そして感じる人は感じるかもしれませんが……今回オリ主が色々と理不尽を振りまくターンになります。
これは面白くないなぁ〜……と読んだ後で思う人もいるかと思いますが、何卒宜しくお願い致します……
以上、作者からの謝罪でした。
チュンチュン……
勇者にとってこの世界に召喚されて2日目の朝が来た。窓からは朝日の日差しが差し込み、それはその部屋で寝ているもの達を暖かく包む。
「んんっ……」
先に目覚めたのは、ベットの窓際側で寝転んでいた女性。自分の背中以上に伸びた黒髪は、朝日に照らされて艶やかに輝く。その髪に相反するかのように、その者の身体はどこまでも白い。そして彼女は、寝るとき衣服はほぼ身につけないようで下着姿だ。
「もう……朝なのね。くっ……はぁ……」
閉じていた瞳が開けば、それはなんとも綺麗な黄色い瞳。唇は淡いピンク色で、眩しい朝日を浴びた為か身体は勝手に伸びをする。その時に彼女から漏れる吐息姿は、なんとも艶めかしい……
そんな彼女の名前はファサリナ……隣で未だに普段からは考えられないほど可愛い寝息をたてる(とファサリナは思っている)ヨロイの勇者、夜光の同行者であり、そして……
生涯の彼の伴侶である。
「ふふっ……また可愛らしい寝顔♡ 昨日……あれだけ激しかったのに、また我慢が出来なくなって……」
昨日夜光とファサリナの2人の間に何があったかは……自主規制である。その自主規制があったにもかかわらず彼女は……興奮状態であった。
(あぁ……でもこの子の寝ているところを同意なくは……乙女の嗜みに反します。だから……)
そう思ったファサリナは、夜光を優しく抱き締める。両者の顔は近く、今にもファサリナの吐息が夜光に届きそうだ。
背中をポン……ポン……とリズム良く優しく叩き、頭を優しく撫でる……正に優しい尽くしの好待遇いや、これが正しく母性である!
「んっ……」
それに対して夜光は、昨日に引き続きファサリナから頭をナデナデされるのが余程気持ちが良いのか目を細めてそれを受け入れる。その様子を見たファサリナは微笑みを浮かべて夜光を優しく包んで撫でる。そのループである。それが何回か繰り返され
「うぅ……ん……ふぁ、ファサリナさん……おはよう」
「おはよう、夜光くん。起こしちゃったかしら?」
「いぃや……自然と起きた感じ……」
「そうなのね。それにしてもまだ眠そう。まだ寝ていて良いのよ?」
「そぅ? だったら……後5分だけ……」
「ふふっ♡ もう少し長く眠っても良いわよ?」
「なら……ファサリナさん……丁度いい時間になったら起こして……」
「えぇ。それまで貴方の寝顔を堪能しておくわ♡」
「ま、また貴女はそんな恥ずかしい事を……」
「夜光くんだけだもの。さっ、もう少し寝ましょうね♡」
「うん……それじゃ……おやすm『早朝に失礼する‼︎ 鎧の勇者はいるか⁉︎』……」
「気にしなくても良いのよ? さぁ、耳栓付けて寝ましょう?」
「……うん。おやs『〈ドンッドンッドンッドンッ〉鎧の勇者様はいらっしゃるかっ⁉︎』……はぁ、これじゃあ2度寝出来ないな……」
夜光、2度寝したかったが外野がうるさく完全に覚醒……
「……まさか夜光くんの睡眠を邪魔するなんて」
これには普段温厚なファサリナも怒りの表情を浮かべる。
「あぁ……でも起きる前に、もう1回抱きしめてもらっても……良い?」
「っ‼︎ えぇ♡ 貴方が望むなら何度でも♡ それにしても……昨日の今日でもっと甘えん坊になったわね♡」
「……少しでも、少しの時間でも貴女と触れ合って、愛されたいから」
「あらあら……うふふっ♡ 分かったわ。なら……お姉さんが貴方のことを甘やかしてあげる。さぁ……全て私に……身を任せて♡」
ここでファサリナ……スイッチが入った。まるで過去娼婦館にいた頃のようなスイッチの入り具合。しかしその時と違うのは、相手を溶かしすらする淫らな事ではなく、相手を慈しみ、愛して優しく包み込む……愛情をもって相手を癒す。
「あぁ……貴方に俺の全てを……」
