凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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特にないです


第87話 片鱗

---遥side---

 

俺は紡ぐに導かれ、走って漁協へ向かった。

中には光、要...どうやらもうみんな揃っているようだ。

 

「おせーぞ遥。」

「悪い。まさかこうなってるとは知らなかった。」

「ったく、昨晩電話来ただろ?」

 

え?

 

...あー、それならしょうがないな。

 

「すまん、電話取ってない。紡も一回しかかけなかっただろ?」

「そうだな。直接合えばいいと思って急がなかったな。」

 

「なんだ?どういうことだよ。」

「まあ、簡単に言うと電話された時俺は家にいなかったんだよ。」

「じゃあまあ、しょうがねえな。」

 

光も仕方なくと納得した様子。やれやれ、結構丸くなってんのかな。

ただ、目をつける部分が相変わらず幼いが。

 

 

 

...

 

 

 

 

「さて、一通り説明したけど、後は言ってからもう一度言った方がいいかな?」

「そうですね。さすがにコンパスの指す方角忘れてしまうとまずいので。」

 

「要、お前なんかある?」

「別に?とりあえずコンパス頼ること優先ってことかな?」

「ああ。ただ、流れがどうなるか分からない部分がある以上は、臨機応変に対応だな。」

 

各々行き方を頭に叩き込み、海へ行く。

としようとしたのだが、先にドアが開いた。

 

「あれ、千夏と美海。どうした?」

 

「えっと...。」

「遥、私達も汐鹿生に行かせて欲しいの。」

 

歯切れの悪い千夏に変わり、美海がストレートに思いをぶつける。

 

 

 

ははぁ...そういうことね。

 

実際のところ、問題は無い。

美海のエナの対応力はばっちりで、あれから何度か海に入ったが問題は無さそうだった。

心配なのは千夏のほうだが、もともとエナを持っていた人間なだけあり、扱いの方は問題ないだろう。

 

問題があるとすれば、また別の話になるな。

 

 

一方の俺はというと、足の方が不安要素だが、まあ問題無しだろう。

前回やらかしてしまったぶんがあるので、ちゃんと薬の服薬を行っておいた。

それから数回海に行って確かめたが異常はなかった。

あとは汐鹿生だからということで影響があるかないかになる。

 

 

まあ、NGが出るわけでもなく、それぞれの思惑のままに俺達は海へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

...

 

 

 

 

 

指針のままに海を進み、

黒い渦のようなものを抜け、

かき分け、少しずつ前へ進む。

 

 

 

もう少しだ。

 

あと少し。

 

そこに待ってるんだ。

 

 

 

...!!!

 

 

そこは、汐鹿生であり、汐鹿生ではなかった。

見たことある街並み、見たことない光景。

街全体はぬくみ雪に覆われ、生きている感じの欠けらも無い。

 

そして、異様なまでに寒い。

冷たい。

 

俺が最後に見た汐鹿生からでさえ、だいぶ変わっていた。

 

「これが...汐鹿生?」

「...。」

光が思わずこぼした声に、俺は何も言えなかった。

認めたくはなかった。

これが結末ではない、そう信じるしかなかった。

 

 

...。

 

 

俺はふらっと明後日の方角へ歩き出す。

「おい、どこ行くんだよ遥。」

「一旦家に帰ってくる。気持ちの整理もつけたいしな。」

「あ、おい待てよ!」

 

とりあえず自分のことで頭がいっぱいになってた俺には、呼び止める光の声は聞こえなかった。

 

 

 

 

家の前に着いた俺は、その場にただ突っ立っていた。

ドアを開けることも無く、ただ外からぼやっと眺めるだけ。

 

「...ったく、かっこ悪いにも程がありすぎだろ。俺もまだまだ成長しきれてないな。」

 

状況が落ち着くと冷静に自分を見つめれる。

すると、さっきの態度が嫌で嫌で仕方なくなった。

 

しかし、不満を口にしたところで、少し気が楽になった。

 

「...よし。」

俺はドアを開け、大きな歩幅で家の中へと入っていった。

 

 

...

 

 

 

 

中はひどい状態だった。

最後に立ち寄ったとき掃除したにもかかわらず、その倍の量のぬくみ雪がつもり、埃っぽいことこの上なかった。

 

まあ、人が住んでない家だ。当然か。

 

といったところで、俺はもう一度掃除を始めた。

帰ってくることになるか分からない家だが、それでもここは、確かに俺という人間が生きていた家だ。

 

無かったことにだけは、したくない。

 

 

...あっ。

 

ふと、写真が目に付いた。俺と、両親とが映ってる、もう随分と色あせた写真だ。

 

そういえば、いつからだろうな。

俺は両親のことをいつからか忘れていた気がする。

その声も、顔も、もう随分とぼやけてきた。

 

そうか、もう10年くらい経つもんな...。

 

 

父さん、母さん。

俺はあの頃から成長してるのかな?

 

 

 

 

 

「あの?」

「うぇ!?」

 

びっくりした。辺りを見ると、どうやら千夏に急に後ろから声がかけられてた訳だ。

というか、勝手に入ってきた訳か、千夏は。

 

「...どうしたんだよ。それに急に入ってきて。」

「え?何回も呼びましたし近づいてからも4、5回声掛けましたよ?」

 

つまりぼーっとしてて気づかなかった訳か。

どうしちまったんだ?今日やたらと調子悪いな。

 

「そうか、悪い。ちょっと周りが見えてなくてな。」

「いえ、お取り込み中なら失礼しました。...っと、その写真は?」

「ん?ああ、両親だよ。もう昔の写真だけどな。」

「へー...。ところで、その両親はどこで眠ってるんですか?」

 

 

ストレートな質問だった。

別にもったいぶるつもりもないし、本人も知りたがってるので言うことにした。

 

 

「いないよ。この世界のどこにも。」

「えっ...?それは失礼なことを...。」

「いや、いいんだよ。」

 

同情はいらない。もう随分前のことだし、見切りはついている。

 

人を好きになることから逃げる、なんてこともあったが、そうじゃなくても大丈夫、というのを美海が、千夏が教えてくれた。

 

そんな中、千夏は何かうーんと悩んでいた。

 

「でも、そういえば似たような話を聞いたことがあるんですよ...。幼いうちに両親を亡くして一人暮らしをしていたって話。...どこで聞いたか、誰に聞いたか、覚えてないんですけどね。」

 

ドキッとした。

そして、確信する。

 

諦めようとしたこと。でも、それを破る一言。

 

 

 

 

 

 

 

千夏の中には、まだ記憶が生きている。全て忘れた訳じゃないんだ。




2作品同時進行がんばろーる。
あとは言うことなし。

また会おうね(定期)
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