純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんにちは!

はい、轟戦です。
接続詞や文末とかのバリエーションが少なすぎて辛い。

ネクロがローテではあまり奮ってない……。エヴォルブから使っている身としてはちょっと残念。



トーナメント 3

 

 常闇対塩崎の試合が常闇の勝利で終わる。その結果を見届けた出久は、いまだに落ち込んでいる純狐に保健所から帰る途中で買ったジュースを渡した。

 

「ありがと。」

 

 純狐はそれを受け取ると一気に飲み干す。甘いものを飲食した時に心が休まるのは純狐も同じだったようで、ジュースを飲んだ後の純狐は少しだけ表情が和らいだ。だが反対に、その一連の流れを見ていた麗日の表情は少しだけ曇る。

 

 心にも普段の余裕が戻ってきた純狐は、曇った麗日の表情の変化を見逃さなかった。もうすでに麗日は出久に好意を持っているのかと新たな発見に心を躍らせていた純狐だが、変に関係がこじれても嫌だったため、適当な理由をつけて出久のそばから離れ、別の場所で観戦を始める。

 

(さっきのオールマイトの行動…)

 

切島が爆豪の爆破を食らいながらカウンターを放つ場面を見ながら、純狐は先程のことについて考え始める。

 

(出久君の回復が早かった?いや、出久君の帰ってきた時間を参照すると原作と変化はほとんどない。つまりオールマイトは…私にヒーローとしての活躍を期待している?)

 

 純狐は昼休みのオールマイトとの会話を思い出す。そして、唯一気がかりであった最後の質問を改めて考察した。

 

(最後の質問…あれがトリガーか?ああ、言われてみれば、あれが初めて私がヒーローになりたいとはっきり口に出した出来事になるわけか)

 

 ヒーローになりたいと言ったのは間違いだったか、と思う純狐。だが、あそこでヒーローになりたいと言わなければ、それはそれで厄介なことになっていた可能性はある。結局はどちらを選んでもそれなりのリスクを背負わなければならなかったという事だ。

 

(まあ、仕方ないわね。どうせ神野あたりで退場することになるだろうし、あまり期待させないようにしないと)

 

 純狐はこれからの方針を決めると、近くにいる生徒たちの会話を聞きながら控室に行くまでの時間を楽しむことにする。ちなみに近くにいるのは芦戸、葉隠の女子グループと、峰田、上鳴のいつもの二人だ。

 

「えげつねぇな、爆豪。切島もそろそろ限界じゃね?」

 

「爆豪…やっぱそっち系か…!」

 

 峰田は平常運転のようで、緊張はしていないようだ。クラス全体の雰囲気も穏やかであることを感じることができ、純狐は一安心する。騎馬戦時のブロック落下の影響がどこまで大きくなるか心配していたのだ。勿論、あれについて忘れたい、という思いから普段通りを装っている者もいることを考慮には入れている。

 

「うっそー!あれ避けるの!?」

 

「うう…自信なくしちゃう。」

 

 原作と比べ、大きく成長している爆豪はセンスに磨きがかかり、およそ高校生ができる動きを超えていた。その辺のプロヒーローと比べても互角以上の実力をすでに持っているだろう。

 

「あ、落月ちゃん。次は轟君だね!応援してるよ!」

 

 純狐の存在に気づいた芦戸が近づいてくる。そのまま隣の席に座ると、再び爆豪たちの試合を観戦し始めた。

 

「ねぇ、落月ちゃんはどっちが勝つと思う?」

 

「うーん、爆豪君かしら。切島君は今のところ守れてるけど…ほら、今ちょうど。」

 

 爆豪のひときわ大きな爆発によって切島の体制が崩れたところを純狐は指さす。

 

「切島君の【硬化】はずっと気張り続けている状態なわけよ。だからいずれどこか綻びが出る。そこをあの攻撃力で攻められたら、さすがに耐えられない。」

 

「なるほーど…いろんなことを考えているんだね…。私は応援するだけで精いっぱいで分析までは手が回らなかったよ…。」

 

「いや、応援は立派なことよ。人の喜ぶことをするのがヒーローでしょ?応援されて喜ばない人なんて少なくともこのクラスにはいないわ。私みたいに一人で分析しているよりも応援した方が人は喜ぶと思うわよ。」

 

 もちろん解析も悪いことではないと思うから私はやってるんだけどね、と付け加えて純狐は芦戸の表情を窺う。

 

