純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんばんは!

久しぶりに一か月以内の投稿です。
やっぱり戦闘シーンは特に苦手ですね。
そして語彙力が足りない。使う言葉がワンパターンになってしまう……

ウマ娘、タマ貯金がキタサンに吸い取られました。



神野1

 

『では、先程行われた謝罪会見の一部をご覧ください。』

 

 校長の根津、1-A担任の相澤そして1-B担当のブラドキングこと管が大きな街頭テレビに映る。今世間で最も注目を集めているニュースであるため、通行人も多くが立ち止まり、その様子を見守っていた。

 

『この度、我々の不備からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまったこと、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えたこと、謹んでお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。』

 

 普段より聞き取りやすい声で話す相澤の謝罪から会見は始まる。その後、事実説明の部分はダイジェストで流され、質疑応答の様子が映された。

 

 そこでは、予想通りというべきか雄英に否定的な意見が多く取り上げられていた。対策をする、と言っておきながら被害が出ている状況について、拉致された生徒への対応、まだ隠されている被害があるとの噂が立っていることへの説明など、言葉を少しずつ変えながら質問が飛んでくる。

 

「悪者扱いかよ……。」

 

 さすがの出久も、悪意ある編集や記者の態度に腹が立ってくる。だが、そんな出久たちの反応とは逆に、周囲から聞こえてくるのは雄英に否定的な見方をするものが多かった。皆どこかで、ここ半年の一連の事件が自分たちの生活を大きく揺るがすものになるのではないかと不安なのだろう。

 

 そんな中、ついに一人の記者が拉致された爆豪について、明らかに挑発めいた質問を飛ばす。根津と相澤が連携して答えるが、相手も質問のプロである。厄介な根津ではなく、メディア慣れしていない相澤に段々と標準を合わせ、爆豪に未来があると言える根拠を尋ねた。

 

 相澤に不安を覚えたブラドキングが横から冷静になるようアイコンタクトを出すが、相澤がそれを見ている様子は無い。しかし、彼が思っていた以上に相澤は冷静であり、粗野な返しをすることなくその場を乗り切った。

 

 その後はこれ以上煽っても面白い映像は取れないと考えたのか、記者からの質問は批判的なものから建設的なものに変化していった。そして記者会見は終わり、番組のコメンテーターたちが記者会見について適当な意見を交わし始める。

 

「行くぞ。」

 

 轟が短く言うと、出久たちもそれに従って移動を開始した。教師たちの思いに触れ、意欲は今まで以上だ。大通りを少し歩いて裏道に入り、人はまばらに見える程度になった。治安もあまりいいようには見えず、普段であれば決して自分から入ることは無いような場所だ。

 

「ん?あれは何だ?」

 

 周囲を警戒していた切島が、遠くのビルを指さす。出久たちもつられてその先を見るが、特に何もない。切島も見間違えだったかと忘れることにするが、妙に落ち着かない。

 

「飯田。ちょっと俺を殴ってくれ。軽くな。」

 

 急にどうしたのかと混乱する飯田。しかし切島は真剣そのものである。仕方が無いのでほほを軽く叩くと、切島は急な脱力感に襲われた。ふらつく切島を飯田が支え、体調を確かめるが、熱があったりするわけでは無い。

 

「大丈夫ですか?やっぱり止めた方が……。」

 

 八百万は切島の背をさすりながら提案するが、ここまで来て引く選択肢など今の切島にあるはずがない。切島は大丈夫だ、と自分の調子を確かめるように拳を握りしめ再び歩き始めた。

 

「いや、何かビルの上の方に赤い点が見えた気がしたんだ。それ見てからちょっと高揚感っていうか、冷静さを欠いてしまいそうだった。皆ありがとう、おかげで調子も戻ったぜ。」

 

「調子悪いなら隠さないでね。何が待ってるか分からないんだから、せめて体調だけでも万全にしておかないと。」

 

 そんなことを話しているうちに、出久たちは目的地に着いた。外見はただの放棄された廃倉庫である。建物の様子を確かめた後、まばらにいる人たちに見られないように、狭い通路を通って裏に回ることにした。

 

「あの高さの窓ならここから中が見えそうだ。」

 

「よし、じゃあ緑谷と切島が見ろ。俺と飯田が担ぐ。」

 

 準備の良い切島が持っていた暗視ゴーグルを使い、建物の中を覗き見る二人。最初は何も無いように思われたが、奥の洗濯機のような容器の中には液体に浮いた脳が見えている。やはりこの施設がヴィラン連合と関わっているのは間違いないようだ。

