---美海side---
朝、うちの家にウロコ様が近くにいることの証明を見せに紡さんが来た。
もちろん、遥に真っ先に報告しなきゃと思って電話をかけた。
が、電話に出てくることは無かった。
どうせまたフラフラしてるんだろうと思い私は外へ駆け出す。
朝の空はまだ寒かったが、特に気になりはしなかった。
遥とのかくれんぼはいつも早々に終わる。
それは私が見つける側であっても、見つけられる側であっても。
「どうしたんだ、美海。息なんか切らして。」
呑気に遥が話しかけてくる。
私は答えようとしたが言葉が出ないまま下を向いていた。
ただの体力不足...だけど。
というか...ちょっと、疲れすぎ...!
「は、遥を探してたに決まってるじゃん...。ってそれより!話さなきゃいけないことがあるの!」
そう言って顔を思い切りあげる。
私はどんな顔をしていただろうか。
少なくとも悪いニュースではないので悪い顔はしてなかったとは思うけど。
「いるかもしれないの!ウロコ様が!というか、絶対にいる!」
「...だろうな。あの人がおめおめと海で待ってるわけないしな。」
遥は分かりきったような感じだった。本当は会ってるのでは?と一瞬思ったがそれを言うことは無かった。
寧ろ、言えなかった。
何せ顔を上げた先の遥の目に私の目は奪われたからだ。
そしてその瞳を見た瞬間、私の体から力が抜けた。
先日、一瞬だけ見たまなかさんの瞳のように。
遥の瞳は色あせていた。
...
それから数時間後、私は病院にいた。
遥は大丈夫だなんだと言ってるけど、絶対そんなはずはない。
そんな訳で検査。
その結果遥は別室待機、私と空き時間で電話をかけていた千夏ちゃんとで先生からの説明を受けることになった。
どうやらその先生、遥とかなり仲が良さそうだった。
まあ、そこはいいや。
「んで、あいつの目についてだな。」
双方が椅子に座り、説明が始まる。
「この前海から帰ってきた女の子、の方も似たように目の光が消えることがあった、なんてあいつが言ってたが、それは本当か?」
海から帰ってきた女の子...ってことはまなかさんの事だろう。
「はい、見たのは一瞬だったんですけど、確かに瞳に光がなかった瞬間が。でも、理由がわからないんです。その時の分も、今回の分も。」
「なるほどな。...で、今聞いてわかった。おそらく、あいつとその子の状況は別だ。ただ似たような事案が起こってるだけ。」
「は、はぁ...。それで、結局何が起こってるんです?」
「ああ、簡単に言うとあいつはストレスで心をやっちまってるみたいだ。」
えっ...?
私と、千夏ちゃんは凍りついた。
だってストレスって言うことは..,。
身近にいる私たちが、1番の加害者なんじゃないのかな...?
「そんな、ストレスって...原因はやっぱり私たちなんですか!?」
思わず千夏ちゃんが声を挙げる。無理もない、私だってそうしたかった。
「さあな、理由までは知らねえよ。というか落ち着いて聞けな。ほんと。...あいつの状態だがな、自分はストレスと感じてないが、身体だけがそのストレスに反応しているって状態だ。おそらく、つい昨日今日で出来たストレスじゃねえだろう。あいつが出会ってきた全て、それはあまりにも一人の人間が覆うにはデカすぎた、ってことだ。」
「...そう、ですか...。」
それっきり千夏ちゃんは黙ってしまう。
私もいくつか聞きたいことがある。
「それで、あの状態だとなにか生活に影響とかあるんですか?」
「影響、か...。取り急ぎの話じゃないし関連性もあるのかどうか分からないが...、ひとつだけ言えるのが、あいつのエナが最近弱くなってるという事だな。今はまだ問題ないが、あれだとあと3ヶ月もしないうちに...」
そこから先は聞きたくなかった。
あと3ヶ月もしないうちにエナを失う。
それは、あまりにも大きすぎる話だった。
「とりあえず、あいつは当面こっちで面倒みるようにするわ。ただまあ、自由に会ってもらっても大丈夫だし、話してもらっても問題ない。まあ、過度なストレスを与える行動だけしなければそれでいいから。」
「「...はい。」」
空返事を返す。それしかできない。
「なに、心配すんな。あいつは俺がなんとかするからよ。とりあえず今日は帰んな。」
「では、失礼します。」
私たちは無駄な言葉なく、その場を立ち去った。
---大悟side---
正直、あいつがこうなるとは思ってなかった。
実際、メンタルは強いやつだったし、芯も通ってた。
...いや、そう思ってる時点でもう問題なんだな。
あいつが辿ってきた人生の疲れもある。
ただそれ以上に、ストレスというだけあり、一番の原因は俺らが遥に期待しすぎていたんだ。
あいつは強い。だが無敵じゃない。
人間だ。そして、人間である以上どこかで壊れる。
あいつの場合、足なんかより、恋愛面なんかより、今回が一番壊れてしまったのかもしれない。
しかし、そうしてしまったのが俺なら、責任を取るのも俺だ。
だから、向き合おう。
俺はあいつのいる部屋のドアを思い切り開け、大きな声で言った。
「よう、話しようぜ。」
特に言うことは無いが、
ぶっれぶれなんだよなほんと。
んじゃ。
また会おうね(定期)