純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんばんは!あけおめ!

お久しぶりです。
プロットの大切さを知り始めました。


終わるのかなこのシリーズ…


障害物競争3

― (唐突な)幻想郷side ―

 

 一体、いつからだっただろうか。この運命が定まっていたのは。次元を隔てるほどの距離があろうとも、因果は巡りそこに訪れる。

 

 霧の湖の畔に建つ真っ赤な洋館の主、レミリア・スカーレットは、読んでいた本を静かに閉じて軽くため息をつく。

 

 そして、おもむろに立ち上がると、日光が当たらないように注意しながらカーテンを開けて、小さな窓から綺麗に整備された庭園を眺める。そこには、いつものように美鈴がいたずらをする妖精たちを叱る姿があった。

 

 そんな平和な光景を見て、フフッっと笑うレミリア。そんなレミリアの後ろで、コトッ、と心地よい音が鳴る。優秀なメイドが読書が終わったのを察して、紅茶を持って来てくれたのだろう。

 

カーテンを元に戻し、机に置かれている紅茶を見る。

 

 紅茶に混ざっているのは、いつもの睡眠薬のようだ。これならば、普通に飲んでも大丈夫だろう。

 

 レミリアはそう考えると、念のため、親友であるパチュリーから教わった異物浄化の魔法をかけて紅茶を口に含んだ。

 

 ちょうどその時、扉が大きな音を立てて開かれ、レミリアの妹、フランドールが部屋に入ってきた。

 

 いつになく焦っているフランは、優雅に紅茶を飲んでいるレミリアを見ると、何かを諦めたような表情になる。その後、荷物をまとめてくるとだけ言って、部屋から出て行った。きっと彼女もこれから何が起こるか分かってしまったのだろう。

 

 フランが部屋を出て行くと、レミリアは軽く息を吐いてから立ち上がる。そして、いつの間にか自分の斜め後ろに待機していた咲夜から日傘を受け取り、外に出ようと移動を始めた。

 

 ゴミ一つない廊下を歩いて出入り口前のホールに着く。そこにはすでに、パチュリーと荷物をまとめたフランの姿があった。二人はレミリアを待ってくれていたらしい。

 

 フランの荷造りが早くなったことに嬉しいような、寂しいような複雑な感情を抱くレミリアは、その不安を妹に悟らせないために、先頭を切って扉を開ける。

 

 日傘をさして、門に歩みを進めるレミリア達。途中で妖精たちと遊んでいた美鈴に、そろそろだからついてくるように言う。

 

 それを聞いた美鈴は一瞬で表情が抜け落ちた。これから起こることの後始末はおそらく美鈴がすることになるので、彼女のショックはレミリア達の比ではない。

 

 空を見て、神を恨むようなことを呟き続ける美鈴に、レミリア達はかける言葉が見つからないのでそっとしておき、また歩き出す。

 

 門の外に出ると、三人は着実にカウントダウンが進んでいることを感じながら館を見た。レミリアの横には大きな荷物と美鈴を持った咲夜も現れ、静かにその時を待つ。

 

 その数秒後、どこかで地雷原が爆発すると同時に、紅魔館は爆発した。

 

 

 

「はいはい、それじゃ片付けを始めましょうか。美鈴、いつも通りお願いね。」

 

「分かりました…。」

 

「もうやだこの館…」

 

「妹様、拗ねないでください。お菓子をお作り致しますので。」

 

「本が無事なら何でもいいわ。」

 

 

― side out ―

 

 

『は…?』

 

 プレゼントマイクは一瞬我を忘れて変な声を出す。観客も何が起きたか分からずに黙ってしまっていた。が、すぐに賑わいを取り戻す。

 

「はあぁ!?何しやがった!?」「あいつ今まで手抜いていたのか…!」「もうわけわかんないね…。」「あれと戦うの?無理じゃない?」

 

 そんな観客席と対照的に、黒く染まり、まだ所々火花の見える地面が広がる最終関門だった場所は、パチパチと音を立てるだけで、静寂に包まれていた。

 

 そんな大地に純狐が降り立つ。そして、ゆっくりと轟たちのいる方に体を向けた。

 

 (クッソがぁあ!!あいつ、手ぇ抜いてやがった!)

