---遥side---
「まなか!!」
俺がそう言うとすかさず光がその中へと飛び込んでいった。あとを追うように、俺と要が入っていく。
「おい...なんでそんなところで眠ってるんだよ、お前...。」
追いついた頃、光は少し上を見上げて呟いた。
俺もそちらへ目をやる。
そこには、確かにまなかがいた。
けれど、服も来ていないし、謎の膜のようなもので覆われている。
...どうなっているんだ?
「おい!まなかを離せよ!」
光が膜に飛びつく...が、
「うあっ!?」
何やら衝撃が光に伝わったらしく、虚しく跳ね返された。
しかし、光は諦めない。何度も何度も挑んでは、跳ね返される。
「...野郎!!」
「はぁ...、落ち着け!」
あまりにも見境がなくなっていた光をチョップで牽制する。
我に返ったのか光はこちらを睨んできた。
「ってー!何すんだよ!」
「あのな...、まなかを助けたい気持ちはわかるが、闇雲に突っ込むだけじゃデメリットもあるかもしれないって、考えたことはないのか、お前は。」
感情任せな行動は帰って危険を呼ぶ、よくある話だ。
「...んじゃあ、お前は、遠目から見ててなんか分かったのかよ?」
「少しはな。...そうだな、今まなかを覆ってる膜、あるだろ。これが事実だったら嬉しくない事態だが...、あの膜は恐らく、エナだ。」
「えっ、...はぁ!?」
ここまで来ると光も理解する。無理やり引っぺがすともっと事態が悪くなるかもしれないと。
「じゃあ無理に動かそうとするとまなかは...。」
「ああ、陸に上がってもエナがない、ってことはあるだろうな。」
こればかりは、剥がしてでしか助けることが出来ないのなら...、まなかは確実にエナを失うだろう。
...そうすれば、二度と海には...。
「くそっ、どうすればいいんだよ!」
光が地団駄を踏む。
確かに、後先考えずに剥がすのはまずいとは言った。
でも、実際のところそれ以外の方法はない。
だったら、いかに効率的にするか、これが鍵だ。
「...光、今からこの膜を破るぞ。出来るだけ弱く、小さい力でな。」
「弱くって...、そんなんじゃ弾かれちまうぞ。」
「それでもだ。まなかをできるだけ傷つけないようにするならこれしかない。」
「...分かった。」
そうして俺は膜に手を入れる。
すると同時に無数の鋭い痛みが体を襲った。
「っ...!でも、これなら!」
そこからさらに一歩踏み出す。
ついに膜は破れるのであった。
「光!今のうちにまなかをそこから出してやれ!」
「んなもんわかってらぁ!!」
光はまなかを抱き上げると素早くその場から退散した。
さて、俺も行くか。
まだ痺れの残るからだをどうにか動かし、俺もみなの方へ合流した。
「それで?これからどうするの?」
「ああ、光はまなかを連れて先に上がれ。ついでに医者も呼んできてもらえるか?」
「了解。行ってくる。」
まなかを連れた光だけ先に上がらせる。とは言ってもこの海だ。俺達ももう長居はできない。
「俺達も行くぞ。要、それと2人も。問題ないか?」
「僕は。」
「無いよ。」
「うん、無いよ。」
「よし、じゃあ上がるか。」
かくして、5年ぶりの汐鹿生との再会は終わった。
みんなの話が聞けてない以上、それぞれがどう思ったかは知らない。
でも、何も思わなかったなんてことは無いはずだ。
...
......?
「どうした、千夏?」
ある程度進んだ時、少し遠くの方で千夏が止まっていることに気づいた。
何やら頭を抑えて痛がってるようだ。
「...。」
向こうからの返事はない。こちらが見えてないのか、反応する余裕がないのか。
いずれにせよ、余裕はなさそうだ。
「要、美海、先上がっててくれ。ちょっと千夏の様子がおかしそうだ。」
「それなら私も!」
「いや、上がっててくれ。...ただでさえこんな海だ。恐らく美海の身体にももうだいぶ負担がかかってるはずだ。...俺もそんなに長居できないくらいだしな。だから...頼む。」
「...分かった。頼んだよ、遥。」
美海はしぶしぶ受け入れ、入ってきたポイントへと登っていく。
それを確認して俺は千夏の方へとUターンをする。
「おい、おい、聞こえてるか?」
俺は千夏に近づくと身体を二三度揺する。すると千夏はゆっくりとこちらを振り向いた。
「え...あ、聞こえて...ます。」
向けられた顔には、生気がなかった。
顔から血の色は引き、唇も真っ青だ。とてもいい様子には思えない。
そういえば、千夏は病気持ちだったよな...。
でも、あれは確か胸の方。頭痛とはそんなに関係がなさそうな様子だった。
これが新手なのか、はたまたただの身体が冷えただけなのか...。
いずれにせよ、さっさと家に帰って寝かせるのが1番だろう。
だから...。
「千夏、お前はもう泳がなくていいから、とりあえず俺の背中に乗っとけ。その様子だともう自分で泳ぐのもキツいだろ。...とりあえずゆっくり寝とけ。」
「あはは...すいませんほんと。」
最後の空元気で力尽きたのか、俺の背中に乗ると全くと言っていいほど動かなくなった。
さて...、急ぐか。
俺は後ろで寝息を立てる千夏の邪魔にならないよう、そっと素早く冷たい海を抜け出した。
だんだん書くのがきつくなってきた。
ここが正念場かな?
がんばろーる!
また会おうね(定期)