 

「ちッ、さすがにあの量は俺たちにはどうすることも出来ないぜ。」

 

 切島がそう呟き、塀の下に降りると、遠くから何者かの足音が聞こえてきた。まさかヴィランが、と警戒を強めて息を殺す出久たち。しかし、かすかに聞こえる会話からそこにいるのはヒーローであると分かり安堵する。

 

「記者会見からまだ何時間とも経っていないぞ。もう突入するのか。」

 

 飯田は驚き、手元の携帯で時間を確認する。八百万はその携帯の光を黒い布を作って隠しながら、ほっとため息をついた。

 

「プロが来てくれたのでしたら、私たちの出る幕ではありませんわね。さあ、邪魔になる前に帰りましょう。」

 

 八百万の言葉を遮るように、マウントレディが巨大化し、廃倉庫を蹴り壊す。それと同時に虎とベストジーニストが中に入り、脳無たちを捕縛した。後方にはギャングオルカも控えており、逃げ出そうとする者がいないか目を光らせている。

 

「……凄いな。ヒーローたちはもう動いていたのか。さあ、後は任せて早く去ろう。」

 

 飯田は身を乗り出しかけている切島の手を取り、出口の方に引っ張る。切島もそれに抗うことは無く、この場はプロに任せようと暗視ゴーグルを鞄に戻して歩き始めた。

 

 順調にことは進んでいる。誰もがそう思った。しかし、悪はそう簡単に屈しない。この程度で屈するのであれば、等の昔に誰かが滅している。

 

 それはまるで湧き出るように。あたかもそこにいるのが当たり前のように。そして目の前の善を為そうとする者をあざ笑うかのように。ただ、そこに君臨した。

 

「すまない、虎。前々からいい個性だと思っていたんだ。あの神……いや彼女たちが干渉しない内に片さないと。」

 

◇  ◇  ◇

 

「お疲れ様です。」

 

 記者会見が終わった直後、相澤は作戦本部へ急いでいた。今回の作戦に直接参加する予定はないが、何かあった時、少しでも戦力は多い方がいい。

 

「いやいや、そちらこそお疲れ様。慣れてないから大変だっただろうけど、君が冷静に答えてくれたおかげで助かったよ。」

 

 たまたま居合わせた根津はそう言うと車に乗り込み、相澤と別れた。もしものことでヴィランから襲撃を受けた際、戦力が削れるのを防ぐためだ。

 

「ふぅ……それじゃあ行くか。」

 

 相澤は待機していたヘリコプターで神野へ向かう。ヘリコプターは1時間ほどで神野上空に到着し、着陸の体勢に入った。

 

 その時、遠くに赤い光が見え始めた。何か異常でもあったかと、操縦士はその光の動きに注目する。赤い光は特に何の信号を送るわけでもなく、ただその場をゆらゆらと揺れているだけのようだ。誰かのいたずら、若しくは接触の悪い光が揺れているのだろうと判断し、ヘリコプターの体勢を整える操縦士だったが、どうにも手がうまく動かない。

 

「おい!大丈夫か!」

 

 機体が大きく揺れ始め、異常を感じ取った相澤が操縦士の肩を叩くが、呂律が回っておらず目も焦点が合っていない。さすがにまずいと急いでパラシュートを付け、操縦士も担いで脱出を試みる。

 

「クッソ、何なんだ。」

 

 相澤は暴れる操縦士を気絶させ、安全に着地できそうな場所を探し始める。そして、視界に巨大化したマウントレディか映るとその近くを目指して体勢を整えた。

 

「やはり何か変だ。これ以上何も起きないでくれよ……!」

 

◇  ◇  ◇

 

「どーもぉ、ピザーラ神野店ですー。」

 

 眠っていた爆豪を黒霧が死柄木の前に連れ出し、最後の説得を行っていたところで入口のドアが叩かれる。誰がこんな時に、と皆がドアの方を向いたところで、真横の壁からオールマイトが飛び出した。

 

「黒霧ッ!」

 

 死柄木は敵襲をすぐさま察知し、黒霧に指示を飛ばすが、黒霧は慌てており対応できていない。その混乱が冷めないうちに、シンリンカムイがヴィランを拘束する。

 

「木ィ!?んなもの……」

 

