凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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こういうパートは今まで書いたことねーよ!!


第78話 夢を見させて

---美海side---

 

「遥!?大丈夫!?」

私は遥の近くへ駆け寄り、体を揺する。けど、遥かの目は開かない。

念の為遥のおでこを触ってみる。

 

...冷たい。

 

生きているのかどうか不安になるほど、遥の体は冷えていた。ここに来てから長いのか、手足も少し凍傷を起こしかけている。

 

なんでこんな日に限って...!

空が冷たいの...!

 

私達を嘲笑うかのごとく、雪はいっそう強さを増した。

遥の、呼吸による体の動きも、次第に弱くなってきている。

 

...どうしよう?

 

来た道を一応覚えてるからわかるけど、近くに電話なんてなかった。

だから誰かを呼ぶってことは出来ない。

 

かといって遥を家まで運ぶのも...おそらく無理だ。

距離も遠いし、体力にも無理がある。

 

 

そんな中、ふと、私の目にあるものが入った。

 

...なるほど。これなら。

 

それ以外の方法が無かった私は、遥を無理やり背負い、そこへ向かった。

 

「重っ...、運べるかな...?」

因みに後々考えたが、普通私が遥を持てるはずなんてなかった。

けど今は何故だろうか、なんとか持てる、そんな気がした。

 

 

 

見た目は真新しい、ひとつの廃倉庫。

中もそこそこ綺麗で、とりあえず待機するには十分。

しかし、廃倉庫とだけあって中身は殆ど空に近かった。

 

小さなガスコンロが1つ、まだ綺麗な毛布が1つ。

使えそうなものはこれだけだった。

 

「これって遭難、ってやつなのかな...。」

もう一度外に行って遠くを見てみる。汐鹿生とはもう3〜4kmほど離れていた。

 

私一人なら歩いて帰れない距離じゃない。けど今は...。

 

 

千夏ちゃんのそばにいれるのは私だけ、遥はそう言った。

 

でも今、遥のそばにいれるのは、私だけなんだ。

だから、5年前のあの日決めたこと。

 

遥を傍でずっと支える。それができるのは、今なんじゃないかって。

 

私の頭に引き返すなんて言葉はなかった。

 

 

 

それから時間が経った。

 

1時間。

 

2時間。

 

それでも遥の目は覚めない。

私も疲れからか次第にうとうとし始める。

 

あれ...、今、何時だっけ...。

 

まあいいや、少し、眠ろう...。

 

 

...

 

 

 

 

 

「う...ん...。」

また数時間後、目が覚める。

外の様子を見る。辺りはだいぶ暗くなっており、おそらく夜だというのは推測できる。

 

ここからまた、冷えてくるだろうな...。

それに、今日は家に帰れそうにない。

まあ、事情が事情って割り切ろうか。パパ、ごめんね?

 

「さてと...ここで心中、ってのも考えれるかも...。」

なんて冗談か本当かわからない独り言をつぶやく。でも、不思議と怖くはなかった。

 

 

「んん...。」

その時、ちょうど遥が目を覚ました。が、いい顔はしていない。

 

「遥...」

 

「あ?ああ、ああああ....。」

「!?どうしたの、遥!?」

すごく苦しそうな顔で、遥が呻き声をあげる。それは、何かに魘されるような感じで。

 

 

「もう、もうやめてくれ...。苦しい思いは、もう嫌だ...!」

遥は魘されながら、涙を流す。

 

ダメだ。今の遥は、正気を保っていない。

このままだと、精神まで壊れちゃう。

 

そんなこと、させたくない...!

 

だから。

 

 

 

 

「ごめんね、千夏ちゃん。」

 

 

 

 

 

私は、咄嗟に遥の唇に唇を重ねた。

 

 

 

この、私の最愛の人へのキスは、私にとって、遥にとってもきっとだろう、初めてのキスだった。

 

 

少しではなく、やや長い時間。

遥の息が落ち着くまでのその時間、私はずっと遥に深く、濃いキスをした。

 

ごめんね、千夏ちゃん。約束、守れなくて。

でも、今だけは、遥を楽にさせてあげて...。

 

 

 

 

「...美海は、そこにいてくれてるのか?」

正気に戻ったであろう遥は、目を閉じたままそう呟く。

 

「うん、ちゃんと、遥のそばにいるよ。」

私は小さな声で、でも力強く返す。

 

すると同時に、遥は私に抱きついてきた。

中途半端な体制だった私は、それに引っ張られるように倒れた。

 

「きゃっ!?...は、遥...?」

「お願いだから...どこへも行かないでくれ...。」

 

遥はまだ目をつぶったまま、私を抱きしめている腕を離さないでいた。けど私は、その腕からかいくぐることはしなかった。

 

少なくても今日だけは、その傍から離れないと決めたから。

例え遥が獣となって襲ってきても、私は受け入れる。

 

だって、私は遥が好きなんだから。

 

 

 

夜は冷えた。

外気が倉庫を構成している鉄をすり抜けて入ってくる。

 

だから体温が下がってしまわぬよう、私と遥は同じ毛布で一緒に寝ることにした。

言い方を変えれば温め合う、そういうことだろうか?

 

私と遥は、そんな毛布の中でお互い抱き合っていた。

今は邪魔するものは何も無い。お互いの心くらいだった。

 

「悪いな美海。こんなのに付き合わせちゃって。」

「ううん、いいの。...ただね、お願いがあるの。」

 

そう、約束を破ったからと言って、破ったままではいけない。だから...

 

「今日のことは、ずっと忘れて欲しいな。私のキスも、体温も全て。」

「...いいのか?それが美海の願いなら、俺はそうするけど...。」

「うん、いいの。だからね...せめて今日だけは。」

 

 

 

夢を見させて。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は聞こえないように、そう呟いた。




うーん、描写もうちょい細かくした方がいいかな?
とはいえ、悪くない出来。
因みに書き溜めです。

また会おうね(定期)
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