「お、おお…!ら、落月さん、一生ついて行きます!」

 

 喜々とした表情で純狐を見る芦戸。純狐はそれに笑顔で返すと、そろそろ行かなくちゃ、と言って席を立ち、控室に向かって行った。

 

「ん?」

 

「あっ?」

 

 屋内に入って少し歩いたところで、純狐はエンデヴァーと鉢合わせる。純狐は会釈をして通り過ぎようとしたが、エンデヴァーがそれを呼び止めた。当たり前ではあるが、純狐はエンデヴァーにいい印象は持っておらず、話をしたい相手ではなかった。

 

「君が落月純狐か。」

 

「はい、何か?」

 

 先を急ぎたいという雰囲気を醸し出しながら、純狐はエンデヴァーに応える。それを感じ取ったエンデヴァーは、純狐の向かっていた方向に歩きながら話し始めた。

 

「いや、気になったから話しかけただけだ。なんせ、息子の対戦相手だからな。」

 

「はぁ…。」

 

 曖昧な相槌を打つ純狐。エンデヴァーの雰囲気が想像以上に変わっていたため、どう接すればよいのか図り損ねていたのだ。

 

(ヘカーティアの奴、相当なことしたんだろうなぁ。それに魔力の流れからして見ると性格の改変も行われている可能性が高いか?何もそこまでしなくても…。私だって少しくらいなら我慢できるのに)

 

 そんなことを考えながらエンデヴァーの話を聞き流していると、満足したのかエンデヴァーは立ち止まって純狐に道を開ける。そしてすれ違う瞬間、エンデヴァーは純狐にぎりぎり聞こえるような小さな声で呟いた。

 

「焦凍に全力を出してやってくれ。」

 

 その言葉を聞いた純狐は一瞬立ち止まったが、特に何をするでもなく再び歩き始める。エンデヴァーの方も、歩き出した純狐の後姿を少し見ると来た方向に引き返していった。おそらく自分の言いたいことは伝わったと確信したのだろう。

 

 その後は何事も無く控室にたどりついた純狐。だが、話していたせいもあってすぐにステージへ向かわないといけない時間になった。

 

「やれやれ、まあ、全力を出すとか出さないとかはさておいて、やりたいことをやりましょう。」

 

 誰かに聞かれれば問題になりそうなことを言って部屋から出た純狐は、大きな期待を持ってステージに向かって行くのであった。

 

『皆さん!お待たせしましたねぇ!実質決勝戦とも揶揄される戦いがついに幕を開ける!!まずは!ついに炎解禁!その実力はまだまだ未知数!ヒーロー科、轟焦凍!!』

 

 総立ちになって盛り上がる観客たち。だが当の轟はその声援には目も向けず、純狐の方を冷ややかな目で見ていた。

 

『圧倒的パワー!誰にも予測できないトリッキーさ!さらに機動力を持つチート野郎!同じくヒーロー科、落月純狐!!』

 

「…笑ってないね。」

 

 二人の様子を食い入るように見ていた麗日は、珍しく純狐が笑っていないことに気づく。麗日の近くにいた出久も、難しい顔をして二人の様子を見守っていた。純狐のことについて他の人よりも多くの知識を持つ出久ですら、どのような戦いになるか全く分からなかった。

 

「何が起こるかは分からないけど…レベルの高い戦いになることは必至だね。」

 

 

「なあ爆豪。どっちが勝つと思う?」

 

「………。」

 

 切島が話しかけるが爆豪からの反応は無い。それだけこの試合に集中しているという事なのだろう。切島もその雰囲気を感じ取ったのか、それ以上話すことも無く、試合に集中することにした。

 

 

「普段の笑ってる落月もいいけど…真面目な顔もそそる!」

 

「お前はホントいつも通りだな。尊敬するぜ。」

 

 すでに負けてしまった組は、あまり張りつめずにこの試合を観戦しているようだ。しかしこの試合を糧にしようと思っているのも事実であり、次第に口数も減っていく。

 

 そんなことを皆がしているうちにミッドナイトとセメントスが既定の位置につき、試合を始める準備が整った。

 

『それでは皆さんご注目!レディーー……START!!』

 

 始まった瞬間轟は純狐に対し氷を展開する。純狐はそれを強化した手で薙ぎ払うと、そのまま轟に突進。それを読んでいた轟は純狐の前に氷の壁を幾重にも作り出し、勢いを弱める。

