---遥side---
俺は紡ぐに導かれ、走って漁協へ向かった。
中には光、要...どうやらもうみんな揃っているようだ。
「おせーぞ遥。」
「悪い。まさかこうなってるとは知らなかった。」
「ったく、昨晩電話来ただろ?」
え?
...あー、それならしょうがないな。
「すまん、電話取ってない。紡も一回しかかけなかっただろ?」
「そうだな。直接合えばいいと思って急がなかったな。」
「なんだ?どういうことだよ。」
「まあ、簡単に言うと電話された時俺は家にいなかったんだよ。」
「じゃあまあ、しょうがねえな。」
光も仕方なくと納得した様子。やれやれ、結構丸くなってんのかな。
ただ、目をつける部分が相変わらず幼いが。
...
「さて、一通り説明したけど、後は言ってからもう一度言った方がいいかな?」
「そうですね。さすがにコンパスの指す方角忘れてしまうとまずいので。」
「要、お前なんかある?」
「別に?とりあえずコンパス頼ること優先ってことかな?」
「ああ。ただ、流れがどうなるか分からない部分がある以上は、臨機応変に対応だな。」
各々行き方を頭に叩き込み、海へ行く。
としようとしたのだが、先にドアが開いた。
「あれ、千夏と美海。どうした?」
「えっと...。」
「遥、私達も汐鹿生に行かせて欲しいの。」
歯切れの悪い千夏に変わり、美海がストレートに思いをぶつける。
ははぁ...そういうことね。
実際のところ、問題は無い。
美海のエナの対応力はばっちりで、あれから何度か海に入ったが問題は無さそうだった。
心配なのは千夏のほうだが、もともとエナを持っていた人間なだけあり、扱いの方は問題ないだろう。
問題があるとすれば、また別の話になるな。
一方の俺はというと、足の方が不安要素だが、まあ問題無しだろう。
前回やらかしてしまったぶんがあるので、ちゃんと薬の服薬を行っておいた。
それから数回海に行って確かめたが異常はなかった。
あとは汐鹿生だからということで影響があるかないかになる。
まあ、NGが出るわけでもなく、それぞれの思惑のままに俺達は海へと飛び込んだ。
...
指針のままに海を進み、
黒い渦のようなものを抜け、
かき分け、少しずつ前へ進む。
もう少しだ。
あと少し。
そこに待ってるんだ。
...!!!
そこは、汐鹿生であり、汐鹿生ではなかった。
見たことある街並み、見たことない光景。
街全体はぬくみ雪に覆われ、生きている感じの欠けらも無い。
そして、異様なまでに寒い。
冷たい。
俺が最後に見た汐鹿生からでさえ、だいぶ変わっていた。
「これが...汐鹿生?」
「...。」
光が思わずこぼした声に、俺は何も言えなかった。
認めたくはなかった。
これが結末ではない、そう信じるしかなかった。
...。
俺はふらっと明後日の方角へ歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ遥。」
「一旦家に帰ってくる。気持ちの整理もつけたいしな。」
「あ、おい待てよ!」
とりあえず自分のことで頭がいっぱいになってた俺には、呼び止める光の声は聞こえなかった。
家の前に着いた俺は、その場にただ突っ立っていた。
ドアを開けることも無く、ただ外からぼやっと眺めるだけ。
「...ったく、かっこ悪いにも程がありすぎだろ。俺もまだまだ成長しきれてないな。」
状況が落ち着くと冷静に自分を見つめれる。
すると、さっきの態度が嫌で嫌で仕方なくなった。
しかし、不満を口にしたところで、少し気が楽になった。
「...よし。」
俺はドアを開け、大きな歩幅で家の中へと入っていった。
...
中はひどい状態だった。
最後に立ち寄ったとき掃除したにもかかわらず、その倍の量のぬくみ雪がつもり、埃っぽいことこの上なかった。
まあ、人が住んでない家だ。当然か。
といったところで、俺はもう一度掃除を始めた。
帰ってくることになるか分からない家だが、それでもここは、確かに俺という人間が生きていた家だ。
無かったことにだけは、したくない。
...あっ。
ふと、写真が目に付いた。俺と、両親とが映ってる、もう随分と色あせた写真だ。
そういえば、いつからだろうな。
俺は両親のことをいつからか忘れていた気がする。
その声も、顔も、もう随分とぼやけてきた。
そうか、もう10年くらい経つもんな...。
父さん、母さん。
俺はあの頃から成長してるのかな?
「あの?」
「うぇ!?」
びっくりした。辺りを見ると、どうやら千夏に急に後ろから声がかけられてた訳だ。
というか、勝手に入ってきた訳か、千夏は。
「...どうしたんだよ。それに急に入ってきて。」
「え?何回も呼びましたし近づいてからも4、5回声掛けましたよ?」
つまりぼーっとしてて気づかなかった訳か。
どうしちまったんだ?今日やたらと調子悪いな。
「そうか、悪い。ちょっと周りが見えてなくてな。」
「いえ、お取り込み中なら失礼しました。...っと、その写真は?」
「ん?ああ、両親だよ。もう昔の写真だけどな。」
「へー...。ところで、その両親はどこで眠ってるんですか?」
ストレートな質問だった。
別にもったいぶるつもりもないし、本人も知りたがってるので言うことにした。
「いないよ。この世界のどこにも。」
「えっ...?それは失礼なことを...。」
「いや、いいんだよ。」
同情はいらない。もう随分前のことだし、見切りはついている。
人を好きになることから逃げる、なんてこともあったが、そうじゃなくても大丈夫、というのを美海が、千夏が教えてくれた。
そんな中、千夏は何かうーんと悩んでいた。
「でも、そういえば似たような話を聞いたことがあるんですよ...。幼いうちに両親を亡くして一人暮らしをしていたって話。...どこで聞いたか、誰に聞いたか、覚えてないんですけどね。」
ドキッとした。
そして、確信する。
諦めようとしたこと。でも、それを破る一言。
千夏の中には、まだ記憶が生きている。全て忘れた訳じゃないんだ。
2作品同時進行がんばろーる。
あとは言うことなし。
また会おうね(定期)