 炎熱系である荼毘はその木を焼こうと体から炎を上げるが、それを察したグラントリノが頭を蹴り、脳震盪を起こさせて阻止した。死柄木が辛うじて拘束を逃れているが、相手が悪すぎる。シンリンカムイの木を崩壊させているうちに、入口からはエッジショットが侵入しており、その個性によって手の中をいじられ動かなくされてしまった。

 

「もう逃げられんぞヴィラン連合……何故って?」

 

 一番槍で突入し、場の制圧を見届けたオールマイトがいつもの笑顔で言い放つ。

 

「我々が来た!」

 

 ヴィラン連合の面々がその再びの威圧に怖気づいている中、死柄木だけは何とか打開策が無いかと考えることを辞めていなかった。しかし、明らかに戦力が足りない。純狐が味方ならまだしも、この状況になって加勢に来ていないという事は、こちらに付いていなかったのだろうと判断するほかなく背後を突かれる危険もある。

 

(あの野郎……さてはこの場所ばらしやがったな。んだよ、結局ヒーローに付く方が面白いと判断しやがったのか)

 

 だがまあ、確かに余裕綽々としていた自分たちが急に形成を逆転され窮地に陥っている姿は、第三者から見れば滑稽に映るかもしれない、と納得してしまう死柄木。その余裕を感じ取ったのか、オールマイトは死柄木に近づき警戒を強める。

 

(今この瞬間、この包囲網から出ることは諦めた方がいい。ここにいる戦力を見ると、廃倉庫にある脳無にも手は回してあるだろう。そうなると……先生を頼るほか無いか)

 

 死柄木は机に置かれているパソコンの方を意識する。通信はつながったままであったため、オールフォーワンがこの事態に気づいているのは確かだ。おそらく何かしらの策は既に立てているはずだが、純狐がいることで誤算が生じているのかもしれないと死柄木は考える。

 

(なら、もう少し時間を稼がないとな。生半可な話題じゃダメだ。そうだ、何考えてるか知らねぇが落月の奴はまだ出てきていない。おそらくここで出てきても保護されるだけで関与しずらくなると考えてんだろ。俺の考えが当たっているのであれば、これはでかい手札だ)

 

「なァ、死柄木。落月はどこにいる?」

 

 早速振ろうとしていた話題が来て飛びつきたくなる死柄木だったが、ぐっと我慢して不機嫌そうな表情を作る。近くにいるオールマイトにはばれているかもしれないが、疑いを持たせることができるだけで時間稼ぎにはなり得る。

 

「ああ、あいつか。知らねぇな……ッ!」

 

 言い終わる前に、エッジショットが内臓に体の一部を突き刺して激痛を走らせる。そして、次は心臓のあたりを触る、と警告を発し重ねて質問が行われた。

 

「はぁ、はぁ、痛えなぁ。これがヒーロー様のすることかよ。今頃あいつは先生のとこだよ。ハハッ、遅かったんだよお前らは!あんな個性黙って見過ごすわけないだろ!?」

 

「奴はどこにいる!死柄木‼」

 

 我慢ならなくなったオールマイトが叫ぶ。ここでうろたえるのは簡単だ。だがそうしたところで、被害は拡大していく一方だろう。ならば、一刻も早くその諸悪の根源、オールフォーワンの居場所を聞き出す必要がある。

 

 そしてその叫びとほぼ同時に、部屋の奥のパソコンから声が聞こえた。

 

「ありがとう、弔。君が時間を稼いでくれたおかげで何とか用意できた。」

 

 その声が聞こえるや否や、至る所から黒い液体と共に脳無が湧き始める。見たところ、下位個体だが、状況を混乱させ死柄木たちの脱出する時間を稼ぐのには十分だ。

 

「クッソ、どんどん出てきやがる!」

 

 グラントリノは拘束されているヴィランから目を離さないようにしつつ、脳無の処理に当たる。だが、いくら警戒していたところで相手はオールフォーワン、規格外の個性を持つ者だ。しっかりと拘束されていたはずのヴィランも、口から黒い液体が溢れ出しどうすることも出来ずその場から消えてしまう。

 

「!?爆豪少年‼」

 

 そしてそれはオールマイトが拘束していたはずの爆豪も例外ではない。口から液体が溢れ出したかと思うと、オールマイトの必死の処置もむなしくどこかに消えてしまった。

 

「Nooooo‼」

 

 再び目の前で教え子が連れ去られるという現実を目の前に、さすがのオールマイトも思考が止まってしまう。そんな悲壮な声をかき消すように脳無は次から次へと湧き出してくる。そんな中、建物の奥の方で大きな音が聞こえると、上空から見覚えのある少女が顔をのぞかせた。

