純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんにちは!

アンケート協力ありがとうございました!
このままでも良いという方が多かったので一安心です。
ですが、投稿頻度を上げてほしいという方も多かったので、文字数の工夫などをしていこうと思います。……できるかなぁ。

久しぶりにシャドバにはまってます。MP5000超えたあたりから勝率が下がって辛い。



トーナメント 2

― (引き続き)ヘカーティアside ―

 

 とある建物の屋上でその男は憂いていた。偽物が蔓延るこの世の中を。真のヒーローがいなくなってしまうのではないかという不安と共に。

 

「正さねば……」

 

 男は呟く。ぼろ雑巾のようになった服と全身に巻いた包帯をたなびかせながら。

 

「ハァ…」

 

 小さく息をつき立ち上がる。そのまま洗練された動作で刀の塚に手を当てると、目線の先にいるヒーローに向かって突撃する体制となった。だが、その行為は後ろから聞こえた子供の声によって遮られる。

 

「お、あなたがステインさんで…」

 

「誰だ。」

 

 ゲートから現れてすぐのクラウンピースに刀を勢いよく向けるステイン。クラウンピースは、予想以上に速い剣裁きに驚き半歩下がると、改めて挨拶をする。

 

「こんにちは!私は地獄の妖精クラウンピースです!ご主人様の命令であなたを狂わせに来ました。」

 

「…帰れ。」

 

 子供がふざけているとしか思えないステインは、興味なさそうにクラウンピースから目を離し、再びインゲニウムに突撃しようと前傾姿勢になる。だが、その程度で諦めるクラウンピースではない。

 

 ステインが前傾姿勢を取った瞬間、クラウンピースが彼の目の前に現れる。ステインの立っているのは屋上の縁であるため、普通であればそのまま落下してお陀仏の場所だ。流石のステインもこれには驚いたようで、後ろに飛びのき、飛んでいるクラウンピースと向き合った。

 

「何が目的だ。ハァ…場合によっては子供も粛清対象だ。」

 

「だからさっき説明したじゃないですか。ちょっとだけこの松明を見ていればいいんです。」

 

 クラウンピースはそう言うと、手に持っていた松明をゆっくり揺らし始める。それを見たステインは少しだけ意識の乱れを感じると同時に、クラウンピースに向かってナイフを投擲し、松明を壊しにかかった。個性の分からない相手には、何かされる前に片を付けてしまうのが最適だからである。

 

 だが、その刀は全力で振るったにもかかわらず松明を壊すことはできなかった。また、クラウンピースに投げたナイフも当たりはしたが服を傷つけることも出来ていない。

 

「危ないですね。ご主人様に防御魔法をかけてもらわなかったら一回休みになるところでしたよ。まあいいです。私も本気を出しちゃいますからね!イッツルナティックターイム!」

 

 クラウンピースは見せつけるように松明を揺らす。ステインは直感であれはヤバいものだと気づいたのか、目を閉じてから突進を試みた。しかし、松明の炎を見たせいか、少しだけ判断が遅れてしまう。そのためその突進は、クラウンピースが放った星形の弾幕によって止められてしまった。

 

 星形の弾幕にぶつかったステインは、何の気配も無かったところで障害物に当たったことに驚き、一瞬だけ目を開いてしまった。そしてその時、一段と大きくなった松明の炎を近距離で視認してしまう。

 

「あ……」

 

 気づいたときにはもう遅かった。ステインの理性は無くなり、得体のしれない狂気に思考が上塗りされていく。

 

「ハァッ…!」

 

 ステインは最後の力を振り絞ってクラウンピースにナイフを投げつけた。だが、その程度で破壊されるほどヘカーティアの魔法はやわではない。クラウンピースに当たったナイフは、先ほどのように弾かれて地面に落ちる。

 

「お前はッ…一体…!」

 

 ケラケラと笑いながら紫色のゲートに入っていくクラウンピースに向かって吐き捨てるように言葉を紡ぐステイン。だが、もはや抵抗するだけの理性も残っておらず、そのまま完全に狂気に染まっていった。

