---遥side---
夢を見た。
遥か遠く、昔のこと。
俺は、海の中にいた。そこは青く、青く、綺麗な海。
そして、いつかの汐鹿生にそっくりだった。
ただ、そこは俺の知らない汐鹿生だった。
(ここは...?)
見たこちがあるはずなのに、見慣れない海。きっと、かなり昔の話なんだろう。
1人の男性がいた。
広い海で、どこか窮屈そうな暮らしをしている。そんな人。
その人は、どこかで見たことあるような人だった。
(ウロコ様...?)
やがて、そのウロコ様に似た人の側に、一人の女性が来た。
...おかしいな。どうやって来たんだろう?
夢の中では、さすがに分からなかった。
さて、またしばらくしてそのウロコ様に似た人と、その女性の間に、二人の子供ができた。
俺が見せられたのは、そんな4人が幸せそうに暮らしている様子。
...そのはずだった。
パリンッ。
また、いつか聞いたような音がした。それは、現実で。
その女性は、海から上がろうとしていたのだ。
理由は知らない。けれど、どこか大切なものを、陸に忘れたような、そんな様子だった。
ウロコ様に似た人はずっと悩んでいた。きっと、今の生活は楽しい、ということそのものだったのだろう。
だからずっと悩んで...その果てに、その男の人は女の人を陸へ返した。
ただ一つ、好きになる気持ちを奪い取って。
(...。)
何も言えなかった。
ただ一つ、言えることはあった。
こんな結末...悲しすぎる。
きっとそれは、女の人にとって大切なものだった。
大切な...もの...。
あれ?俺は今、なんで夢を見ているんだっけ...?
...
意識は醒めないまま、また新しい夢を見た。
今度はよく見た事のある景色。
俺の知っている汐鹿生だ。
まだぬくみ雪もなく、暖かい汐鹿生。
(この温かさ...どこかで...。)
ふと、俺の目に写った景色。
あれは...
(父さん、母さん、そして...俺か。)
ならおそらく、次見せられるのは、家を出ていく2人の姿だ。
(ここが...始まりなんだな。)
そう、全てを失ったことから始まった今の俺の、始まりの地点。
(あぁ...、この光景を、止めれたらな...。あっ?)
そんな願いはもちろん届かず、俺は急に夢の中で大波に攫われた。
だが最後に、少しだけ親の顔を見た気がした。
...
それから見せられた光景は、全て俺だった。
みをりさんと出会い
中学生になり
水瀬に出会い
大切なものに包まれ...
全部奪われた。
みをりさんも無くなり
光らと同じ道を歩むことも出来ず
1度は好きと言おうとした相手の記憶にも、もう自分はいなくなってた。
悲しい。
寂しい。
また一人になるのか...。
あぁ、分かっていたのに。強くなった気がしてたのに。
結局未来は変わらない。
俺の大切なものは、全部奪われていくんだ。
きっと、今1番近くにいてくれている美海だって、いつかは...。
...苦しい。苦しくて、苦しくて、もう狂ってしまいそうだ。
俺を1人にしないでくれ...誰かそばにいてくれよ...。
(やめてくれ...もう、苦しい思いはしたくない...)
その時、意識の向こうから声が聞こえた。
何度も何度も俺を呼ぶ声。
そして脳が溶けるような、熱くて濃い唇の感触。
ああ、この声は、この感触は、暖かさは...。
不意に涙がこぼれた。きっと、悪いものでも見せられていたからだろうか?
もう、そんなことどうでもいい。
【愛すべきものは、失わないように愛し抜こう】
俺の脳裏には、もうそれしか残っていなかった。
それが歪んだ愛だとも知らず。
目を開けると、そこには美海が慈しむような目で俺を見ていた。
少し肌寒い。俺はそんな中でずっと外にいたようだ。
意識が戻って初めてわかったが、手足が少しやられているようだった。
けれど。
そんなこともお構い無しに、俺は美海の手を引いた。そのまま自分の方へ倒れ込んでくるように。
美海は軽く悲鳴をあげたが、俺の行動を止めはしなかった。
さて、手を出してしまうのか、と言ったところで、俺の頭に、美海がまだ中学生であることが残っているのを確認した。
そうだ。俺達はカップルなんかじゃない。もっとこう、別の何かだ。
けど今は、その温かさに甘えさせてもらおうと、俺はそのまま美海を抱きしめ、もう一度眠りについた。
---美海side---
目が覚めた。朝は6時くらい、雪は止んだが、まだ結構冷たさが伝わる。
隣の遥を見やる。まだ眠っていたが、さっきまでのような苦しそうな形相ではなく、安らな顔をしているので、きっと今は大丈夫なのだろう。
ふと、昨日のことを思い出す。
遥にファーストキスをして、抱き合って、襲われはしなかったけど、そんな大人な時間を過ごした。
恥ずかしいと思う。...本来なら。
けれど今は、何故かそんな恥じらいは一切感じなかった。
といっても、夢はここまで。
これからは今まで通りの関係に戻ってくれるだろう。
...まあ、ここまで来たら遥の面倒、最後まで見なきゃいけないだろうし、そこはやり遂げようか。
数分後遥が目覚める。とても良さそうな寝起きだ。
「おはよう。遥。...早速だけど、今から帰れる?」
「おはよう。...でも、俺に帰る場所なんてあるのか?」
その目には迷いがあった。
当然だ。今遥の心はダメージを負っているはずだ。そんな中で千夏ちゃんとは向き合えさせれない。
でも、もう一つだけ、遥のことを家族のように思ってくれている人がいる。だから...
「うん、あるよ。だから、一緒に帰ろう?」
「...いいのか?」
「うん。きっとそこが、今の遥の帰るべき場所だから。」
おい?話数があかんのだが?(多い)
夏休みも終わり際。
のんびりふらりでやってきましょう。
また会おうね(定期)