 

 爆豪は降りてきた純狐を睨みつけ、歯ぎしりをする。その時、爆豪が純狐にとびかかっていかなかったのは、どれだけ悔やんでも純狐には届かないと分かってしまっていたからだ。

 

 爆豪はそんな自分の実力不足を、純狐が手加減していたこと以上に悔やんでいた。

 

 同じ場所にいた轟もまた、悔しそうな表情をして純狐を見ていた。

 

轟は開会式前の宣戦布告時に、つまらない勝負をするようなら本気は出さない、と言われたことを思い出す。

 

 序盤は何とか食いつけてはいたものの、特に細工をされるわけではなく力だけで振り切られ、その後も背中を追いかけることしかできなかった。純狐より関門が一つ少なかったのに、だ。

 

 そんな二人の様子を見ている純狐は、二人とは逆にすっきりとした顔をしていた。

 

(ふぅ~、後はゴールするだけね。霊力使いすぎて、ゴールする分しか動けなさそうだけど…、何気に危ない橋渡ってたわね…)

 

 今の人の体では、保持できる霊力の量が少ない。それに、霊力を練るのもそれなりに時間がかかるため、今の爆発で使い切ってしまっていたらかなりピンチだったのだ。

 

 もちろん、体力も当の昔に無くなっているので、純化を制御することは難しかっただろう。

 

『おっと、ついに轟と爆豪が走り出したぞ!だが、落月を警戒してか、大きく迂回~!』

 

 なかなか動かない純狐を見て、このままだと埒が明かないと考えたのか、轟が走り出し、それに爆豪も続く。

 

 それを見た純狐は余裕を持った動作で足を強化し、ゴールに向かって跳んだ。

 

 そう、何も警戒せずに。

 

「えッ」

 

 純狐は跳んだ。ゴールとは反対に。そのまま最終関門の手前に着地し、そのまま倒れた純狐は何が起こったか分からず周囲を見渡す。

 

 そして、木陰にある豊姫の笑顔を見た。

 

「――ッ」

 

 おそらく、豊姫がエネルギーの場所を操作し、反対方向に飛ばしたのだろう。純狐はそれを理解すると同時に、行動に移っていた。

 

(今は無視。おそらく、立つのが限界。霊力は枯渇。純化は制御不能。周りの生徒は離れている)

 

 さっき確認していたことが功を奏し、自分と、その周囲の状況確認は1秒もなく終了。その後すぐに、轟たちを見る。

 

(あと10秒ほどでゴール。私の全力で行けばゴールまで1秒と少しくらいか?)

 

 そこまで理解すると、純狐は力を抜き、体力と霊力の回復に努める。

 

『えッ、オイオイオイ!どうした落月!?ここにきて個性の暴走か!』

 

 純狐の奇行に一瞬実況を忘れていたプレゼントマイク。その横にいるイレイザーヘッドは全く動かない純狐を心配し、早く救助班を向かわせるように指示を出し、自身も急いで向かおうと席を立った。

 

(…自滅覚悟で、正確に…、あと5秒…)

 

『落月動かない!ホントに大丈夫なのか!?救護班が向かっているから安心してくれよ!一方、落月がいなくなったことで轟と爆豪がまた争いだしたー!今度は2位ではなく、1位争いだ!』

 

 轟は周りが暖かくなっているおかげで体に降りていた霜が溶け、爆豪も発汗が激しくなって推進力が上がる。周りの環境に後押しされた二人の勝負は、先ほどより激しいものになっていた。

 

 純狐のことを心配していた観客も、救護班のことやリカバリーガールがいることへの安心感からか、いつの間にか二人の勝負に気を向けていた。

 

(右足の指先に神経を集中…あと2秒…!)

 

 救護班が向かってくる中、純狐はさらに集中の度合いを上げる。周りの生徒の失敗は、この時純狐に近づかなかったことだろう。もし、誰かが近づいていたら、純狐は全力を出せなかったのだから。

 

 しかし、圧倒的な力を見せつけられ、純狐に近づくことが自殺行為だと刷り込まれている生徒にそんなことができるはずも無い。

 

『おっと、轟が爆豪の隙をついて手を凍らせた!すぐにもう片方の手で爆破させ解除するが…、これは勝負あったか!?』

 

 ついに、轟が爆豪にゴール直前で差をつけ、観客の興奮のボルテージが上がっていく。

 

『ゴールまであと10メートル切った!!そして、そのまま……』

 

(…ゼロ…!)

