純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんにちは!

先に謝っておきます。エンデヴァーファンの皆さん申し訳ありません。
ちょっと、痛い目に遭っているシーンがあります。
苦手な方は読み飛ばしてもらっても多分(←ここ重要)大丈夫です。
あと、約1万文字です。

ちかれた。


障害物競争1

 想像以上にレベルの高いレースに会場が沸いている頃、オールマイトは様々なことを気にしながら観戦していた。

 

(出久君、頑張ってくれよ…)

 

 オールマイトの視線の先にある画面に映る出久は、ロボ・インフェルノに着き、拾ったロボの外装をうまく使いながら進んでいた。他の生徒も純狐含む上位層の生徒が荒らしたエリアを進んでいく。

 

 オールマイトは1年生ながらもうまく進んでいく生徒たちをほほえましく見ながら、視線を先頭の轟、純狐が映る画面に向けた。

 

 純狐が轟に近づこうと膝を曲げた瞬間、轟は薄い氷を純狐の足元に張る。純狐はそんなもの関係ないかのように跳ぶが、移動用に出力を20パーセント程まで落とした状態では少し影響が出てしまい、轟にふるった拳は狙っていた場所とは違うところに行ってしまう。

 

 そのずれを跳んだ時に予想していた純狐は、強化してある腕を薙ぎ払うように振るい、轟を後ろに飛ばすことに成功する。しかし、轟はすぐに体制を整え、自身の後ろにU字型の氷の壁を作り、飛ばされた勢いを利用して純狐から離れた地面に着地する。

 

 轟は個性のコントロールを高精度化し、作り出す氷もより強固になっていた。純狐という自分よりも上の存在がいたため、明確な目標を持って訓練を行うことができていたのだ。

 

 それに加え、純狐とヒーロー基礎学の時などに反省しあったりしたことも轟の異常なまでの成長につながっていた。

 

(この二人に組まれたら今の私では苦戦するかもしれんな…)

 

 オールマイトは閃光が迸り轟音が響く画面を見て、2人の成長に一抹の寂しさを覚えながらも、次の世代が育ってきていることをうれしく思っていた。そして、視線を出久に戻そうとしたところである疑問が生じる。

 

(落月少女はあんなに【純化】を使って大丈夫なのだろうか)

 

 まだ高校に入学して2か月程しか経っていないのも関わらず、本人もはっきりわかる程の変化。普通ならば、個性を失ってしまうのではないかという恐怖や、それに伴う将来への不安などで個性を使わなくなってしまってもおかしくない。

 

 オールマイトはそのようなことを見越して、相談があった時のためのプランを考えたりもしていたが、純狐がそのような相談をしてくることは今のところない。どちらかというとワンフォーオールのことを聞いてくることが多いのだ。

 

(私のワンフォーオールを気にする理由は何だ?彼女がワンフォーオールを気にする理由など特に無いはずだが…)

 

 オールマイトは再び純狐とオールフォーワンの繋がりを考える。しかし、個性のことを聞いてくると言っても、頻度は出久の方が多いくらいで異常というわけではない。あくまで純狐の今の状況でそこまで人のことを気にする余裕があるのか、という事だ。

 

 それに、もちろんオールマイトも聞かれたことすべてに対して正直に答えているわけではない。秘密にすべきところは話していないし、はぐらかしたりはしている。

 

(はぁ、彼女にことについて考えるときは例外なく疲れるな)

 

 オールマイトはそこで考えるのをやめ、目頭を押さえると、今度相澤とでも話し合ってみようかと思い観戦に戻るのだった。

 

 

― ヘカーティアside ―

 

「ご主人様ぁ~。もう始まってますよ。」

 

「はいはい、分かってるわよ。」

 

 ヘカーティアはポテチの準備をしながらクラウンピースのいる居間へ向かう。

 

「そう言えばご主人様、珍しく何もしてないみたいですね。」

 

 クラウンピースは居間に入ってきたヘカーティアを見て言う。

 

「フフッ、そんなはず無いじゃない。」

 

「やっぱり何か仕掛けたんですか…。」

 

 ため息をつくクラウンピース。しかし、クラウンピースが知る限りヘカーティアは、ここ数日何かしていたという事は無かった。

 

