期末試験のことすっかり忘れてました。
自分的にたくさんのキャラを同時に出したので矛盾などたくさんあると思います。
地の分多めかも。読みにくかったらごめんなさい。
時は流れ六月最終週。期末テストが迫り、1-Aのクラスには今までにない緊張感が漂っていた。雄英の試験には演習試験もあり、それへの対策も生徒たちを困らせる一因となっている。
そんな中でも、純狐はいつも通りだ。高校生くらいまでの勉強ならば、あまり焦ることは無い。演習試験に関しては、個性使用禁止となると若干不安があるが、その時はその時だと割り切っていつも通りの日々を送っていた。
時折勉強を教えてほしいと頼まれることもあるが、純狐よりも八百万の方が教えるのが上手いため、負担を感じるほどの量の生徒は押し寄せてこない。八百万は大変そうだが、皆に頼られるのが嬉しいようで、意気揚々と皆の相手をしていた。
(戦う先生は誰かしら。私としては純化制限なしの状態で先生と戦いたいんだけど……。まあ、オールマイトや相澤先生と話す中で、できるだけ全力で戦いたいアピールはしてるからあんまりひどいことにはならないはずよね)
純狐は相澤やオールマイトとの授業内のことを思い出す。どんな形で戦う事になってもいいと割り切ってはいても気になりはするし、できるなら自分の希望はかなえたい。そう考えていた純狐は、ここ一週間ほど授業内で、うまくいっても満足な顔をしないという事を行っていた。
今のところ、相澤であっても純狐の表情から内面を探るという事はできていない。しかし、だからこそ彼らは、そんな純狐の表情に注目している。自分たちにも分かる程の動揺を純狐が見せれば、それは重要な情報であるという事になるからである。このことを利用しない手はない、純狐はそう考えた。
実際効果もあったようで、無理に純化を制限しなくてもよいとオールマイトからは言われたりもした。彼らを騙すようなことをすることは少し心が痛んだが、楽しみを得るためには仕方の無いことであった。
そんなことを考えなから一日を過ごしていると、相澤から呼び出しが入る。いつもと同じ仮眠室に放課後来てほしいとのことだ。言伝をしてくれた葉隠によると、どうやら期末試験に関係することらしい。
期末試験まで約一週間というなんとも微妙なタイミング、しかもオールマイトではなく相澤からの呼び出しである。
「何かしら?」
純狐は廊下を歩きながらいろいろなことを考える。相澤の性格からして、テスト前のこの時期に生徒の時間を自分たちの都合のために割かせるという事は考えにくいため、おそらく本当に期末試験関連の話である可能性は高い。
まあ、いくら考えてもすぐに答えの出るものではない。そのため、純狐は特に何も考えず仮眠室の扉を開けた。
「失礼します。」
「ああ、突然すまんな。聞いたかもしれないが期末試験についてだ。」
相澤は、無駄な話を挟むことなく話を進める。
「今回の期末試験の演習試験だが……、お前だけ皆とは別のものを受けてもらう事になった。詳しい内容は話せないが、純化も使ってもらうこととなる。」
相澤から告げられたのは、純狐にとって願ってもないことであった。しかし気になるのは、部屋に入った時、相澤が苦虫を噛み潰したかのような表情をしていたためだ。
(単純なテストというわけでもなさそうね。それともそう思わせるブラフかしら。……早合点するのはダメね。どちらも、でしょう)
「構いませんよ。どんな内容の試験であろうとクリアして見せます。純化に関して制限とかはあるんですか?」
「その辺については、これから決めることもあるので話せない。不平等なことだと分かってはいるが、すまないな。」
相澤はそれだけ言うと立ち上がって、用は終わりだと告げる。なんとなく嫌な予感のする純狐であったが、それと同時に面白くなりそうな予感もあった。
(これが私の知りえないことにつながってるかもしれない。あっちから探られるだけってのも癪だし、こっちからも探ってみようかしら?)