 

「あの野郎。私の目的を察した上で邪魔するつもりね。いいわ、一瞬で片を付けてあげる。」

 

◇  ◇  ◇

 

ヒーローがヴィラン連合の基地に侵入してきた頃、純狐は床に穴を開け、その中に籠っていた。勿論、突入して来た機動隊にばれないように蓋をしている。“隠”へ純化しないのは、皆が自分のことを忘れると色々こじれてしまいそうだったからだ。

 

(どこで出て行こうかしら。脳無が湧き出したあたり?確かにそこなら混乱に乗じて廃倉庫の方に移動できそうね。オールフォーワンもこれ以上私に構う事も無いだろうし、適当なタイミングでヘカーティアと合流しましょう)

 

 そうこう考えているうちに、死柄木の声が聞こえ始める。変にヒステリックになっていないことから、おそらく冷静に時間稼ぎしているのだろうと純狐は感心した。

 

(あの子、私の考えもある程度読んで行動してるわね。現時点の登場人物で一番相性よかったのはあの子というわけかしら。まあ、分からなくもないけど複雑ね)

 

 この世界とももうお別れか、としみじみしていると、上の方が騒がしくなり始めた。脳無が出現し始めたのだろう。そろそろ出ようかと、蓋にしていた机をどかすと、その手を誰かに掴まれた。

 

「あら、ありが……」

 

 とう、と言い終わる前に、掴まれた手が引きちぎれるのではないかという勢いで引っ張り出される。驚いてその手の先を見ると、真っ黒で巨大な脳無が口を開けて待っていた。

 

 咄嗟に手を強化し脳無の手から逃れようとするが、力が足りず逃れることは叶わない。そのまま頭を嚙みつかれ、耳がもげそうになるが、脳無を“縛”に純化することで隙を生み出し、その場から逃れた。

 

 だがその逃れた先には小型の脳無がおり、純狐にまとわりついてくる。しかし、こちらの脳無はあまり力が強くなく、普通に殴るだけで無力化できた。だが、よく見ると小型の脳無はこの小部屋の中に3体はおり、面倒なことになっているのは火を見るより明らかだ。

 

「ううッ」

 

 それに加え、足元にはケガを負った機動隊員も転がっている。この狭い部屋で戦うのは不可能に近い。いや、被害を気にしないのであれば何とかはなる。しかし近くには多くのヒーローがおり、味方の機動隊員も含めて無差別攻撃していると、おそらく用意されている対自分用の作戦が適応されてしまい、オールマイトとオールフォーワンの戦いを見ることは叶わないだろう。

 

「あの野郎。私の目的を察した上で邪魔するつもりね。いいわ、一瞬で片を付けてあげる。」

 

 建物の窓を破り外へ飛び出した純狐の目に驚愕するオールマイトたちが映った。こちらに来ようとしているのが分かるが、オールマイトに今来られるのは困る。オールフォーワンがどう動いているのか分からないが、脳無が送られている状況を見るに原作とそう違わない展開になっているだろう。そう予想した純狐は、目の前に迫る脳無を“弾”への純化で弾き飛ばしながらオールマイトに向かって叫んだ。

 

「こっちは大丈夫ですので!早く爆豪君の方に向かってください!」

 

 純狐がそう叫ぶと、“縛”への純化から解放された脳無が真下から現れ、純狐の足を掴んでその場に叩き落とした。純狐は自分の周りを“硬”に純化し衝撃をこらえる。

 

「俊典!とりあえずベストジーニストの方に向かえ!脳無は俺たちで何とかする!」

 

「……了解です。エンデヴァー大丈夫か!?この場は任せるぞ!」

 

 オールマイトは建物に空いた穴から体を出し、外のエンデヴァーの様子を見る。外に湧き出る脳無は建物内よりも多く、機動隊も散らばっているため処理は難しそうだ。しかし、エンデヴァーはオールマイトには及ばずとも№2ヒーローである。その炎さばきは素晴らしく、大きな被害を出すことなくその場を制圧していた。

 

「行くならとっとと行くがいい!落月の戦闘許可はイレイザーのがまだ消えていないはずだ!もし何かあれば俺が重ねて許可を出す!」

 

 そのセリフを聞くと同時にオールマイトは廃倉庫の方に向かって跳び立つ。純狐はその様子を視界の端で確認しながら、ヒーローたちの目が届かない場所に移動しようとしていた。しかし、一体の巨大な脳無がそれを許してくれない。

