申し訳ない、更新が遅れてしまいました……。
理由としてはリアルの忙しさもありますが、身の丈に合わない文章を書こうとしてたからです……。
戦闘シーンは本当に無理ですねぇ。
「……どうですか、エンデヴァー。」
「避けられた。あれに当たるようなら興ざめだがな。」
下水道を移動していたエンデヴァーとベストジーニストは地上で吹き荒れる風の音を聞きながら純狐のこれからの行動を予測する。
「先程の俺の攻撃で、あいつは“隠”への純化を控えるだろう。逆に、使ったとすれば、それは俺たちの場所がばれている、もしくはこちらの攻撃を誘う罠だと考えられる。まあ、あいつのことだ、そこまで楽しみを捨てるようなやり方もしないだろう。」
「分かりました。おそらく落月は……ここあたりですかね。」
ベストジーニストは、監視カメラの壊れ方やエンデヴァーの攻撃した範囲などから純狐の隠れている場所にあたりを付ける。この街の監視カメラは色々と計算されて設置されており、監視カメラに映らないように移動すると、自然にいくつかの事前に想定された場所に誘い込まれるようになっているのだ。ベストジーニストはこの仕組みを使う事で純狐の次の移動場所を予測していた。
「しかし、落月はかなり警戒してるようですね。もっとガンガン攻めてくると思っていたのですが。」
体育祭やUSJ、最近のステイン戦のことを聞いていたベストジーニストは、いつもとは違う純狐の行動に警戒を強める。エンデヴァーも感じていることは同じだったようで、地上に上がりながら理由を考えていた。
「この試験がただの試験以上の意味を含んでいることも感づいているだろう。それを踏まえてあまり派手に動かずこちらを探っているのかもしれんな。……よし、周囲に人影無し。出るぞ。」
会話をしながら周囲のクリアリングを済ませた二人は、マンホールから出てすぐに駆け出し、近くの建物に身を隠す。
「見えた、あそこにいるぞ。」
エンデヴァーが指さした先には、周りを窺いながらビルの中を移動する純狐がいた。二人の読み通り、移動してからすぐに別の場所へ移動するという事はせず、いったん立ち止まって作戦を練っていたようだ。
「エンデヴァー。落月のスピードが上がりました。このままだと追跡できませんが……追いかけますか?」
「ちッ、あまりしたくなかったが、足止めに向かうぞ。」
エンデヴァーは能力の底が見えない純狐を確実に捕えるために4人揃ってから攻撃を仕掛けるつもりであった。しかし今回純狐は逃げに回っているため、いざ探すとなると時間がかかりすぎてしまう可能性がある。
多くの体力を消耗するが、できるだけ純狐を自分たちの監視下に置いておくか、体力を温存して後半の探索での早期発見に賭けるか。この二つを比べ、エンデヴァーは前者を選んだ。
「ベストジーニスト、お前はできるだけ姿を見せるな。俺がヤバそうなときは援護しろ。繰り返すがこれは足止めだ。あいつが逃げる方向を見失うな。」
「了解です。あなたがヤバくなった時とか考えたくないですけどね。」
短く言葉を交わすと、エンデヴァーは背中から炎を噴き出して移動する純狐の目の前に回り込んだ。ベストジーニストはそれから少し遅れて戦いの邪魔にならないようなところへ移動する。
「あなたの方から来てくれるとは思いませんでしたよ。」
いきなり目の前に現れたエンデヴァーに対し、純狐はあくまで冷静に対応する。
「お前は俺たちがこうすると分かって移動速度を速めたのだろう?」
「さてどうでしょうか。」
正直なところ、純狐はエンデヴァーたちとまともに顔を合わせることは避けたかった。移動速度を速めたのは、終盤の全面戦闘の準備に時間を割きたかったからだ。
(面倒ね。ここでまともに足止めを食らうわけにはいかないけど……すでにベストジーニストがこの辺りの逃げ道に細い繊維を張ってるし、空中での機動性はエンデヴァーの方が高い)
“速”への純化で戦闘をせずに移動しようと考えていた純孤だったが、予想以上の速さで繊維の結界が完成したのでそれができなかった。“速”への純化は、見た目は瞬間移動であるが、そこへ移動するという過程は存在する。つまり、その状態で繊維の結界を抜けると、抜けた頃にはサイコロステーキ先輩のようになってしまうというわけだ。“斬”への純化で繊維を切るという手もあるが、“斬”への純化はかなり集中力を要する。そのため、エンデヴァーがその隙に攻撃してくると対処できなくなる可能性が高く、今行うにはリスクが高すぎた。