◇ ◇ ◇
そして演習試験当日。試験会場に集まった1-Aの生徒たちは、初めての演習試験を緊張した面持ちで待っていた。
「んじゃ、今から演習試験を開始する。諸事情あって例年の試験と同じとはいかない。説明は校長から受けてくれ。」
相澤がそう言うと、相澤の首に巻かれた拘束用包帯から校長の根津が出てくる。その体の大きさでどうやって隠れていたのだろうか。
「そんなに気張ることは無い。対人戦闘・活動を見据えたものさ。というわけで諸君らには、二人一組でここにいる教師一人と戦ってもらう。」
想像もつかない試験内容を言われ、生徒たちからはざわめきが起こる。そしてもう一つ、生徒たちが気になっていたことがあった。
「先生、落月はどうしたんですか?」
そう、この場には純狐がいなかったのだ。
「彼女には別の試験を受けてもらう事になっていてね。まあ、していることは同じようなことさ。」
根津の話を聞いた生徒たちは、皆一様に首を傾げる。同じようなことをするのであれば、別行動でなくともいいのではないのか、と。
「クッソ、またあいつだけ特別扱いかよ!」
怒りの視線を根津にぶつける爆豪。普段から純狐の特別扱いに不満を持っていた彼であったが、このような大きな試験の場にでさえ同じ土俵に立てないことが悔しかったのだ。
そしてそれは、このクラスで二番目の実力を持つ轟も同じであった。爆豪のように感情を表に出すことは無いが、その拳は爪が肉に食い込むほどに強く握られている。
「フフフ、悔しかったら今日の試験を突破することさ。別のことを考えながらクリアできるほど今日の試験は甘くはないよ。」
悔しがる二人の様子を見て、根津はこの二人が今後ますます強くなっていくことを確信していた。いや、二人に限ったことではない。クラス全員の目の色が、根津の挑発を受けて変わっていた。
(こんな才能豊かな生徒たちを教育できるなんて、教師冥利に尽きるね)
その後、組み分けが相澤から発表され、試験は開始の合図を迎えた。
◇ ◇ ◇
一方、一人別会場へ呼ばれた純狐は、期待していたこと以上のものを見て興奮していた。
「……これはこれは。」
純狐の目の前にいたのは、ギャングオルカ、シンリンカムイ、エンデヴァー、ベストジーニストというトップを走るヒーローたちであった。
「おはよう、落月少女。今日は私たちが試験官を務めることとなる。代表は私、エンデヴァーだ。分からないことがあれば質問をしてくれ。」
エンデヴァーはそこでいったん言葉を区切り、純狐から質問が無いことを確かめると、早速今日の試験内容の説明に入った。
「今日の試験だが、俺たちから2時間の間逃げてもらう。鬼がたくさんいるかくれんぼのようなものだと考えてくれ。会場はこの運動場
(なる程……マニュアルのリハーサルといったところか)
ここまでの説明で、純狐はこの試験の意図を大体理解していた。ここまであからさまにするとは思っていなかったが、これからのことを考えると今しておくのが効果的なのだろう。
(鬼ごっこと言ってるけど、ヴィランを狩る時の陣形よね。それに集まっているヒーローは主に首都圏に事務所を立てている人。すぐに招集できる人材ってわけか)
相手の目的が大体分かった純狐だが、分かったところで特別することは無い。逆に特別警戒などしていたら、自分がマニュアルについて知っていると暴露することになるからだ。そうなってしまえば、自分への警戒はさらに強まりできることも出来なくなってしまう。
「で、肝心の合格条件だが……、2時間逃げ切る、もしくは俺たち全員の拘束・無力化だ。まあ、これだけだとあまりにも難しい。だから、俺たちに捕まっても二回までは逃がしてやる。三回目でアウトだ。開始は今から十分後。それまでの隠れるも罠を張るのも自由だ。分かったか?」