 

 轟が勝利を確信し、爆豪が負けたことを確信した瞬間、二人の後方でとんでもない爆発音と、膨大な光が溢れ出る。

 

 純狐が何かしたと警戒し、一瞬振り返った轟と爆豪は対策を立てる時間も与えられず、吹き荒れた突風によって左右に突き飛ばされた。

 

 そして、スタジアム内に人影が降り立つ。

 

 その姿を確認したプレゼントマイクは、マイクを狂わせるのではないかと思わせるほどの大音量で叫んだ。

 

『はぁぁああ?!オイ今なにした!落月、ゴールしている!!これには轟たちも呆然!いや、俺も何が起こったか分からなかったぞ!』

 

 観客も何が起こったか理解できず、スタジアムは一瞬静寂に包まれた。しかし、純狐の姿を確認すると、プレゼントマイクの声と引けを取らないほどの歓声を上げる。

 

 そのように、スタジアムが歓声に包まれ、誰もがアドレナリンを多量に出している中、警備員に止められ、結局放送席から出ることができなかった相澤だけが冷静であった。

 

「……落月の様子がおかしい。」

 

 そんな相澤の言葉通り、純狐は急に倒れたかと思うと、そのまま足の痙攣を始める。しかし、意識ははっきりしているようで、何度か立ち上がろうとするが、立ち上がることができないでいた。

 

(チィッ、こんな予定では…!あー、どれもこれも豊姫のせいよ!)

 

 純狐は心の中で悪態をつく。実際、今の純狐の体の様子は、冷静になってみればかなり痛々しいものであった。

 

 自分で切った手からは、動き回ったせいで血が止まっておらず、少量とはいえ火薬の入った爆弾に突っ込んでいったことによる傷からも血が滲んでいる。黄金に光っていた金髪は所々黒く煤が付いており、服もかなりボロボロになってしまっていた。

 

 そして、何よりひどかったのが、最後に使った右足の指先であった。

 

(骨折はしてるか…、痛くは無いから立ち上がったりはできるけど、これ治すのにかなり霊力食うわね…。正直、もう先生に痛みを感じにくいことばれてそうだし隠す必要が無いに等しいのが救いね。そんなことより、第二競技に間に合うかしら。体力も残ってないからリカバリーガールには期待できないし…)

 

 そんなことを考え、少しでも霊力を回復させるために何とか動くようになった足を動かしてスタジアムの端に向かう純狐の耳に、またひときわ大きな歓声が聞こえてきた。

 

『ここで、轟がゴール!!そして、少し遅れて爆豪がゴールだ!かなり吹き飛ばされてしまったようだが、それでも4位以下にかなりの差をつけた!取り合えずお疲れ様だぜ!』

 

 ゴールした二人は、その場で少し息を整え、爆豪は純狐の方を一瞥してそのままスタジアムの真ん中に歩いて行き、轟は、救護を受けている純狐の方に向かって行った。

 

 遠くから、「おおッ、焦凍!脈ありなのか!?うらやま幸せになれこん畜生!」など、意味の分からない声が聞こえてきた気がしたが、今は無視でいいだろう。

 

 そして、純狐の元に着いた轟は少し怒気を含んだ声で話しかける。よほど冷静さを欠いているのか、純狐のケガには気づいていないようだった。

 

「お前、ふざけてんのか。」

 

 その声を聞いた純狐は、首を回して轟をちらっと見ると、包帯が巻かれた手で体を指さし、軽い笑みを浮かべる。

 

「これが大丈夫そうに見える?こっちはこっちで色々あったのよ。一応全力でやらせてもらったわ。」

 

 その言葉を聞いた轟は、やっと純狐の今の状態に気づいた。なる程、全力を出したという風には感じなかったがケガを見る限り全力を出したようだ。しかし、その姿を見て、轟には疑問が湧き出てくる。

 

「お前、今までそんなになったこと無かっただろ?俺たちとそんなに接触してたわけでもないし…、あのブラックボックスで何があったんだ?」

 

 今まで純狐は、授業などでどれだけ厳しい課題が出されても、余裕をもってクリアしてきた。無限にあるのでは?と思わせるほどの持久力があり、苦手に見えることでも個性をうまく使うことで切り抜けていた。そんな純狐がこのような状態になる事態が轟には想像できなかった。

