ヨロイの勇者は理不尽を許さない   作:橆諳髃

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4話 ヨロイの勇者はキレる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュン……チュン……

 

朝6時30分ごろ……先に目を覚ましたのはファサリナだった。

 

まず視界に映ったのは、安らかな寝息を立てて寝ている夜光だった。

 

「ウフフ……可愛い♡」

 

いまだ寝ている夜光の頭を抱き締めながら撫でる。それを無意識で気持ちいいと感じているのか、夜光の閉じている目が更に細くなる。

 

それを更に可愛いと感じたサファリナは、夜光に対する抱き締めを強くしたのだった。

 

それから数十分後……夜光が目を覚ました。

 

「おはよう、夜光くん」

 

「あ、あぁ……おはよう〜……サファリナさん……」

 

優しい声音で言うサファリナ、それに対してまだ眠たそうに返事をする夜光……いや、寝ぼけている。

 

「うぅ〜……後5分……」

 

夜光はファサリナを抱き枕のように抱き締める。自分からはなかなかしない行動を今は簡単に行なっている……本当にまだ寝ぼけているようだ。

 

「フフッ、夜光くんは甘えん坊なんだから♡」

 

しかしそこは夜光よりもお姉さんなファサリナ……寝ぼけている彼を優しく抱きしめてそれに応えた。

 

因みにその後完全に覚醒した夜光は顔を真っ赤にし、言葉にならない言葉を喚きながらファサリナの部屋を後にしたと言う……

 

「もう……本当に可愛い♡」

 

ファサリナの中で夜光の好感度が更に上がる一幕だった。まぁ既に昔から夜光に対する好感度など天元突破しているが……というか下がる事はないだろう。

 

それから数時間後……ファサリナの下を国王からの勅使と名乗る者が訪れ、是非とも今回召喚された勇者に力添えして欲しいと依頼を受ける。

 

それをファサリナは受諾し、神様が転移させる前に言ったような形におさまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファサリナの泊まっていた宿屋から城で充てがわれていた来賓室へと戻った夜光。部屋の扉を静かに開けた時、丁度尚文がベットの上で上半身だけを起こして伸びをしていた。

 

「あっ、おはよう夜光」

 

「あ、あぁ……おはよう尚文」

 

「にしても朝早いんだな夜光は……って、どうした? そんなに顔を赤くして……」

 

「い、いや……何でもない」

 

それから約1時間後に他の面々も起き出す。そこから昨日の夕食と同じく朝食を案内され、それぞれで準備をした後に再び王の間へと案内された。

 

そこには既に我こそはと腕に覚えのある冒険者達が集っていた。人数は13名……

 

騎士風の者や一目で魔術師と分かる者、格闘家の者までいた。その極め付けはというと……

 

(1番左端の女……あれは……)

 

(た、只者ではないですね……)

 

(し、素人の俺でも分かる……今目の前にいる冒険者達の中で群を抜いて上の実力者だ……)

 

練、樹、尚文の3人はその者を只者ではないと評価していた。冒険者の中では、その軽装で大丈夫か? と言われるくらい露出度が高く、確かに服としては機能しているのだろうが、その服を着ている者の体型が凄くムッチリしているせいか……動いただけでこちらがムラムラしてきそうな……そんな感想を抱く。しかし顔は薄紫色のフードを真深く被っているせいで見えない……

 

しかしそんなスレンダーな体型の持ち主なのだ。顔もさぞ美しく美人の部類に入るだろう……

 

現に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な、何だあのお姉さんはっ⁉︎ 俺が生きてた頃にはいなかった女性だ! 凄いお姉さん力を感じる‼︎ ぜ、是非俺の所に来て欲しいなぁ〜)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツ……元康のレーダーは物凄いほどに反応していた。それもあってか元康の顔も凄く緩んでいる。鼻の下が伸びまくっている……

 

(こ、コイツ絶対あの左端の女の人を見て変な事を考えてやがる……っ⁉︎)

 

元康の左側に立っていた尚文は、その様子をジト目で見ていた。しかし、それも何者かの殺気で恐れの表情に変わった。

 

「……」

 