「了解しました。」
純狐はそれだけ言うと、この場から立ち去り隠れる場所を探す。その後ろ姿が見えなくなったところで、集まっていたヒーローたちの作戦会議が始まった。
「さて、あいつの実力はここにいる誰もが大体知っているだろう。不測の事態に備え、二人一組で行動する。組み合わせは個性の相性などの問題から、シンリンカムイとギャングオルカ、俺とベストジーニストだ。」
エンデヴァーが早口でそう伝えると、皆は黙って頷く。
「知っての通り、あいつは“隠”への純化という認識阻害の能力も持っている。そこで、少しでも違和感があれば渡してあるスマホを見て任務の内容を思い出してくれ。拘束は主にベストジーニストの能力で行ってもらう。また、ギャングオルカが超音波で足止めしているときにシンリンカムイが拘束するという手もある。勿論、持っている拘束用ロープで縛ってもOKだ。そこは各自判断してくれ。」
その後もエンデヴァーはリーダーらしく作戦を細かに伝えていく。町中に設置されている監視カメラはハッキングしてあり、すべて手元のスマホで見ることができること、探索はギャングオルカのソナーで行うこと、見つけ次第もう一つの班へ連絡を送り、挟み撃ちを心掛けることなどである。
「そして最後に、くれぐれも手加減はしないことだ。これはマニュアルのリハーサル。本番と同じ心構えで行ってくれ。以上、解散だ。」
エンデヴァーが言い終わると、二つの班はその場から一瞬で消え去った。
そして、その様子を純狐は遠くのビルの上から眺めていた。
「どうしようかしら。隠れて逃げ回れば比較的簡単にクリアできそうなものだけど……、面白くないわね。せっかくならヒーロー全員の無力化を目指してみましょうか。」
純狐はそう呟くと、今いたビルから移動を始める。このビルは見晴らしもよく、情報収集には便利だが、ヒーローたちもここを狙ってくるという欠点もある。それに、どんなに立地のいい場所であれ、一か所に留まるのは危険な行為になるからだ。
ビルから降りた純狐は、近くの物陰に隠れながら隣の建物に移動し、その中から今いたビルの屋上を見張る。こうしていれば誰かそこへ来ると踏んでの行動であったが、数分経っても誰も来ず、純狐は移動を余儀なくされた。
(怖いほど動きが無いわね……。ギャングオルカのソナーとベストジーニストの個性を使いまくって場所を潰して言ってるのかしら。いや、さすがにそんな非効率的なことは……)
その時、純狐はふと近くにあった蛇口から水がちょろちょろと出ていることに気づいた。そして、気付いたときには遅かった。
弱力水が垂れていることに気づいた次の瞬間、蛇口から大量の植物の枝が現れ、部屋を埋め尽くす。
(くっ、水道管をたどってきていたのか!)
どうしてこんなに正確に攻撃を打ち込んできたのか気になりはしたが、そんなことを考えている暇はなかった。このままだと確実に拘束されてしまうため、純狐は急いで部屋の植物を枯らし尽くし、部屋から脱出する。
だが、このまま逃げ切ることはできないだろうと純狐は確信していた。シンリンカムイの能力を使えば、純狐の近くの水道管から植物を出して足止めを行う事が簡単にできるからだ。
(驚いたわね。だけど、これだけで捕まる程私も弱くは無いわよ)
後ろから迫る植物の枝から逃げながら、純狐は水道管を壁から抉り出して“寒”に純化した。それによって、建物に張り巡らされた水道管内の水はすべて凍り付き、水道管が破裂する。
が、それはシンリンカムイチームが狙っていたことであった。シンリンカムイの個性から逃れるため純狐がいったん動きを落として何かする時、そこにギャングオルカが強襲をかける作戦だったのだ。
(決まった……!)