「でも、いつ仕掛けたんですか?全く気が付きませんでしたよ。」

 

 クラウンピースは不思議そうに尋ねる。

 

「ええ、今回実行するのは私じゃないもの。」

 

 ヘカーティアはそう言うと、どこかに電話をかけ始めた。

 

『もひもひ?どをしふぁの?』

 

「また桃食べてるの?よっちゃんに怒られるわよ?」

 

 ヘカーティアは何を言っているかぎりぎり分かるラインの声を聞き、あきれた様子で尋ねる。

 

『せめて桃でも食べてないとこんな穢れた場所いられないわよ。……この森消していい?素粒子レベルで。』

 

 さも当然のように、森を一つ消すことを要求する話し相手。ヘカーティアは森が一つ消えたところでどうという事もないが、処理が嫌なので要求を拒否する。

 

「ダメよ。そんなことしたらまた夢の世界に閉じ込めるわ。それにあなたが行きたいって言ってきたんでしょ?少しは我慢してよ。」

 

 ヘカーティアの答えに、ハイハイと生返事をする話し相手。その様子にため息をつくヘカーティアだったが、あまり時間も無いため本題に入ることにした。

 

「分かってると思うけどそろそろ純狐が来るわよ。殺さないでね。ダブルエックスさんからも頼むってよ。」

 

『八意様が!?ちょっとそれkwsk』

 

 ヘカーティアは話を最後まで聞かずに電話を切った。その電話を隣で聞いていたクラウンピースは苦笑いしている。

 

「またすごい人を巻き込みましたね…。友人様大丈夫なんですか?あっちからすると、強敵を仕留めることができるまたとないチャンスですけど。」

 

「まあ大丈夫でしょう。月の奴らはダブルエックスさんの名前出せば何もしないわよ。それにほんとに危なそうなら私が止めるわ。一応、あっちに地球の送りこんでるし。」

 

 ヘカーティアはそう言うと、純狐の映る画面を地球のヘカーティアが映る映像に切り替える。地球のヘカーティアはパフェを満足そうな表情で食べていた。

 

「…チキューティアさん、お金持っていったりしてますか?」

 

 クラウンピースは目を細めて画面を見ながら尋ねる。

 

「…多分持って行ってないわね。」

 

「いいんですか?」

 

「まあ、ばれなきゃ犯罪じゃないから…。」

 

 クラウンピースはヘカーティアの答えを聞いて納得する。画面に映る地球のヘカーティアの表情はすごく幸せそうだった。

 

― side out ―

 

 

 轟と純狐が先頭争いをしている中、その二人の少し後ろにいた爆豪は焦りを感じていた。

 

(クッソ、追い付けねえ)

 

 爆豪の個性【爆破】は手から出た汗を使う個性だ。そのため、普段は後半に行くにつれて体が温まっていき、威力も上がるのだが、轟の出した氷が冷気を放っていて、いつもよりも体が温まっていなかった。

 

 そんな爆豪とは逆に、障害物が増えて動きやすくなった生徒も存在する。

 

「ひゃっほー!」

 

 爆豪の上を瀬呂が追い越していく。瀬呂は障害物が増えたことでセロハンを張り付ける場所が増え、かなり順調に進んでいたのだ。

 

「じゃあな爆豪!先行くぜ!」

 

「誰の先に行くって言ってんだ醤油顔!行かせるわけねえだろ!」

 

 爆豪はそう言うと、セロハンが付いている氷の場所まで爆破を使い飛んでいく。そして、セロハンを掴み、それを自分の方に引っ張った。

 

「おっとあぶねえ。」

 

 瀬呂は爆豪に近づかれるのを避けるために、すぐにセロハンを切って別の場所に張り直そうと伸ばす。しかし、爆豪はその時に少しだけ高度の落ちた瀬呂を見逃さなかった。

 

「あっ、はぁぁああ!?」

 

「はっ、甘ぇんだよ!」

 

 爆破を使って空中に行った爆豪はそのまま瀬呂の首根っこを掴み投げ飛ばす。安全だと思っていた空中で迎撃されたため、瀬呂は抵抗できずに後ろに飛んでいった。

 