これに夜光も応える。そこには昨日抱いていた不安などはない。少し恥ずかしくはあるのか顔は赤いが……それでもファサリナの抱擁から逃げないでいた。
『鎧の勇者様はここにおられるか⁉︎』
しかしながら外野は叫ぶ。愛おしい時間を訳も分からず邪魔されてしまう……この理不尽は……最初無視していた夜光ですら憤怒させる。
「ファサリナさん……一旦外を黙らせてくる」
「えぇ……分かったわ」
夜光はファサリナから離れるのが惜しいと感じる。もっとこの愛おしい空間を享受したいと……
しかし外野がうるさければそれも半減……いや、ほぼほぼ無いに等しい。
施錠の魔法はあるものの、今覚えている防音魔法では外野からの声を沈めることが出来ず……昨日使ったみたくオペ開始を使うか迷ったが、昨日から扉は施錠魔法をかけておらず、怪しんだ外野が強制的に部屋に入る可能性もある。そうなればますます自分の手の内を晒してしまうかもしれない。
昨日尚文も2人きりで話した際に使った時は、まだ少数でもあったし安易に近づいて来なかった事もあって、外から見るとほぼほぼ何の身振りもなく話していたように見えたかもしれないが、今回ばかりはそうとはいかない。
なので夜光は……名残惜しいがファサリナから離れて外に出れる格好になる。そしてドアノブに手をかけてゆっくり回し……少しだけドアを開いた。
「おぉ、ようやくお目覚めになりましたか鎧のゆうsy「貴様……」っ⁉︎」
「こんな朝早くから何の用だ? ドンドンと扉を強く叩くわ、まだ早朝にも関わらず大声で叫ぶわ……この宿で休んでいる他の方々に対して申し訳ないとは思わないのか?」
「そ、それは……だがこちらは国王様からの命を受けてここに来ているのだ。これぐらいの事は……」
「これぐらいの事……ではない。例え国王からの命を受けたとしても……事を大きくして良い理由にはならない。名声が広まるのも早ければ、悪評が広まるのも早い……貴様1人のせいでそれにもなりかねん事を理解しているか?」
これは……明らかに八つ当たりである‼︎ 2度寝しようとしてファサリナとの幸ある時間を邪魔された腹いせが明らかに含まれている‼︎ 文面上、口頭上では正論になりそうな事を言っているが、それでも八つ当たり成分満載である‼︎
元康などには通じたが、果たして国王の兵士に通じるかどうかh「た、確かに……」……通じたようだ
「……それで、用件は何だ?」
「こ、国王様からのご命令d「そんな事は理解している。本題を簡潔に言え」は、はっ。た、盾の勇者が同行者に如何わしい行為を働いたとの事で……他の勇者の方々にもこれを伝えて国王の間へ来るようにと」
「盾の勇者が如何わしい行為だと? (はぁ〜……俺が来てたとしてもここは変わらずじまいか……)で、その如何わしい行為の詳細は分かるか?」
「そ、それにつきましては国王様自らが勇者の方々の前でと……」
「……そうか。分かった。行きはするが、俺はなにぶん朝が弱いたちでな……今の状態で行ってしまうと国王様が話している最中に眠ってしまう可能性がある。国王様の間へと着くのは他の勇者よりも時間がかかるだろうが、他の面々が真面目にやっている前で眠りこけるという失態だけは避けたい。その事を国王様に伝えて欲しいんだが……」
「はっ……鎧の勇者様が仰った通りに国王様には言伝させて頂きます」
「悪いな。それと……盾の勇者が止まった宿屋と部屋は分かるか?」
「は、はぁ……それは分かりますが……一体何故それを?」
「なに……それが少し気になっただけだ。準備が済み次第向かわせてもらおう」
「お、お待ちしております。わ、私はこれにて……」
国王の兵士は去っていった。それを確認し、他に怪しい者などがいないかどうかを確認した後部屋の扉を閉めて施錠の魔法をかけた。
「さて……じゃあファサリナさん。さっきの続きをして欲しいんだが」
「うふふっ♡ 本当に甘えん坊になっちゃったんだから」
皆さんお気付きだろうが……国王の兵士に言った
ファサリナさんに甘えたいがための……嘘である‼︎
side 尚文
