---遥side---
「どういうことだ?急いで帰ってこいって。分かったからせめて理由だけは教えてくれ。」
美海の願いとだけあって聞き入れるつもりだが、それなりの理由は欲しい。
「あっ、うん、まだどうなるかは分からないけど...
帰ってきたの、千夏ちゃんが!」
---美海side---
今日は一段と早く目が覚めた。
休日だからもう少し休みたかったけど、いつもよりどこか冷たい寝起きに、完全に目が覚めてしまったみたいだ。
リビングに向かうと、パパが新聞を読んでいた。あかちゃんはまだ起きていないようだ。
「あれ?おはよう美海。えらく早いね。」
「なんか目が覚めちゃって...。ねえパパ、ちょっと今日寒い...というか冷たくない?」
「んー、どうだろう?いつも通りだと思うけど...。」
パパは何も感じてないようだった。
ただ、これが、エナがあるかないかが理由なら...どうだろう?
私には、エナがある。
だからいた仕方がない気もするけど...。
海が...気になる。
「ねぇパパ、私ちょっと散歩行ってくるね。」
「ん?ああ。朝ごはんまでには戻っておいでね?」
「わかってるよ。...それじゃ。」
外に出ると、やっぱりどこか冷たさを感じた。
それに...海の様子がちょっとおかしい。
どこか...巴日の日に感じた時のような...。
私は少し早足で、海の方へと向かった。
「一応ついた...けど...。」
とりあえず着いたが、特に何もおかしなことは無い。私は専門家じゃないから、細かい事がどこで起こっているのかなんてのも知らない。
気のせいかな...。
そう思って踵を返そうとした瞬間、謎の光が海を覆った。
えっ?
私は咄嗟に目をつぶる。
そして再び目を開けた先に、そこに一人の少女が倒れていた。
絶対に見間違えるはずのない、私の大切な人。
「ちなつ...ちゃん...?」
それは5年前の、あの日と同じで...。
---遥side---
急ぐ。ただ急ぐ。
始発電車に飛び乗り、俺はただその身を案じていた。
水瀬が、打ち上げられた。
まだ目は覚めてないらしいが、心臓は動いているらしい。
普通なら、どんな顔して会えばいいか分からないだろう。
ただ今は、ただ会いたい、と、その気持ちだけが俺の体を支配していた。
鷲大師駅へつくと、俺は荷物を近くのコインロッカーにしまい込み、そのまま走って海へと向かった。
海に来てとしか言われなかったが、美海が大体どこにいるかは想像がつく。
俺はひたすらそこを目指して走った。
海辺に着く。
氷が張っているちょうど上、光を見つけたあの日とほぼ変わらない場所くらいだろうか。
美海はだれかを抱えて座っていた。
ということは...
「美海!!」
俺は落ち着くことが出来ず大声をあげる。
しかしその大声が歓喜のものだったかどうかは、俺は知らない。
「あっ、遥!」
美海はこちらを振り向き、そしてまた元の姿勢に戻る。
俺は歩いて近づいていく。すると美海が今何をしているのか、そこに誰がいるのかが見えてくる。
美海の膝に乗っていたのは、あの日と変わらない水瀬だった。
「本当に...帰ってきたんだな。水瀬...。」
俺はそうとしか言えなかった。
心の底の方から湧き出てくる沢山の感情。5年前のあの日のこと。伝えられなかった想い。複雑な全てが、俺の中で蠢いている。
余計なことを言ってしまえば、どこかでそれらが漏れるようで。
だから俺は、それ以上は何も言えなかった。
「まだ目は...覚めてないのか?」
電話を受けてから1時間ほど経ったが、まだ目を開けていない。
「うん。電話をかけた時と同じ状態。ずっとこのまま。」
美海が首を横に振る。どうやらこればかりはどうしようもないと諦めているようだ。
「そうか...。どうする?これから。なんなら今から大悟先生に連絡するのもありだけど...。」
と言ったところで俺は言葉を濁す。その理由を、美海は汲み取ってくれた。
「まあ、そうだよね。光が検査を受けた時も、特に何もなかったから、多分今回も影響、そんなにないんだと思う。」
「あぁ、まだ一回しかこのケースがなかったから確定は出来ないな、とは思ったんだけど、あったとしてが想像出来ないんだよな...。」
とりあえずは様子見だな、ということで、俺と美海はここで待つことにした。
「ところで美海、なんであんな時間に電話かけたんだ?」
「うん...朝目が覚めた時にね、ちょっと冷たいなって感じたの。今はそうでも無いけど。それで海を見に来たら、この状況。」
「なるほどな...。」
しかし、美海が言ったように冷たさを感じられない。おそらく、今の間で何かあったと思われる。
「んで、その冷たさを感じなくなったのがどれくらいだ?」
「千夏ちゃんを発見した時。...わかるよね、巴日の日のこと。あの日みたいに海が光ったの。それも今回は前より強く。」
つまり、そこが起点だった、と見て間違いなさそうだ。
「ん...。」
「「!?」」
そうこう話している内に、水瀬の意識が戻った。
「おい水瀬!」
「千夏ちゃん!」
「...んん、おはよう、美海ちゃん。それと...
すいません、そこの人、誰ですか?」
ひねりが欲しい。
もうそろそろ浮上出来んくなりそう。
まあ、頑張る。
また会おうね(定期)