 爆豪はそんな瀬呂を気にすることなく、純狐たちの位置を確認する。二人はもう第二関門と思われる場所まで進んでいた。

 

「あれに追いつけばいいんだな。やってやんよ!」

 

 爆豪はそう言うと、瀬呂との攻防で汗が出始めたのを確認して今までの倍ほどの速さで進み始めた。

 

 

 

『さあ、先頭の二人は第二関門、ザ・フォールに到着だ!!落ちろ!』

 

『お前、実況なんだよな?』

 

 実況のプレゼントマイクの声が響く。純狐たちの目の前には、底の見えないほど深い谷が二百メートル程続いており、所々に石柱が立って、その石柱を不規則に繋ぐように縄がかけられた場所が広がっていた。

 

「じゃあ、ここまでね轟君。」

 

 純狐は崖のすぐそばまで行き、両足を強化する。純狐は強化を使い空中を移動することで、特にすることのないこのエリアを抜けようと思っていたのだ。

 

「そうはさせるかよ。」

 

 轟はロープの上を驚異のバランス感覚で進みながら純狐の方に氷を飛ばすが、純狐は片手を“固”に純化してそれを防ぎ、着陸する石柱に狙いを定めて跳ぶ。

 

『落月跳んだぁぁあああ!勝負あったか!?』

 

(よし、後は着地の姿勢に…)

 

 上昇する勢いがほぼ無くなったことを確認した純狐は、着地するために姿勢を変える。

 

 その時ふと純狐はコースの横の茂みに目をやり、その人影に気づいた。

 

(ん?あれは…)

 

 その人物は、純狐が跳んだのと合わせるように、手に持っていた扇子を微かに扇ぐ。

 

 純狐はそれを見るや否や、反射的に強化したままである足をふるってさらに上空に跳んだ。

 

 そしてもう一度その人物を確認する。

 

(豊姫!?嘘でしょ、何でこんなところにいるわけ!?ていうか、ヤバいんだけど!え?死ぬの私!)

 

 純狐が焦るのも無理はない。豊姫の持っている団扇はただ扇ぐだけで森を素粒子レベルで消すことができるような代物だ。

 

 そんな弱体化していなくても当たれば消えてしまうような攻撃を今の純狐が耐えられるはずも無い。

 

(いや、落ち着け。もし本当に殺しに来ているのであればもっと簡単に殺すことができたはずだし、今こうして考えている時間など無いはず。つまりあいつは…)

 

 純狐は1秒程考えて、結論を出す。

 

「愉快犯かよ…。」

 

「そのとーり。なんか楽しそうなことをしているから混ぜてもらおうと思って。あっ、レースは安心していいわよ。今、この懐中時計で私とあなた以外の時間止めているから。」

 

 いつの間にか純狐の目の前にいる豊姫。純狐は下で一生懸命ロープの上を走る轟が止まっているのを見て時が止まっていることを確認すると、足元を“硬”に純化してそこに立った。

 

 ちなみにこの懐中時計は月の科学で作られた使い捨ての時間停止道具である。

 

「で?ただこれをするためだけに来たの?」

 

「いや、そんなわけないじゃない。このためよッ」

 

 そう、豊姫が言った瞬間、豊姫の扇子が振るわれる。

 

「はいはい、そこまで。」

 

 純狐が何も反応できずにいると、青い髪をしたヘカーティアが現れる。その手には豊姫の団扇が握られてい………無かった。

 

 

 

 /|_________ _ _

〈  To BE CONTINUED…//// |

 \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ ~  ̄

 

 

 

 

 

 

 …という事はもちろんなく、扇子はヘカーティアの手の中に納まっていた。

 

「あなた、時間が止まっていても動けるのね。」

 

 豊姫は後ろにいるヘカーティアの方を向きながら特に驚いた様子を見せずに言う。

 

「あたり前でしょ。時間停止対策は基本なのよ。」

 

「ねえ、私もう戻っていいかしら。」

 

 会話に入ることができていない純狐は、下を見ながら暇そうに呟く。純狐からしてみれば、勝手に乱入されて命を狙われ、その上レースをぶち壊されたという意味の分からないような状況であり、早くこの場から脱したかったのだ。

 