無言で元康を睨んだ目つきで見る夜光……これには練も樹も気付き、尚文と同じく恐れの表情に変わっていた。それは目の前にいる冒険者達も同じで、夜光が元康に送る殺気を見ているだけで顔を青ざめていた。

 

しかしこの人だけは……

 

(まぁ……まぁ……嫉妬している夜光くん、可愛い)

 

勿論冒険者の1番左端にいるのはファサリナなわけだが……彼女だけは場違いな事を思っていた。

 

そして練、樹、尚文の3人が同時に思った事は……

 

 

 

(((早くその変な考えと面を仕舞え(しまって下さい)元康‼︎)))

 

「う、ウォッホン! そ、それでは未来の英雄達よ! 仕えたい勇者達の元に旅立つのだ‼︎」

 

そして動き始める冒険者達……結果

 

 

 

 

練……5人

樹……3人

尚文……0人

元康……4人

夜光……0人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という結果となり、尚文と夜光は0人となった。これに対して尚文は嘆く……俺は一体どうすれば良いのかと。樹よりも人数が多い練や元康にどうか誰か俺につけて欲しいと頼んだが、それについては練からは軽くあしらわれ、元康からは人望が無かったんじゃないか? と言われる始末。

 

「王様! これはどういう事ですか⁉︎」

 

「ぬ、ぬぅ〜……これは流石にワシも予想外だ」

 

「人望が無いですな」

 

と、隣の大臣

 

「そいつはかなりおかしな話だな。昨日召喚したばかりの人間に対して初対面のくせにどうやって人望を図る? あなた達と満足に会話をした訳でもない。雑な立ち居振る舞いをした訳でもない。俺から言わせれば、召喚当初から文句言ってた尚文以外の3人の方が余程失礼に見えたが?」

 

急に自分の事を言われた3人はムッとしたが……事実も事実なので反論できなかった。

 

「ま、まぁ確かに昨日の状況を鑑みるとその通りなのだが……」

 

「陛下、少しお話が……」

 

そこにロープを見に纏った男が現れ、王に何か告げ口をしていた。

 

「なんと、その様な噂話が出回っているのか?」

 

「何があったんですか⁉︎」

 

尚文が王に聞く。

 

「うむ、伝承によれば異世界から来る勇者は、この世界と同じ様な状況を熟知している者が召喚されるとあるのだが……どうやらナオフミ殿はその様な世界には疎いと城の中で噂になっている様でな……」

 

「そ、そんなぁ〜」

 

「昨日の会話が聞かれていたんじゃないか?」

 

そう左肘で突きながら尚文に言う元康。王の言ったことに意気消沈な尚文……

 

しかしこの者だけは……

 

「はぁ〜……下らん」

 

「なに?」

 

「いささかもって下らないなと、そう思ったに過ぎない。あなた方の勝手な都合で赤の他人を召喚し、そしてこの世界の人類を託す勇者として勝手に祭り上げておきながら、今度は勇者の人望が無いやら、この世界のシステムに疎いから一緒に行きたくないやら……」

 

「満足にその人物と語り合ったり行動を共にしたことが無いくせに、そんな判断で軽々しく人を評価する国とは……しかも城の中でそんな事が簡単に起こる始末。いやはや全くもって下らぬ国だな、ここは。人を見る目がない」

 

「貴様! 勇者だからと言って好き勝手言うでない‼︎ 王の御前であるぞ‼︎」

 

「その状況にしたのはどこの誰だ? 上の者がしっかり管理していたのならばこんな下らないことにはなっていないはずだ。こんなに時間もかかっていなかったはずだ。仮にここにいる俺が勇者であろうとそうでなかろうと……俺は全く同じ事を言ったであろうよ」

 

「き、貴様ぁっ‼︎」

 

「もう良い、大臣」

 

「しかし……」

 

「確かにヤコウ殿が言う事も最もである。これはワシの管理不足でもあるとな。今回の事を機に、その体制を強化しようと思う。ナオフミ殿には済まないとは思うが……ヤコウ殿もそれでどうであろうか?」

 

「陛下がそう仰るのであれば……私からはそれ以上何もありません」

 

「うむ、では今回の事はこれまでとして……しかしナオフミ殿よ、まだそう悲嘆にくれるものではないぞ?」

 

「えっ? それは……」

 

