凪のあすから 〜心は海のように〜   作:白羽凪

93 / 112
倦怠感と倦怠感。


第93話 君の在り方

---遥side---

 

入院が始まってからというもの、俺は流石に心が落ち着かないでいた。

そういえば俺が入院した時ってだいたい緊急を擁していた場合なわけであって、こうして任意なことって実は体験したことがない。

だから心境というものは分からないものだ。

 

一応、顔を出しに行こうとは思ったけど、出る前に

 

「今は私のこと気にしなくていいから。」

 

なんて言われてしまったら、行こうものも行けない。余計に気にさせてしまうのは避けたい訳だし。

 

というわけで、現在。落ち着かない心で街をぶらぶら歩いているのである。

どうせあっという間に手術の日は来る。そう言い聞かせること何回かはもう忘れた。

 

 

「あっ。」

ふと足を止めた。

人が見える。

それは、俺みたいに落ち着きなく歩き回ってる少年。

 

なんて回りくどい言い方しなくてもいっか。

 

「おい光。」

「あん?遥か。どうしたんだよ、こんな所まで。珍しいな。」

「まっ、ちょっと身体動かしたくてな。どうせお前もだろ?」

「...まあな。」

 

少し不機嫌そうに、大人しめに返事を返す光。

やっぱり、相当まなかのことが気がかりなのだろう。

 

「それで、やっぱりまなかの様子は変わりないのか?」

「ああ、先生が来て、問題は無いって言ってたけど、どうも安心できねえんだよ...。それこそお前、なんで来なかったんだ?」

「こっちもこっちで用があってな...。まあ、まなかのことについて同様落ち着かねえわけだ。」

「水瀬のことか?」

「まあな。」

 

流石にちさきから伝達がいってるみたいだ。そこは助かった。

何も言われてないと俺が距離を置いてるだけに見えて仕方がない。

 

 

こいつらのことが嫌いになったわけじゃないからな。

 

「...全く、まなかのやつ。なんで目覚めねえんだよ。」

「...さあな、こればかりは分からん。...あれしかなかったとはいえ、無理にひっぺがすのは流石にまずかったんだろうかってとこだ。」

「あれしかなかったんだろ?じゃあしょうがねえよ。」

 

以外にも、光は感情を主立って見せない。

少し成長...、したのか?まあ、環境が変われば人も変わると言うからな。光もなにか思うところがあるのだろう。

 

それでも俺は...。

 

それでも俺は、ただ真っ直ぐに自分の気持ちで動けるあの頃の光に、少し憧れてたのかもしれない。

 

 

「ところでお前、至さん家で迷惑掛けてないか?あの人、何人も受け入れてくれるけど、それでも負担はかかってるからな?」

「何言ってんだ?迷惑かけてるわけないだろ。それにあれだ。晃の面倒見るの俺が多いから、そこは感謝して欲しいくらいだけどな!」

光は腕を組んでふんと鼻を鳴らす。

 

あー...、確かに晃と光、どこか似てるもんな。特にやんちゃ坊主って辺りが。

 

「ならいいけどな。晃を変な方向へと進ませるなよ?」

「分かってるよんなこと。」

 

かといって至さんみたいにオドオドされるのも宜しくはないので...、晃には遜色無い程度に光からいい影響を受けて欲しいわけだ。

 

...一応おじさんになるんだよな、晃からすれば光は。

中学生でおじさんか...、たまったもんじゃねえな。

 

「ところでさ、遥。」

「ん?」

 

「いつかお前、言ったよな。お前から見て俺は変わったか?って。あの時、お前がなんでそう言ったか、今なら少しわかる気がするんだ。...それでさ、逆に聞きてえんだ。お前から見て俺は5年前と変わったか?」

 

 

光の口からは考えれない言葉だった。

光はきっと、誰より自分らしさに自信を持って行動する奴だ。

でも、きっと分かってきたのだろう、感じてきたのだろう。

 

時間が流れ、環境が変わって、その自分らしさが揺らいでないか、と。

でもまあ、こいつはきっと大丈夫だ。

 

光は今人生の過程の中でぶつかるべき壁にぶつかってるだけだ。

 

 

 

お前はお前のままだ。変わるわけねえよ、光。

 

 

 

「...いいや?お前はちっとも変わってねえ。感情むき出しで、バカ一辺倒で張り切ってドジ踏んで、ほんっと何にも変わってねえよ。」

「なっ!?そこまで言う必要ねえだろ!」

「まあまあ、落ち着けよ。...俺はお前の、そういうところ気に入ってるんだぜ?」

「お、おう...、そうか。」

 

光は照れくさそうに下を向く。そういうところも変わってないとつくづく思う。

 

 

「まあな、結局、変わる変わらないなんて中学生で気にすることでもねえよ。答えなんていつか勝手に分かるもんだ。俺もまだ分かってないくらいだしな。だから今は気にせず生きろよ。」

「そんなもんなのか?大人になるって。」

「そんなもんだ。」

 

人によって違うけど、結局のところ多方向から影響を受けて自分という形が完成する。

 

 

俺という形は、どうなってるんだろうな?

...論文を書くなら、終着点はそこだ。

 

 

「おっと、そろそろ時間だな。俺は帰るぞ、光。」

「おう、そうか。じゃあな。」

 

俺はまっすぐ家へと向かう。

お互いの心境を晒しあげたからか、心には幾ばくかの落ち着きがあった。

 

そうしてまた一日。一日と。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は、当日を迎えた。




いいペースだ。
感動的だな。
だが無意味だ。

( ^ U ^ )

また会おうね(定期)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。