「ああ、ちょっと言っておきたいことがあるんだけど…」

 

 ヘカーティアと豊姫は純狐の方を見てニヤリと笑う。嫌な予感のする純狐だが、今は無力であるため二人を止めることはできない。

 

「あなた、この体育祭普通にやったら勝てるわよね。」

 

「?そうね。」

 

 純狐は今更どうしたのかと首をかしげる。その様子を見て、今度は豊姫が話し出した。

 

「でも、それじゃ楽しくないでしょ?だから、私が楽しむ、そしてあなたを楽しませるために少しだけ手伝うことにしました。まさにWin×Win!」

 

「ちょっと待って。あなたの手伝うってどんな感じ?」

 

 純狐は少し青くなった顔で尋ねる。月の奴らやヘカーティアなど、力を持った奴のするお手伝いはお手伝いじゃ無いことが多い。そしておそらく今回もその類だろうと予想してのことだ。

 

「えーと…ちゃんと避けられるくらいには調整するわ。」

 

「答えになってないし…。それに、あなたこの世界の、というか人間の身体能力は把握してるわけ?」

 

 豊姫は純狐の言葉を聞き少し悩むようなしぐさをすると、ポンッと手をたたき笑顔で答える。

 

「霊夢に合わせればいいでしょ。あの子はれっきとした人間だし。」

 

「はい、アウト。あの子人間だけど人間やめてるじゃない。」

 

「じゃあ、咲夜。」

 

「時間を止めることのできる人間は普通じゃないわ。ん?あれって自分が高速移動しているだけだったかしら?まあどっちにしてもダメよ。」

 

 悪びれた様子も見せない豊姫。そんな豊姫を見て純狐はため息をつき、こいつに何を言っても無駄だと空を仰ぎ見る。

 

「もういいわ、分かったわよ。邪魔してもいいけど他の人とかに迷惑が掛からないようにしてよね。あと、私が変な動きをして怪しまれない程度に。ただでさえ出生不明で怪しまれているのだから、これ以上何かあると除籍とまではいかなくとも自由に動くことができなくなるわ。」

 

 純狐はいまだに疑いの視線が向けられていることを日々の生活の中で感じていた。もしここで変な行動をすれば今度こそ本格的に調べられてしまうだろう。まあ、調べられたところで秘密がばれることは無いのだが。

 

「じゃあ、時間を動かすわよ。後は頑張ってね!」

 

 そんなこと知ったことではないと、笑顔の豊姫が懐中時計を握り潰す。その瞬間世界に音が戻ってきた。豊姫とチキューティアはもう移動したようだ。

 

 純狐はとりあえず地上に戻ろうと体をくるっと回し、頭を斜め下に向けて、靴の裏辺りの空気を“硬”に純化すると、強化した足で蹴った。

 

『落月、より高い場所から跳ぶことで第二関門を抜ける計算かー!?対して轟はまだ100メートル行っていないくらいだぞ!そして…爆豪が追いついたー!』

 

 プレゼントマイクが話し終わる前に第二関門を抜けた場所あたりに着地する純狐。少し後ろでは、轟とそれに追い付いた爆豪が2位争いをしていた。

 

(なんか、爆豪君も強くなってるわね。まあ、あの二人が多少強くなる分はいいか)

 

 純狐は爆豪の爆発がアニメよりも大規模になっているのを見てそう考える。

 

(それより、豊姫の妨害がどこで入るか分からないから早くゴールしなきゃ…。この予選で落ちたりしたらシャレにならないわ)

 

 純狐は周りの茂みを警戒しながら足を強化し跳んで進みだす。

 

『轟からの妨害が無くなったことで加速し始めたぞ!!誰かあいつを止めてくれー!』

 

 そんな実況の叫びもむなしく、純狐は全力疾走に強化を組み合わせながらどんどん進んでいく。そして、たった数秒で後続と300メートルほどの差をつけていた。

 

「ホントに何者なんだ。一人の人間が持っていてもいい領域を越してるだろ。」「一体、いくつの個性を持っているのかしら。」「一つらしいぞ。【純化】って個性だそうだ。」

 

 先ほどまで盛り上がっていたスカウトマンが集まる席は、純狐の独走を前にして静かになってしまう。

 