 

 

― side out ―

 

 

「何か嫌な予感がする…。」

 

 轟と緑谷の試合を控室で観戦しながら身震いをする純狐。おそらく何かが起こっているんだろうなと思いながらも、どうすることも出来ないため、モニターの方に注目する。

 

「出久君は足の使い方がうまくなっているわね。でも…」

 

 画面に映るのは圧倒的な量の氷。轟が原作程度の強さであったならば、今の出久は勝つことはできなくともかなり有利に試合を進めることができただろう。

 

 だが、出久以上に轟は強くなっていた。今のところ足を強化して逃げ回ることはできている出久だが、このままでは轟よりも先に限界が来てしまうのは明らかである。

 

「どうしたものかしらねぇ。轟君の手も震えてきているから、そろそろオリジンのイベントが来てもいいころなんだけど…。それまで出久君が逃げ切れるかどうか妖しいところね。」

 

 純狐がそんなことを考えていると、ついに出久が轟の手の震えに気づき会話が始まる。だが両者も会話は原作とは雰囲気が若干違っていた。

 

◇  ◇  ◇

 

「震えているよ轟君。」

 

 出久は鬼気迫る表情で轟の正面に立つ。轟はその気迫に押され、攻撃の手を休めることになった。

 

「君は言ってたよね。落月さんが本気を出してくれないって。」

 

 出久はボロボロになった指を握りしめながら話し続ける。純狐の名が出たことで、轟の表情にも変化が生じた。

 

「確かにそうだ。それに関しては、僕も思うところがあった。」

 

「何が言いたい…!」

 

 出久の話の趣旨は分からないが、おそらく自分の核心に関わることだと感づいた轟は、珍しく攻撃的な口調になってしまう。だが、出久はひるまない。

 

「だけど!さっきも言ったように、落月さんのは仕方なくだ!君は違うだろ?思いっきり力を使っても大丈夫なんだろ!?」

 

 スタジアムも出久の言葉に呑まれて静かになっていく。それに反比例するように、轟と緑谷の感情は燃え上がっていった。

 

「今の君なら、全力で戦ってもらえない者の悔しさが分かるはずだ!みんな目標に向かって本気でやっている!自分が本気を出さずに他人には本気を出せって?ふざけるな!まずは君が!」

 

「全力でかかってこい!!」

 

 その瞬間、轟は自分の中で何かにひびが入ったのを確かに感じた。

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

出久たちの会話が一段落し、試合が動き始める。そして二人の会話を聞いていた純狐は、なんとなく申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

 

「…まあ、出久君は本当に主人公ね。色々懸念してたけど、いい方向に転がってくれて良かったわ。それにしても本気ねぇ…。楽しむことに関してはそれなりに本気を出してるんだけどなー。それとはもちろん違うものね。…この問題はいったん置いときましょう。」

 

 今考えても結論は出ないと考えた純狐は、いったん考ええるのをやめて大技をぶつけようとしている轟と出久を見た。

 

 まず轟が氷を展開して出久を寄せ付けないようにする。その氷の形はただがむしゃらなものではなく、出久を逃がさないような形をしたものだった。氷の強度もかなりのものらしく、セメントスが危険を軽減するために作ったコンクリートの壁は氷のある所だけ展開できていない。

 

 それに対し出久は初めてフルカウルを使い、氷の壁を利用して変則的な動きをしながら轟に近づく。だが、全身ボロボロの状態ではさすがに無理があったのか、途中で姿勢を崩してしまった。

 

「緑谷、ありがとな。」

 

 轟は出久の動きが鈍ったのを見逃さず、最大火力の炎を放つ。それによって冷やされていた空気が膨張し、大爆発を起こした。流石の純狐も大きな音に驚き、肩を少しだけ震わせる。その後、煙が晴れて場外に出た出久が見つかり、轟の勝利で試合は終わった。

 

「うんうん、いい試合だった。勝負としてだけではなくこの世界のずれを確認するものとしても。」

 