 

「あー、ブラックボックスはねぇ…、まあ大変だったわ。うん、あそこで全部狂ったと言っても過言ではないくらいには。」

 

「そうか…。」

 

 純狐の答えを聞き、落ち込む轟。大変な関門があっても純狐に追いつけなかったことに自信を無くしかけていた。

 

 治療があらかた終わった純狐は、立ち上がりながらそんな轟の様子を見てここでやる気をなくしてもらっては困ると、着火剤になりそうな話題を振る。

 

「そう言えば轟君の家族とかは来ているの?」

 

 それを聞いた轟は、苦虫をかみつぶしたような顔をし、エンデヴァーがいるであろう席を見る。

 

「…クソ親父が来ている。そうだ…俺はあいつに認めさせるために…!」

 

 目に恨みの焔が宿ったところで純狐は安心し、練っていた霊力を使い足の指を治していく。しかし、一気に治してしまうほどの霊力は戻っておらず、また、怪しまれるのでその他のケガも程よく残して、一組のメンバーが次々に帰ってきているスタジアムの真ん中の方に向かった。

 

 すると、今まで純狐が治療を受けていたことで話しかけることを遠慮していた一組の皆が純狐に話しかけてくる。

 

「落月さん!ケガしてるようだったが大丈夫なのか?」

 

 飯田は相変わらずかくかくした動きをしながら話しかける。しかし、疲れからかいつもより速度が落ちているようだ。

 

「まあ、大丈夫と思えば大丈夫よ。回復は早いから。そっちもお疲れ様。」

 

 純狐は飯田にまかれた包帯を一部解き、ケガを治した部分を見せる。飯田はそれを見て、驚いたような顔をした後、少し考え込んでしまう。

 

「あれだけ動いても…!いや、これは俺が成長できる機会だととらえよう!Plus Ultraだ!」

 

 そう叫ぶと、突然純狐に向かってありがとうと言って飯田は離れたところに行ってしまった。

 

「あはは…、飯田君は元気そうだね…。」

 

 飯田が去っていき、一人になった純狐に次は出久が話しかける。

 

「あら、出久君。実力は出せたかしら?」

 

 まあ、上位で帰ってきたってことはうまくいっているという事よね、と思い尋ねてみる。問われた出久は、一瞬びくっとしてしまうが、明るい表情で頷いた。純狐の予想通り、ある程度実力は出せたらしい。

 

「それよりも…、そのケガどうしたの?!」

 

 出久は、純狐の惨状に気づき声を上げる。純狐は3度目のそのやり取りに少し面倒くささを感じつつ答える。

 

「腕のケガはブラックボックスで色々あったことが原因だけど…足のは個性の制御がうまくいかなかったのが原因ね。前に言ったでしょ?出久君みたいになることもあるって。」

 

 出久はそう言えば、と顎に手を当てて思い出す。しかし、いつも余裕そうな純狐が、大きなケガをして、個性を制御できないことを出久は信じられなかった。

 

「まさかそんなになるなんて…、いや、でもやはり落月さんの個性は僕と類似する部分がある。もっと落月さんの行動を観察することで僕の制御も…」

 

 そのまま考え込んでしまい、ぶつぶつ話し出した出久を見て苦笑いしていると、梅雨と八百万が近づいてくる。

 

「ケロッ、酷い怪我。勝負の場で言うことじゃないかもしれないけど、あんまり無茶しないでね。」

 

「峰田さんにやられてしまいましたわ…。落月さんもお疲れ様です。体操服がボロボロですね…。作って差し上げましょうか?」

 

「二人ともお疲れ様。そして、ご厚意に甘えて作ってもらおうかしら。ありがとね。」

 

 そんな風に三人が話していると、小さな影が近づいてくる。

 

「おいおい、今ボロボロの体操服といったか?そして、作ってもらうという事は、着替えるという事!よし、しょうがねぇなあ、俺が手伝って…」

 

 近づいて来た小さなものがそんなことを言った瞬間、純狐が小さい生物の目と思われる部分に指を近づけ、そのまま指先を可視光線に純化した。

 

「ああああああああ!目がぁ!目がぁ!」

 

 純狐はそう叫びながら、上鳴に運ばれていく小さな生物を無視して、ほとんどの生徒が帰ってきたスタジアムを眺める。

 