朝目が覚めると昨日とは部屋の様子が違っていた。昨日武器屋から買った
(俺が寝ている間に盗人が入ったのか⁉︎)
俺の身なりを見た何者かが侵入して高価のあるもの盗んだと思った時、唐突に扉が勢い良くノックされた。それに出てみると兵士がいた。ちょうど良いと思った俺は事情を言おうとしたのだが、何故か俺は兵士に無理やり腕とかを掴まされて城に連行された。
連行されたのは昨日も招かれた国王の間で、目の前には俺以外の勇者と同行者も集まっていた。夜光達がいないのが気にはなったが、まずは事情を聞こうと国王に尋ねたらいきなり罵倒された。
何故罵倒されなければならないのか……それは、簡単に言えば強引な冤罪だ。俺の同行者であるマインさんが、昨夜俺から淫らな行為をされたと主張した。
簡単な経緯をマインさんが言うには、酒に酔った俺がマインさんを強引に部屋に連れ込み、マインさんが来ていた服とかを強引に脱がして行為に及ぼうとした。隙を見てマインさんが抜け出し、近くに泊まっていた元康に助けを求めた。そこから各勇者にも今回の事が知れ渡り今に至る。
そして元康達からの罵倒や、それを近くで見ていた貴族や兵士達の侮蔑を含んだ視線……
だが俺は何もやっていないし知らない! それに昨日はお酒なんて一滴も飲まなかった‼︎ マインさんと食事した時も、彼女は目の前で見ていたはずだし、彼女に勧められても断った。それを追求しようと元康の背後に隠れながら俺を見るマインさんを見たが……
(あ、アイツゥッ‼︎)
俺は……まんまと嵌められたんだ……あの女に‼︎
『自然と分かっちまうんだよ……悪意溢れる奴を見ちまうと……外面がどうあれ分かっちまうんだ。』
『理解して欲しいなんて思わない。だが俺は……お前の事が心配だった。だからこそ……忠告として、言っておきたかった。頭の片隅にでも置いておいてくれたらと』
(昨日……夜光から言われたばかりなのに……)
アイツを見たとき、俺に向かってあっかんべー、しやがった‼︎ 全部、全部アイツが仕組んだことだったんだ‼︎ 夜光は……こいつの本性を一目見ただけで分かったんだ。こいつが……こいつが女狐みたいな性格だってことに……
「そういえば夜光のやつはいないのか?」
「確かに……」
元康と樹が言う。
「あぁ、ヤコウ殿の事なら兵士から言伝を貰ってある」
それに対して国王が答える。
「彼曰く、盾の勇者がまさかその様な行為をするとは思わなかった。顔も見たくない……と、簡単に言ったらこう言っていたそうだ。鎧の勇者も哀れな者だ……昨日の一件で庇った盾の勇者がまさかこの様な不埒を行う不届きものだったのだからな」
『お前がこれからどんな酷い状況に見舞われたとしても、お前の言を信じる』
(夜光は……そう言ってくれた。なのにこの場にいないという事は……あの国王が言うようにそう言う事なのか? 全部……嘘だって言うのかよ……)
尚文の中で積もっていくのは……夜光が裏切ったのではないかという憎しみだった。ここに急に呼び出された時の不安を拭い去ってくれた優しい態度も、俺のためを思って忠告してくれた昨日の真剣な表情も……全部が嘘だったのではないかと……
その思いと同時に周りからの視線、ヒソヒソ言われる侮蔑の言葉……
それらが合わさり尚文の中で怒りの感情が芽生え、同時に膨らんでいく。そして尚文の中で怒りが爆発する……
「国王、遅れてしまい申し訳ない」
尚文の怒りが爆発するその瞬間を遮ったのは、尚文のはるか後ろ側から聞こえた声だ。
反射で尚文も後ろに振り返ると、そこには……
「どうしたんだ尚文? そんな怖い顔して」
「や、夜光?」
「あぁ、仙谷夜光……それが俺の名だ。昨日も話したのにもう忘れてしまったのか?」
絶望が希望に変わる瞬間だった。
side out
「なっ⁉︎ お、お主! 何故ここに⁉︎」
「ん? それは変な質問だなぁ国王様よ。国王様が盾の勇者についての話し合いで俺をこの場に呼んだんだろ?」
「た、確かにそうだが……な、ならば一体どうやってこの場へ⁉︎」