 ステージの修復に時間がかかるという旨の放送を聞きながら、今の試合を振り返る。これを面倒くさがると後でどんなことにつながるか分からないため、たとえ予想通りであっても欠かせないことなのだ。

 

 そして約10分後、純狐の考えがある程度考えがまとまったところで、タイミングよくステージの修理が完了した。

 

「じゃあ、行きましょうか。」

 

 純狐は立ち上がり部屋の扉を開ける。するとそこにはトゥルーフォームのオールマイトが立っていた。

 

「どうかされましたかオールマイト。まだ、何もしていませんよ。」

 

「いや、様子を見に来ただけだ。そして何かするつもりなのか…。無茶はするなよ。」

 

「フフフ、相変わらず優しいですね。」

 

 オールマイトとの会話はそれだけで終わった。どうやら本当に様子を見に来ただけだったようだ。だが、このことはそれなりに大事な意味を持つことを純狐は見抜いていた。しかし、ここで考えるとまた長くなるため今は考えないことにする。

 

 その後は特に何事も無くステージにたどり着いた純狐。対戦相手である飯田はすでにステージの上でストレッチをしていた。

 

『さァさァ皆さんお待たせしました!今のところあまり本領発揮できていないか!?ヒーロー科、飯田天哉!』

 

 心なしか今までと比べて控えめな歓声が起こる。おそらく観客はすでにどちらが勝つかを予想し、それをほぼ確信しているのだろう。

 

『対するは!そろそろ弱点を見せてくれよ!同じくヒーロー科、落月純狐!』

 

 紹介が終わった二人は、言葉を交わすことなくスタート位置につく。そしてお互いに、相手の初動を見逃さないようにしようと、目に神経を集中させた。

 

『レディー……START!!』

 

 スタートの声が終わるや否や、二人は元の場所からボッ、という音と残像を残して消え、ステージの真ん中で互いの右足をぶつける。

 

「いい動きね飯田君!」

 

「―ッ、お褒めにあずかり光栄だッ!」

 

 純狐の右足の力がどんどん強まっていくのを感じた飯田は咄嗟に純狐から距離を取り、再び純狐に突進していく。飯田が今使っているレシプロバーストは約10秒しか使うことができず、早く勝負を決めなければ何もできなくなってしまう。そのため、防がれる可能性が高くてもぶつかっていくしかないのだ。

 

 純狐は突進してきた飯田を上に跳ぶことで避ける。そして足元に氷を作り、落下しながらそれを殴って霙状の散弾をまき散らした。飯田はそれを無視して、まだ空中にいる純狐に向かって跳び蹴りを繰り出す。

 

『速すぎて実況が追いつかないぞ!今のところ飯田が攻め、落月が防衛している感じか!?』

 

『確かに姿を隠す隙も与えずに攻め続けることであれは攻略できるな。』

 

 実況を聞いて、純狐が圧倒して終わると考えていた観客たちは予想外の展開に盛り上がりを増していく。その間も、飯田と純狐は互いにトップスピードで戦いを繰り広げていた。

 

(足への強化は良し、体も温まった。始めましょう)

 

 だがそんな戦いは純狐にとって準備体操でしかなかった。飯田の蹴りを避けた純狐は、あらかじめ強化していた手を振るい、風圧で飯田を退ける。

 

「さあ、飯田君。私を捉えてみせなさい。」

 

 純狐は飯田だけに聞こえるような声でそう言うと空中に跳び上がり、体を傾けてから足元を“硬”に純化した。そして、それを踏み台にしてこちらへ向かってくる飯田の背中側に跳ぶ。

 

「遅いわよ。」

 

 純狐は空中で体をくるりと回し、足場を作って跳ぶという行為を繰り返す。飯田はそれを必死に追いかけるが、3次元的な純狐の動きについて行けず翻弄されていた。

 

『今度は何してるんだ落月!ステージの中を縦横無尽に跳び回る!ミイラマン解説頼む!』

 

『…跳んだ瞬間その足場を解除して自分が次に行く場所を計算し、そこに足場を形成。それに合わせて体を回転させて足場を蹴ることを繰り返してる…。』

 