「いま一度冒険者の人数を確かめてみるがよい。冒険者の人数が足りないであろう。レン殿が5人、イツキ殿が3人、モトヤス殿が4人、ヤコウ殿は……ナオフミ殿と同じで0人ではあるが、これで12人であろう。先に紹介した冒険者の人数は13人……1人まだそちらに行っていない者がいるであろう?」

 

そこで夜光以外の勇者が気づく。そうだ、もう1人いたではないかと……何故今まであれ程までに印象的な人物が忘れ去られていたかの様に話が進んでいたのかと……

 

「して、最後の冒険者よ……同行する勇者は決まったであろうか?」

 

「えぇ、私は既に決めております。私以外の冒険者の方々がどの勇者に着くのか……それが興味深かったものですからこの場に留まっておりました」

 

「そうか。ではもう1人の冒険者よ……未来の英雄となるべく勇者の元へと旅立つのだ!」

 

「お言葉ですが国王様……それは少し違いますわ」

 

「なに?」

 

「私は英雄になるために勇者の元へと赴くのではありません。未来の……勇者様の未来の伴侶となる為に赴くのですわ」

 

最後の冒険者の一言に周りは騒然となった。まさか……未来永劫その勇者の妻になりたい、と言う様な発言が飛び出るとは思いもよらなかったから……

 

これには夜光以外の勇者達も驚く。まさか仲間としてではなく、将来の妻になる為に自分達に付いて行こうとするとは……

 

(お、重い……)

 

(まさかそんな心づもりで同行すると言うなんて……)

 

(……いや⁉︎ 無理無理‼︎ 何だよその理由⁉︎ 普通に仲間としてならあれだけど……でもそれは無理だろ⁉︎)

 

と勇者3人はこう思った。しかしコイツだけは……

 

(ま、マジか……もし俺にあのお姉さんが付いたとするなら……それはつまり……あのお姉さんと結婚出来るって事だよな‼︎ そうだよな‼︎ よっしゃあーっ! 頼みます! 俺の所に来て下さい‼︎)

 

相変わらず分かりやすい思考である……

 

元康以外の勇者3人は先程と同じくそのふしだらな顔と思考を止めろと訴える。そして勇者の後ろに付いた他の冒険者達も……夜光から発する殺気で皆ブルブルと震えていた。

 

そして最後の冒険者が勇者達に歩み寄る。まずは練のところに行こうとする冒険者……しかし練は汗を流しながら顔を背ける。それを確認した冒険者は次に樹の元へ……しかしこれも同じ反応。次に尚文だが……

 

(本当は1人でも居た方が頼もしいけど……ごめんなさい‼︎)

 

その思いが行動で正直に出てしまい、冒険者に両手を合わせて謝る体制を取ってしまった。それを見た冒険者は……

 

「クスクスッ……誠実で良い子ね。そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

 

冒険者は頭を下げて謝っている尚文に対してそう言ってから2往復くらい頭を撫でた。

 

それが尚文には予想外だったのか思わず顔を上げた。尚文が見た冒険者の顔は……確かに美人の女性だった。

 

その次に元康だが……もう最初から鼻伸ばしまくりな顔になってだらしがなくなっていた。それを冒険者は……

 

「クスッ……」

 

「っ‼︎」

 

ただ笑う。それを元康が好印象だと感じて勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし……

 

 

 

スタッスタッ……

 

「えっ?」

 

自分の前を通り過ぎた冒険者に元康はポカンとしていた。

 

そして……冒険者の歩みが止まった。止まった勇者の先……それは……

 

「貴方の……生涯の伴侶として私を連れて行って下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨロイの勇者、仙谷夜光の下だった。

 

そしてその冒険者の告白とも取れる宣言に夜光は……

 

「私の方こそ……どうか宜しくお願い致します」

 

最後の冒険者は夜光の下に付くこととなった。

 

「ほっ……」

 

「は、ハラハラしました……」

 

「結局最初は俺1人だけか……でも、おめでとう夜光!」

 

「あぁ、ありがとうな尚文」

 

少しお祝いムードが流れる。しかしながらコイツだけは……

 

「な、納得いかねぇぞ‼︎」

 

元康である。

 

