純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんにちは!

お待たせいたしました。
やはり小説を書くにあたって大筋を固めておくのは大切ですね(手遅れ)


エヴァ……観たいな。


ショッピングモール

「ってな感じでやって来ました!県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!木椰区ショッピングモール‼」

 

 期末試験後、強化合宿の説明を受けたA組の生徒たちは、一週間の消化合宿に備えてみんなで買い物に来ていた。勿論、純狐も同行している。もう遠巻きにされてばかりではないのだ。

 

「個性の差による多様音形態を数でカバーするだけじゃないんだよね。ティーンからシニアまで幅広いデザインが集まっているからこその集客力……」

 

「幼子が怖がるぞ。よせ。」

 

 出久がいつものを始める前に、珍しく常闇が止めに入る。同級生になり既に4が月ほど経ち、お互いのことを理解してきているのだろう。雰囲気も和気あいあいとしており、堅苦しさのようなものは微塵も感じられない。

 

「目的バラけてるし時間決めて自由行動するか!」

 

 皆の話を聞いていた切島がリーダーシップを取って集合場所と集合時間を決める。その場に残ったのは、出久と麗日そして純狐だけであった。

 

「う、麗日さんはどうするの……?」

 

「私は虫よけを……、虫よけぇー!」

 

 何か言いかけた麗日だったが、急に黙って顔を赤くするとどこかに走り去ってしまった。出久は何か嫌われるようなことでもしたかとおどおどしているが、理由を知っている純狐はほほえましい気持ちにしかならない。そんな純狐のにやけた顔に気づかないほど意気消沈している出久は、とぼとぼと歩いて近くのベンチに腰かけた。

 

「落月さんはどうする?僕は服の買い足しとかに行く予定だけど……。」

 

 一緒に回ってくれないかな、という淡い期待を込めて声をかけた出久。しかし、この後に起こるイベントを無くしてしまうわけにもいかない純狐は、一人でその辺をぶらぶらしていると言うと、その場を去っていった。

 

(出久君には申し訳ないけど、あなたと死柄木君の対面は避けてたら話が進まないのよねぇ。私は高みの見物でもしときますか。どうせこの後色々あるし、お金は節約しておきたいもの)

 

 二階に着いた純狐はソファーに座って出久の死角であることを確認すると、ちょうど死柄木と遭遇した出久を観察し始める。もしものことがあればすぐに対処できるような用意だけはしているが、そんなことは無いと予想してのことだ。

 

(死柄木君が出久君に会ったのはただの偶然。何かあれば殺すと脅してはいたけれど、今の状況を考えればそんなことをするはずも無いわね)

 

 二人の話は順調に進んでいき、出久の顔色もだんだんと悪くなっていく。純狐のいる場所から二人の会話は聞こえないが、原作での会話に加えて自分のことを話しているのだと予想する。出久には誰かに話されても問題ない程度の情報しか渡していないのでこれについても純狐が心配することは無い。

 

(そう考えると出久君には悪いことしてるわね。帰る直前には話してもいいのかしら)

 

 読むふりをしていた本をしまい、純狐は騒ぎの起きている場所へ向かう。出久たちの周りにはすでに麗日や他のクラスメイトも集まっており、警備員らしき人達も数人集まってきていた。

 

「ねえ、上鳴君。何かあったの?」

 

「おお、落月!いや、緑谷に何かあったみたいだったけど、警官たちに止められて詳しいことは分かんねぇんだ。」

 

 野次馬の集団から少し離れた場所にいた上鳴に声をかけた純狐は、ちらっと出久のいる方を見る。その時、麗日と目が合った気がしたが、たまたまだろうと割り切って純狐はその場から離れた。

 

(さて、私にとっての本番はここからね)

 

  ◇  ◇  ◇

 

 死柄木は今までにないほど頭を抱えたくなっていた。すっきりとした気分はすでに遠くに吹っ飛び、今は陰鬱な顔をして目の前の相手を睨みつけるしかできない。つまるところ、死柄木であっても手も足も出ない相手であるという事だ。

 

「おい、いい加減にしろよ。こちとらおまえほど暇じゃないんだよ。」

 

「別にいいじゃない。お金は私が出すんだし。」

 

「俺の話聞いてたか?」

 

 目の前にいる厄介な奴、つまり純狐は、普段通りの様子で死柄木に着せる服を選んでいた。

 