ギャングオルカが純狐の場所を特定し建物に飛び込んでいったとき、シンリンカムイはそう確信する。実際、純狐も最初に二人一組で行動すると分かっていなければ、捕まりはしなくとも足止めは食らっていただろう。
シンリンカムイの攻撃が来た時からギャングオルカのことを警戒していた純狐は、上から物音がした瞬間に足を踏み鳴らして建物の下の階に移動した。それによって、ギャングオルカの超音波攻撃は外れ、強襲は失敗する。
だが、彼らはプロ。作戦が失敗した時のプランをこの短時間でいくつか考えていた。強襲の失敗を察すると、ギャングオルカは直ちに建物から離れ、シンリンカムイが建物全体を樹木で覆いつくす。
「シンリンカムイ。中で動きはあるか?」
「今のところ無……!」
言葉を言い終わる直前、シンリンカムイは今までに感じたことのない感覚に襲われる。純狐が樹木の一部を生命力に純化し、一時的にシンリンカムイの個性を暴走させたのだ。シンリンカムイはそれのせいで純狐に対する警戒を一瞬だけ緩めてしまい、その隙に純狐は樹木の一部に穴を開けて建物の外に逃れた。
「ッつ!すいません!すぐ追跡を……!」
「いや、焦るな。いったん引くぞ。」
ギャングオルカは、焦って深追いをしようとするシンリンカムイの肩に手を置いて落ち着かせ、速やかに撤退する。この二人を追跡するか迷った純狐だったが、場所がばれてしまった今、近くにいるのは得策ではないと考え、潜伏場所の探索を優先することにした。
だが、このまま逃げられるのも癪である。そう思った純狐は、逃げる二人に向かって強化した拳を一振りする。それによって大きな音と光が起こるが、二人との距離はすでに50メートルほどあり、攻撃が届く距離ではない。
シンリンカムイは、そんな純狐の意味不明な行動に首を傾げるが、隣にいたギャングオルカはそうではなかった。純狐の攻撃音が聞こえたかと思うと急にふらつきだし、その場に倒れ込んでしまう。不可解な状況に混乱するシンリンカムイだが、とりあえず決めていた撤退場所までギャングオルカを連れて駆け込んだ。
「ギャングオルカさん!大丈夫ですか!?」
「あの野郎……、やってくれたな。」
ギャングオルカは何とか立ち上がろうとするものの、ふらついてまともに立つことはできなかった。シンリンカムはその状況をエンデヴァーたちに知らせ、ギャングオルカに水を渡す。
「超音波だ……」
もらった水を乱暴に頭に掛けながら、ギャングオルカは何をされたか説明する。
「俺が音波を利用することは知ってるよな。俺はその音波を受信する機関が発達している。それが仇になった。おそらくあいつは拳を振るった後、俺に向かっている音を超音波に純化したんだ。とんでもない難易度のことを平然とやってのけやがった。」
ギャングオルカは悔しそうに下顎の感覚器官を撫でる。こうなってしまえば、おそらく一時間はソナーを使った探索も不可能だろう。
『シンリンカムイ、ギャングオルカ。お前たちはそこで待機だ。ギャングオルカの体調が回復したらまた知らせてくれ。奴はまだそこまで遠くに移動はしてないはずだ。俺たちが追跡する。』
エンデヴァーの指示を聞き、通信機を耳から離したシンリンカムイは何もできない自分にイラつきを募らせる。シンリンカムイの個性【樹木】は炎を使うエンデヴァーの個性と相性が悪く、一緒に行動することができない。一人で行動するにも自分一人では純狐を拘束するには力不足であることも理解していた。しかし、いくら後悔してもどうしようもない。二人は純狐に対する警戒をさらに引き上げ、作戦を練り直していった。
その頃、何とか逃げることに成功した純狐は、安全だと思った場所が何故すぐにばれたのかすでにあたりを付けていた。
「十中八九、監視カメラでしょうね。なるべく避けていきましょう。」
純狐はそう考え、監視カメラの死角を縫うように移動していく。地下道に逃れることも考えたが、それはあちらも考えているだろうと考え、あえて地上を進むことにした。とはいえ、この運動場ρは監視カメラも多い。そのすべてから逃れることはほぼ不可能である。
「時間稼ぎにしかならないけど“隠”への純化を使いましょう。」
ブロックとブロックを分ける大通りに差し掛かり、周りを警戒しながら“隠”への純化をする。これでしばらくは安全に動けると思っていた純孤だったが、純狐が隠への純化を行った瞬間、周りの気温が急激に上がり、近くのマンホールから炎が吹きあがった。
エンデヴァーたちが近くにいることを察した純狐は急いでその場から飛び退き、“隠”への純化を解除して全速力で物陰に身を隠す。そして、エンデヴァーたちが自分を見つけにくいようにと大きな竜巻を三つほど、ばらばらの方向に発生させた。
「やっぱり地下にいたのか。おそらく違和感を感じた瞬間に怪しい方向へ無差別攻撃したわね。無茶するわ。」
試験終了まで約1時間半。純狐はプロの手ごわさを実感しつつ、どう攻めに転じるか考え始めた。
読んでいただきありがとうございます!
運動場ρは適当に考えて作りました。札幌を小さくしたような町を想像してます。
次回、期末試験の続き