「そいつもおかしな質問だなぁ……何故そんな事を聞く?」
「そ、それは……」
「……言いたくないならそれでも良いが。で? 盾の勇者が不埒な事をしたと兵士から聞かされたが……一体尚文が何をしたと?」
「ちょ、ちょっと待てよ夜光⁉︎ どういう事だ⁉︎」
そこで言葉を挟んでくる元康。
「お前そもそもこの場に来ないって国王の兵士に言ったんじゃないのか⁉︎」
「はっ? 誰がそんな事を言ったんだ?」
「こ、国王様が兵士の言伝で夜光がそう言ったって……」
「……ほぅ?」
ここでガラリと夜光の雰囲気が変わる。さっきまではまだ優しげのある表情をしていたが、元康からのその一言で目を細めて瞳をギラつかせる。
「それが本当だと言うのなら……俺を無理やり起こした兵士は万死に値するなぁ〜? 後でしめておくか」
その発言と同時に夜光から溢れ出る殺気……それは昨日と同じく国王の間を包み込もうとしていた。
「夜光くん? 今はそれよりも尚文さんのこと……ね?」
「あぁ……そうだったな。話が脱線しそうだった」
(((な、何者だあの同行者⁉︎)))
夜光の殺気をいとも簡単に沈める同行者……ファサリナの存在にその場にいた皆が思った事だ。まだ一緒に過ごしてギリギリ1日……それにも関わらずの両者の信頼関係は、誰も見た事が無かったのだろう。呆気にとられた。
「待て、なら夜光は兵士になんと言ったんだ?」
「何簡単だ。俺はこう見えても朝は弱くてな、だから……大事な話の途中で寝てしまう失態だけはしたくないから遅れて来る。こう言った筈なんだがな?」
「そ、そうであったのか……それは……すまない事をした。ヤコウ殿を呼んだ兵士には儂の方から「生憎だが国王、それには及ばない」なに?」
「確かに上の者が下の者の失態を詫びる。そして再教育する……それは普通だ。何も問題ない普通の事に見えるな。だが……それは未だ信頼があると見えるからであって、今の俺は……失礼で申し訳ない事は承知しているが、この国の事をそこまで信頼に足るものと見てはいない。厳密に言うのなら、この城に関係ある王族、貴族、領主、兵士だが」
「ぬ、ぬぅ……」
「何だ? 何か不満か? 昨日の尚文に対する一件、俺と尚文が2人きりで話していた事に対する盗み見と盗み聞き、早朝にも関わらずの兵士の対応……そして今この瞬間の事、これらが揃ってる時点でこの国に対する信頼度はゼロに近い。さて……言いたい事があると言うのならば、是非とも聞かせて欲しいのだが?」
「き、貴様⁉︎ 昨日に引き続き国王様に無礼だぞ‼︎」
「無礼? 無礼と言うのなら今朝の兵士の様に、他に泊まっているお客がいるにも関わらず大声で叫びドアをドンドン叩く事を言うのではないか? そっちの方がよっぽど無礼に繋がると思うが……そうとも捉えないと言うのならば、この国は根本的にダメだと言う事になるな。そして大臣……あなたもあなただ」
「な、なにっ⁉︎」
「昨日から思っていた事だから言わせてもらうが……あなたには自分の意思がないのか?」
「な、なんだとっ⁉︎」
「そうだろう? 昨日から客観的に見ておかしいところはあった。それをその場でみて、止めたら諌めたりしない黙ったまま。それどころか国王の言うがままに進めている様な気がどうもする。いや、肯定すらしている。大臣とは……国のトップである上が間違いを犯しそうになったらそれを未然に防止する。その役割がある筈だ。だがそれすら形として見えないあなたは……俺からすれば大臣失格だな」
「す、好き勝手にいいおるか無礼者‼︎」
「あぁ好き勝手に言うさ……俺の友が何かによって理不尽な目に合わせられているのなら……俺は相手が何者であれ守とも」
「夜光……」
「っと、また話が脱線したな。熱くなるといつもこうだ……それについては申し訳ない。それで、尚文が何したって?」
「はっ……そ、そうだ! 聞いてくれよ夜光! 尚文のやつがマインちゃんに無理やり夜這いしようとしたんだぜ⁉︎」
「そ、そうなのだ鎧の勇者よ。その経緯についてだが……」
