎、こうなること読んで...。
っはぁ...。やっぱあいつには叶わねえよ。
「...んで、何の用だ?こっちは終わったからあと結果待ちなんだが。」
「ああ、そうそう、結果、預かってるよ。ま、こうやってほのぼの喋れるってことは、分かるよな?」
そうだ。もし失敗なんかしてたらここも飛んでるし、電話だってもっと臨場感のあるものだ。
「...そうか。これで全部終わり、か。いやぁ大変だったなほんと。...今回は協力、ありがとなすーちゃん。」
「全然、お礼を言うべきなのは私のほうかもね。...もっとも、お互い、お礼を言うべき相手が違うか。」
「そうだな。」
そこはもちろん、分かっている。
あいつはトラブルメーカーで、絡んでしまうとろくなことがない奴だけど、それでもあいつには感謝しなければいけないことが多数ある。
こうやってまた、あいつと縁を持たせてくれたのも、感謝しないとだな。
なぁ、島波遥。
「ところで、今度どこか遊びに行かないか?仕事の都合が合えば、の話だけど...。」
「それってデートってやつのお誘い?...いいよ。お互い話だってあるだろうしさ、それにまた、子供心に帰って街で色々やってみたりする?」
「ははっ、それは遠慮しとく。仕事でバリバリ体を使うすーちゃんのと違って俺はもうそんな動かねーしな。それじゃあ...」
...
今回の事件、危険だったけど、沢山のことを教えられた。
そしてまた、自分を見つめ直し、変わろうと1歩を踏み出せた。
あぁ、分かってる。一言じゃすまないって。
それでも言わなきゃいけない事があるだろう。
ありがとう。
---陽香side---
目が覚めた。
そこには、私がちゃんと居た。私は生きていた。
どうやら、手術は上手くいってくれたみたい。
まだ頭がぼーっとして、体は動かせそうにない。
けれど、私の手を握ってくれている人の温もりは、ちゃんと伝わっている。
「おはよう、お母さん。」
〜過去〜
手術を受ける2日くらい前だったかな。
私の部屋に入ってきたのはお母さんだった。
すこし後ろめたい表情で、それでも優しい目で。
お母さんはそこに立っていた。
「あれ?お母さん...」
「陽香、ごめんね...今までずっとそばにいてあげられなくて。」
お母さんは俯き、後悔を隠せないように呟く。
ごめんね...か。
確かに私は寂しかった。
起きても誰もいないベッドの上。時々会いに来てくれるのは使いの人だけ。
そんな、一人でいることに慣れていた私を変えてくれたのは、遥お兄ちゃんだった。
それから私は、誰かといることの喜びを、ちゃんと自分の体をもって知った。
けど、一人でいることも嫌じゃないまま。
あぁ...、でもやっぱり。
私はベッドのそばまで来たお母さんの手を握る。
「お母さんの手、暖かい。」
やっぱり、誰かといる、1人じゃない空間の方が、私は好きかな。
〜現在〜
それから今日まで、お母さんはずっとそばに居てくれた。
家のこともあるはずだけど、多分それも投げ出して。
あの日私が握ったことでもう一度繋がった手。
それは今も、繋がれたまんま。
私を助けてくれたこと。
本当の気持ちに気づかせてくれたこと。
もう一度、お母さんと手を繋げたこと。
ここに遥お兄ちゃんはいないけど、それでも私は遠くに一人呟く。
「ありがとう、遥お兄ちゃん。」
---遥side---
「はぁ...、疲れた...。」
思わずため息をこぼし、1人歩く帰り道。
無理もない。今は朝の五時。日の出までまだ1時間はありそうだ。
なんでこんな時間かって?
そりゃあ色々原因はあるけど...。
昨日、パトカーに連れてかれた俺は、ずっと警察の方とのお話、質問、真意を聞かれたりと、休ませてくれない状況にあった。
本当はのんびりやってもよかったらしいけど、「今のうちに済ませましょうか。」なんてこっちが言ったもんだから、ぶっ通しで行われた訳だ。警察の方、ごめんなさい。
急いだ理由、それこそ特にないが、鷲大師から離れてた時間が長いぶん、そろそろ美海に何か勘づかれそうだったので、早いとこ終わらせて帰りたかったのだ。
まあ、その分今日休んだ後で帰るだけの時間はあるが。
数分歩くと家に着いた。
とりあえず荷物をと思って奥の方へ入ろうとした瞬間、元気よく電話の音が鳴った。
おいおい勘弁してくれよ...こんな朝っぱらから。
なんて鬱な気分になりながら受話器を取る。
「もしもし...」
「遥!?今そこにいるの!?」
電話相手は美海だった。それにしてもえらく焦っているような...。
「どうした美海、一旦落ち着けよ...。」
「落ち着けない!いいから聞いて!」
何かが最高潮のまま美海は俺へ言った。
「兎に角、急いで鷲大師に帰ってきて!そのまま海まで来て!!」
後日談系は苦手かな?
まあ、次回から本編。
そのための、プロローグ
また会おうね(定期)