凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

86 / 112
特になし


第86話 欠落

---千夏side---

 

目が覚めた。

随分と長く眠っていた、そんな気がする。

辺りを見渡す。それは、私の知り得る海ではなかった。

 

起きたすぐそこに人がいる。

1人は美海ちゃん、それともう1人は...

 

 

...

 

 

 

誰だろう?

なんで私の全く知らない人がここに...?

それに、美海ちゃんと分かったけど私が知ってる美海ちゃんより少し大きい。私と同じくらい。

 

...どういうことだろう?

 

 

私は思うままに誰ですか、と呟いた。

その男の人はどこか放心した顔で、どこかへフラフラと歩いていってしまう。

 

...何か悪いことしちゃったかな。

でも、確かにしらない。《覚えてない。》

 

 

あれ...?

 

 

 

私、何があったんだっけ?

 

 

 

 

 

 

〜数日後〜

それから私は色々と聞いた。

お船引の最中、汐鹿生の冬眠に巻き込まれ、5年間眠っていたこと。

そこからふつふつと5年前のことを思い出してきた。

ただ、私にとってのそれは、昨日だった。

 

私としては、少し長く眠ったかなって、そんな感じ。

正直、ただ眠ってただけなのに5年間もたってるとなると気分が悪い。

 

そういえば、色々思い出してきているのに、何か足りない気がする。

 

私、なんでお船引やったんだっけ?

もともと、海村の人が転校してくると知った時から、仲良くはしたかった。だからできるだけ距離も縮まるようにと色々話したりもした。

 

けど、それだけ?

 

そんな理由で、私は動いてたんだっけ...?

 

 

まあ、いっか。

とりあえず今を生きるのに支障はないし、大事なものはさほど変わってない。なら、問題は無いよね。

 

 

 

 

また数日後。

あの人が家にやってきた。どうやら遠い親戚だったようで、訳あってうちに来てるらしい。色々あったけどとりあえずは同じ屋根の下で暮らす身。仲良くと思いつつ毎日を過ごすと決めた。

 

足がどうやら片方義足みたいだけど、何があったかはさすがに聞かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからなんだかんだ一緒に住んでみて分かった。

 

この人は、遥さんはすごく親しみやすい。

話はちゃんと聞いてくれるし、それによって相談も受けてくれるし、とても懐が深い。

 

意外だったのが、料理が上手なとこ。

私だって料理には結構自信がある。お母さんがいない時は私が担当だったから。

でも、そんな私より全然上手い料理を毎回作ってくれる。

 

それから私も教えてもらうようになった。

 

 

 

 

そうして、私が目覚めて結構日にちが経った。

どうやら今海を研究してる人達が言うには、もうそろそろで汐鹿生へ行く糸口が掴める、そうだ。

 

汐鹿生...。それは、私にとってあこがれの場所。

遠く遠く、ずっと見てきた海の底。

 

私自身、行きたい、ということ以外の気持ちはなかった。

 

 

 

 

そういえば、私は小さい頃からずっと散歩をしている。

少しハズレの方にある堤防、そこが私のお気に入りの場所だ。

 

何かを待ってるわけでもなく、ただ、ぼんやりと遠くを眺める。

それこそが私の楽しみだった。

 

そうしていつものように堤防に向かうと、先客がいた。

あれは...遥さん、かな。

 

 

「えっと、こんばんは?私なんですけど...。」

 

私はトントンと背中を叩いて声をかけた。

 

 

 

 

---遥side---

 

千夏が来る、というのは全然想像できる話だ。

記憶が欠落している今でも、ここに来るという習慣は残ってるみたいで、且つ、今回俺が来ている方が珍しいので向こうからすればあれ?みたいな状況だ。

 

「あなたもここ、来るんですね。」

千夏は俺の隣にちょこんと座る。

 

「ああ、...ここに来ると色々嫌なこと忘れさせてくれるからな。分かるだろ?ここが落ち着く場所だってこと。」

「そりゃ、私のお気に入りですし?好きな物は好きな人が1番知ってるんですよ?」

「はっ、ちげえねえ。...。」

 

俺は沈黙のまま遠くを見つめる。その視線が、ただ無心である訳では無いと千夏は気づいたようだ。

 

「誰か、待ってる人がいるんですか?この海の中に。」

「ん?...そうだな。いる。2人な。」

 

すると千夏は首を傾げた。

「あれ、でも残ってるのはまなかだけって...。」

「まあ、こっちの事情もあるのさ。今はまだ、語るべきときではない、ってね。」

「なにそれ。まあ、話したくないならいいんですけどね。」

 

その場はどうにかやり過ごす。

 

俺が待ってるのは、間違いなく2人だ。

まなかのことについては勿論。

では、あと一人は誰なのか。

 

簡単だ。それは俺の隣にいる、千夏本人だ。

 

俺の中では、千夏はまだ帰ってきてない。

分かってる、もう戻らないかもしれないって。

 

けれど、あの日好きだと伝えようとした千夏じゃなきゃ、ダメなんだと、俺の中で何かが叫んでいた。

 

 

何かを忘れさせてくれる場所、なんて言ったが、逆だ。

忘れないように、刻みつけている。

 

まだ俺は、心のどこかであの日を欲しがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、鷲大師の街の方へと向かう途中、走ってこっちに向かっていた紡と合流した。

 

「おっ?どうしたんだ。こっちの方来るってことは、俺に用でも?」

「理解早くて助かる。ちょっと今から漁協ついてきてくれ。」

「ということは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、見つかった。汐鹿生へと入る場所を。」

 




忙しい。
ああ忙しい。
忙しい。

近々テストと修学旅行。

また会おうね(定期)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。