 今年はNo.2ヒーロー、エンデヴァーの息子がいると聞き、集まっていた彼らだが、注目の的は轟から純狐に移っていた。

 

◇  ◇   ◇

 

「フンッ、やはりだめではないか…。」

 

 エンデヴァーは鼻を鳴らして画面を見つめる。

 

(それにしても、あの落月という生徒は始めて見たが、あれは何だ?跳ぶことでその間は休めるとはいえ焦凍と妨害しあっていたにも関わらず、疲れた様子を見せないぞ)

 

 エンデヴァーは周りが純狐の個性のことばかりに気を取られている中、その不自然な点に気づいていた。

 

(それに、あれだけ強力な個性を持っておきながらデメリットがほとんど無い。最強の個性とはまさにあれだ)

 

 エンデヴァーの目にどす黒い火が灯る。

 

 

 その瞬間だった。エンデヴァーは急に真っ暗な空間に放り出される。

 

 

「なッ、何だ!何者だ!ヴィランか!?」

 

 当然焦るエンデヴァー。そしてそんな彼の目の前に、変な服の赤髪の女性が笑顔で現れる。

 

「こんにt」

 

「くらえッ」

 

 エンデヴァーは先手必勝とばかりに炎をヘカーティアに向けて飛ばす。エンデヴァーの個性は炎系最強の【ヘルフレイム】。しかし、その女性に効いている様子はない。

 

 エンデヴァーはその女に全く炎が効くていないことを確認すると、近づいて格闘戦に持ち込もうとする。だが、その女性は手が触れるか触れないかのところで消えてしまった。

 

「なにッ」

 

「落ち着きなさい。私の名はヘカーティア・ラピス…」

 

 後ろから声をかけられたエンデヴァーは反射的に振り返り炎を飛ばす。

 

「黙れ、何をした、変T・変スカヴィラン!」

 

 ヘカーティアはその反応を見て、笑顔を引きつらせる。この男は実力差も分からないような馬鹿なのだろうか。ヘカーティアはずっとキャンキャン吠えているエンデヴァーの胸を殴り、肺の空気を全部抜く。

 

「カハッ」

 

「やっと黙ったわね。では改めて、私は地獄の女神ヘカーティア・ラピスラズリよ。あなたが、くっだらないことを考えそうだったからその前にこっちに飛ばしたの。文句ある?」

 

 エンデヴァーはヘカーティアを睨みつけながら呼吸を整える。そして、呼吸が整ったところでヘカーティアの様子を観察し始めた。

 

(神様?何言ってやがるんだこいつは。頭がおかしくなったのか?しかし、この空間は…まずはこの空間を抜け出す方法を考えねば)

 

 エンデヴァーそう考え、いつも携帯している緊急事態時に仲間を集めるためのボタンを押す。

 

(ふっ、馬鹿な奴め、これにも気づかないとは。炎が効かないから俺を狙ったのだろうがそんな浅はかな考えではこの俺に勝つことはできないぞ)

 

「あー、ちなみにそれ、圏外よ。」

 

「は?」

 

 ヘカーティアはにやりと笑うエンデヴァーに、数秒時間を空けて話す。

 

 対してエンデヴァーは何をする様子も見せないヘカーティアを警戒しながら、その機器を取り出し、表示を確認する。そこには圏外と、バーカという文字が浮かんでいた。

 

「ちなみにあなた、あの後何を考えようとしていたのかしら?」

 

 ヘカーティアはそう話しかけながら後ろを向いて歩き出す。

 

「貴様に教える筋合いはない。」

 

 そう答えた後、エンデヴァーは急に頭が冴えていくのを感じた。

 

(待て、何でこいつは俺が何を考えようとしていたかが暗に分かるような言い方をしている?それに、俺の拳を避け、見えない速さで後ろに回り込んだ、だと?そんなことがあり得るか?)