「…みんな元気そうで良かったわ。次の競技もお互い頑張りましょう。」

 

「…ええ、そうですね。」

 

 純狐は作ってもらった体操服を受け取り、トイレに歩いて行った。

 

 そして、スタジアムの建物の中に入り、しばらく歩いたところでオールマイトに会う。

 

「お疲れ様、落月少女。少々へまをしたみたいだな。」

 

「アハハ…、次から気を付けます。」

 

 時間も無いのでトイレへの道を急ごうとする純狐。オールマイトもそれを分かっているので、それを止めようとはしなかった。しかし、純狐とすれ違う瞬間、純狐に聞こえるように呟く。

 

「何か別のものと戦ってただろう?昼休み、休憩室3に集合だ。」

 

「…はい。」

 

 純狐はやはりばれていたかと思いながら返事をした。しかし、昼休みはこの体育祭で成功を飾ることができるかどうかを左右することをしなければならない。純狐は、オールマイトに少し待ってもらっていてもいいかと尋ね、許可をもらうと、鼻歌を歌いながらトイレに向かって行った。

 

 純狐が廊下の角を曲がるまで笑顔で見守っていたオールマイトは、姿が見えなくなった瞬間、大きなため息をつく。

 

「はぁ~、彼女に無茶をされるとこっちが心配になってくるからやめてほしいのだがな。」

 

 そのオールマイトの声を聞いていたリカバリーガールは同じようにため息をついた。

 

「お前も周りにそう思われてるんだよ…。人の振り見て我が振り直せってことだね。」

 

 オールマイトは弱々しく笑い、気を付けますと言うと、表情を真剣なものに変える。純狐がヴィランに狙われてその攻撃を受けたとすれば、それは大きな問題だ。純狐だから大ごとにはならなかったが、もし、戦闘能力の低い生徒が狙われていたらと思うとぞっとするものがあった。

 

「しかし、何だ…、あの子の限界を見ることができたってのは私たちにとってはいいことだったね。これであの子への対策マニュアルをまともに組むことができる。」

 

 リカバリーガールの発言に少し眉をひそめるオールマイト。オールマイトはこのマニュアルの核ではあるが、基本的に反対であった。

 

「私があの子を導いて見せます。」

 

 オールマイトの覚悟した目に見つめられ、たじろいでしまうリカバリーガールだが、過去に何度も強力な個性を生徒が悪用したことを知っている彼女は、救護室に戻りながらオールマイトを諭すように言う。

 

「…暴れだしてからでは遅いんだよ。それに過去に例を見ない強さを持つ生徒だ。頭もいい。すでにその辺のヒーローとは一線を画すほどの実力がある。…反対するのはいいけど、いざという時は…覚悟して動いておくれ。」

 

 杖に体重を預け、腰をたたいて歩くリカバリーガールの姿を無言で眺めながらオールマイトは思いを固める。

 

(絶対にそんなことはさせない。私が正しい方向に導いて見せる。出久君も落月少女も…!)

 

 そのシリアスな場面を見るものがあった。純狐である。オールマイトの様子が最近おかしいと思っていた純狐は、着替えを速攻で終えて“隠”に純化し近くで見ていたのだ。

 

(うわッ、面倒なことになってる…。原作にこんなの無かったわよね。少し目立ちすぎたかな…。勘違いされてヒーローと敵対してもイベントは増えそうなのだけれど…、その前に私が帰らなくちゃいけないしなぁ)

 

 そんなことを考え、悶々としながら、純狐はスタジアムに戻って行くのだった。

 

「……私はやっぱり…信用されないのかしら。まあ、本当のこと話さないから当然か。」

 

 歩きながら無意識にそう呟く。彼女は何かを思い出しそうであったが、考えるのをやめた。

 

『全員が帰ってきたみたいだな!それじゃあ、第二種目行っちゃうぜぇ!進めるのは上位42人!張り切っていこう!!ミイラマンも準備はOK!?』

 

『呼び方変えろ。…まあ怪我はしないようにな。』

 

『えッ、大丈夫か?熱でもあるのか?』

 

『はったおすぞ』

 




お読みいただきありがとうございました!

いつも通り、矛盾や誤字を教えていただければ幸いです。

次回!第二種目に入る予定
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