---美海side---
「一緒にお風呂、どう?」
一瞬、耳を疑った。あかちゃん、何言ってるの...?
「は、はぁ!?なななんでそんなこと出来るわけ!?無理無理無理、絶対無理だから!!」
私は赤面しながら叫ぶ。遥に聞こえてるかなんて心配は頭になかった。
「んー?私は至さんにやってもらったけどなー?」
「それとこれとは違うでしょ!パパとあかちゃんはその...、夫婦なんだし...。」
「あはは、冗談冗談。...いや、少し冗談じゃないけどね。」
「どういう事?」
するとあかちゃんは症状について語りだした。
「あれは一見、ただ陸で身体が冷えただけかと思われがちだけど、実はもうひとつ、自分の中に引き起こす原因があるの。私も初めて聞いた時は馬鹿じゃないの?って思っちゃった。」
「それって...?」
「うん、それは、本人の心の問題。専門家が言うには、外部的影響で自分の心に欠落が生まれてしまった人で、エナを持ってる人間にのみ起こる病気らしいの。つまり遥君が抱えてる心身的ダメージは、美海が思ってるより大きいはず。...だから、今そんな遥君のそばにいれるのは、美海だけってこと。」
嘘だ。こんな理不尽な病気があってほしくない。
だってこれは、あまりにもズルすぎる。
...でも、面倒を見るって、最後までそばにいるって決めたのは私だ。
約束もそうだけど、自分の核である、決意だけは嘘をつきたくない。
結局私は風呂場に向かう。
一歩一歩、踏み出す足は次第に重くなってゆく。
最後に遥とお風呂に入ったのはいつだっけ?
確か、まだ私は、小学生にもなってなかったかな...。
そして私はドアを開ける。
「み、美海!!?」
浴槽に浸かっていた遥がガバッと音を立てて驚く。
「ちっ、違うの!これにはちゃんと理由が!!」
なんて言っても、そう信じてはもらえないだろうな。
一応ちゃんと大事な部分は隠す配慮はしてるけど、それでもやっぱりこの歳だと恥ずかしい。
でも今更戻るなんて訳いかないし...。
あぁもう!あかちゃんのバカ!私のバカ!
まあ、突っ立ってても何も始まらないし、とりあえずシャワーでも浴びようかな...。
「...お、おう。まあ、落ち着いたからいいや...。」
私が固まってる時間が短かったからか、遥は少し戸惑ったが、何故かしら落ち着いてしまったようだ。
私に対して、何も思うところがないのかな...。
なんて思って見た遥の視線は、完全に私の身体を捉えていた。
「何?」
「...いや、大きくなったなって。」
「...変態。」
「何が!?」
遥はほんとに、こういう所に鈍感だ。
男ってみんなこうなのかな?なんて思ってしまう。
パパだったら...。
...。
もっとひどい結果になりそうだな。
「...いや、あれだよ。こうやって一緒にお風呂入るのって久しぶりじゃん。それで、改めて美海を見ると、あれから成長したんだなって、綺麗になったんだなって、思うところがあるんだよ。」
「...やっぱり、変態じゃん。」
そう呟いたが、別段悪い気分でもなかった。
遥は、ちゃんと私を見てくれている。
遥の眼中に私がいる、それだけで少し嬉しかった。
「それで?改めて聞くけどなんでこのタイミングで?」
「...あかちゃんに嵌められたの。」
「それはまた...。」
実際、あれは嵌められたようなものだ。
とはいえ、最終的な決定は私の意思だから、そこはなんとも言えない。
そこからはお互い行き過ぎた干渉なく、ただ時間が過ぎていった。
目を合わせれば恥ずかしいだけだし、声を聞けば詰まりそうになる。
とりあえず、やましい話は一旦なしにした。
「そういえば美海も、風呂に海水と同じぶんぐらいの塩を入れてるのか?」
「...うん、そうだね。エナが分かってそれからは、ずっとこうしてる。確かに、時々忘れたりすると少し苦しくなることもあるよ。5年前、寝る前に光が自分のエナを濡らしてた事があったけど、今ならその気持ちがよくわかる。」
「そうか。」
そして遥はさらに深く浴槽に浸かる。
遥が何を考えてたかは知らないけど、こういう時の遥は、だいたい難しいことを考えてるから、私にはきっと無理だ。
「なぁ、美海。」
「何?」
「本当に俺、これからどうすればいいのかな?」
どうすればいいか。
聞く側としてはすごく気分が楽で、答える側はすごく重苦しい言葉だ。
ましてや、どうして欲しいか、私自身が分からない。
こんなに近くに遥がいる生活は考えてなかった。
だから今こうしていることに、すごく戸惑っている。
もちろん、嫌なわけじゃない。私は遥が好きで、だから一緒にいられるということは嬉しいに決まってる。
けど、これが正しい選択かなんて、決めれるはずもない。
だからせめて、今は時間が欲しい。ちゃんと答えを出すために。
「私にもわからない。遥のことは結局遥自身の問題だから。...もう、5年前のあの日みたいに何も考えず言えることは無いよ。ただ、ただね?
......ちゃんと答えが出るまでは、ここにいて欲しいな。」
「そうか...。そうだよな。...分かった。とりあえず今は、それに甘えさせてもらおうかな。」
遥もいろんなものを抱えてる。
私もいろんなものを抱えてる。
もちろん、お互いきれいさっぱりそれが無くなるなんてそれは遠い未来だ。
だから今は、せめて前だけを向きたい。
特にないよー。
がんばろーる!!
また会おうね(定期)