 

「やっと冷静になったようね。だがもう遅い。あなたは私の友人を道具として見た。そして、使おうとした。ついでに私の服を侮辱した。」

 

 ヘカーティアはそこまで話すと、自身の纏う雰囲気を変えた。その圧倒的で暴力的な雰囲気に、エンデヴァーは腰を抜かしてしまいその場に倒れこむ。

 

「感謝しなさい。あなたがそれをあの子の前で考えていたら、あなた死んでたわよ。確実に。私はそれを止めてあげたの。」

 

 エンデヴァーは次第に強くなっていくヘカーティアからの殺気で体が動かなくなってしまった。そして、ついにプライドを捨てる。

 

「わ、分かった!謝る!金もいくらでも出す!何でもするから命だけは助けてくれ!」

 

 土下座を始めるエンデヴァーを、ごみを見るような目で見るヘカーティア。そして、今度はエンデヴァーの方を向いて歩き出した。

 

「…何でもするのね?」

 

「はいッ!」

 

「…分かったわ。じゃあ私を楽しませなさい。」

 

 ヘカーティアはそう言うと、ゲートを2つ開き、それぞれのゲートから一人ずつ人を出す。

 

「おっ、こいつが友人様を辱めた馬鹿ですか?」

 

「だから、座薬って呼ぶn…って、あれ?ここどこ!?うわっ、ヘカーティアさん!どうしたんですか急に呼んで。ん?誰ですかこいつ。」

 

「うどんちゃん、急に呼んでごめんなさいね。ちょっと片手間に手伝ってほしいことがあって。」

 

 ゲートから出てきたのは、クラウンピースと鈴仙だった。エンデヴァーはどこからともなく現れた二人を見て呆けた顔をする。

 

「まあ、いいですけど…何すればいいんですか?何も持ってきてませんよ?」

 

「なんて言葉遣いだッ!こちらにいらっしゃるのはヘカーティア・ラピスラズリ様だぞ!身の程をわきまえろ!」

 

 エンデヴァーは鈴仙の方を向いて叫ぶ。その叫びを聞いて、ヘカーティアとクラウンピースは呆れ顔、鈴仙も何言ってんだこいつ?みたいな顔をする。

 

「この人間なんですか?うるさいんですけど。最近飼いだしたあの黒い力持ちさんの失敗作ですか?」

 

「…いっそここまでくると清々しいわね…。」

 

 ヘカーティアはそう言うと、エンデヴァーの口にしゃべることができないよう鎖を噛ませ、その鎖を床につないでエンデヴァーを床に寝かす。

 

「はい、じゃあうるさいゴミも黙ったところで、やってもらうことについて話しましょうか。」

 

 動けないエンデヴァーを焼こうと、松明を近づけていたクラウンピースの方を向いてヘカーティアは言う。

 

「えーっと、二人にはこのゴミを狂わせてもらいます。私がやってもいいんだけど、こういうのは本職に任せるのが一番だからね。」

 

「任されました!」

 

「分かりました。じゃあ、まずは私から…。」

 

 早く帰りたかった鈴仙はそう言うと、ゆっくりとエンデヴァーに近づき、エンデヴァーの顔の真上に自分の顔が来るようにすると一度目を閉じて集中し、真っ赤に染まった目とエンデヴァーの目とを合わせる。

 

「うっ、うぅぅぅうううううう!」

 

 その瞬間のたうち回り、手を振り回して炎をばらまくエンデヴァー。鈴仙はそれに驚き後ろに跳びのく。

 

「わわっ、びっくりした!」

 

「ああ、ごめんなさい、手と足を固定するの忘れてたわ。」

 

 ヘカーティアはそう言うと、新たに無数の鎖をエンデヴァーの周りの空間から出し、エンデヴァーを縛っていく。そして、エンデヴァーの動きと炎を封じると、うずうずしているクラウンピースに声をかけた。

 

「クラウンピース。いいわよ。」

 

「はいッ!思う存分やっちゃいます。」

 

 クラウンピースはそう言うと、スキップでエンデヴァーに近づき、眼球に当たるのではないかと心配になる距離まで松明を近づけてゆっくりとそれを揺らす。

 

 その間、鈴仙はヘカーティアに質問していた。

 

「あのビックリ人間なんですか?火が出てましたけど。最近はやりの焔ビトってやつですか?」

 

「なんか個性っていうらしいわよ。っていうか、幻想郷ってもうそれ見ることができるの?」

 

「(`・∀・´)エッヘン!!永遠亭は特別なのです!」

 