元康が初めにそう言って国王が経緯を説明する。というかこの時点で既に国王は夜光に対して少し恐怖を抱いていた。まぁそれも態度を改めたら別に何ともないのだが……
「それで証拠がここにある」
証拠を掲げる兵士……それは女性用の下着だった。これがマインのものであり、昨夜尚文が泊まった部屋にあったという。それを見た夜光は……
「ハァァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜……」
長い溜息をつく。
「ほれ見ろ尚文! お前を庇う夜行でさえもあんな呆れた様なため息ついたんぞ⁉︎」
「これは情状酌量の余地もないと見たな」
「ですね」
元康、練、樹の順にそう言った。夜光のため息は、元康達が言った様に、その場にいたほとんどのものがその通りに見えた事だろう。
「はっ? お前達は馬鹿か?」
「「「えっ?」」」
「さっきのため息はお前達の馬鹿さ加減に対するため息だ。全くもって……聞いた話と提示された証拠品の矛盾も見抜かないとは……お前達は平和ボケし過ぎにも程がある。よくそれで勇者を勤めようと思ったもんだ」
勇者3人に対して呆れ気味にいう。
「よくよく考えてみたらわかる事だろう? 聞くと尚文はそこの女に対して無理やり迫り、そして強引に衣服を剥いだと……にしてはそこにある女性用の下着はあからさまに綺麗過ぎないか?」
「そ……それだったらこういうのはどうだ⁉︎ 後でバレるのを恐れた尚文は、無理やりだが丁寧に服を脱いだとか「お前は馬鹿か? いや、もう正真正銘の馬鹿だな」えぇっ⁉︎」
「なら女たらしの元康に聞くが「誰が女たらしだ⁉︎」……ともかくだが、もしお前が女性に対してその様な行為をしたいと、感情が高ぶっているのにそんな回りくどい事を考えられるのか?」
「えっ……えぇっと……それは……しないんじゃないか? 俺だったら」
「確かに元康ならそんな回りくどい事なんて考えずにやるだろうな」
「そ、想像できますね……」
「お、お前らな……」
「だろう? なら尚更尚文ももしそうなった場合は、そんな考えにならないはずだ。だから……そこにある証拠品は偽物と言うことになる。なのにそれがあるって事は……偽の証拠だな。尚文を冤罪にする為の」
「ま、まさか……」
「いや、だが偽の証拠というのにも筋が通るぞ……」
「ちょ、ちょっと待ってください‼︎」
夜光の指摘で勇者3人は、証拠品である女性の下着が偽物ではと思い始めていた。しかしそこに待ったをかける声があがる。
「でしたら被害者の私はどうなるんですか⁉︎ 私はそこの盾の勇者に無理やり襲われたんですよ⁉︎」
それは元康の背後にいるマインからの声だ。目に涙を浮かべて盾の勇者を指摘する表情は恐怖に怯えた様な様子だ。だが……
「それはあんたが盾の勇者を貶めようとする自作自演だろ?」
「ど、どうしてそんな事⁉︎」
「はぁ……なら良く良く考えてみろよ? 元康が今着てるその楔帷子……それは誰からもらったやつだ元康?」
「えっ? これはマインちゃんからで……」
「まぁ結果を辿るとそうなるだろうな。ならそこであんたに問おう。その楔帷子……どこから持って来た?」
「そ、それは盾の勇者から逃げる時に、椅子にかけてあったものを……」
「はっ、よくもまぁそんなお粗末な証言を吐けるものだ」
「お、お粗末ですって⁉︎」
「そもそもそんな恐怖を抱いている状態で相手の着ていたものを持ってこれるわけ無いだろう? それに、行為に及ぶ相手が几帳面に楔帷子を椅子なんかにかけれると思うか? そんな発言が出た時点であんたの主張はグダグダなんだよ」
これを淡々という夜光に対し、マインは俯いてワナワナと震える。そして夜光が言い終わると……
「ウッザイわね‼︎ 悪いのは全部盾の勇者が悪いのよ‼︎ それなのに途中でしゃしゃり出てくんじゃないわよ‼︎」
「ま、マインちゃん?」
「漸く本性出してきたか」
マインの豹変した態度に元康は驚く。
「私が悪いって言ったらそいつらは悪いのよ! なんか文句あるかしら⁉︎」