 出会いは、少なくとも死柄木にとっては唐突であった。新しくヴィラン連合に入ってきたガキと礼儀知らずにイライラさせられ、気分転換で来ていたショッピングモールで出久と話す。ここまでは良かったのだ。しかしこの後、大きな騒ぎになる前に帰ろうと人込みに紛れ、賑わう中心街に出たあたりで急に体が動かなくなったのだ。

 

 何事かと思い、急いで黒霧に連絡を取ろうとするも通信機さえ手に取ることができない。万事休すかと思われたとき、目の前には純狐という脅威が笑顔で佇んでいたのだ。

 

 (ゲームオーバーだ……)

 

 そう考え、おとなしく抵抗を止めた死柄木だったが、純狐の行動は死柄木が想定していたもの全てと違っていた。

 

「あなた、死柄木君よね。ちょうど良かったわ、付いて来てくれるかしら。……っと、その前にその服装どうにかしなきゃね。」

 

 そう言うと、急に死柄木の腕を掴み、近くに止めてあったタクシーに飛び乗ったのだ。あまりに急なことに、死柄木はされるがままである。死柄木がタクシーに乗ったことを確認すると、純狐はタクシーの運転手に郊外のショッピングモールの名前を言い、死柄木の方に向き直った。

 

「じっとしてなさい。大丈夫、通報はしないしちゃんと解放してあげるわ。」

 

「お前の言葉を信用しろってことか?」

 

「まあ、信用しなくてもいいけど、今のあなたに選択肢があるとは思えないわ。あなたじゃ私に勝てないし、ワープへの対抗策も十分にある。いいじゃない、ちょっとした気晴らしよ。」

 

 という経緯で今に至る。

 

純狐は服を選び終わったのか、レジに並ぶと、数分後に死柄木の元へやってきた。ちゃんと顔を隠すことのできるつばありの帽子を買ってきているあたり、本当に通報する気はないのだろう。

 

「トイレかなんかで着替えてきて。」

 

 純狐はそれだけ言うと、服の入った袋を死柄木に押し付けてスマホをいじりだす。最初はいつもの癖で拒否しようとした死柄木だったが、スマホの画面に映るうっすらと赤い目を見ると、拒否権は無いことを思い出し、舌打ちをしながら着替えに行った。

 

 そして数分後。トイレから出てきた死柄木は、気慣れない服に不快感を示しながら純狐と並んで歩き出す。歩いている間、二人の間に会話は無かった。死柄木は何度か隙を見て、せめて音声だけでも拠点に届けようとしたが、その度に純狐が手を固定して邪魔をする。そんなことをしているうちに、純狐の目的地であるショッピングモール横の小さなカフェに着いた。

 

 カフェに入った純狐は、適当に注文をしながら奥の席に座って改めて死柄の方を見た。死柄木はすでに抵抗するのを諦めているので、暴れるようなことはしない。

 

「で、結局のところ目的は何だ?俺たちの本拠地の場所か?それともメンバーについてか?」

 

「いや、単純に話をしてみたかっただけよ。あなたがどんなことを考えているのとかね。聞かせてくれればあなたに害をなすことは無いわ。」

 

 純狐はアイスコーヒーに浮かぶ氷をカラカラと言わせながら、目の前の死柄木を見つめる。死柄木はと言うと、何を言っているのか分からないといった様子で純狐を見ていた。

 

「まあ、急に何か話せと言われても困るだろうから、私から質問させてもらうわ。じゃあまず一つ目。」

 

 死柄木は、こいつ自分の都合でしか話さないなと、どこかの何でも知っているお姉さんに対面したかのような感想を思い浮かべる。

 

「あなたがヴィランになったのは何故かしら?」

 

 いきなりの核心をついた質問にたじろぐ死柄木。どうしたものかと純狐の表情を窺うも、そこには好奇心しか見て取れない。

 

 死柄木は先生、つまりオールフォーワンに拾われてからというもの、このような直球の質問を全くの他人からされたことがない。死柄木の話す相手はほとんどがヴィランであり、同じような感覚をどこかで共有していたからだ。何をするヴィランなのかと問われることは多くとも、何故ヴィランなのかと聞かれる機会はゼロにも等しい。

 

 だが、聞かれないだけであり、死柄木が何も考えていないわけではない。そもそもこのような核が無ければ、オールフォーワンが自分の後継として育てようとはしないだろう。そして勿論、その答えは死柄木自身の蓋をした記憶でありここで思い出しはしない。

 