 そんなことを話していると、狂わし終わったクラウンピースが帰ってくる。

 

「終わりました~。」

 

「ありがと。じゃあ、うどんちゃんもまたね。今度幻想郷行ったとき何か奢るわ。クラウンピースも帰っていいわよ。」

 

「本当ですか!やったぜ!帰りはこのゲートでいいんですよね?」

 

「それであってますよ、鈴仙さん。では、お先に失礼しますご主人様。」

 

 二人がゲートを潜ったことを確認したヘカーティアは改めて、ずっと唸っているエンデヴァーの方を向く。

 

「きったない…、って聞こえてないか。まあいいわ、じゃあ、これからは私の番ね。」

 

 ヘカーティアはエンデヴァーの拘束を解く。

 

「あ“あ”あ“あ”あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!コフッ、うっうっう」

 

 拘束が解かれた瞬間、エンデヴァーは叫ぶ。口からは血の色をした泡がとめどなく噴き出し、手を振り回したかと思うと、倒れて何かにおびえるようなしぐさをする。そして、そのまま気を失ってしまった。

 

「あら、もう伸びちゃったの?」

 

 ヘカーティアはエンデヴァーに近づくとたたき起こす。もちろん手ではなく鎖でだ。やっとの思いで起きたエンデヴァーはヘカーティアを見ると、また土下座を始めた。

 

「ゆ“、ゆ”る“じで…ぐだざい。」

 

「分かったわ。」

 

 ヘカーティアは笑顔でそう言うと、エンデヴァーの方に手を向けて精神状態を治した。

 

「あ、あああ!ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 エンデヴァーは涙を流しながら、土下座し続ける。

 

 

しかし…

 

 

「はいっ、じゃあもう一回!今度はなんと、痛覚10倍、それに継続回復もお付けします!」

 

 

 

「ありが……は?」

 

 

 

 ヘカーティアは動きの止まったエンデヴァーに手を向けて、エンデヴァーの体の時間を戻し始める。

 

「あ“ッ、ハ、ハ、アッグ!ッウ!ッーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 エンデヴァーは自分が壊れていくのを感じる。しかし、完全に壊れてしまうことも出来ない。正に生き地獄と化していた。

 

 そんなエンデヴァーの様子をスマホで撮影するヘカーティアは…

 

(この映像、月のマッドサイエンティストたちに売ったら金になるわよね)

 

 そんなことを考えていた。

 

◇  ◇   ◇

 

 一方そんなことは全く知らない純狐。そんな彼女の前には巨大な真っ黒の箱があった。

 

『さあ、ついに第三関門!!残る関門はこれを含めて後、2つ!例年よりも1つ多いぞ!!断じて、ここまで独走すると思ってなくて、面白さを増すために追加したわけじゃないからな!それに、後半二つは、先頭ほど不利なものだ!さあ、超えて魅せろPlus Ultra!!』

 

『長ぇ…それにうるせえ…。』

 




お読みくださりありがとうございます!

えー、本当に申し訳ないのですが、3月くらいまで続きが出せなくなると思います。
ご理解いただけるとありがたいです。ごめんなさい。

<久しぶりのキャラ紹介>

・豊姫
  綿月豊姫。綿月姉妹の天真爛漫なお姉ちゃん。【海と陸を繋ぐ程度の能力】を持つチートの一人。他の月の民と同様穢れを嫌うが、そこまでヒステリックではない。永琳を師として仰ぐ。

・よっちゃん(依姫)
  綿月依姫。綿月姉妹の生真面目な妹。【神霊の依代となる程度の能力】を持つ、これまたチートの一人。姉と共に”地上と月を繋ぐ者たちのリーダー”。姉と同じく永琳を師として仰ぎ、絶対的な信頼を寄せている。

・霊夢
  博麗霊夢。言わずと知れた主人公。

・咲夜
  こちらも、言わずと知れている。【時を操る程度の能力】は、『東方茨歌仙』では、質量などを消して高速移動しているだけだと書かれている。

・鈴仙(うどんちゃん)
  鈴仙・優曇華院・イナバ。元々は、依姫のペットである月のウサギだが、『東方紺珠伝』では地上のウサギを名乗っている。苦労人。
  
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