「文句ありまくりだ愚か者が。そもそもその口ぶりだとあんたは普通の冒険者じゃねぇだろ?」
「その通りよ! 私こそがこの国の第1皇女、マルティ=S=メルロマルク! ここまで来たら分かるでしょう? 盾の次に最弱の鎧の勇者様? アッハッハッハ‼︎」
本性を出したマイン……いや、マルティ=S=メルロマルク。高飛車な様子で鎧の勇者である夜光を馬鹿にした。
別段その程度で夜光は怒りはしない。ただ馬鹿が馬鹿な事を目の前で大袈裟にほざいていると思うくらいで……
ただ……
「あなた……地獄に落ちる?」
「「「っ⁉︎」」」
その声はマルティの真後ろから聞こえた。はっ、と元康、練、樹が後ろを向くと……
「ヒィッ⁉︎」
「うふふ……力を入れただけであなたの首は、まるで小枝を折る様にポキリと……なってしまいますわ」
「い、いつのまに……」
マルティの前にいた元康でさえも気付かなかった、いや気付けなかった。マルティの首を三節棍で三角に囲うファサリナ……夜光から目を背けてなかったにも関わらず、気付いたらマルティの背後でその様に構えていた。
そしてそれは上から見据えていた国王ですらも勇者達と同じ心情だった。瞬き……したのかどうかすら分かっていないが、それでも片時も目を離さなかった。それがどういう事だろう……いつのまにかマルティの背後にファサリナがいた。
それに昨日から国王自身が思っていた事だが……長年生きてきてこの冒険者は他に集った冒険者と何かが違うと思った。その片鱗を……国王は見ていた。
「ファサリナさん、貴女がそんな相手にそんな事をしなくても良い」
「確かに夜光くんならそう言うと思ったわ。でも……私は許せないの。夜光くんのことを何も知らないくせに……貴方がこれまでどんな努力をしてきてここに立っているかも知らないで侮辱したこの女を……」
殺気を含めたファサリナの目……それを見たその場の者達は、背筋が凍る感覚に見舞われる。
「……全く貴女と言う人は」
「えっ? きゃっ⁉︎」
そしたら今度はいつのまにかサファリナの背後に回り、後ろから手を回して抱き締めている夜光がいた。しかも夜光の位置は変わらない。だから実質的に移動したのはファサリナだけだった。
(((い、いつのまに……)))
もはやこの場にいた者達皆そう思っていた。
「俺は貴女にそんな事なんて望まない……ただ、俺の側にいてくれれば……いてくれたらそれでいいんです。だから……あの女を手にかける必要なんてないんです。あんな女の血に塗れた貴女なんて……俺は見たくないから」
「夜光くん……えぇ、分かったわ」
「なっ……なんって失礼な人達⁉︎」
マルティがヒステリック気味にそう言う。
「あ、あのー……」
「ん? どうした尚文?」
「今って、俺がそこの女に強姦したって疑いがある話し合いをしてたんじゃ……」
「おぉ〜、そうだったな。いやぁまた脱線してたかぁ〜……これは参ったな」
「そ、そうよ! その話だったのにいつのまに変な方向に走ってるのよ⁉︎」
「あんたも忘れていたって事は、尚文からの強姦はそれほどでも無かった、若しくはされなかったと捉えていいか?」
「はっ……そ、そんな訳ないじゃない‼︎ この第1皇女を強姦した罪は重いと知りなさい‼︎」
「そうか……ならその下着以外に証拠品は提示できるか?」
「そ、そんなもの……それで十分よ‼︎」
「はぁ〜……マジでこれだけで強姦でっち上げる気とか……確かに尚文だけだったら権力で押し付けれたかもしれないが、俺は権力には屈しない。それに……」
「俺は尚文が無実だという証拠を提示できる‼︎」
「「「なっ⁉︎」」」
「う、嘘でしょう⁉︎ ど、どうやって……」
「ほ、本当か⁉︎」
「そ、その様な証拠……あるはずなかろう‼︎」
そこでようやく国王も言葉を挟んだ。
「大体証拠といってもその女物の下着以外何が出るのだ⁉︎ 出せるというのなら出して見せよ‼︎」
ここに来て強気の国王……
「……国王。そういうと思って証拠品は既に準備済みだ。ファサリナさん、あの女の髪とか武器にくっついたりしてないか?」