「……知るか。俺が生まれた時からそういう定めだったんだよ。逆にこっちが質問だ。何でお前はヒーローとかいうクソみたいなものになろうとしてやがる。」

 

「私?」

 

 ダメ元の質問が軽く流されたのは予想通りなので何も言わない純狐だが、聞き返されるとは思っていなかった。死柄木が自分のルーツに関心を向けているとは考えていなかったのだ。

 

(もう少しであっちに帰るし、変に取り繕わなくてもいいか。その方が面白い話も聞けそうだしね)

 

 死柄木は学力的な面はいいとは言えないが、決して頭が悪いわけではない。そのことを知っている純狐は、すでに死柄木が自分の不審さに気づいていてもおかしくはないと考えた。そして、さっきの何故ヒーローになりたいという質問により、それはより確信に近づいた。

 

「まあ、成り行きよ。ヒーローの方が魅力的に映ったってだけ。」

 

 純狐の答えがあまりにも適当であったためか、死柄木は若干苦笑する。しかし、やはりそこまで以外ではなかったのか、過度に反応することは無かった。

 

「はッ、適当だな。もしヴィランの方が魅力的に映っていたらヴィランになったのか?」

 

「そうなんじゃない?今となってはどうでもいいけど。」

 

 じゃあ、今度は私の番ねと、純狐は会話を仕切りなおす。

 

「あなたはヒーロー……特にオールマイトに強い憎しみを抱いているようだけど、それは何故かしら?そして結局は何がしたいの?」

 

 質問を受けた死柄木は、何か思い出したのか少しイラっとした様子を見せたが、特に荒ぶることは無かった。それは、今自分の置かれている状況を考えてこのこと意外に、純狐に対して何故か強く出られないこともあるのだろう。

 

「答えたくないのなら無理に答えなくてもいい……」

 

「この社会が憎い。壊したい。めちゃくちゃにしたい。それだけだ。ヒーローの使う暴力は称賛を浴び、俺たちの暴力は非難される。これが面白くない。」

 

 純狐の言葉を遮り、死柄木はぽつぽつと語りだす。言っていることは冷静に考えなくとも子供の癇癪のようだ。実際そうなのだろう。現段階では、死柄木は自分の過去について思い出しさえしていない。そんな状況で自分の中にある何とも言えない感情を、論理だった言葉で表現するのは大抵の人間には不可能だ。

 

「『オールマイトのいない世界を創り、正義とやらがどれだけ脆弱かを暴く』これが俺の信念だ。」

 

 嫌な顔をしているだろうかと、死柄木は純狐の表情を窺う。しかし、純狐は先程と変わらない表情でそこに座っているだけだった。

 

「ヒーローとして否定しなくていいのかよ。ステインの時も何か言って更生させようとしたんだろ?」

 

「否定はしないわ。ステインの時も更生させようとしたわけじゃないし。まあ、他人に必要以上の迷惑をかけるのはどうかとは思うけどね。」

 

(話を聞くと、ただ誰かに救ってほしかっただけに感じちゃうのよね。そんな単純な話でもない気はするけど)

 

 死柄木の話を聞いた純狐が感じたのは、誰にも救ってもらえなかった孤独を八つ当たりすることで発散したがっているという事だった。過去、つまり人間だった頃の純狐とは違った思考回路であるため、死柄木に本当の意味で共感できるわけではないが。

 

 過去の純狐と死柄木の違う点は多くあれど、最も違うのはそこに誰かいたかどうかという点だろう。死柄木の場合、オールフォーワンという強力な見方が存在した。一方純狐の場合、そこには誰もいなかった。ただ一人で気の遠くなるような間、原因も忘れて恨みを募らせ、純化するまで研ぎ澄ませてきたのだ。そういう意味では、まだ死柄木の方が救いようがあるのかもしれない。

 

「じゃあ次の質問ね。あなたが見た中で強いと感じた人は誰?オールフォーワン?それとも別に誰かいるのかしら?」

 

 この質問は、ヘカーティアがどの程度まで関与しているかについて知るためのものだ。今までの状況を考えて、ヴィラン連合サイドにヘカーティアが付いていることはほぼ確実だと純狐は考えている。純狐の入ったヒーローサイドのバランスを取ろうとでも思っているのだろう。

 

「お前も先生について知ってるのかよ。姿を隠してるのにホント有名人だな。」

 

 死柄木は普段の仲間に見せるような、嘲るような笑いを見せる。

 