 

 対する純狐は、氷の壁にぶつかると同時に手を前に出し、指先を“可視光線”に純化して轟の目を潰しにかかった。だがそれさえも警戒していた轟は、純狐の手が前に出されるのを確認すると今度は大きめの氷結を放ち、純狐を近づけさせないと同時に光を拡散させる。

 

 だが、純狐が狙っていたのはその大きな氷塊であった。光を放つとすぐに身を引いて氷を避けた純狐は、氷の内部を熱に純化し、内部から氷を爆発させる。

 

 轟は、氷の壁が間に合ったおかげで致命的なミスにはならなかったものの、大きめの氷をいくつか体に受け、ステージぎりぎりのところまで飛ばされてしまった。

 

 しかし、爆発のせいで轟と距離を取っていた純狐もすぐに追撃を食らわせることはできず、轟に時間を与えてしまう。そのわずかな時間で、轟は氷をうまく使って移動し、ステージの縁からは離れることができた。

 

『轟が落月の速攻を耐えた!?そしてとどまることを知らない猛攻が続く!範囲攻撃で反撃の隙を作らないことが対落月戦での正解なのか!?』

 

『それができるやつは限られてくるが…今のところ正解の一つだろうな。』

 

 実況の言葉通り、純狐は数回攻撃を仕掛けようとしているが、氷の想像以上の硬さや轟の反応速度などに邪魔をされ効果的な攻撃ができていない。しかし、攻撃する手段の多い純狐にとってこれは様子見の意味もある為、ここで仕留め切らなければ轟が圧倒的不利に陥ってしまうのは二人とも理解していた。

 

 それでもなお、炎を使うそぶりを見せない轟に、純狐はやれやれと言った様子で大きなため息をついて距離を取る。

 

「私としてはどっちでもいいのだけれど。」

 

 純狐が離れたことで轟も攻撃するのをやめる。無駄な攻撃は自分を追い込むだけなのだ。

 

「あなたはいいの?それで後悔しない?いつか理想の自分との乖離に苛まれるわよ。」

 

「何を知ったような口を。」

 

 苛立った様子を見せる轟。純狐は乱立する氷の柱が邪魔なため、それらよりも上に足場を作り、そこに立って轟を見下ろしながら再び話し出す。

 

「まあ、強がるのもいいとは思うんだけど…。それはあなたのなりたい姿なのかしら。」

 

 純狐の言葉に反応して轟の肩が微かに動く。だが炎を使うことは無く、ただ俯いて聞いているだけだった。

 

(まあいいか。もう少し心の整理が必要なのでしょう。変に踏み外してほしくもないしね)

 

 純狐はすでに十分楽しむことができたと考え、今までよりもスピードを上げて攻勢に出る。それによって均衡が崩れ始め、轟が防戦一方になってしまった。

 

「ちょっとだけ面白いもの見せてあげる。『殺意の百合』」

 

 その言葉と共に手の先から打ち出されたのは淡い赤の光を放つ光弾。それはまるで木の葉のようにひらひらと轟の方に舞い落ちた。轟は何だか分からなかったが、取り合えず離れておこうと考え、少しだけ横に移動する。

 

「いい判断ね。」

 

 次の瞬間、光弾の落ちた場所から極太のレーザーが垂直に放たれた。轟はその場所から離れてはいたが完全に避け切ることはできず、レーザーにかすって吹き飛ばされてしまう。

 

「…ここまでね。」

 

 ステージの端で悔しそうにこちらを見ている轟に近づいて行く純狐。轟はすでに個性の反動でまともに動けず、純狐の攻撃で全身に打撲を負い、試合を続けることができるような状態ではなかった。

 

『落月が動きの止まった轟にとどめを刺そうと近づく!轟、ここまでかぁ!』

 

「楽しかったわ。またやりましょう。」

 

 まさに絶体絶命。轟にもはや勝機は無いと誰もが確信した。

 

 しかし、この時出久だけは気づいていた。いや、今の轟の状態からして気づかざるを得なかった。轟が唱え、これまでの戦いで証明されつつある純狐の弱点。まさにこの状態が轟の狙っていたものなのだと。

 

「―ッ!」

 

 純狐がそれに気づいたときにはすでに手遅れだった。轟は純狐の背後に氷の壁を作り逃げ場を無くすと、炎が噴き出す左手で純狐の腕を掴み、自分の位置と入れ替えるように純狐を外へ投げ出した。

 

(ここでッ!)