「か、彼女は俺に微笑んでくれたはずだ! って事は俺に同行しても良いって事じゃないか⁉︎ 違うか⁉︎」

 

「だが元康、その人は夜光を選んだんだ。その人の考えが変わらない限り無理があるだろう?」

 

「そうですよ。それは元康さんの勘違いだと思います」

 

「というかお前ん所に沢山同行者はいるし、それに女の人だっているじゃないか⁉︎ 何が不服なんだよ⁉︎」

 

「こんな正論ハッキリ野郎に付いたのが気にくわねぇんだよぉぉぉっ‼︎」

 

「いや、それは関係ないだろう⁉︎」

 

「ともかくだ! 俺は認めねぇ‼︎ 夜光! 俺と戦え‼︎ 彼女を賭けて‼︎」

 

隣の夜行に伝説武器の槍を突き付けながら戦いを挑む元康。

 

「断る」

 

それをキッパリと断る夜行。

 

「なんでだよ⁉︎」

 

「そもそも理由がない。それでも足りないと言うのなら……その状況を自分に置き換えてみろ。理不尽とは思わないか?」

 

「……そ、それでもだ‼︎ 俺と戦え‼︎」

 

「少し考えてみて嫌だったが……それでもやるというのか? それでもお前はこの中でも年長者か?」

 

「今年長者かどうかは関係ねぇだろ⁉︎ 彼女を賭けて戦うかどうかの話をしているだろう‼︎」

 

勢いが衰える事なく元康は言う。それに対して夜光は……段々腹が立ってきた。

 

「お前……さっきから不愉快だな?」

 

「えっ?」

 

ここで漸く伝わった。夜光の殺気を……

 

「さっきから聞いていれば何だ? 彼女を賭けて戦え……だ? 貴様……彼女の事を賭けの道具として使うのか?」

 

「い、いや……そんなつもりは……」

 

「そうだろうが! 何も間違っちゃいない! 貴様は! 彼女の事を! 自分の欲望のためだけの! 道具として扱ったんだ‼︎ 俺の事を……生涯の伴侶として認めてくれた、こんなにも素晴らしい女性を……貴様は賭けの道具に使ったんだ‼︎ この落とし前……どう付ける‼︎」

 

夜光の殺気が国王の間を支配した。これには……誰も口を挟めなかった。この場で1番の権力を持つ国王でさえも……ただ冷や汗をかいてただその行く末を眺める事しか出来なかった。

 

その殺気を直にも受けている元康は……今にも泣きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな空気を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜光くん……もう良いのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは誰の声だろうか。凛として……そして静かな声音がそう呼びかけた。

 

「私のために怒ってくれたのよね? 私は大丈夫だから……ね」

 

それは夜行についた冒険者からだった。目深く被っていたフードを外し素顔を露わにした。背中よりも長い艶やかな黒髪、おっとりとした瞳、整った唇……まさに美人だった。

 

そんな女性がだ。まだ名乗ってもいない勇者の名前を言い、そして宥めた。

 

「ファサリナ……さん?」

 

「もう良いのよ? 怒らなくても良いの。私は誰に何を言われても……貴方の側だけは絶対に離れはしないから……」

 

「……分かった」

 

そして夜光は殺気をおさめた。国王の間が張り詰めた空気から解放されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしながら……貴様はファサリナさんに謝れ」

 

「本当に申し訳ありませんでした‼︎」

 

「あの……こんな所で言うのも何ですが……私盾の勇者に付いて行こうと思います。良いでしょうか? 元康様」

 

「へっ? あ、あぁ……」

 

元康の下から尚文の下へ1人冒険者が移動した。何はともあれ最終的にはアニメに沿う形となる……




キレた夜行を目の当たりにしての評価

練:アイツは……出来るだけ怒らせないようにしよう。

樹:同じ人とは思えない程の怖さでした……

尚文:アイツマジで怒ったら怖い……でも頼りになる奴には変わらないんだよなぁ〜。

元康:ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……

メルロマルク32世:何という殺気……本当に平和な世界から来た者なのだろうか?

以上……キレた夜光を目の当たりにしての評価でした。

また、今回は元康ファンの方々に対しては非常に申し訳ない話となってしまいました。誠に申し訳ございませんでした。

という事で……次回も見ていただけたらと思います。
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