「ああ、先生はお前の知っての通りの強さだ。全盛期を見たわけじゃねぇから全力がどんなものかは知らないがな。」

 

「他には?」

 

「さあ。」

 

 死柄木もざるではないのでこれ以上の情報提供は控える。純狐がその気になれば洗脳で無理やり情報を聞きだされるが、今までの行動を見るとそれは無いと死柄木は考えた。洗脳するなら、最初から洗脳して情報を聞き出せばいい。それをしないという事は、洗脳してまで聞き出す情報を死柄木が持っていないと判断してのことだろうと考えていた。

 

(こいつは緑谷と違って平和ボケしたクソやろうじゃない。残酷じゃないが、楽しむためにはどこまでも冷酷になる)

 

「ま、答えたくないならしょうがないわ。多分、分かったところで今の私じゃどうしようもないし。」

 

 死柄木が色々考えているうちに、純狐は手元のアイスコーヒーを飲み終わり、小腹が空いたので目についたケーキを追加で注文する。勿論、死柄木の分もだ。

 

「オイ、俺の分はいらねぇよ。それより早く帰らせろ。お前太るぞ。」

 

 割とマジな顔で帰りたそうな顔をする死柄木。しかし、純狐はお構いなしである。

 

「甘いもの嫌いだったら代わりのもの注文するわよ?」

 

「少しは俺の話を聞け。」

 

 二人の様子を店員は、元気な子たちだなぁと、ほのぼのした目で見つめる。しかし、実際は死柄木が何度も個性を発動させようとし、純狐がそれを縛り上げているだけである。

 

 そして、注文したデザートが届くと純狐は質問を再開した。

 

「はい、続きからね。まあ、もうあまり聞くことは無いんだけど……。さっき、この世界を壊したいと言ったじゃない?今のあなたが考えているのはその壊す過程だと思うけど、その世界を壊し終わった時、あなたは何を望むのかしら?その世界の王様にでもなるの?」

 

 おそらく現段階の死柄木はそこまで考えていないと純狐は予想している。しかし、純狐が介入したことで死柄木の思想がより未来を見据えたものとなっていたりすれば面倒だと思い、一応確認したのだ。

 

 予想通り、死柄木は遠い未来のことに付いて考えてはいなかった。そもそも今の死柄木はオールフォーワンがいなくなるなど想像もしていない。だから、純狐の質問がそもそも理解できなかった。純狐の質問は今後の展開を知っている者の視点であり、オールフォーワンのことを全く考えていないからだ。

 

「考えたことも無いな。まあ、先生が何とかするだろ。だが、そうだな……確かに……」

 

 俺はいったい何がしたいのだろう、死柄木は初めて持つ疑問に混乱する。だが、過去の記憶さえ封印している死柄木は、当分この答えを見つけることはできない。そんな死柄木の様子を見た純狐は、やってしまったかと若干の後悔をしながら話を切り上げた。

 

「あー、あまり考え込まないで。ほら、ケーキでも食べましょう。」

 

 死柄木は反発するかに思われたがそのようなことは無く、無言でケーキを一口食べると大きく息を吐いて背もたれに寄り掛かかり天井を見上げた。

 

 死柄木は自分自身、何故ここまでイラつかないのか不思議だった。オールフォーワンの包み込むような悪意とも違う、ヘカーティアの圧倒的な実力差とも違う。いや、どこか通じるところはあるのだが、本質的な部分が違うと感じていたのだ。それを顕著に感じたのは、あの体育祭で純狐が目の個性を使ったときである。死柄木は、その後調べた不審点よりもその奥にどんな心情が潜んでいるのかが気になっていた。

 

 それだけではない、オールフォーワンからも言われたように、純狐が狂気的に楽しさを追い求めているのもなんとなく不思議に感じていた。高校になるまで力を抑圧されていたことの裏返しとも予想されたが、力が低下しながらも戦うその様子を見てオールフォーワンと死柄木はその予想を否定した。

 

 まるで何かから逃げているようだ、と死柄木は感じたのだ。それは、何かから逃げずに立ち向かうヒーローたちにはすぐに理解しえないことだろう。

 

享楽的かつ刹那的に、だからと言って妥協はしない。それ故、死柄木たちは純狐が勝ち負けをそこまで気にしないと考えていた。実際その通りで、授業の様子を見ていても、よりよくしようとする努力は見えるもの、最善を目指すようにはしていなかった。

 

