凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

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離脱


第89話 離脱

---遥side---

 

「まなか!!」

俺がそう言うとすかさず光がその中へと飛び込んでいった。あとを追うように、俺と要が入っていく。

 

「おい...なんでそんなところで眠ってるんだよ、お前...。」

追いついた頃、光は少し上を見上げて呟いた。

 

 

 

俺もそちらへ目をやる。

そこには、確かにまなかがいた。

 

けれど、服も来ていないし、謎の膜のようなもので覆われている。

...どうなっているんだ?

 

「おい!まなかを離せよ!」

光が膜に飛びつく...が、

 

「うあっ!?」

何やら衝撃が光に伝わったらしく、虚しく跳ね返された。

しかし、光は諦めない。何度も何度も挑んでは、跳ね返される。

 

「...野郎!!」

「はぁ...、落ち着け!」

あまりにも見境がなくなっていた光をチョップで牽制する。

我に返ったのか光はこちらを睨んできた。

 

「ってー!何すんだよ!」

「あのな...、まなかを助けたい気持ちはわかるが、闇雲に突っ込むだけじゃデメリットもあるかもしれないって、考えたことはないのか、お前は。」

 

感情任せな行動は帰って危険を呼ぶ、よくある話だ。

「...んじゃあ、お前は、遠目から見ててなんか分かったのかよ?」

 

「少しはな。...そうだな、今まなかを覆ってる膜、あるだろ。これが事実だったら嬉しくない事態だが...、あの膜は恐らく、エナだ。」

 

「えっ、...はぁ!?」

 

ここまで来ると光も理解する。無理やり引っぺがすともっと事態が悪くなるかもしれないと。

 

「じゃあ無理に動かそうとするとまなかは...。」

「ああ、陸に上がってもエナがない、ってことはあるだろうな。」

 

こればかりは、剥がしてでしか助けることが出来ないのなら...、まなかは確実にエナを失うだろう。

 

...そうすれば、二度と海には...。

 

「くそっ、どうすればいいんだよ!」

 

光が地団駄を踏む。

 

確かに、後先考えずに剥がすのはまずいとは言った。

でも、実際のところそれ以外の方法はない。

 

だったら、いかに効率的にするか、これが鍵だ。

 

「...光、今からこの膜を破るぞ。出来るだけ弱く、小さい力でな。」

「弱くって...、そんなんじゃ弾かれちまうぞ。」

「それでもだ。まなかをできるだけ傷つけないようにするならこれしかない。」

「...分かった。」

 

そうして俺は膜に手を入れる。

すると同時に無数の鋭い痛みが体を襲った。

 

「っ...!でも、これなら!」

そこからさらに一歩踏み出す。

 

 

ついに膜は破れるのであった。

 

「光!今のうちにまなかをそこから出してやれ!」

「んなもんわかってらぁ!!」

 

光はまなかを抱き上げると素早くその場から退散した。

 

さて、俺も行くか。

まだ痺れの残るからだをどうにか動かし、俺もみなの方へ合流した。

 

 

 

 

 

「それで?これからどうするの?」

「ああ、光はまなかを連れて先に上がれ。ついでに医者も呼んできてもらえるか?」

「了解。行ってくる。」

 

まなかを連れた光だけ先に上がらせる。とは言ってもこの海だ。俺達ももう長居はできない。

 

「俺達も行くぞ。要、それと2人も。問題ないか?」

「僕は。」

「無いよ。」

「うん、無いよ。」

 

「よし、じゃあ上がるか。」

 

 

かくして、5年ぶりの汐鹿生との再会は終わった。

みんなの話が聞けてない以上、それぞれがどう思ったかは知らない。

でも、何も思わなかったなんてことは無いはずだ。

 

...

 

 

......?

 

 

「どうした、千夏?」

ある程度進んだ時、少し遠くの方で千夏が止まっていることに気づいた。

何やら頭を抑えて痛がってるようだ。

 

「...。」

向こうからの返事はない。こちらが見えてないのか、反応する余裕がないのか。

いずれにせよ、余裕はなさそうだ。

 

「要、美海、先上がっててくれ。ちょっと千夏の様子がおかしそうだ。」

「それなら私も!」

「いや、上がっててくれ。...ただでさえこんな海だ。恐らく美海の身体にももうだいぶ負担がかかってるはずだ。...俺もそんなに長居できないくらいだしな。だから...頼む。」

 

「...分かった。頼んだよ、遥。」

美海はしぶしぶ受け入れ、入ってきたポイントへと登っていく。

それを確認して俺は千夏の方へとUターンをする。

 

 

「おい、おい、聞こえてるか?」

俺は千夏に近づくと身体を二三度揺する。すると千夏はゆっくりとこちらを振り向いた。

 

「え...あ、聞こえて...ます。」

 

向けられた顔には、生気がなかった。

顔から血の色は引き、唇も真っ青だ。とてもいい様子には思えない。

 

 

 

そういえば、千夏は病気持ちだったよな...。

でも、あれは確か胸の方。頭痛とはそんなに関係がなさそうな様子だった。

 

これが新手なのか、はたまたただの身体が冷えただけなのか...。

 

 

いずれにせよ、さっさと家に帰って寝かせるのが1番だろう。

だから...。

 

「千夏、お前はもう泳がなくていいから、とりあえず俺の背中に乗っとけ。その様子だともう自分で泳ぐのもキツいだろ。...とりあえずゆっくり寝とけ。」

「あはは...すいませんほんと。」

 

最後の空元気で力尽きたのか、俺の背中に乗ると全くと言っていいほど動かなくなった。

 

さて...、急ぐか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は後ろで寝息を立てる千夏の邪魔にならないよう、そっと素早く冷たい海を抜け出した。

 

 




だんだん書くのがきつくなってきた。
ここが正念場かな?
がんばろーる!

また会おうね(定期)
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