 

 視界は突然の炎によって機能せず、振りほどこうにもその反発で場外に出てしまう。完全に不意を突かれた純狐は対策を立てることも出来ず、荒れ狂う炎と背後から迫る氷に壁によって詰みの状態まで追い込まれていた。

 

 だが惜しむらくはこれが試合終盤であったことだろう。轟の体はすでに限界を超えており、純狐の体を投げ出すときにふらついてしまったのである。

 

 その結果二人はほぼ同時に場外を示す線を超えることになった。

 

「やってくれたわね…!」

 

「お前は勝利を確信した時油断しやすい。そこを突いたまでだ。」

 

 服のいたるところが焼け、髪も煤を被った状態である純狐は轟の方を見ながら、悔しそうにニヤリと笑う。それに対し轟は炎を引っ込め、やってやったぞとでも言いたそうな、満足した表情をして純狐を見ていた。

 

 その様子を見ていたスタジアムをまず支配したのは沈黙。誰もが今この数秒で起こったことを理解できていなかったのだ。しかし皆がそれを理解するのにそこまで時間はかからなかった。そして誰かが叫んだのを皮切りに、スタジアムを歓声による地響きが包んだ。

 

『りょ…両者場外!!ミッドナイト!どっちが先だった!?』

 

 観客の歓声でやっと自分を取り戻したプレゼントマイクは主審であるミッドナイトにこの試合の結果を尋ねる。だが、ミッドナイトとセメントスも轟の炎と氷に遮られていたため勝敗を確認することはできず、ビデオ判定という事になった。

 

 そして数分後、ビデオの審査を終えたミッドナイトが再び壇上に現れ、ざわついていたスタジアムは再び静まり返る。ステージの端で待機していた轟と純狐も、再び立ち上がりミッドナイトの宣告を待つ。ちなみに二人は、当たり前ではあるが既に勝敗を知っていた。

 

「ビデオ判定の結果、この試合の勝者は……」

 

 誰もが次の言葉を聞き逃すまいとミッドナイトの声に神経を集中させる。その間わずか数秒ではあったが、彼らにはそれが数分にも感じられた。

 

「………落月純狐!!決勝進出!!」

 

 それが告げられた瞬間、今まで静寂していた分を取り戻すかのような歓声がスタジアムを支配した。

 

「あー、疲れた。最後に“硬”への純化をしてなきゃ負けてたわ。いい勝負だった。」

 

「負けちまったか…今度こそやれると思ったんだが…。」

 

 轟は負けてしまったものの、清々しい思いでいた。やっとあの純狐に近づくことができたと実感したのだ。それは彼にとって試合の勝敗よりも優先されるべきことであった。

 

「それよりいいの?左手使って。」

 

「…まあ、いいんだ。こっちの問題だから。」

 

 轟は左手を押さえ顔を陰らせる。その様子を見た純狐は原作とさほど変わっていない轟の心境を素直に喜んでいいものか悩むが、別にどうでもいいかと割り切ると、一足先に屋内へ入っていくのだった。

 

「…敵わねぇな。」

 

 純狐の後ろ姿を見送る轟は、少しだけ笑っていた。

 

◇ ◇  ◇

 

 屋内に戻った純狐は、まず体を純化で清めるとスマホを取り出しニュースを確かめる。原作ではそろそろステインが現れるはずであり、それが次のイベントのメインターゲットとなる為、情報収集は念入りにと心掛けていたのだ。

 

「おお、ちょうど上がってきたわね。ふむふむ……は?」

 

 純狐はそこに書いてあったことに愕然とし、目を剥く。そして何度か目をこすって確かめ直すが、その記事の内容が変わることは無かった。

 

 そこに書いてあったのは…

 

「ヒーロー殺し、保須に現る。被害は…ヒーロー、2名死亡3名重症。一般人、5名重軽傷…!」

 

 また面倒なことになったと、純狐は何処かで見ているだろう神に向かって中指を突き立てた。

 




読んでいただいてありがとうございます!

純狐さんを負けさせるかどうかや、轟君に炎を使ってもらうかどうかなど考えることの多い回でした。
久しぶりに何作品か読破してみましたが面白いね。勉強になります。

次回、決勝戦
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