「えぇ、それなら少し切ってきたからここにあるわ。あと私の三節棍を掴んだ時の指紋も……」
「ありがとう。なら今から尚文が無罪だという証拠を提示しよう! ルーム‼︎」
夜光がルームを展開する。
「
夜光の後ろに沢山のモニターが出現する。
「この部屋は今回尚文が止まった宿部屋だ。宿主に頼んでそのままの状態を維持してもらっている。そしてこの映像は今の部屋の状態だ。本当は早々に俺の能力を出すつもりは無かったが……我が友が窮地に陥っているのなら遠慮なく出させてもらおう‼︎」
「こ、これは……⁉︎」
「普通に刑事ドラマで見た事ある風景じゃないか⁉︎」
「夜光さん……あなたまさか、元の世界では現職の刑事とかだったんですか⁉︎ 何故高校生だと嘘を⁉︎」
練、元康、樹の順で言う。
「いや? 嘘などついてない。俺も正真正銘高校生で死んだからな」
「なら何でそんな能力を使えるんですか⁉︎」
「その話をするとまた話が脱線するし話すつもりもない。それでだ……この部屋は見て分かるように、違う足跡が2人分ある。勿論尚文のものとあんたのものだ」
「そんなのは当然でしょ? 私は最初から盾の勇者に強姦されたと言ってるじゃないの! 鎧の勇者の頭の中は既にボケてきてるのかしら?」
「今はあんたの悪口はどうでもいいとして、問題はこの2つの足跡の軌跡だ。椅子の近くとベッドの近くの足跡、それに窓際に少し残っているのは尚文のものだろう。几帳面にベットに上がる時は靴を脱いだ時の跡も残っているな。その時点で……尚文があんたに強姦したとは考えない。そもそも強姦する奴は、わざわざ靴を揃えるなんて行為をする事自体考えにくい」
「それも説明不十分じゃない!」
「あぁ不十分だな。しかもここまでだったらあんたの提示した冤罪と同じような証拠になる。だから次は……あんたの足跡についてだ。尚文にもし仮に襲われたとしたら……足跡は不規則でなければおかしい。しかしこの部屋に残る足跡からは一切その様子が見て取れない。寧ろ余裕ある感じに思える。それも部屋の出入り口から真っ直ぐ椅子へ、そこから窓際へ、そしてそのまま出入り口へ……明らかに意志を持った行動が見て取れる。そしてベッドの近くを通った様子がない。これはどう言う事だろうな?」
「そんなの決まっているわ! ベットではなくて椅子と窓際で迫られたからよ‼︎」
「それにしたってはあんたの足跡は乱雑に動いていないな?」
「その時は靴を脱いでいたからで……」
「それだったらあんたの靴以外にも足跡は出る。なのにこの場では出ていない」
「それとアンタの頭髪の一部と、さっきファサリナさんの武器を掴んだ時の指紋も既に証拠としてこちらにある。頭髪の部類は……部屋のどこにも落ちてはいなかった。襲われたというのなら、何かの拍子に少しぐらいは残るはずなのにまるでない。そして指紋は椅子の背もたれ部分と窓際の縁部分、それとドアノブにしかない。それもほぼ一箇所にだ。襲われたというのなら、これも複数指紋が出てもおかしくはないな。はぁ……こんなのでよくもまぁ尚文を強姦扱いできるもんだ」
「そ、そんなもの! アンタのでっちあげでしょう⁉︎」
「その言葉……アンタの方にも言える事じゃあないのか?」
「フンッ! そんな事ないわ‼︎ だって私はこの国の王女だもの‼︎ 私が証拠といえばそれは証拠! 盾の勇者が強姦したと言えばそれは立派な罪になるのよ‼︎」
マルティは悪びれなくそういう。自分自身の言うことは何でも通り正しいのだと。その空気は全体にまで及ぶ。
まぁそもそもの話、ここにいるもの達はほぼ国王側に逆らうことなどない。そのためにどれだけ夜光が証拠を提示しようが今回の事はおかしい、と誰も言わないのである。
「はぁ〜……分かっていたことだが、これほどまでにここにいる殆どのものが愚か者か……。まぁ今回は尚文はやっていないと証拠を出しに来ただけだし、どれだけお前達が尚文を侮蔑を孕んだ目で見たりどれだけの陰口を叩こうが、俺は尚文の味方だが」
「夜光……」
「んでだ……」