(隙を見て……いや、この二人に隙を期待するのは良くないわね。何とかして隙を作らないと。でも今後のことを考えるとできるだけ直接攻撃は避けたい。難しいけどするしかないわね)
「来ないのか?ではこちらから行くぞ。」
純狐に準備させる時間を与えまいと、エンデヴァーは牽制の炎を飛ばす。純狐はその炎を弾き返すと、それに紛れてエンデヴァーに近づき、足元を軟化させた。
生半可な相手であればこれで決まっていてもおかしくないタイミングでの反撃。だが、エンデヴァーは純狐の攻撃が届く前に純狐の後ろに回り込んでいた。
エンデヴァーが後ろにいることが分かった瞬間、純狐はそこで風を発生させ、自分ごとエンデヴァーを弾き飛ばす。そして弾き跳んだ先の空間に足場を生成し、地面を這うように迫る炎をすんでのところで回避した。
紅蓮の炎に包まれたアスファルトはその一部が赤くなって石油の匂いが周囲に充満する。アスファルトの解ける温度はそこまで高くないとはいえ、掠っただけでここまで加熱されるのは十分驚異となりえる。
「火力高すぎませんか?死にますよ、私。」
「お前がいつも振るっている強化した手から出る熱はこんなものではないと聞いているが?」
エンデヴァーはいつもの強面ではなく、挑戦的な笑みを浮かべて純狐を見る。
「いや、普段使う分にはそこまでなりませんよ。」
足場を解除するとともに足元に氷を作る純狐。その氷の板は、足場としての役割を得る前にエンデヴァーに向かって蹴りだされ、純狐から放たれた光を乱反射させるための道具となる。少し目がくらんだエンデヴァーであったが、個性柄、光に対しての耐性があるため、それが致命的な隙になることは無い。
迫りくる氷を薙ぎ払った炎はその勢いを落とすことなく、上空に跳ぼうとしていた純狐の頭上を覆うように展開される。だが、純狐はその炎の壁を強化した拳の風圧で突き破り、繊維の結界が薄い上空に飛び出した。
急いでその部分に繊維を回すベストジーニストだが、その周辺の空間が無重力になっていたことで感覚が狂って繊維をうまく扱うことができない。異変を感じたエンデヴァーが炎を飛ばす頃には、さらに加速した純狐は結界から脱出していた。
「くッ、すいませんエンデヴァー!追いかけますか?」
ダメ押しと言わんばかりに水蒸気の煙幕で姿を隠しながら逃げる純狐の影を追いながら、ベストジーニストはエンデヴァーの指示を仰ぐ。
「いや、いい。これ以上の体力消耗は避けたいからな。それに、あいつの戦闘力も図ることができた。作戦通り、ラストに賭けるぞ。」
エンデヴァーは物陰から出てきたベストジーニストにそう言うと、すぐに監視カメラの映像を確認し始めた。だが、やはり監視カメラに純狐の姿は映っていない。
つまり純狐は、あれだけ戦ったにもかかわらず、監視カメラの位置を把握して移動しているという事だ。体育祭の第一種目を見るに、純狐の体力は驚異的ではあるが爆豪ほどではない、というヒーローたちの考えはここで訂正を余儀なくされる。それと同時に、やはりあの爆発、そしてブラックボックス内での何かが純狐の限界に大きく関係していることがほぼ確定した。
「ギャングオルカ組の復帰まで10分弱ですか……。落月の向かった方向からして最終決戦の場所は中央のタワー付近ですかね。」
ベストジーニストは500メートル程離れた場所にある50メートル級のタワーを見る。
「よし、それじゃあ上空などに注意しつつギャングオルカたちの合流を待つぞ。」
ベストジーニストの話を聞き、いつも通りの硬い表情で頷くエンデヴァー。そして、これからの大まかな動きをギャングオルカたちに伝えると、近くのベンチに座って体力の回復に専念する。
そして数分後、ギャングオルカから無線が入り、いつでも動ける状態にあることと、やはり純狐が中央の方にいるらしいという情報が入った。
「よし、それでは中央に向かうぞ。ギャングオルカたちも別の通路から向かっている。あいつが準備する時間は5分程度しかなかったはずだが、それでも十分に注意しろ。ギャングオルカによると中央でかなり大きな動きがあるようだ。あいつが何らしかの工作をしているせいで詳細は分からないが、何か気づいたことがあればすぐに伝えてくれ。」