 

(こいつハイエンド級?エンデヴァーとホークスが戦ったレベルなら何とかなるかもしれないけど前回の保須レベルの奴ならさすがにきついわね)

 

 純狐は目の前の脳無を観察しながらその個性を推測する。保須の時のような超スピードがあるわけでは無いが、純狐が強化した手で振り払うことができない程度にはパワーがある。また、“縛”への純化中も若干動いていたことから、拘束耐性も持っていると考える方がいいだろう。

 

 建物の間を移動しながらどうするか方針を立てる純狐。そんな純狐を脳無は上空にジャンプすることで探し出し、手に握っていた小型の脳無を空中に投げて足場にすることで突撃して来た。

 

 力で対抗できない以上、体を掴まれたくないので、純狐はさっきと同じように周囲の空気を“弾”に純化し、脳無が背後の建物にぶつかるよう角度を調整する。しかし、脳無はそれでは止まらなかった。張ったはずの壁は確かに脳無を減速させたがそれ以上の機能を果たさず、脳無の手が純狐に届く。

 

(なんッで!)

 

 純狐は驚きながらも脳無の足元を“滑”に純化し、捕まれることは回避できた。転がっている脳無の下の地面を“軟”に純化して埋め立てようとするが、脳無はそれを察したのか純化の範囲外に逃れ、再び膠着状態となる。

 

(何で壁が機能しなかった?まさか一度食らった個性、攻撃に対し耐性を持つとかかしら)

 

 試しに純狐は脳無に近づき、“縛”に純化してみる。だが、やはり脳無は一瞬動きが止まったものの効いている様子は無かった。やはり耐性が付いていると考えるのがいいだろう。だが、どの程度まで耐性が付くのか、純狐の攻撃に対応できるのかは不明である。もし純化されたものに対応できるのだとすれば、それは概念を無視する、という事だ。さすがにそのレベルをヘカーティアが提供するとは思えないし、幻想郷だとしてもそんなものが存在していてはたまったものではない。

 

(積極的に攻めてこないのはありがたいけど、ここのヒーローたちに任せるわけにもいかないし……。そろそろあっちも始まる頃だから何とか速攻で終わらせたいんだけど)

 

 もし相手が概念耐性なるものを本当に身につけるのであれば、もはや手加減している暇はない。だが、周囲にはヒーローもおり、強引な手段は使えない。霊力を使えばだれにもバレず無力化させることが可能だが、それは最終手段だ。後でヘカーティアに笑われることもあり得る。

 

「まあ、やるしかないわね。」

 

 純狐はそう呟くと、“速”への純化で脳無に近づいた。周りに集まっていたヒーローや機動隊員はそれによって吹き飛ばされ、周りには土煙が立ち込める。これによって脳無も純狐を見失うかと思われたが、探知系の個性でも持っているのか、土煙の中から近づく純狐の方向に正確に手を伸ばし頭を掴もうとしてくる。

 

「危ないわね!」

 

 その手から逃れるため体をひねり、同時に“貫”への純化で脳無の腕に穴を開ける純狐。脳無はそんな肩まで空いた穴を無視して、蹴りを入れてくる。その足を“斬”の純化を使って切り払い、体勢を崩した隙に、脳無の目を“盲”へ純化させる。

 

 脳無はいきなり視界が亡くなったことに発狂し、甲高い声を上げたかと思うと今までのおとなしさが嘘のように手を振り回し始めた。さすがに近くにいられないと離れた純狐は、そこにあったコンクリート片を砕いて脳無に投げつける。強化された手によって投げられたそれは、音速を超えて脳無にぶつかるが、“貫通するモノ“への耐性を得ている脳無の体には穴が開くことは無い。

 

 だが攻撃をされたという事は認知しているため、脳無は今まで以上に手を振り回し、その余波だけで近くの建物を半壊させる。そして純狐はそれを狙っていた。石礫によってついた背中の傷を“蝕”に純化する。すると、傷は見る見るうちに広がり、脳無の体を蝕んでいく。そこに暴れていることも合わさって、脳無の背骨はその部分が折れてしまった。

 

 さすがの脳無も背骨が折れてしまっては満足に動けない。純狐はその背中の穴に水を流し込み、血、そして鉄に純化させる。

 

「ちょっとやりすぎかもしれないけど、それだけあなたは強敵だったってことよ。」

 