「我が友を侮辱した事についてはどう落とし前をつけるつもりだ? 貴様らは?」
「「「っ⁉︎」」」
夜光から放たれる殺気……その場にいた者達全て膝をつく。中には気絶して倒れる者もいた。
元康、練、樹は気絶しないものの、表情はとても苦しそうだ。まぁ尚文には殺気を向けてはいないのだが、この場にいるもの達の表情から昨日と同じ現象だと思っている。
「こ、この威圧は……⁉︎」
「ぐっ! 盾よりも価値が無さそうな鎧の勇者の分際で‼︎」
片膝つきながらもキッと睨みつけるマルティ。
「ほぅ……まだそんな減らず口を叩けるとはな」
夜光はそこで思いついたのだ
ヨロイの腕輪が光ると、夜光の前に優しい緑色をした丸い歪みを発生させる。そこからゆっくりと黒い鉄の棒が迫り出す。それを夜光が掴んで一気に引き抜く。
その場にいるもの達が目にしたのは……長い持ち手の先に付いた大きな鉄の塊だった。
「なっ⁉︎」
「な、何なんですかそれは⁉︎」
「お、お前! 鎧の勇者のくせして武器持てんのかよ⁉︎」
練、樹、元康は驚きの表情を作る。
「何を当たり前のことを……鎧に付随する武装も当然鎧扱いに決まっているだろう?」
「そ、そんなの……何か卑怯な手を使ってるんじゃないの⁉︎」
「それはお前だけには言われたくないが?」
「わ、私に対してお前ですって⁉︎ な、なんて無礼な‼︎」
「この痴れ者が‼︎」
「がっ⁉︎」
「お前に対してはお前で十分なんだよ。そもそも王族の意向やらなんやらで好き勝手する様な奴には特にな。さぁて、今日はもうここに用は無いし……行こうか尚文」
「あ、あぁ……分かった」
「ど、どこ行くんだよ尚文! 夜光!」
「どこって……そりゃあレベリングに決まってるだろう? 尚文はまだレベル1だろうし」
「だが伝説の武器を持ってるもの同士がパーティーを組んだら成長が阻害されるって書いてあったはずだろう?」
「確かに四聖武器同士ではその様だが……生憎と俺の武器については一切書かれていない。つぅー事でパーティー申請な」
「おっ……た、助かる……」
「それとお前ら三勇者に忠告だが……いつまでも夢の中だとかゲームの中だとか、この世界での異変をクリアしたら元の世界に帰れるだとか……そんな甘い考えは今すぐ捨てとけ」
「そ、それはどういう意味ですか⁉︎」
「はっ、そんなのそこの国王にでも聞け。それじゃあ俺らはここで失礼する」
尚文を連れた夜光とファサリナは国王の間を出て行った。それと同時にそこでの威圧は解除される。
その後三勇者は国王に、最後夜光が言った言葉を国王に問うたが、結果は彼らの表情を歪めるだけに過ぎなかったという……
解説
夜光が尚文を冤罪から救うためだけに編み出した技。特に攻撃力等は存在しないが、ルームを別の場所に発生させ、離れた場所からその場の様子を見ることができる。また、このルームに隠し扉などの隠れた要素は一切通用せず普通に発見できる。また、その場に残っているものの類も全て検知する。
また、その場の証拠品と夜光がいる場所での物の照合が簡単にできる。夜光の性格が著しく判定されるために嘘の証拠は提示できない。もし夜光がそんなことをした場合は、夜光の身体全体から大量の血が流れ出ることになる。
夜光がブチギレタ後の各々の評価
尚文:夜光がいて本当に助かった……。夜光には借りを作りっぱなしだ。
練:アイツは……一体何者なんだ……
樹:まさか夜光さんも僕と同じような能力を……
元康:なんか訳がわからねぇよ……マインちゃんの言ってる事は当然信じたいけど……アイツが出した証拠も信憑性あったし……クソッ!
マルティ(バカな第一皇女):何なのよアイツ⁉︎ 後もう少しのところで盾の勇者を貶める事が出来たのに‼︎ というかこの扱い何よ⁉︎ 私は第一皇j……以下省略
国王:ぬぅ……なんという殺気だ。あの者……まさか……
大臣(国王の金魚の糞みたいな人):あの無礼者め! 今度会った時は有る事無い事全て押し付けてやる‼︎ にしても私もここでの扱い酷くないかね?
以上……夜光がブチギレタ後の簡単な評価