エンデヴァーは早口で話しながら体に炎を纏って中央の方に走り出し、ベストジーニストはその後を追う。
そして、中央への道のりも残り半分となった頃、最初の変化が起きる。最初にそれに気づいたのは純狐のいる方向に特別警戒していたギャングオルカだった。
「シンリンカムイ、樹木を展開しておけ。来るぞ。」
シンリンカムイは樹木を直ちに展開したのち、ギャングオルカの視線の先、タワーの頂上付近を見上げる。そこにいたのは、巨大な鉄骨を両手に抱え、投擲のポーズをとっている純狐であった。
碁盤の目のような街を意識して作ってあるこの運動場ρは、その形状のため移動経路がほぼ直線である。つまり、相手がどの道路にいるか一瞬でも見れば、その後の移動ルートも大体予想がついてしまう。これは、ヒーローたちが追跡の際に役立てていた特徴であったが、今回はそれを逆手に取られ、超遠距離の攻撃を許してしまっていた。
「くッ!」
純狐の投げた鉄骨が一つ、シンリンカムイから少し離れたところに落下する。あてずっぽうな攻撃であるため避けるのは簡単だが、探索に集中したいギャングオルカにとってこの轟音はかなり迷惑である。
一方、エンデヴァー組の方にも純狐の投げた鉄骨は跳んできていた。しかし、脳無の攻撃さえも退ける力のあるエンデヴァーにとってその程度は負担にはならない。
飛んできた鉄骨を炎も使わずに軌道を逸らし、後ろのベストジーニストにも瓦礫が当たらない場所に飛ばす。そして、次の鉄骨を投げる準備をしている純狐に向かって一点に集中させた炎を火炎放射のように放出した。
大火力の炎は、純狐のいる場所を飲み込む勢いで突き進んでいく。純狐はその炎を水に包み込むことで対処するが、その炎は水に包まれたと同時に膨れ上がり、タワーごと純狐を焼き払った。
一瞬で水蒸気に包まれたタワーの頂上付近。純狐も少なくないダメージを負ったはずだと思われたが、その予想は外れ、爆発のダメージを最低限に抑えた純狐の姿が霧の中から現れる。そして、お返しとばかりにさっきの2倍はあるだろう鉄骨を、今度はしっかりと狙ってエンデヴァーに投げつけた。
今度こそ炎を使ってその鉄骨の軌道をずらそうとするエンデヴァー。だが、鉄骨の跳んでくるスピードとパイプ状の形状から何か仕込まれていると感づき避けるだけにとどまった。
エンデヴァーのすぐ横を通り過ぎた鉄骨は、その大きさに似合わない軽い音を立てて地面に突き刺さる。突き刺さった拍子に空いた穴からは、シュー、という音を立てて気体が噴き出した。
「はは、水素か!」
近くの焼け残りによって爆発した気体と水滴を見てエンデヴァーは高笑いをする。これをまともに受けていれば、エンデヴァー自身は良くとも後ろのベストジーニストに大きな被害が及んだのは想像に難くない。
そんな妨害を受けつつも、ヒーローたちは足を止めることなく中央に向かって疾走する。
そしてついに、4人は真ん中にタワーのある中央の大きな広場に集結した。
◇ ◇ ◇
時間は少し巻き戻り、純狐がエンデヴァーたちから逃げ出した後のこと。予想以上に時間を奪われてしまった純狐は急いで中央の方へ向かっていた。
(積極的に攻撃しないこと前提だとさすがに厳しいわね。まあ、あのヒーローたちが私の大振りの攻撃を避けられないとは思わないけど)
そんなことを考えているうちに中央に来た純狐は、時間も無いので早速準備に入る。
(さっきの様子を見るに、あれはあくまで足止め。あちらも私を舐めてはいないという事でしょう。となると、ギャングオルカたちが復活するのを待って、万全の状態で攻勢に出てくるはず)
両足を強化して縦横無尽に駆け回りながら準備を終えていく純狐。ヒーローたちが純狐を舐めていないように、純狐もヒーローたちを舐めてはいない。彼らがどんな作戦を立ててきても策中に誘い込むことができるようにより大規模な仕掛けを展開していく。
「はぁ、さすがに疲れるわ。細部をもう少し調整する必要がありそうだけど、いったん彼らの様子でも確かめましょうか。」