 純狐はそう言うと、仕上げに脳無の体を生命力に純化させ、その再生能力を暴走させた。それによって、脳無の肉は体中入り込んだ鉄を飲み込みながら再生することとなり、もはや人とも分からぬ肉塊になってしまった。

 

 だが、脳無も最後の意地を見せる。必要ない手足が生え、内臓も飛び出し、盲目になりながらも脳無は立ち上がり、純狐の移動を阻止しようと通路に立ちふさがったのだ。

 

「……敵ながらあっぱれね。」

 

 情けをかけてやりたくもなったが、ここで中途半端なことをすると後々に響きそうだ。純狐はその脳無の体周辺を“暗”に純化して完全に外部との情報を断ち、そのむき出しの脳に触れる。そして今脳無の体を支えているその意識を“壊”に純化し、完全に失神させた。

 

周囲の土煙も晴れ始め、段々と外の様子も見えるようになってくる。

 

(ヤバいわね。エンデヴァーたちに見つかったら確実にここで保護されるだろうし、変に動こうものなら、私用の部隊が動き出してもっと面倒なことになっちゃうわ)

 

 その時の純狐は結構焦っていたのかもしれない。それもあって、背後から近づく足音に気づくのが遅れてしまった。

 

「えッ!?」

 

 気づいたときには純狐の体は浮かび上がっており、そのまま凄い速度で上空へ飛んで行く。脳無の意識を破壊したことで洗脳が解け、命令も忘れた脳無が暴走したのだ。だが、これは純狐にとってはオールフォーワンたちの元へ行く好機だった。

 

 しかし、勝負の最後に悔いが残ってしまったことに変わりはない。複雑な気持ちを抱えながら、純狐は最終決戦の地へと向かった。

 

― ヘカーティアside ―

 

 ヒロアカの世界に転移が完了したヘカーティアたちは、早速神野のとあるビルの屋上に降り立ち、外からの干渉を防ぐ結界を張った。攻撃を防ぐためのものでは無く、単にお菓子や飲み物に汚れが入らないようにするためだ。

 

「うーん、イレイザーヘッドもこっちに向かってるのね。そうだ、折角だし戦闘に参加させてあげましょう。」

 

 ヘカーティアは結界を張りながら集めた情報を整理する。魔術の神であり、この世界をコピーして作り出したヘカーティアにかかれば、ここから雄英くらいまでの探索は容易である。

 

「クラピちゃん、お願いできるかしら……って言うまでも無いわね。死人は出ないようにしてよ?」

 

「了解ですご主人様!」

 

 そう言うと、クラウンピースは松明の火を大きくしてくるくると回り始める。果たしてヘカーティアの言葉を理解しているかどうか分からないが、ご主人様からの命令である。そこまで大きくしくじることも無いだろう。

 

「はいはい、危ないからまだ振り回さないでね。その松明、この世界だとかなりの劇薬っぽいから。」

 

 ステインとエンデヴァーの暴走具合を思い出し、ヘカーティアは松明の火を隠す。クラウンピースは不満げだが、どうせすぐに忘れるだろうし問題は無い。

 

「ところで今回の友人様の時間稼ぎは誰がするんですか?また脳無しですか?」

 

「脳無、ね。まあ予想通りよ。私が出て行くのも面倒だし、クラピちゃんも戦いたくないでしょ?オールマイトやオールフォーワンは関わらせると純狐から文句言われそうだし消去法であれしかないのよ。」

 

 ヘカーティアとしてもワンパターンでつまらなくなってきたが、純狐の意向に沿うとなると脳無以外の選択肢が少なすぎるのだ。それに、脳無はその都度個性を変えれば戦闘のスタイルなども変わる為、最低限の面白みは保障されている。

 

 そんなことを話していると、周囲にはヒーローたちの姿が目立ち始めた。避難が完了しているか確認しているのだ。ヘカーティアはそんな街の様子を見降ろしながら、文字通り高みの見物を決め込んでお酒を飲み始める。

 

「純狐も、その他の皆さんも、頑張ってくださいね。」

 

「ご主人様も悪趣味ですね。仕事サボって来てるのにお酒飲んでいて大丈夫なんですか?」

 

「そんなこと言わないの。」

 

― side out ―

 

 





読んでくださりありがとうございました!

この部分を書くに当たってヒロアカを読み直していたのですが、いつ見ても盛り上がりますね。オールマイトかっこいいです。

次回、神野の続き
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