 プレゼントマイクは耳を疑う。そんなことをあの速度でやってのけるのが信じられなかったのだ。しかも、純狐はその行為を繰り返すごとに加速していく。

 

 そして、ついに純狐を捉えることなく飯田のエンジンは止まってしまった。まともに動けなくなった飯田は悔しそうに純狐の影を目で追う。

 

(飯田君はッ、止まったみたいねッ、ならもうやめてもいいかしら)

 

 ここで純狐は折角止まるならかっこよく締めようと、止まっている飯田に向かって跳び、右手を構えた。

 

「飯田君!いい勝負だったわ!でもこれで終わりよ!」

 

『落月、飯田に向かって跳んだ!吹っ飛ばして場外KOする気か!』

 

『いやだがあの角度は…』

 

 相澤が言い終わらないうちに、純狐は地面すれすれのところまで降りてきて……

 

「はへ?」

 

変な声と共に盛大な音を立てて地面にぶつかった。

 

 さすがの純狐でもあのような能力の使い方は無茶であり、脳が限界を迎えたのだ。

 

 今まで盛り上がっていたスタジアムはシーンと静まり返り、ステージの上では目を点にした飯田が、純狐の落下地点に立ち込める砂ぼこりの奥を見る。

 

『えーっと…、落月ー、大丈夫か?』

 

『……。』

 

 実況も何を言おうか迷うような雰囲気の中、砂ぼこりの中で影が動いた。飯田は純化の範囲内から出て様子を見守る。

 

 数秒後、砂煙が晴れて中から俯いた純狐が出てきた。所々血が滲んでいるが、大きな怪我は無いようだ。

 

「………。」

 

 純狐は何も話さずに飯田に近づき、そのままの勢いで殴り飛ばす。まともに足が動かない飯田は抵抗できずに飛んでいき、ステージの外に出た。

 

「えー、ら、落月さん勝利!準決勝進出です!」

 

 先ほどの純狐の試合と別の意味で歯切れの悪いミッドナイト。その宣言を聞いた純狐は静まり返ったスタジアムを背に何も言わず退場していくのだった。

 

◇ ◇  ◇

 

「ハッハッ!クーックク、ハァハァ、ぷっ、フフフフフフ…」

 

 手の甲からその奥の光景が容易に想像できる笑い声が聞こえてくる。

 

 ステージから降りた純狐は、まっすぐ自分の席の戻らずに、近くにあったトイレで頭を抱えていた。

 

「あ“ー、ヘカーティア?今までの会話から察するにあなた会議中じゃないの?」

 

「会議は終わったわよ。フフフ、ひっさしぶりにやらかしたわね。『これで終わりよ!』からの…」

 

「言うな…言わないで…」

 

 だんだんと力を失っていく純狐の声を聞き、さらに笑い転げるヘカーティア。その後も数分の間純狐はトイレに籠っていたが、ずっとここにいるわけにもいかないので、頬を叩いて立ち上がり、自分の席に戻って行く。

 

 1-Aの皆の前に顔を出した純狐を待っていたのは何とも言えない視線だった。今までも何度か純狐のやらかしを見てきた彼らだが、ここまで盛大かつナチュラルにやらかしたのを見るのは初めてだったため、インパクトも大きかったのだろう。

 

「まぁ何だ。準決勝進出おめでとう!」「気にすることないよ落月さん。誰だってこんなことあるって。」「落月!話なら聞いてやるぜ?ちょっと人気が無いとこ行こうや。」

 

「…ありがとう。」

 

 クラスメイトから次々と慰めの言葉をかけられ、純狐は冗談に付き合っていられないほど落ち込んでいく。

 

 そんな普段からは想像もできない様子の純狐を見て、1-Aの生徒たちは、落月も同じ人間なんだなぁと、少し親近感を抱くのであった。

 




ここまで読んでくださりありがとうございます!

試合と試合のつなぎをどうするか悩みどころ。
それと戦闘シーンは相変わらず難しい。

次回、轟戦?
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