地面に薄い氷の幕を張り、所々に氷柱を設置してギャングオルカのソナー探索を妨害する準備まで終えた純狐は、タワーに上ってあたりを見渡す。そこで見えたのは、こちらへ全速力で向かってくるエンデヴァーたちだった。
「早いよ……、ギャングオルカが離脱してからまだ30分くらいだよね。あれだけ優れた感覚器官を持っていたら1時間は倒れてると思ったんだけどなぁ。流石、プロヒーローと言ったところかしら。」
言いたいことはまだいくつもあったが、いくら愚痴を言っても危機的な状況は変わらない。仕方がないので、あちらの体力を少しでも削ろうとタワーの鉄骨の一部を切り取って投げつけることにする。
(どうせ、あちらも私が直接攻撃してこない理由は分かっているのでしょう。なら、もういいか。出し惜しみしていて勝てる相手ではないし)
そう考え、純狐は双方へ第一投を投げつけるのだった。
◇ ◇ ◇
開戦の合図は無かった。中央に着いたと同時にエンデヴァーが地を這うように炎を展開し氷を解かす。その炎に交じり、他の三人は攻撃を仕掛けた。
シンリンカムイは純化範囲外から樹木を伸ばし、ギャングオルカは音波攻撃、そしてベストジーニストは繊維を伸ばし、純狐を直接束縛しにかかる。三人の攻撃はどれも音速レベルであり、避けようと思って避けられるものではない。
しかし、三人の攻撃は突如膨れ上がった炎に焼き払われた。決してエンデヴァーが失敗したわけではなく、純狐が空気を純化することで発生させた酸素によるものである。
そんな目の前の爆炎を突き破り現れたのは、全身を燃え滾らせたエンデヴァーであった。純狐はそのエンデヴァーの前に壁を張り何とか弾き飛ばすと、後ろから迫っていたギャングオルカの脇腹に回し蹴りを叩き込む。さらに、自分を閉じ込めようとしていた樹木の隙間から飛び出し、そこに仕掛けてあった繊維もろとも風で吹き飛ばした。その破壊力は凄まじく、離れた場所の窓ガラスが嫌な音を立ててはじけ飛ぶ。
そして戦闘の舞台は一時上空へ。飛び出した純狐が次に見たものは、下から迫りくる炎の渦だった。純狐はそれを足元に水を生み出して受け止め、その水を瞬時に氷に変化させて下に蹴りつける。その氷の弾丸の間を縫うように迫る繊維と樹木の攻撃を“縺”に純化することで互いにもつれさせ、強化させた拳を空振りすることで音波の対策もしておいた。
ここまで攻撃を凌いでいる純狐だが、このままでは分が悪い。そのため、体への負担は大きいが“速”への純化を使っていったん身を引き、再びタワーの上部へ移動する。
勿論、ただ移動するだけではヒーローたちの攻撃を止めることはできない。移動はあくまで一呼吸置くためだ。このためだけに奥の手の一つである“速”への純化を切ることは痛いが、そうでもしなければこの4人の包囲から逃れることさえできない。
タワーに着き、一呼吸置いた純狐はすぐに跳び上がって下方へ向かってラッシュを繰り出す。攻撃は最大の防御であるとはよく言ったもので、純狐の拳が生み出す膨大な熱、光そして風はヒーローたちを引かせるには充分であった。
しかし、当たり前かのようにノーダメージ。グミ撃ちでは当たる気さえ起こさせてはくれない。あくまで反撃の隙を奪っているだけだ。そして、こんな無理なラッシュをいつまでも続けることはできない。
タワーの近くに降りた純狐は、再び総攻撃を仕掛けようとしているヒーローたちを一人一人睨み、手をまっすぐに空へ向けた。ヒーローたちは無意識にその手に注目を集める。
しかし、それがブラフであることに彼らはすぐに気づかされた。背後から迫る轟音。彼らが振り向いた先に見えたのは、自分たちの方に落ちてくる無数の瓦礫だった。
これが純狐の仕掛けた罠の一つである。建物に無数の傷をつけておき、何らかの拍子に崩れるようにしていたのだ。
普通であればいったん引いて距離を開ける状況だが、この手の攻撃への対処はシンリンカムイが得意としている。瞬時に展開された樹木は、降り注ぐ瓦礫を絡めとり、その速さを維持したまま純狐にも襲い掛かる。それに合わせ、他の三人も攻撃に転じた。
さすがの純狐もこの攻撃を完璧に捌き切ることはできないため、自分の周りを壁で囲って守りを固める。それに対し、エンデヴァーはその壁の周囲を炎で包む。急激に温度の上がる壁の内側に閉じ込められる形となった純狐は、すぐに壁を解除すると霊力を使って爆発を起こし、状況を再びリセットした。霊力を使ってしまったのは痛いが、あの限られた空間内で風の爆発を使えば、怪我を負い、より状況が悪くなっていた恐れがある為、霊力を使う他無かったのだ。