オールフォーワンは、これを当たり前だと言っていた。勝ち負けが生死にかかわるような戦場に立ったことが無いと、戦闘狂が勝敗に拘らないだろうと。しかし、この考えは体育祭の爆豪戦で覆された。先程も言った、目の個性の使用である。おそらく本人も無意識であろう個性の使用。生存本能による個性の暴走とヒーローたちは片付けたようだが、死柄木たちはそれだけだとは考えなかった。

 

 とっさの判断は、その人の本質的な部分を呼び覚ますことがある。つまり、なんだかんだ言っても純狐は勝負には勝つことが必要だったというわけである。それに、その時使ったのは得意の純化ではない。これを見て、純狐の本質的なところはあの赤黒く冷たい感情であると死柄木たちは考えた。そしてこれが純狐があまり頼りたくはないものであるとも。勿論、何故かはわからないが。

 

「なあ、落月。お前は何を恐れているんだ?いや、それとも恐れているわけではないのか?お前の本質はヒーロー側じゃないだろ。」

 

 急にそんなことを言う死柄木に純狐は驚く。まさかこんな短期間で隠していた自分の本質に気づきかけているとは思ってもいなかった。まあ、憎悪の感情そのものともいえる純狐がそれを隠そうとするのが無理であるのだが。

 

「さっきも言った通り、今となってはどうでもいいわよ。私はヒーロー、それ以上でもそれ以下でもないわ。本質とかに関してはあなたが思うように考えなさい。」

 

 面倒そうに答える純狐だが、実際は死柄木との会話をかなり楽しんでいた。死柄木がこの時点でここまで話せる相手だと期待していなかったからなおさらである。

 

(私の正体がばれるのはもう少し待ってほしいのよね。まあ、彼らが考えたうえで気づいたならそれはそれでいいんだけど)

 

 純狐が正体ばれを嫌うのは、正体がばれたらイベントがそちらに持って行かれてしまう可能性が極めて高いからだ。それで楽しめるのならば別にいいのだが、おそらく変に気を遣われるようになってしまうだろう。それに、今現在自分の体に起こっている異常がさらに変な方向にねじ曲がってしまうことも考えられる。

 

「じゃあね、話したいことは話せたし、私はこれで帰ることにするわ。」

 

 追加で注文した商品を食べ終わり、死柄木も黙ってしまったので、純狐は帰ることにする。本当はもっと腹を割った話をしたかったが、今はこの辺が限界だろう。死柄木もかなり疲れていたようで、特に怒ることも無く純狐を見送った。本当は純狐に何を言っても無駄だと感じて何も言わなかっただけだが、純狐がそれに気づくことは無い。

 

 その後、特に何もなく家に帰りついた純狐はシャワーを浴びてすっきりするといつものようにだらだらとし始めた。そして体の疲れが取れた頃、いつもの椅子に座って空を眺めながら死柄木のことに付いて考えを巡らせる。

 

(結局、自分の中の考えと、外に広がる現実、そして自分の夢の折り合いがついていないのでしょうね。私は、自分の感情に一点特化してしまったけれど、死柄木君は立場上そうもいかない。難しいわね)

 

 足をぶらぶらとさせながら小さな杯に注がれた酒を飲む。

 

(本当は、この三つのバランスを取ることを覚えていかなければならない。人ってどうしても自分のことを重視してしまうから外の世界の現実が辛い。大人になると、その辺の割り切り方とかもうまくなるし、場合によっては自分以上に大切なものができる。今の死柄木君にそこまで求めるのは酷か)

 

 ま、どちらにしても私にできることは無いか、と純狐は背もたれに寄り掛かる。そもそも純狐はこのことを今となっては理解できない。今の純狐には自分の、理由もない憎しみしか残っていないのだから。ちなみに、ヘカーティアもこの辺りはあまり理解していない。あのレベルの神になると自分好みに現実を変えられるためどうでもいいのだろう。

 

「でも、死柄木君も話してみると楽しかったわね。原作よりも大人になっているのは多分ヘカーティアが何かしたのでしょうけど。」

 




読んでくださりありがとうございます!

これからレポートが多くなっていくのでまた時間空くと思います。
申し訳ありません。できれば二月中にもう一つ投稿したいです。
そして、できれば二周年を迎える前に完結させたいと思ってます。多分無理ですが。
余談ですが、どこかにエヴァから持ってきたようなセリフがあります。
探してみてくれると嬉しいです。

次回、できれば林間合宿まで行きたい
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