体育祭で見たものと同じような爆発を見せられたヒーローたちは攻撃を止め、純狐の動きに注意を向ける。
「やっと使ったな。それの原理はまだ分からんが、お前の体力はその不思議な力に関係しているらしい。………そろそろ終わらせるぞ。」
肩を上下させ、あからさまに疲れた様子を見せる純狐に対し、四人はこの戦闘で最大の警戒を見せる。純狐も倒れているタワーから大きな鉄骨を取り、四人を迎え撃つ準備はできていると言わんばかりであった。
そして両者はほぼ同時に行動を起こす。万全の状態であるヒーローたちからの攻撃。それに対し純狐がとった行動は……地面に鉄骨を突き立てるという事であった。
一見、何かしようとして失敗したようにも思える光景。だが、変化はすぐに表れた。
「何!?」
周囲に響く轟音。ぶれる視界。何が起こったか分かるに時間はかからなかった。中央の広場ほぼすべての地面が純狐のいた地点を中心に陥没したのだ。
勿論、これは偶然なんかではない。純狐が仕掛けていた罠の二つ目にして最大のものである。
エンデヴァーたちから逃れ中央に到着した純狐は、すぐさま地下に潜り、砂に純化した土を近くの下水道に流し込むことで大きな空洞を作った。普通に考えれば5分程度でできる作業ではないが、風やその他純化を活用することで為し得た。
しかしこのままだと、ヒーローたちの到着を待たずに地面は崩落してしまう。そこで純狐は、支えとなる柱を氷で作った。専門的な土木工事の知識が無いのでかなり乱雑な造りであったが、どうせ崩落させるので持続性などを求める必要はない。
氷で柱を作ることにも意味がある。地上での、主にエンデヴァーとの戦闘により温度が上昇することで氷が少しずつ解け脆くなることで崩落しないという事故を防ぎ、さらに落ちてきたエンデヴァーの戦力を泥水で削ぐというものだ。
そして今、最高に近いタイミングでその仕掛けは発動された。足場が崩れることでヒーローたちの攻撃は外れ、泥水だらけの地下に落とされる。
いかにプロヒーローとはいえ、さすがにここまでの事態は想定していなかったため、判断に僅かな時間が生じてしまう。
だが、判断が遅れはコンマ数秒である。地面の陥没に巻き込まれたことを理解すると、炎のジェット、樹木、泥水を泳ぎ加速してジャンプするなど、各々の方法で地下から脱出する。
しかし、それすらも純狐の想定内だ。純狐がここまで大規模な罠を仕掛けてまで狙っていたのは一人、ベストジーニストだけだった。
ベストジーニストはこの中で唯一、純狐を反撃不能にして完全に拘束できる可能性がある。この点において、純狐は、エンデヴァーやギャングオルカ、シンリンカムイの高い戦闘力よりベストジーニストを警戒していた。
繊維と高い身体能力を使い、他の三人とほぼ同じ速さで穴を上るベストジーニストに、純狐は“速”への純化で回り込むと、意識を刈り取るため首裏を叩く。だが、首を叩こうとしたその手は肌に触れる前に繊維で拘束され、動かすことができなくなった。
仕方がないので、純狐はベストジーニストの頭を強く叩くことで気絶させ、向かってくるエンデヴァーたちの攻撃が届く前に“速”への純化で戦線を離脱した。
「クソッ、してやられた!ここからは一人行動だ!三方向に分かれるぞ!奴の疲労が溜まっているのは確かだ。見つけ次第、救助優先で動け。」
エンデヴァーが指示を飛ばし、三人はそれぞれ別方向を探索する。だが、四人でも見つけるのに苦労した純狐が本気で逃げに回ったとなると姿を捉えるだけでも不可能に近い。また、見つけたとしてもベストジーニストという問答無用の拘束手段を失ったヒーローたちが純狐を捕まえるのはかなり厳しいだろう。
そしてついに、その後一度も純狐を見つけることができないまま試験は終了した。
読んでくださりありがとうございます!
はい、修正は随時していく予定です。
そもそも2~3人の同時戦闘でも手いっぱいだったのに、何で過去の自分は5人の戦闘なんか書こうと思ったんですかね。不思議ですねぇ~。
次回、期末試験後?